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腰椎椎間板診療ガイドライン

2011-04-06 | その他専門診療科
日本整形外科学会診療ガイドライン委員会 
腰椎椎間板ヘルニアガイドライン策定委員会により編集

2005年に出版され2600円であったが現在はMindsにより無料公開されている。 

1 有病率、性差、好発年齢、好発高位は
【Grade C】
腰椎椎間板ヘルニアは一般的な疾患であるが、有病率について詳細は十分明らかにはされていない。人口の約1%が罹患し、手術患者は人口10万人当たり年間46.3人という報告がある。男女比は約2~3:1、好発年齢は20~40歳代、好発高位はL4/5、L5/S1間である。

2 腰椎椎間板ヘルニアの発生に影響を及ぼす要因は何か
【Grade B】
従来から報告されているように、環境因子は椎間板ヘルニア発生の要因である。具体的には労働や喫煙は要因の1つとして挙げることができる。
【Grade C】
スポーツに関しては、今のところ明らかな関係は認められず、ヘルニアの発生を誘発するとも抑制するともいえない。
【Grade B】
近年遺伝的要因の関与が指摘されており、特に若年者のヘルニアではその傾向が強い。しかし、環境要因と遺伝的要因の双方がどの程度椎間板ヘルニアの発生に影響を及ぼしているか、その詳細は十分明らかにされているとはいえない。

3 自然消退する椎間板ヘルニアの画像上の特徴は
【Grade B】
椎間板ヘルニアは自然縮小するものがある。ヘルニアのサイズが大きいものや、遊離脱出したもの、MRIでリング状に造影されるものは高率に自然縮小する。逆にヘルニアのサイズが小さいものでは低率である。

4 ヘルニアの脱出形態の違いにより縮小・消失傾向に差があるか
【Grade C】
突出型に比べ脱出型ヘルニアのほうがより縮小・消失傾向が強い。

5 椎間板ヘルニアはどのくらいの割合で自然消退するか
【Grade I】
ヘルニア形態による差に関する研究はあるが、質の高いコホート研究は今のところ認められず、その割合を述べることはできない。

6 椎間板ヘルニアはどのくらいの期間で自然縮小するのか
【Grade I】
種々の報告はあるが、詳細を明らかにしたものはない。これを明らかにするためには、年齢や性別、ヘルニアの形態などを一致させて検討する必要があるが、現状では研究デザインが不十分であり、時期は特定しがたい。

1 高齢者における椎間板ヘルニアは青壮年と相違があるか
【Grade C】
高齢者の椎間板ヘルニアでは青壮年者に比較して、SLRテストの陽性率が低い。ヘルニアのタイプは脱出型の頻度が多く、組織学的には青壮年と比較して、線維輪や椎体終板の断片を含むことが多い

2 若年性椎間板ヘルニアは青壮年と相違があるか
【Grade C】
若年者の椎間板ヘルニアではSLRテストが強陽性を示す傾向があり、組織学的には椎間板ヘルニアに椎体骨端核の離解を伴った症例がしばしば認められる。また若年性椎間板ヘルニアの発症には椎間関節の非対称性が関与する可能性がある。

3 下肢痛は椎間板ヘルニアに必発の症状であるか
【Grade C】
腰痛のみで下肢痛を認めない椎間板ヘルニア症例が存在する。
坐骨神経痛は膨隆型に比べて脱出型椎間板ヘルニアにより強く認められ、発現機序としては圧迫より炎症との関連が考えられている。

4 ヘルニアの大きさは症状の程度に関連するか
【Grade C】
椎間板ヘルニアが大きいものほど下肢痛が強くなり、神経症状は重症となる傾向はあるが、統計学的に有意とはいえない

1 診断に必要な問診や病歴は
【Grade B】
問診や病歴単独で、腰椎椎間板ヘルニアを確診することはむずかしい。しかし、的確な問診を行うことにより、ヘルニアを疑うことや、ヘルニア高位の推定を行うことは高い確率で可能である。腰椎椎間板ヘルニアの診断に際して、問診や病歴を採取することはきわめて重要である。

2 診断における特徴的な所見(理学所見および神経学的所見)は何か
【Grade B】
SLRテスト陽性は、ヘルニア診断に有用な所見である。神経学的所見としてヘルニアに特異的なものはない。

