少し古いですが、500件以上引用されいるDLST(海外ではlymphocyte transformation test: LTTと呼ぶことが多い)のレビューです。
測定原理は論文本文にも書いてありますが、マルホ皮膚科セミナーのまとめがとても分かりやすいので、こちらを参照ください。
http://medical.radionikkei.jp/maruho_hifuka_pdf/maruho_hifuka-100311.pdf
The lymphocyte transformation test in the diagnosis of drug hypersensitivity
Allergy 2004: 59: 809–820
著者:WJ Pichler
【結果の解釈】
・活性化した細胞が元々あり、自然増殖が惹起された状態だとSIが高くなりづらい。
なお、薬剤で活性化された後で1000cpm以下の場合、信頼性は低い
例:元々2000cpm→薬剤投与で4000cpmはSI 2だが、400→1200cpmのSI 3より有意。
・薬剤濃度によってSIの値が変わることがある(一つの濃度だけSIが陽性になることがある)ため、複数の薬剤濃度でSIを計測する。
・薬剤自体がリンパ球増殖を促進することがあるため、薬剤ごとにSIの陽性基準を変えても良い
例:βラクタム、バンコマイシン、パラセタモール、造影剤は暴露や感作がない人でもSI 2-4になることあり
Table 1
βラクタム 陰性 SI<3, 陽性 SI>3
造影剤 陽性 SI>4
その他 陰性 SI<2, 疑診例 SI 2-3, 陽性 SI>3(特に一つ以上の濃度で陽性の場合)
【治療が結果に与える影響】
・免疫抑制剤は増殖を抑える可能性がある
・プレドニゾロン 0.2 mg/kg以下の場合のみ検査する
・リンパ球減少がなければ、メソトレキセートやアザチオプリンは影響少ないため、LTT可能
【再現性】
・同じ薬剤であれば、ロットが異なっていても結果の再現性あり
・凍結保存検体を用いて、後日検査しても結果の再現性あり(Table 3 患者A)
・同じ患者から異なるタイミングで、新鮮検体を採取して検査しても再現性あり(Table3 患者B)
【検査のタイミング】
・βラクタムやカルバマゼピンでは10-20年経過しても陽性になることはあるが、3-4年で反応が減弱することもある
・どのような患者で反応が減弱するか、また持続するかは不明
→反応から2-3年以内の検査を推奨
・リンパ球が強く活性化されているため、急性期には検査行わない
→症状が落ち着いてから(4-8週後)検査する
※maculo‐papular type of drug eruptions、SjS、TENは1週間以内、DISH/DRESSは5-8週間で陽性率高いという報告も.
(Allergy 2007;62:1439-44.)
【検査の感度】
・感度・特異度の解析でよく用いられる基準:
a) 薬剤特異的なT細胞を、血液やパッチテストの部位から検出する
b) 異なる検査の結果の相関を見て、感作を証明する(in vitroとin vivoなど)
c) 薬剤過敏反応の可能性が非常に高い病歴 かつ
d) 偶発的または故意に、薬剤に再暴露した患者を集める(再暴露試験)
・以下は著者の検討
Definite case(再暴露で陽性、病歴で明らかな場合)を基準とすると、LTTの感度は74%。
再暴露で陽性となった場合だけを基準とすると、LTTの感度は62%
その他、Highly probable→47%, Not probable→33%、Negative→15%で陽性(Table 4)
※後に行った前向き検討では、感度67%(14/21)
特異度は85%だった(Table4)。
※偽陽性と判断された人は、ほぼ全員がNSAIDsを使用しており、皮膚反応があった。この皮膚反応はアレルギー以外の機序による副作用と判断されたが、中には真のNSAIDsアレルギーが含まれている可能性 がある。実際、他の研究や後日著者が行った研究では、非常に特異度が高かった(1/93, 1%で偽陽性)。
・病型によって陽性率は異なる(Table 5)
◎Frequently positive (>50%)
Generalized maculopapular exanthema
Bullous exanthema
acute generalized exathematous pustulost (AGEP)
DHS/drug hypersensitivity syndrome with eosinophilia and systemic
symptoms (DRESS)
アナフィラキシー (generalized, severe symptoms)
◎Occasionally positive
肝炎 (薬剤の種類による)
腎炎 (薬剤の種類による)
蕁麻疹、血管浮腫
間質性肺疾患
膵炎
◎Rarely positive (<10%)
Toxic epidermal necrolysis (TEN)
血管炎
Macular exanthema (without T-cell infiltration)
Guillain-BarrH*
Blood dyscrasia-like idiopathic thrombocytopenic purpura (ITP),
溶血性貧血
Fixed drug eruption
※報告によって異なる。
【LTTに適した薬剤】(Table 6)
抗菌薬- βラクタム、キノロン、マクロライド、スルフォンアミド、テトラサイクリンなど
抗けいれん薬- フェニトイン、カルバマゼピン、ラモトリギンなど
ACE阻害剤 – エナラプリルなど
抗結核薬- イソニアジド、リファンピシン
利尿薬- ヒドロクロロチアジド、フロセミド、インダパミドなど
NSAID – ジクロフェナク、セレコキシブ、アセトアミノフェン、mefenaminic acidなど
ピラゾロン(スルピリン) – propyphenazone, metamizol
局所麻酔- リドカイン、メピバカインなど
HMG-CoA還元酵素阻害薬 – acrivastatin
モルヒネ由来 – ペチジン、コデインなど
造影剤- イオパミロ、イオヘキソール
筋弛緩剤- スキサメトニウムなど
ビタミン類- ビタミン12、葉酸など
接触抗原- p-phenylendiamine, nickelsulfate, etc.
その他- アロプリノール、ドンペリドン、hydroxymethylcelluloseなど
※アセトアミノフェンはなぜかNSAIDsのカテゴリーに入れられていました。
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