えん罪・布川事件 国賠を求めてたたかう夫の傍で

えん罪を晴らし、普通の一市民に戻った夫。二度と冤罪が繰り返されないようにと、新たな闘いに挑む夫との日々を綴ります・・・。

本当の姿

2006-06-18 | 日記
えん罪の恐ろしさ・・・。
 
 このことは、今だから言える事(syoujiさんが少しづつ克服しつつあると思うから)で、誤解や、必要以上の心配はかけたくないけれど、でも、このことを抜きにしてえん罪は語れないと思うようになったのでここに記すことを許してくださいね。
『Tea time』とは何ぞや?ですね。
重いテーマでゴメンナサイ


 いつも前向きで明るいSyoujiさん、その姿にえん罪の苦しさや暗さなど感じさせない。あまりに明るく、率直で、純粋すぎる・・・。
誰もが、第一印象で驚き、感動してしまう。そこで詩集や歌に触れると「なんて強い人なのだろう」と、心を揺さ振られる。Keikoさんも同じだった。

 だけど、Keikoさんは思ったんだ。
人間、もっと影の部分をもっているはず。自分を曝け出して生きられる、そのこと自体、幸せに思う反面、本当に人間それだけで生きられるのかって。誰だって、他人に触れられずそっとしまっておきたいことを持ちながら生きているのに・・・。
そのことにsyoujiさんは気付けていない。
すべてを曝け出して生きることでしか、身の潔白を信じてもらえないsyoujiさんは、生きるために身に付けてしまった止むを得ずの姿ではなかったのか、と。
この人の姿はどこか悲しい・・・と。

 こんなkeikoさんの疑問にsyoujiさんは明快に答えたんだ。
「俺は、これ以上も、これ以下もない。裏も表もない。このまんま、俺自身だよ!」って・・・。

 ところが、syoujiさんとしては、あまり公にして欲しくないことかもしれないけれど、keikoさんとワタシは、ある晩、突然、syoujiさんが不穏状態になって、
「心と体がバラバラになってしまう!俺、壊れてしまう!」と叫んで「苦しむ姿」を目の当たりにしてしまったんだ・・・。
keikoさんは、初めて目にする光景に驚いて「病院へ連れて行こう、鎮静剤がなければ!・・・」と考えた。
だけど、目の前で、苦しみながらもsyoujiさんは自分自身で必死に闘っていた。
突然の息苦しさから、ガラス戸を開けてベランダから飛び降りたい衝動を必死にこらえ、その苦しみをkeikoさんに訴え、助けを求めた。
ワタシは目の前で起きている二人の姿を見つめ続けることしかできなかったけれど、keikoさんが傍にいたことで、少しづつsyoujiさんは落ち着きを取り戻していったんだ。
「病院へ行く?!」
「うん!・・・いや、待って!大丈夫かもしれない・・・。朝まで、何とか頑張ってみる・・・」

   ・・・・

 発作的な行動、言動、身体に表れる異常・・・
 落ち着いてから、syoujiさん自身が分析した心理状態・・・
 
それは「29年間、無実の罪で投獄されたえん罪者を襲った後遺症」そのものだった。

keikoさんは、syoujiさんのそんな姿を誰にも言えないと思った。
だけど、1人で抱えるにはあまりにも大きな問題だった・・・。
syoujiさん自身、「また、起きたらどうしよう」と怯えていた・・・。

keikoさんはその日、一日中、仕事が手につかなかった。
悩んで、悩んで、たった一人だけ共通の知り合いで一番(水戸では)syoujiさんを理解してくれているはずのTさんに、思い余って相談したんだ。

黙って話を聞いてくれたTさん、少し間をおいて
「よかったね、keikoさん!
 大丈夫!syoujiさんは、辛いとか、苦しいとかそんなのとうに乗り越えてきた人よ。自分ひとりで29年間闘い続けてsyoujiさん自身を縛っていたものが、keikoさんというパートナーを得て、その喜びが本人の意識と離れたところで膨らんで膨らんで膨らみすぎてきたんだわ。何度も、何度も、期待しては裏切られ、そのたびに二度と「期待しない」よう、自分に言い聞かせて生きてきたのがこれまでのsyoujiさんよ。
仮釈放になって、社会での生活も始まって、結婚もし、大好きな佐藤光政さんのコンサートで一緒に歌えることになって、夢や期待がどんどん膨らんでいくのを、きっと体が受け止めきれずに、そんな反応したんだと思う。
きっと、いいことなのよ。
syoujiさんは、これから、大なり、小なりそんな発作のようなもの繰り返しながら、少しづつ「普通の人間」に戻っていくのよ」って
おだやかに言ってくれたんだ・・・。

keikoさん、Tさんの分析に、本当に救われた思いになった。
本当にそうかもしれないって、思った。
そして「29年間の重みとえん罪の恐ろしさ」を改めて認識したんだ・・・。
やっぱり、あの「明るいまんまのsyoujiさん」だけでない姿が現れてきたんだ・・・。

 その後、syoujiさんには、

「金属の腕時計」ができない(手錠を連想させてパニックになる)
「狭いところ」や「人ごみ」は「息苦しさ」でパニックになってしまう。
ゴム長靴、ビニルの手袋、きつい洋服、ベルトなど「締め付けられる感覚」がパニックを惹き起こす。
「うそをついた」「うそをつく」という言葉や、自分が「否定された」と思った時に過剰な反応をしてしまう。
「命令」、「支持」に異常な反発をし、「拘束される」ことにも、大きなストレスを覚えて必死に言葉で反論してしまう・・・。
 
など、「特異体験」が生んだ後遺症を持ち、またフラッシュバックによる不穏状態におそわれたり、と身体にまで苦しみを抱えていることを
keikoさんは、いろんな場で目の当たりにして行くんだ。
理不尽な長い拘束された生活の中で、「自己肯定」の総ては自分自身でしかなかったという現実だった・・・。

 だけど、
 だけど、
仮釈放になって、10年・・・
Tさんがあの時言ってくれたように、syoujiさん、今では、そんな苦しみから少しづつ解放されて、このところ本当に落ち着いて来ている・・・
そう言える様になったと思う。

 だから、syoujiさんとしては、あまり知られたくないことかもしれないけれど、
syoujiさんを表面的に見た人が、その裏にある苦しみにも少しでも気持ちを寄せて欲しいから、あえてワタシの立場で書かせてもらったんだ・・・。

 ワタシがsyoujiさんの胡坐の中で眠る姿に、syoujiさん癒されるんだって。
だって、ワタシ100%信頼しきって身を委ねちゃうんだものね。
お互いに何の疑いもない関係なんだよ。
それが、何よりsyoujiさんが求めているものなんじゃないかな・・・