源氏物語歌集-悠山人編

『源氏物語』中の短歌(和歌)のすべてを、
原作の順序にしたがって、紹介する。→日本初!

FL41幻~FL54夢浮橋

2009年07月29日 | 巻順初行

*** FL41幻~FL42匂兵部卿 ***

FL41幻 春の光を見給ふにつけても、・・・
春の光を見給ふにつけても、いとどくれ惑ひたるやうにのみ、御心一つは悲しさの改まるべくもあらぬに、外には、例のやうに人々参り給ひなどすれど、御ここち悩ましきさまにてもてなし給ひて、御簾の内にのみおはします。


[角川ソフィア文庫 第八巻]匂兵部卿~総角

FL42匂兵部卿 光かくれ給ひにし後、・・・
光かくれ給ひにし後、かの御かげに立ち継ぎ給ふべき人、そこらの御末々にありがたかりけり。


*** FL43紅梅~FL44竹河 ***

FL43紅梅 その頃、・・・
その頃、按察使の大納言と聞こゆるは、故致仕の大臣の次郎なり。

FL44竹河 これは、・・・
これは、源氏の御ぞうしにも離れ給へりしのちの大殿わたりにありけるわるごたちの、落ちとまり残れるが、問はず語りしおきたるは、紫のゆかりにも似ざめれど、かの女どもの言ひけるは、「源氏の御すゑずゑに、ひが事どものまじりて聞こゆるは、我よりも年の数つもりほけたる人のひが事にや」などあやしがりける、いづれかはまことならむ。

*** FL45橋姫~FL46椎本 ***

FL45橋姫 そのころ、・・・
そのころ、世にかずまへられ給はぬふる宮おはしけり。

FL46椎本 二月の二十日のほどに、・・・
二月の二十日のほどに、兵部卿の宮、初瀬にまうで給ふ。

*** FL47総角~FL48早蕨 ***

FL47総角 あまた年、・・・
あまた年、耳なれ給ひにし川風も、この秋はいとはしたなくもの悲しくて、御はての事いそがせ給ふ。


[角川ソフィア文庫 第九巻]早蕨~東屋

FL48早蕨 やぶし分かねば、・・・
やぶし分かねば、春の光を見給ふにつけても、「いかでかくながらへにける月日ならむ」と、夢のやうにのみ覚え給ふ。

*** FL49宿木~FL50東屋 ***

FL49宿木 その頃、・・・
その頃、藤壺と聞こゆるは、故左大臣殿の女御になむおはしける。

FL50東屋 筑波山を分け見まほしき御心はありながら、・・・
筑波山を分け見まほしき御心はありながら、端山のしげりまであながちに思ひ入らむも、いと人聞きかろがろしう、かたはらいたかるべき程なれば、思しはばかりて、御消息をだにえ伝へさせ給はず。


[角川ソフィア文庫 第十巻]浮舟~夢浮橋

*** FL51浮舟~FL52蜻蛉 ***

FL51浮舟 宮、・・・
宮、なほかのほのかなりし夕べを思し忘るる世なし。

FL52蜻蛉 かしこには、・・・
かしこには、人々、おはせぬを求めさわげど、かひなし。

*** FL53手習~FL54夢浮橋 ***

FL53手習 その頃、・・・
その頃、横川に、なにがし僧都とかいひて、いと尊き人住みけり。

FL54夢浮橋 山におはして、・・・
山におはして、例せさせ給ふやうに、経仏など供養せさせ給ふ。


*** 「源氏物語」各巻初行 完了 ***


FL31真木柱~FL40御法

2009年07月28日 | 巻順初行

*** FL31真木柱~FL32梅枝 ***

FL31真木柱 内に聞し召さむ事もかしこし。
(源氏)「内に聞し召さむ事もかしこし。

FL32梅枝 御裳着の事思し急ぐ御心おきて、・・・
御裳着の事思し急ぐ御心おきて、世の常ならず。

*** FL33藤裏葉~FL34若菜上 ***

FL33藤裏葉 御急ぎの程にも、・・・
御急ぎの程にも、宰相の中将はながめがちにて、ほれぼれしき心地するを、かつはあやしく、「わが心ながら執念きぞかし。

[角川ソフィア文庫 第六巻]若菜上~若菜下

FL34若菜上 朱雀院の帝、・・・
朱雀院の帝、ありし御幸ののち、そのころほひより、例ならず悩みわたらせ給ふ。

*** FL35若菜下~36柏木 ***

FL35若菜下 ことわりとは思へども、・・・
ことわりとは思へども、うれたくも言へるかな、いでや、なぞかく、異なる事なきあへしらひばかりを慰めにては、いかが過ぐさむ、かかる人づてならで、ひとことをも宣ひ聞ゆる世ありなむや、と思ふにつけて、大方にては惜しくめでたしと思ひ聞ゆる院の御ため、なまゆがむ心や添ひにたらむ。

