僕の家内は招き猫が好き

個人的なエッセイ?

「夢の世界」

2020年07月25日 | Novel
大学生のころ、山手線は僕の寝床だった。

いつまで乗ってもも元に戻る。

大学をさぼりたいとき、
寝不足の時は決まってシートの端に座った。

手すりに身体を預けて目を閉じる。
しばらくすると意識を失い、夢の世界へ。

僕の横には彼女がいる。
微笑みながら僕に話しかける。

「聞こえないよ」
僕は横を向いた。

彼女は困った顔をして、僕を見上げる。
「あのね、私ね・・・」

電車がガタンと揺れた。
僕ははっとして、目を覚ます。

瞼を開けると、
向かいの席に彼女が据わっていた。

微笑む姿が儚く見えた。

僕は席を立つ。
「悲しい夢を見ていたよ。君のいなくなる夢」

列車は夢の世界を、どこまでも走り続ける。
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