感染症内科への道標

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世界各国のピロリ菌罹患率

2018-06-27 | 臓器別感染症:消化器系
【目的】ピロリ菌の報告された地域や国ごとの有病率、年齢や性別の違いを調べる
【方法】2000年1月1日から2017年6月31日までのPubMedとScopusに収録されたすべての英文刊行物を、キーワードの組み合わせを使用して検索した。
【結果】検索により14 056の文献がヒットした。除外基準を適用したところ、183の文献が残った。これらの文献では、 6大陸73カ国の410 879人の参加者を分析しており、ピロリ菌は全世界で44.3%(95%CI:40.9-47.7)の罹患率であった。途上国では50.8%(95%CI:46.8-54.7)であり、先進国では34.7%(95%CI:30.2-39.3)であった。男性で46.3%(95%CI:42.1-50.5)であったのに対し、女性の感染率は42.7%(95%CI:39-46.5)であった。成人の罹患率(18歳以上)は小児(48.6%[95%CI:43.8-53.5] vs 32.6%[95%CI:28.4-36.8])より有意に高かった。 2000〜2009年の期間と比較して、2009〜2016年の有病率では統計的に有意差は認めないものの、減少していた。
【結論】国ごとの有病率の違いは、経済的および社会的条件によるものと思われる。ピロリ菌の感染は、ある国の社会経済的健康状態のベンチマークとなりうる。小児期から成人期までのH.pylori感染の自然経過を調査するためのさらなる研究が望まれる。
【得られる知識】
ヘリコバクターピロリは、ヒトの胃にコロニーを形成し、慢性胃炎、消化性潰瘍、胃腺癌および粘膜関連リンパ組織リンパ腫に関与するグラム陰性菌として知られる。世界人口の約半数がこの病原体に感染していると推定されている。報告されている感染率は、地域によって異なり、先進国よりも発展途上国での罹患率が高いとされる。ヨーロッパ人のH. pylori感染率は20%〜40%。アメリカでは、3歳以上の罹患率は25.4%。日本では、1950年以前に生まれた人の90%近くが罹患していたが、その後は減少傾向で2000年代以降の出生者では2%。一方、東部地中海地域では、H. pylori感染率が最大80%と報告されている。
 この文献中では、図で、世界中のH.pylori感染の分布を示されている。 ラテンアメリカおよびカリブ海地域では、感染率が世界で最も高かった(59.3%、95%CI:52.9-65.6)。一方、最も低い感染率は北米だった(25.8%、95%CI:20.7-36.3 )国ごとにみると、ナイジェリア(89.7%、95%CI:86.6-92.8)が最も高く、イエメン(0-10歳で8.9%、95%CI:6.6-11.2)が最も低い。
先進国(34.7%、95%CI:30.2-39.3)と比較して、発展途上国(50.8%、95%CI:46.8-54.7)は罹患率が高かった。
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