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脳卒中治療ガイドライン2009 その1

2010-12-08 | その他専門診療科
日本脳卒中学会、日本脳神経外科学会、日本神経学会、日本神経治療学会、日本リハビリテーション学会による合同ガイドライン 
2009年11月30日出版 4600円

脳卒中急性期の呼吸・循環・代謝管理
(1) 呼吸
低酸素血症が明らかでない軽症から中等症の脳卒中患者に対し、ルーチンに酸素投与することが有用であるという科学的根拠はない C2
意識障害の原因の一つが呼吸障害と考えられる急性期脳卒中患者に対しては、気道確保や人工呼吸管理を行うことが望ましい。 C1
(2) 血圧
脳卒中発症直後の高血圧に対する管理は、高血圧性脳症、クモ膜下出血が強く疑われる場合以外は病型診断が確定してから行ってよい。また降圧薬を使用する前に痛み、嘔気、膀胱の充満などによう血圧が上昇しているのではないかを検討すべきである。一方著しい低血圧は輸液、昇圧薬などで速やかに是正すべきである。 C1
脳梗塞急性期では、収縮期血圧>220mmHg又は拡張期血圧>120mmHgの高血圧が持続する場合や、大動脈解離・急性心筋梗塞・心不全・腎不全などを合併している場合に限り、慎重な降圧療法が推奨される。C1
血栓溶解療法を予定する患者では、収縮期血圧>185mmHgまたは拡張期血圧>110mmHg以上の場合に、静脈投与による降圧療法が推奨される。B
(3)栄養
高血糖または低血糖はただちに是正すべきである。B
低栄養例では十分なカロリーやタンパク質などの補給が推奨される。B
(4) 抗脳浮腫療法
高張グリセロール静脈内投与は、脳卒中一般の急性期の死亡を減らすが、治療効果はそれほど大きくなく、長期低予後や機能余語に関する効果は明らかではない。本療法は頭蓋内圧亢進を伴う重篤な脳卒中の急性期に推奨される。B
マンニトールは脳卒中急性期に有効とする明確な根拠はない。C1
副腎皮質ホルモン投与が脳卒中急性期に有効であるという明確な根拠はない。C2

合併症対策
(1) 合併症一般 
脳卒中は一般に呼吸器感染、尿路感染、転倒、皮膚損傷など急性期合併症の頻度が高く、発症前から機能障害のある例、重症脳卒中既往例や、高齢者例に特に合併症が多い。合併症があると死亡率のみならず機能的転帰が悪くなるので積極的に合併症予防と治療に取り組むことが推奨される。B
急性期から理学療法や呼吸リハビリテーションなどを積極的に行うことは、肺炎の発症を少なくするために推奨される。B
(2) 消化管出血
高齢や重症の脳卒中患者では特に消化管出血の合併に注意し、抗潰瘍薬(H2受容体拮抗薬)の予防的投与が推奨される。C1
本邦では現在H2受容体拮抗薬の注射薬のみ保険適応がある。 
(3) 発熱
脳卒中急性期の体温上昇時は解熱薬投与による体温下降が推奨される。C1
脳卒中(特に脳梗塞)急性期の治療的低体温が有効であるという根拠は現段階ではまだない。C1

対症療法
(1) 痙攣
痙攣は急性期の死亡に関連する独立した因子であり、皮質を含む大きな梗塞を有する高齢患者では、数日間の予防的治療をしてもよいC1
14日以上たってから痙攣が起こった例では繰り返す可能性が高く将来症候性てんかんになる可能性があり、継続的な治療が推奨される。C1
(2) 嚥下障害
嚥下障害が疑われる患者ではVFの施行が望ましいがベットサイドでの簡便なスクリーニング検査としては、水のみテストが有用である。B
検査の結果、誤嚥の危険が高いと判断されれば、適切な栄養摂取方法及び予防を考慮することが推奨される。B
(3) 頭痛
脳卒中によって起こる頭痛は多くは短時間で消失するが、頭痛が強いときには非麻酔性鎮痛薬を使用してもよい。C1