[角川ソフィア文庫 第六巻]若菜上~若菜下

FL36柏木 衛門の督の君、・・・
衛門の督の君、かくのみ悩みわたり給ふ事なほ怠らで、年もかはりぬ。

*** FL37横笛~38鈴虫 ***

FL37横笛 故権大納言のはかなくうせ給ひにし悲しさを、・・・
故権大納言のはかなくうせ給ひにし悲しさを、あかず口惜しきものに、恋ひ忍び給ふ人多かり。

FL38鈴虫 夏ごろ、・・・
夏ごろ、はちすの花の盛に、入道の姫宮の御持仏どもあらはし給へる、供養ぜさせ給ふ。

*** FL39夕霧~FL40御法 ***

FL39夕霧 まめ人の名をとりて、・・・
まめ人の名をとりて、さかしがり給ふ大将、この一条の宮の御有様を、なほあらまほしと心にとどめて、おほかたの人目には、昔を忘れぬ容易に見せつつ、いとねんごろにとぶらひ聞え給ふ。

FL40御法 紫の上いたうわづらひ給ひし御心地ののち、・・・
紫の上いたうわづらひ給ひし御心地ののち、いとあつしくなり給ひて、そこはかとなく悩みわたり給ふこと久しくなりぬ。


FL19薄雲~FL30藤袴

2009年07月27日 | 巻順初行

[角川ソフィア文庫 第四巻]薄雲~胡蝶
*** FL19薄雲~FL20朝顔 ***

FL19薄雲 冬になりゆくままに、・・・
冬になりゆくままに、川づらの住まひいとど心ぼそさ増さりて、うはの空なるここちのみしつつ明かし暮らすを、君も、(源氏)「なほかくてはえ過ぐさじ。

FL20朝顔 斎院は、・・・
斎院は、御服にており居給ひにきかし。

*** FL21乙女~FL22玉葛 ***

FL21乙女 年かはりて、・・・
年かはりて、宮の御はても過ぎぬれば、世の中色あらたまりて、ころもがへの程なども今めかしきを、まして祭の頃は、大方の空の気色ここちよげなるに、前斎院はつれづれとながめ給ふ。

FL22玉葛 年月隔たりぬれど、・・・
年月隔たりぬれど、あかざりし夕顔を、つゆ忘れ給はず。

*** FL23初音~FL24胡蝶 ***

FL23初音 年たちかへるあしたの空のけしき、・・・
年たちかへるあしたの空のけしき、名残りなく曇らぬうららけさには、数ならぬ垣根のうちだに、雪間の草若やかに色づきはじめ、いつしかとけしきだつ霞に、木の芽もうちけぶり、おのづから人の心ものびらかにぞ見ゆるかし。

FL24胡蝶 三月の二十日あまりの頃あひ、・・・
三月の二十日あまりの頃あひ、春の御前のありさま、常よりことにつくしてにほふ花の色、鳥の声、ほかの里にはまだふりぬにやと、めづらしう見え聞ゆ。


[角川ソフィア文庫 第五巻]蛍~藤裏葉
*** FL25蛍~FL26常夏 ***

FL25蛍 今はかく重々しき程に、・・・
今はかく重々しき程に、よろづのどかに思ししづめたる御有様なれば、頼み聞えさせ給へる人々、さまざまにつけて、皆思ふさまに定まり、ただよはしからで、あらまほしくて過ぐし給ふ。

FL26常夏 いとあつき日、・・・
いとあつき日、東の釣殿に出で給ひて涼み給ふ。

*** FL27篝火~FL28野分 ***

FL27篝火 この頃の世の人の言種に、・・・
この頃の世の人の言種に、「内の大殿の今姫君」と、事に触れつつ言ひ散らすを、大臣聞しめして、(源氏)「ともあれかくもあれ、人見るまじくて篭り居たらむ女子を、なほざりのかごとにても、さばかりに物めかし出でて、かく人に見せ言ひ伝へらるるこそ、心得ぬ事なれ。

