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2005年に策定されており、多少時期が経ているが、各領域毎に簡潔にまとめられており分かりやすい。若干エビデンスレベルは低いものが散見(4年が経過しているためか)されるが全体的に質が高く、高齢者の薬物療法の基幹となりうる本である。
高齢者の薬物動態
1) 腎臓における排泄能の低下
2) 肝臓における取り込み率の高い薬物の代謝クリアランスの低下
3) 体内水分量の低下と脂肪組織の増加により親水性薬剤の分布容積は減量、疎水性の分布容積は上昇する
4) 小腸における薬物吸収は加齢による影響を受けない。
1) 後期高齢者に避けるべき薬物リストの記載
Beersリストより継承。
精神疾患
・ 投薬開始量は健康成人の1/2-1/3が適当
・ SSRI:突然の中止はさけ(セロトニン症候群)、できれば半減してから中止
・ SNRI(トレドミン、テトラミド):排尿障害のある患者では禁忌。
・ リスペリドン(ドーパミン受容体に対する阻害作用+セロトニン受容体に対する阻害作用):開始用量は0.5mg,2mg以上で錐体外路症状、起立性低血圧、転倒、鎮静が目立つ。錐体外路症状の出現はハロペリドールと比較し少ない。1mgを超える使用は控える。
・ チアプリド(グラマリール):抗ドーパミン薬。老年のせん妄の初期に対して用いる。少量から開始。改善がない場合には非定型精神病薬を用いる。チアプリド以外は全て保険適用外である。漫然と使用しない事。
・ ジプレキサ、セロクエル(ドーパミン受容体に対する阻害作用+セロトニン受容体に対する阻害作用):糖尿病患者では禁忌
・ ペンゾジアゼピン系薬剤:高齢者に対して抗コリン作用(便秘、尿閉、緑内障の悪化、認知機能障害、せん妄)がおこる事がある。
・ タンドスピロン(セディール):セロトニン受容体作動性の抗不安薬。筋弛緩作用や鎮静作用がベンゾジアゼピン系に比して軽微であり、高齢者に対して比較的安全に使用できる。
・ ハルシオン(トリアゾラム):1991年のLancet報告で服用時の健忘や遅延再生の障害が指摘。
・ ゾルピデム(マイスリー)、ゾピクロン(アモバン):ベンゾジアゼピン受容体のω1受容体に選択性が高く、ω2受容体には反応しない。筋弛緩作用が弱い。
・ ヒドロキシジン(アタラックスP):ベンゾジアゼピン系無効性で効果の報告あり。
呼吸器疾患
・ リン酸コデインを処方する場合はあらかじめ緩下剤を併用するか、鎮咳剤の量を最小限にする事が望ましい。
・ PL顆粒では前立腺肥大患者の場合には稀に尿閉をきたすことがある。
循環器領域
・ 高齢者ではジギタリス中毒がおきやすい。治療域の加減を目安とする。
消化器疾患
・ H2ブロッカー:骨髄抑制作用がおこりやすい。
・ PPI:日本人ではCYP2C19の遺伝多型により日本人20%では血中濃度が上がりやすい。
・ ブチルスコポラミン:高齢者に投与すると副作用は必発である。重篤な心疾患、緑内症、高度の前立腺肥大患者では禁忌。口渇、排尿障害、便秘を事前に説明する。
・ マグネシウム:薬物吸収阻害、腎機能低下による貯留に注意・
・ 刺激性下剤(プルゼニド、アローゼン、ラキソベロン):長期使用により耐性化、増量を必要とする。短期使用を原則とする。
感染症
・ 肺炎球菌ワクチン(ニューモバックス):5年間持続。接種部位の発赤・腫張・疼痛はインフルエンザワクチンと同様に10-20%の症例で認められる。
・ リファンピシン:副腎皮質ホルモン投与患者、ワルファリン投与患者で薬物代謝酵素の誘導により無効化する。
・ ビタミンK欠乏:腸内細胞ソウが抑制されてビタミンK欠乏をきたしやすい。
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