Stroke care unit/ stroke unit
クモ膜下出血、ラクナ梗塞、深昏睡、発症前の日常生活動作が不良な場合を除く脳卒中急性期の症例は、専門医療スタッフがモニター監視下で、濃厚な医療と早期からのリハビリテーションを計画的かつ組織的に行う脳卒中専門病棟であるstroke unitで治療をすることにより死亡率の低下、在院期間の短縮、自宅退院率の増加、長期的なADLとQOKの改善を図ることができる. A

脳卒中一般の危険因子の管理
(1) 高血圧症
高血圧患者では降圧療法が推奨される。A
降圧目標として、高齢者は140/90mmHg未満、若年・中年者は130/85mmHg未満、糖尿病や腎障害合併例には130/80mmHg未満が推奨される。A
降圧薬の選択として、Ca拮抗薬、利尿薬、ACE阻害薬、ARBなどが推奨される。A
特に糖尿病、慢性腎臓病、及び発作性心房細動や心不全合併症例、左室肥大が左房拡大が明らかな症例などでは、ACE阻害薬、ARBが推奨される。B
(2) 糖尿病
糖尿病患者では血糖のコントロールが推奨される。C1
2型糖尿病患者では血圧の厳格なコントロールが推奨されるA
2型糖尿病患者ではHMG-CoAの投与による脂質管理が推奨される。A
脂質異常症患者にはLDL-コレステロールをターゲットとしたHMG CoA還元酵素阻害薬の投与が推奨される。A
(4) 心房細動
脳卒中またはTIAの既往があるうっ血性心不全、高血圧、75歳以上、糖尿病のいずれかの危険因子を2つ以上合併した非弁膜症性心房細動患者にはワーファリンが強く推奨される。A
上記危険因子を一つ合併したNVAF患者にもワーファリンが推奨される。B。
上記危険因子のない60歳未満のNVAF患者にはアスピリン(81-330mg/日)及びワーファリンが有効であるとの十分なエビデンスはない。C1
ワーファリンが禁忌のNVAF患者には、抗血小板薬を投与してもよいB
ワーファリン療法の強度は、一般的にはPT-INR2.0-3.0が推奨されるが、高齢(70歳以上)のNVAF患者では、1.6-2.6に留めることが推奨される。B
(5) 喫煙
喫煙は、脳梗塞、クモ膜下出血の危険因子であり、喫煙者には禁煙が推奨される。A
受動喫煙も脳卒中の危険因子になりうるので、受動喫煙を回避する必要がある。C1
喫煙者には喫煙教育、ニコチン置換療法、経口禁煙薬が推奨される。B
(6) 飲酒
脳卒中予防のためには、大量の飲酒を避けるべきである。A


脳卒中ハイリスク群の管理
(1) 睡眠時無呼吸症候群
睡眠時無呼吸症候群は、独立して、あるいは数々の脳卒中危険因子に関連して脳卒中発症リスクを高めている可能性がある。個々の病態に応じたSASの治療は血圧を低下させる効果があるが、脳卒中予防効果についてはまだ十分なエビデンスがない。C1
(2)メタボリックシンドローム
メタボリックシンボロームは脳梗塞の危険因子であり、適切な体重までの減量と運動・食事による生活習慣の改善を基本とし、各コンポーネントに対して必要に応じて薬物療法を行うことが推奨される。B
(3)慢性腎臓病
慢性腎臓病は脳卒中の予知因子であり、生活習慣(禁煙、減塩、肥満の改善、節酒)の改善と血圧の管理が推奨される。A
血圧の管理目標は130/80mmHg未満であり、緩徐に降圧することを原則とする。 
2型糖尿病を有する場合は、CKDの進行抑制に厳格な血糖コントロールが重要であるが、A, それによる脳卒中発症予防効果は明らかではない。C1
降圧薬としてはACE阻害薬やARBが推奨される。B

