僕の家内は招き猫が好き

個人的なエッセイ?

「ひまわり」

2017年07月24日 | 日記
「お上人さん、24日に草刈をします」
そう檀家さんが言ったのは、つい先日のことでした。

草刈に来られるのは、おひとりです。
集合は、午前9時。

私は、前日の夜に、お菓子、冷たいお茶、ポカリスエット・・・などの準備をしました。
これで、準備万端。

草刈り機は、自分のを使われるとのこと。
私は、早めに床につきました。

今日は、曇り空。

草刈り機を車から降ろした檀家さんが、下の畑へと降りていきました。
私は、家に戻りました。

しばらくすると、チャイムが鳴りました。
「草刈り機のエンジンがかからないので、お寺の草刈り機を貸してください」

「いいですよ」
私は、小屋から草刈り機を出しました。

けれど・・・エンジン音がきこえてきません。

心配になって、畑に行くと、悪戦苦闘の檀家さん。

「エンジン・・・かかりませんか?」
私は、スターター・ケーブルをひきました。

響き渡る、エンジン音。
ホッとして、家の中へ・・・。

「僕も、何かしなくていいの?」
申し訳ない・・・ですよね。

軍手をはめて、草取りをしました。
普段、グータラしているもんだから、腰が痛い。

「檀家さん・・・いつまで草刈をするのだろう?」
心の中で、ささやく声がしました。

檀家さんのところへ行くと、お昼のお弁当を広げていました。
「時間は、たっぷりありますからね」

冷や汗の私・・・。
午後も、草刈をするのですね。

私は、カマをもって、草刈を始めました。

境内は、草ぼうぼう・・・。
草だらけの、境内。

これじゃ、お寺に人が来ないわけだ。

でも・・・暑い。
額を流れる、汗。

ダラダラと流れ落ちる、汗。

「・・・まだ、終わらないの?」

「無理をしなくていいですよ」

もうやめましょう・・・という言葉を飲み込んで、私は檀家さんに言いました。

「もう少し・・・」
元気いっぱいの、檀家さんの声。

カマを持つ手が、痛い。
膝も、痛い。

トゲが刺さった、指も痛い。

もうろうとする、意識。
お願いします。もう終わりと、言ってください

私は、本堂に向かって、祈りました。

そんな時、ふと手が止まりました。

「・・・花壇に、ひまわりが育っている」

たくさん巻いた、ひまわりの種。
もう、咲かないと思っていたのに・・・。

流れ落ちる、汗。
まとわりつく、蚊の大群。

そんな喧騒が消えて、一瞬の静寂が訪れました。

「生きていたんだね・・・」

私は丁寧に、周囲の雑草を取り除きました。

もうすぐ、色鮮やかな花が、境内を包みます。

オレンジ色の、花。
空には、虹の橋が架かっている。

「もう、終わりましょうか」

檀家さんの声を遠くに訊きながら、私は薄緑の葉っぱに、そっと触れました。









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