3 単純X線写真によるヘルニアの診断は可能か
【Grade C】
単純X線写真で腰椎椎間板ヘルニアの描出は不可能である。椎間板高の減少とヘルニア椎間の関係はない。

4 脊髄造影は、腰椎椎間板ヘルニアの診断に必要か
【Grade B】
脊髄造影は、腰椎椎間板ヘルニアの診断には必ずしも必要な検査でない。MRIやCTを使用すれば、省略可能な場合がある。

5 椎間板造影は、腰椎椎間板ヘルニアの診断に必要

【Grade C】
椎間板造影が、腰椎椎間板ヘルニアの診断に必要な検査であることを支持する科学的根拠はない。しかし、ヘルニアの形態、特にヘルニアが後縦靱帯を穿破しているか否かの判定、および外側型椎間板ヘルニアの診断には、椎間板造影後CT(CTD)が有用である

6 MRIの診断的価値はどの程度か
【Grade B】
MRIは、腰椎椎間板ヘルニアの診断に最も優れた検査法である。しかし、MRI上、無症候性のヘルニアが存在するのでその解釈にはなお注意を要する。

7 腰椎椎間板ヘルニアと診断された患者において、障害神経根の同定のために、神経根造影・ブロックは必要か
【Grade C】
腰椎椎間板ヘルニアの診断において、神経根造影は必須の検査法ではない。しかし、神経根ブロックと併用した場合、障害神経根の同定には有用な検査法である。

8 腰椎椎間板ヘルニアと診断された患者において、障害神経根の同定のために、電気生理学的検査は必要か? もし、必要であればいかなる症例か
【Grade B】
電気生理学的検査はヘルニアの診断のためには、必ずしも必要な検査ではない。しかし、障害神経根の同定や、術後の神経機能の評価には有用な検査法である。

1 腰椎椎間板ヘルニアに対する硬膜外副腎皮質ステロイド薬注入療法は有効か
【Grade A】
坐骨神経痛を有する腰椎椎間板ヘルニアに対する硬膜外副腎皮質ステロイド薬の注入療法は保存療法の1つの選択肢として、治療開始後早期での疼痛軽減に効果がある。

2 腰椎椎間板ヘルニアの治療にspinal manipulation は有効か
【Grade I】
spinal manipulationが有効か否かを判定するための腰椎椎間板ヘルニアに焦点をあてた十分な科学的根拠を示した研究はない

3 腰椎椎間板ヘルニアの治療において非副腎皮質ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は有効か
【Grade I】
腰痛に対する非副腎皮質ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の有効性は報告されている。また、腰椎椎間板ヘルニア症例を含む腰痛症例に対するNSAIDsと筋緊張弛緩薬の併用による有効性は示されているが、腰椎椎間板ヘルニアに対するNSAIDs単独による治療効果について十分に示した研究はない。

4 腰椎椎間板ヘルニアに対する牽引療法は有効か
【Grade I】
腰痛に対する牽引療法が有効であるとする報告はあるが、腰椎椎間板ヘルニア症例に限定すると、牽引療法単独による治療効果について十分に示した研究はない。画像と臨床所見から腰椎椎間板ヘルニアと明らかに診断された症例に対して、腰椎牽引療法のみを行うprospective studyがその有効性検討のうえで必要である。

5 腰椎椎間板ヘルニア手術における顕微鏡視下椎間板ヘルニア摘出術と通常のヘルニア摘出術の間に術後結果に関して有意差が存在するか
【Grade B】
術後における画像、臨床上の結果に関しては両群間には有意差はない。
【Grade C】
顕微鏡視下椎間板ヘルニア摘出術は術野が明るく鮮明で、止血が容易であり、黄色靱帯温存型手技が可能なことなど肯定的な報告が多く、否定的な見解はみられない。

6 腰椎椎間板ヘルニアに対する経皮的椎間板摘出術は顕微鏡視下椎間板ヘルニア摘出術よりも優れた術式か
【Grade B】
経皮的椎間板摘出術の有効例が多くの報告から70%前後であること、顕微鏡視下椎間板ヘルニア摘出術の適応例すべてに適応できないことを考慮すると、顕微鏡視下椎間板ヘルニア摘出術よりも総合的に優れた術式とはいえない。