脳梗塞急性期
1.1血栓溶解療法(静脈内投与)
遺伝子組換えプラスミノゲンアクチベーターの静脈内投与は発症から3時間以内に治療可能な虚血性脳血管障害で 慎重に判断された患者に対して強く推奨される。A。我が国ではアルテプラーゼ0.6mg/kgの静注療法が保険適応されており、治療決定のための除外項目、慎重投与項目が定められている。また、日本脳卒中学会によりrt- PA静注療法実施施設要件が提案、推奨されている。 
現時点において、アルテプラーゼ以外のt- PA, desmoteplase(本邦未承認)の静脈内投与は十分な科学的根拠がなく、推奨されていない。 C2
低用量(60000単位/日)ウロキナーゼの点滴静脈内投与は、急性期(5日以内)の脳血栓患者の治療法として行うことを考慮しても良いが、十分な科学的根拠はない。C1
1.2血栓溶解療法(動脈内投与)
神経脱落症候を有する中大脳動脈塞栓性閉塞にいては、来院時の症候が中等症以下で、CT上梗塞巣を認めないか軽微な梗塞にとどまり、発症から6時間以内に治療開始が可能な症例に対して、経動脈的な選択的局所血栓溶解療法が推奨される。B。ただし、発症後3時間以内に薬剤投与が可能な患者に対しては、rt- PA静注療法が第一選択となっていることに留意する。 
その他の部位の塞栓性閉塞やその他の条件で急性期局所血栓溶解療法(経動脈性)を行うことには、十分な科学的根拠はない。C1
1.3 急性期抗凝固療法
発症48時間以内で病変最大径が1.5cmを超すような脳梗塞(心原性脳塞栓症を除く)には、選択的トロンビン阻害薬のアルガトロバンが推奨される。B
発症48時間以内の脳梗塞ではヘパリンを使用することを考慮しても良いが、十分な科学的根拠はない。C1
脳梗塞急性期に低分子ヘパリン(保険適応外)、ヘパリノイド(保険適応外)は使用することを考慮しても良いが、十分な科学的根拠はない。C1
1.4急性期抗血小板療法
オザグレルナトリウム160mg/日の点滴投与は、急性期(5日以内)の脳血栓症(心原生脳塞栓症を除く脳梗塞)患者の治療法として推奨される。B
アスピリン160-300mg/日の経口投与は、発症早期(48時間以内)の脳梗塞患者の治療法として推奨される。A
1.5脳保護薬
脳保護作用が期待されるエダラボンは脳梗塞(血栓症・塞栓症)患者の治療法として推奨される。(B)
1.6脳浮腫管理 
高張グリセロール(10%)静脈内投与は、心原生脳塞栓症、アテローム血栓性梗塞のような頭蓋内圧亢進を伴う大きな脳梗塞の急性期に推奨されている。B
投与量は年齢、重症度にもよるが10-12mg/kgを数回に分けて与える
マンニトール20%は脳梗塞の急性期に使用することを考慮して良いが、十分な科学的根拠はない。C1
1.7血液希釈療法
血漿増量薬を用いた血液希釈療法は、脳梗塞急性期の治療として行うことを考慮しても良いが、十分な科学的根拠はないC1
体外循環を用いた血液希釈療法は、脳梗塞急性期の治療として行うことを考慮してもよいが、十分な科学的根拠はない。C1
1.8フィリブリノゲン低下療法
Ancord(本邦未承認)の検討が行われているが、臨床に応用できる段階ではない。 
1.9ステロイド療法
副腎皮質ホルモンは、脳梗塞急性期に有効とする明確な科学的根拠がなく勧められない。C2
1.10低体温療法
低体温療法、脳梗塞急性期の治療法として行うことを考慮しても良いが、十分な科学的根拠はない。C1
解熱薬を用いた平温療法は脳梗塞急性期の治療法として行うことを考慮してもよいが、十分な科学的根拠はないC1
1.11高圧酸素療法
脳梗塞急性期患者に対する高圧酸素療法は、十分な科学的根拠はない。C1
1.12深部静脈血栓症及び脳塞栓への対策 
下肢の麻痺がある急性期虚血性脳血管障害患者では、深部静脈血栓症及び肺塞栓症の予防にヘパリンあるいは低分子ヘパリンの皮下注療法が推奨される。しかし、頭蓋内外の出血のリスクがあるため、急性期虚血性脳卒中患者に対してルーチンに使用することは推奨できない。C1
アスピリンは、急性期虚血性脳卒中患者における脳塞栓症予防に推奨できない。またデキストランは深部静脈血栓症の予防効果は証明されていない。C2。段階的弾性ストッキング及び簡潔的空気圧迫法が深部静脈血栓症予防に有効との十分な科学的根拠はまだない。C1
1.13開頭外減圧療法
中大脳動脈灌流域を含む一側大脳半球梗塞において、下記(18-60歳、NIHSS 15以上、1aが1以上、CTにおいて前大脳動脈もしくは後大脳動脈領域の脳梗塞の有無は問わないが、中大脳動脈領域の脳梗塞が少なくとも50%以上あるか、DWIにて脳梗塞の範囲が145cm3以上ある症例、発症後48時間以内)の適応を満たせば発症48時間以内に硬膜形成を伴う外減圧術を推奨される。A
小脳梗塞においては、意識が清明でかつ、CT所見でも水頭症や脳幹部への圧迫所見がない症例では保存的治療が推奨される. C1。これに対してCT所見上水頭症を認め、水頭症による昏迷など中等度の意識障害ある症例に愛して脳室ドレナージが推奨されるが十分な科学的根拠はない。C1.CT所見上、脳幹部圧迫を認め、これにより昏睡など重度の意識障害をきたしている症例に対しては減圧開頭術が推奨されるが、これもその効果に対する十分な科学的根拠はない。C1
1.14緊急頸動脈内膜剥離術
脳梗塞旧跡に頸動脈内膜剥離術を行うことは、十分な科学的根拠はない。C1
1.15急性期頸部頸動脈血行再建術
脳梗塞急性期に急性期頸部頸動脈血行再建術を行うことは、十分な科学的根拠はない。C1
1.16 その他の急性期再開通療法
急性期局所溶解療法以外の血管形成術などその他の手技による局所再開通療法を行うことは、十分な科学的根拠はない。C1

