巻十六 関屋 03 空蝉
あふさかの 関やいかなる 関なれば
茂きなげきの 中を分くらむ
2008-0112-ysg272
Kad03-159
□今はましていと恥づかしう、よろづの事うひうひしき心地すれど、
めづらしきにや、え忍ばれざりけむ、 (空蝉)「あふ・・・らむ
夢のやうになむ」と聞えたり。□
源氏物語歌集 271
巻十六 関屋 02 源氏
わくらばに 行きあふみちを 頼みしも
なほかひなしや 塩ならぬ海
2008-0111-ysg271
Kad03-159
□佐めしよせて、御消息あり。「今は思し忘れぬべきことを、心は長くもおはするかな」と、
思ひゐたり。(源氏)「一日は契り知られしを、さは思し知りけむや。
わく・・・ぬ海 関守のさも羨ましくめざましかりしかな」とあり。□
源氏物語歌集 270
巻十六 関屋 01 空蝉
行くと来と せきとめがたき 涙をや
絶えぬ清水と 人は見るらむ
2008-0110-ysg270
Kad03-158
□・・・、いとあはれに、思し出づる事多かれど、おほぞうにてかひなし。
女も、人知れず昔のこと忘れねば、とりかへしてものあはれなり。
(空蝉)「行く・・・らむ と知り給はじかし」と思ふに、いとかひなし。□
源氏物語歌集 268
巻十五 蓬生 05 源氏
藤波の うち過ぎがたく 見えつるは
松こそ宿の しるしなりけれ
2008-0108-ysg268
Kad03-153
□・・・、まばゆき御有様なれば、つきづきしう宣ひすべして出で給ひなむとす。
ひき植ゑしならねど、松の木高くなりにける年月の程もあはれに、
夢のやうなる御身の有様も思し続けらる。 (源氏)「藤波・・・けれ□
源氏物語歌集 266
巻十五 蓬生 03 姫
なき人を 恋ふる袂の ひまなきに
荒れたる軒の しづくさへ添ふ
2008-0106-ysg266
Kad03-149
□・・・、さめて、いと名残悲しく思して、漏れ濡れたる庇の端つ方おしのごはせて、
ここかしこの御座引き繕はせなどしつつ、例ならず世づき給ひて、
(姫)「なき・・・添ふ」 も心苦しき程になむありける。□
源氏物語歌集 265
巻十五 蓬生 02 侍従
玉かづら 絶えてもやまじ 行く道の
たむけの神も かけてちかはむ
2008-0105-ysg265
Kad03-147
□(侍従)「ままの遺言はさらにも聞えさせず。年頃の忍び難き世の憂さを過ぐし侍りつるに、
かく覚えぬ道にいざなはれて、はるかにまかりあくがるること」とて、
(侍従)「玉か・・・はむ 命こそ知り侍らね」など言ふに、・・・□
源氏物語歌集 264
巻十五 蓬生 01 姫
たゆまじき 筋を頼みし 玉かづら
思ひのほかに かけ離れぬる
2008-0104-ysg264
Kad03-146
□・・・、わが御髪の落ちたりけるを取り集めてかづらにし給へるが、
九尺よばかりにて、いと清らなるを、をかしげなるを、をかしげなる箱に入れて、
昔の薫衣香のいとかうばしき、一壷具して賜ふ。 (姫)「たゆ・・・ぬる□