7 腰椎椎間板ヘルニアに対するレーザー椎間板蒸散法は経皮的椎間板摘出術に比べ安全で優れた術式か
【Grade I】
レーザー椎間板蒸散法による報告では、経皮的椎間板摘出術と同程度の臨床結果が示されているが、隣接組織への副作用、合併症が多く、また健康保険適用外である点から、経皮的椎間板摘出術より優れた術式とはいえない。

8 腰椎椎間板ヘルニアにおける馬尾障害では緊急手術が必要か
【Grade A】
腰椎椎間板ヘルニアに伴う馬尾症候群では、できるだけ早期に手術を行うことが必要である。

9 若年者腰椎椎間板ヘルニアに対しては手術適応はあるか
【Grade B】
椎間板切除術の長期成績は良好であり、保存療法に抵抗する症例ではヘルニア摘出術の適応としてよい。

10 腰椎椎間板ヘルニア後方摘出術における遊離脂肪移植術は瘢痕形成予防や術後臨床症状に関係するか
【Grade A】
遊離脂肪移植術による術後臨床症状に対する影響は認められない。
【Grade I】
硬膜周囲の瘢痕形成抑制作用について一定の結論は得られていない。

11 腰椎椎間板ヘルニア摘出術で術中の硬膜外への副腎皮質ステロイド薬投与は術後経過に影響を及ぼすか
【Grade B】
手術終了直前の硬膜外腔への副腎皮質ステロイド薬注入は術後の機能回復や術後数ヵ月時の疼痛など臨床結果に対する影響は明らかでない。
【Grade C】
術直後の疼痛抑制にはある程度の効果が期待できる。

12 腰椎椎間板ヘルニア摘出術における閉創前の硬膜外へのモルヒネの投与は有効か
【Grade B】
閉創前の硬膜外腔へのモルヒネ投与は、術後鎮痛に効果がある。

1 腰椎椎間板ヘルニア患者のなかでどの程度の患者が手術に至るか
【Grade C】
強い症状を呈するか病状が長期に及ぶ腰椎椎間板ヘルニア患者群において、手術に至るのは10~30%程度である。

2 保存療法と手術療法による予後の差はあるか
【Grade B】
保存療法と手術療法を比較すると、臨床症状に関しては手術療法のほうが長期的にも良好な成績を示す。
【Grade B】
復職率に関しては保存療法と手術療法間には差が認められない。

3 手術術式間に予後の差はあるか
【Grade A】
術式による治療成績は通常のヘルニア摘出術と顕微鏡下ヘルニア摘出術は同等である。
【Grade A】
chemonucleolysis(わが国未承認)はこれら手術療法よりも劣り、さらに経皮的髄核摘出術はchemonucleolysisよりも劣っている。

4 術前の病状のなかで予後を予測できる要因は何か
【Grade B】
男性、画像の明瞭な異常所見、罹病期間の短さ、心理状態が正常であること、術前の休職期間が短いこと、労災関連ではないことなどが手術成績を向上させる要因となる。
【Grade B】
疼痛や日常生活動作と再就労では関連する要因が異なる

5 手術後の後療法の内容により予後が変わるか
【Grade A】
腰椎椎間板ヘルニアの初回手術後に活動性を低下させる必要性はないものの、手術直後からの積極的なリハビリテーションプログラムの必要性も認められない。
【Grade A】
術後1ヵ月経過した頃から開始されるリハビリテーションプログラムは、数ヵ月間は機能状態を改善させ、再就労を早くするという強い証拠があるが、1年経過時においては全般改善度において軽い運動と比較し差は認められない。
【Grade B】
職場での医療アドバイザーによる介入は就職率の向上に有効である。

6 再手術率と再発率はどの程度か
【Grade C】
通常のヘルニア摘出術後の再手術率は経過観察期間が長くなればなるほど高くなるが、10年を超えると一定の傾向を認めない。
【Grade C】
同一椎間での再手術例を再発ヘルニアとすると、通常のヘルニア摘出術では術後5年間程度は再発率が経年的に増加する傾向があるものの、5年以降は一定の傾向を認めない。
【Grade C】
顕微鏡下ヘルニア摘出術では短期的には再手術率、再発率共に経年的に増加する傾向が認められる。
【Grade B】
経皮的髄核摘出術やchemonucleolysis(わが国未承認)の再手術率や再発率にはばらつきが大きいが、通常の手術に比べ高頻度で、特に再手術率が高い。
【Grade C】
再手術の成績には一定の傾向を認めない。

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