2.1 脳動脈解離
脳動脈解離による脳梗塞では、血管狭窄の程度や動脈瘤形成など個々の症例に応じて治療法を選択する。C1
2.2大動脈解離 
大動脈解離を合併する脳梗塞ではアルテプラーゼ静注療法は禁忌である。D
2.3脳静脈・静脈洞血栓症
血栓症による脳静脈閉塞症で脳梗塞を生じた場合では積極的な抗凝固療法(APTT値が約2倍程度になるようヘパリン量を調整し、約2週間のヘパリン持続静注後、経口内服に切り替える)が推奨される。 
脳静脈閉塞症急性期に出血性梗塞をきたしても、発症数日以内に明らかな出血の拡大傾向がなければ、抗凝固療法を考慮しても良い。しかしその投与は 慎重を要する。C1

3.TIAの急性期治療と脳梗塞発症防止 
TIAを疑えば、可及的速やかに発症機序を確定し、脳梗塞発症予防のための治療をただちに開始しなくてはならない。A
TIAの急性期(発症48時間以内)の再発防止には、アスピリン160-300mg/日の投与が推奨される。A
非心原性TIAの脳梗塞発症予防には抗血小板療法が推奨され、本邦で使用可能なものはアスピリン75-150mg/日、クロピドクレル75mg/日(A),シロスタゾール200mg/日、チクロピジン200mg/日(B)である。必要時に応じて降圧薬(ACE阻害薬など)、スタチンの投与も推奨される。 
非弁膜症性心房細動を中心とする心原生TIAの発症防止には第一選択薬はワルファリンによる抗凝固療法(目標INR:70歳未満では2.0-3.0, 70歳以上では1.6-2.6)である。(前者グレードA,後者グレードB)
狭窄率70%以上の頸動脈病変によるTIAに対しては、頸動脈内膜剥離術(CEA)が推奨される。(A).狭窄率50-69%の場合は、年齢、性、症候などを勘案しCEAを考慮する(B)。狭窄率50%未満の場合は、積極的にCEAを勧める科学的根拠に乏しい(C1)。CEA適応症例ではあるが、心臓疾患合併、高齢などCEAハイリスクの場合は、適切な術者による頸動脈ステント留置術(CAS)を行ってもよい(B) 
TIA及び脳卒中発症予防に、禁煙(A),適切な体重維持と運動の励行が推奨される。(C1)
。飲酒は適量であればよい(C1)