FL28野分 中宮の御前に秋の花を植ゑさせ給へること、・・・
中宮の御前に秋の花を植ゑさせ給へること、常の年よりも見所多く、色種をつくして、由ある黒木赤木のませを結ひまぜつつ、同じき花の枝ざし姿、朝夕露の光も世の常ならず玉かと輝きて、造り渡せる野辺の色を見るに、はた春の山も忘られて、涼しう面白く、心もあくがるるやうなり。

*** FL29行幸~FL30藤袴 ***

FL29行幸 かく思し至らぬ事なく、・・・
かく思し至らぬ事なく、「いかでよからむ事は」と思しあつかひ給へど、「この音なしの滝こそ、うたていとほしく、南の上の御おしはかりごとにかなひて、軽々しかるべき御名なれ。

FL30藤袴 尚侍の御宮仕への事を、・・・
尚侍の御宮仕への事を、誰も誰もそそのかし給ふも、「いかならむ、親と思ひ聞ゆる人の御心だに、うちとくまじき世なりければ、ましてさやうの交じらひにつけて、心より外に便なき事もあらば、中宮も女御も、方々につけて心おき給はば、はしたなからむに、わが身はかくはかなき様にて、いづかたにも深く思ひとどめられ奉る程もなく、浅き覚えにて、ただならず思ひ言ひ、いかで人笑へなる様に見聞きなさむ、と、うけひ給ふ人々も多く、とかくにつけて、安からぬ事のみありぬべきを」、物思し知るまじき程にしあらねば、様々に思ほし乱れ、人知れずもの嘆かし。


FL15蓬生~FL16関屋

2008年02月28日 | 巻順初行

FL15蓬生 藻塩たれ…
藻塩たれつつ侘び給ひし頃ほひ、都にも、さまざま思し嘆く人多かりしを、さてもわが御身のより所あるは、ひとかたの思ひこそ苦しげなりしか、二条の上などものどやかに、旅の御すみかをもおぼつかならず聞えかよひ給ひつつ、位を去り給へる狩の御よそひをも、竹のこのよの憂き節を、時々につけてあつかひ聞へ給ふに、なぐさめ給ひけむ、なかなかその数と人にも知られず、立ち別れ給ひし程の御有様をも、よその事に思ひやり給ふ人々の、下の心くだき給ふたぐひ多かり。

FL16関屋 伊予の介…
伊予の介と言ひしは、故院かくれさせ給ひて又の年、常陸になりて下りしかば、かの帚木もいざなはれにけり。


FL13明石~FL14澪標

2008年02月27日 | 巻順初行

FL13明石 なほ雨風…
なほ雨風やまず、かみ鳴り静まらで日頃になりぬ。

FL14澪標 さやかに…
さやかに見え給ひし夢の後は、院の帝の御事を心にかけ聞え給ひて、「いかで、かの沈み給ふらむ罪救ひ奉る事をせむ」と、思し嘆けるを、かく帰り給ひては、その御いそぎし給ふ。


FL11花散里~FL12須磨

2008年02月26日 | 巻順初行

FL11花散里 人知れぬ…
人知れぬ御心づからの物思はしさは、いつとなき事なめれど、かくおほかたの世につけてさへ、わすらはしう思し乱るる事のみまされば、もの心細く、世の中なべていとはしう思しならるるに、さすがなる事多かり。

FL12須磨 世の中い…
世の中いとわづらはしく、はしたなき事のみ増されば、「せめて知らず顔にありへても、これより増さる事もや」と思しなりぬ。


FL09葵~FL10賢木

2008年02月25日 | 巻順初行

FL09葵 世の中変…
世の中変はりて後、よろづ物憂くおぼされ、御身のやむごとなさも添ふにや、軽々しき御しのびありきもつつもつつましうて、ここもかしこも、おぼつかなさの嘆きを重ね給ふ報いにや、なほ我につれなき人の御心を、尽きせずのみおぼし嘆く。

FL10賢木 斎宮の御…
斎宮の御くだり近うなりゆくままに、御息所もの心細く思ほす。


FL05若紫~FL06末摘花

2008年02月23日 | 巻順初行

FL05若紫 わらはや…
わらはやみにわづらひ給ひて、よろづにまじなひ加持などまゐらせ給へど、しるしなくて、
あまたたびおこり給ひければ、ある人、「北山になむ、なにがし寺といふ所に、かしこき行ひ人侍る。

FL06末摘花 思へども…
思へどもなほ飽かざりし夕顔の露におくれしここちを、年月経れど思し忘れず、ここもかし
こも、うちとけぬ限りの、気色ばみ心深き方の御いどましきに、け近くうちとけたりしあはれに似るものなう、恋しく思ほえ給ふ。