先週の週末は、レストランを新規開業したい人の相談で鎌倉に行って来たが、休日でもないのに、鎌倉は大変な人出でそれも小・中学生が多かった。
幸いな事に天気がよく、子供達の黄色い声と外人のカップルの雰囲気で、狭い江ノ電の中はリゾート気分で一杯であった。
歴史的な観光地はどこもそうだが、道路が狭いので車はノロノロ運転、そこに車と人の共存が出来て、レストランの運営にも好都合であると思う。
今、鶴岡八幡宮に近接する神奈川県立近代美術館で建築家坂倉準三さんの展覧会が開かれている。(写真)
坂倉準三さんは、前川國男さんと共にフランスの建築家ル・コルビュジェの弟子で、日本の近代建築の先達であり、その代表作には新宿西口広場と小田急百貨店、渋谷の東横百貨店、神奈川県庁舎、そして先日世界遺産登録からもれた上野の西洋美術館などがある。
鎌倉の近代美術館も氏の初期の作品であるが、中庭のあるコルビジエ風のモダニズムの作品で、物資の乏しい1951年の竣工、鉄骨も細く外壁材もボード仕上げであり、中に入るとカビの臭いがして歴史を感じさせる。
展示の最初のコーナーは、氏がコルビュジェのアトリエで担当した作品である。
そこには学生時代に見慣れたコルビュジェそのものの図面があった。
黒川事務所に在所中、出張した時や、打ち合わせの帰りの車の中で黒川さんが、よく坂倉さんや前川さんの話をしてくれたことを記憶している。
黒川さんも若い頃には坂倉さんに大変お世話になったようで、両巨頭についての黒川評を楽しく聞いた思い出がある。
当時は三井不動産と藤沢ニュータウンの仕事をしていて、坂倉さんの大きい声とその実行力・行動力の話をしながら、三井との打ち合わせの進め方などを聞かされたものだ。
そんな事を思い出しながら、展示の作品群を眺める。
クライアントとの親密な関係の中で個人の建築家が、オールマイティで仕事を進める事の出来たよき時代。
坂倉さんの事務所には優秀な人材が集まり、現在もお弟子さんたちが多くの優れた作品を生み出している。
とは言え展示会の作品の中で、坂倉さんの個性が出ている作品はそれほど多くはない。
ル・コルビュジェはエスプリ・ヌーボー(新精神)のもと、新しい建築空間を造る事を提唱し実践した。
組織の時代となった今日、個人の出来ることは余りに小さくなってしまったが、坂倉さんの残された資料や作品を見ながら、少しでも、時代精神を感じさせるような仕事をこれからも心掛けたいと思った。