4.1脳梗塞再発予防(抗血小板療法、無症候性脳梗塞を除く)
(1)高血圧症
脳梗塞の再発予防では、降圧療法が推奨される。目標とする血圧レベルは少なくとも140/90mmHg未満である。 A
(2)糖尿病
脳梗塞の再発予防に血糖コントロールが推奨される。C1
インスリン抵抗性改善薬のピオグリタゾンによる糖尿病の治療は、脳梗塞の再発予防に有効である。B
(3)脂質異常症
脳梗塞の再発予防に脂質異常症のコントロールが推奨される。(C1)
高用量のスタチン系薬剤は脳梗塞の再発予防に有効である。(B)
低用量スタチン系薬剤で脂質異常症の治療中の患者において、EPA製剤の併用が脳卒中再発予防に有効である。(B)
(4)飲酒・喫煙
適量を超える飲酒は脳梗塞の発症を増加させるが、小量飲酒は脳梗塞の発症率を低下させる。A しかし少量飲酒が再発率を低下させるか否かは十分な科学的根拠がないC1
禁煙は脳梗塞発症率を低下させるが(A)、再発率を低下させるか否かに関しては十分なデータは存在しない。(C1)
(5)メタボリックシンドローム・肥満 
内蔵肥満を背景としたメタボリックシンドロームは脳梗塞の危険因子であるが、その管理が再発予防においても有効か否かは十分な科学的根拠がない。(C1)
(6)心房細動
弁膜症を伴わない心房細動をもつ脳梗塞患者の再発予防にワルファリンが有効であり、一般にINR2.0-3.0の範囲でコントロールすることが推奨される。A
70歳以上のNVAFのある脳梗塞または一過性脳虚血患者では、やや低用量(INR1.6-2.6)が推奨され(B)、出血性合併症を防ぐためにINR2.6を超えないことが推奨される。(B)
(7)ヘマトクリット高値
ヘマトリクット高値に対して治療を行うことを考慮しても良いが、再発予防を目的としてヘマトクリット低下療法を勧めるだけの十分な科学的根拠がない。C1
(8)フィブリノゲン高値
フィブリノゲン高値に対して治療を行うことを考慮しても良いが、再発予防を目的としてヘマトクリット低下療法を勧めるだけの十分な科学的根拠がない。C1
(9)抗リン脂質抗体症候群 
抗リン脂質抗体陽性者の脳梗塞の再発予防に第一選択としてワルファリンが使用されるが、十分な科学的根拠はないC1
抗リン脂質抗体陽性者の脳梗塞の再発予防においてSLE合併例では副腎皮質ステロイドが推奨される。C1
(10)ホモシステイン血症
高ホモシステイン血症には、葉酸を使用することを考慮しても良いが、それが脳梗塞再発予防に有効か否かには十分な科学的根拠はないC1
(11)先天性血栓性素因
先天性血栓性素因に対する脳梗塞の再発予防では、INR2.0-3.0のワルファリン療法を行うことを考慮しても良いが、十分な科学的根拠はない。C1
4.2再発予防のための抗血小板療法
(1)非心原性脳梗塞
非心原性脳梗塞の再発予防には、抗血小板薬の投与が推奨される。A
現段階で非心原性脳梗塞の再発予防上、最も有効な抗血小板療法はアスピリン75-150mg、クロピドグレル75mg/日(A), シロスタゾール200mg /日、チクロピジン200mg/日(B)である。
非心原性脳梗塞のうち、ラクナ梗塞の再発予防にも抗血小板薬の使用が勧められる。B。ただし、十分な血圧コントロールを行う必要がある。
(2) 心原性脳塞栓症
心原性脳塞栓症の再発予防は通常抗血小板薬ではなく、抗凝固薬ワルファリンが第一選択薬である。A。ワルファリン禁忌の例にのみアスピリンなどの抗血小板薬を投与する。B
4.3再発予防のための抗凝固療法
弁膜症を伴わない心房細動のある脳梗塞またはTIA患者の再発予防では、ワルファリンが第一選択であり、INRを2.0-3.0に維持することが推奨される。A。70歳以上のNVAFのある脳梗塞またはTIA患者では、INR1.6-2.6が推奨される。B。出血性合併症はINR2.6を超えると急増する。B
リウマチ性心臓病、拡張型心筋症などの器質的心疾患を有する症例にはINR2.0-3.0が推奨される。A
機械人工弁を持つ患者では、INR2.0-3.0以下にならないようコントロールすることが推奨されている。A 
ワルファリン治療開始の時期に関しては、脳梗塞発症後2週間以内が一つの目安となる。しかし大梗塞例や血圧コントロール不良例、出血傾向例など、投与開始を遅らせざるを得ない場合もある。C1
ワルファリン禁忌例にはアスピリンが適応となるが、ワルファリンと比べてその効果は明らかに劣る。B
出血時の対処が容易な処置・小手術(抜歯など)の施行時は、ワルファリンの内服続行が望ましい。消化管内視鏡検査・治療施行時はワルファリンを3-4日間休薬する。血栓・塞栓のリスクが低い症例における4-5日以内のワルファリン休薬では、ヘパリン投与などの橋渡し治療は通常行わない。血栓症や塞栓症のリスクが高い例では、脱水回避のための輸液、ヘパリン投与(橋渡し)などを症例に応じて考慮する。C1
4.4脳代謝改善薬、脳循環改善薬
従来、脳梗塞後遺症の軽減に頻用された脳循環代謝改善薬は、再評価により適応薬剤が大幅に減少し、また適応症も一部変更となった。したがって、患者の症候から適応を十分に考えて脳循環・代謝改善薬は使用する必要がある。B
4.5抗うつ薬
脳卒中後うつ状態に対して、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)を含む抗うつ薬の投与が推奨される。 A
4.6嚥下性肺炎の予防 
VF検査あるいは水のみテストで誤嚥の危険が高いと判断された場合、適切な食物摂取法及び予防法を考慮することが推奨される。B。嚥下障害による誤嚥性肺炎の予防にACE阻害薬(保険適応外)、シロスタゾール(保険適応外)の投与を考慮してもよい。(C1)
4.7頸動脈内膜剥離術
症候性頸動脈高度狭窄(>70%、NASCET法)では、抗血小板療法を含む最良の内科的治療に加えて、手術及び周術期管理に熟練した術者と施設において頸動脈内膜剥離術を行うことが推奨される。A
症候性頸動脈中等度狭窄では、抗血小板療法を含む最良の内科的治療に加えて、手術および周術期管理に熟達した術者と施設において頸動脈内膜剥離術を行うことが推奨される。B
無症候性頸動脈高度狭窄では、抗血小板療法を含む最良の内科的治療に加えて、手術及び周術期管理に熟達した術者と施設において頸動脈内膜剥離術を行うことが推奨される。B 
症候性頸動脈軽度狭窄あるいは無症候性中等度ないし軽度狭窄において、頸動脈プラークの不安定化や潰瘍形成が認められる場合は、頸動脈内膜剥離術を行うことは考慮しても良いが、それを行うことに十分な科学的根拠がない。C1
4.8頸動脈ステント留置術 
内頸動脈狭窄症において、頸動脈内膜剥離術の危険因子(心臓疾患、重篤な呼吸器疾患、対側頸動脈閉塞、対側喉頭 神経麻痺、頸部直達手術、または頸部放射線治療の既往、CEA再狭窄例、80歳以上)を持つ症例に対し、頸動脈ステント留置術を行うことが推奨される。B
内頸動脈狭窄症において、頸動脈内膜剥離術の危険因子を持たない症例においては、頸動脈ステント留置術を行うことを考慮しても良いが、十分な科学的根拠はない。C1
4.9慢性期経皮的血管形成術/ステント留置術(頸部頸動脈以外)
頸部頸動脈以外の頭蓋外及び頭蓋内動脈狭窄症に対して、血管形成術/ステント留置術を行うには、十分な科学的根拠はない。C1
4.10脳梗塞、TIA再発予防の面から、症候性内頸動脈及び中大脳動脈閉塞、狭窄症を対象とし、周術期合併症がない熟達した術者により施行される場合は、以下の適応を満たした症例に限り、EC-IC bypass術を考慮して良い。B



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