日本公演直後、昭和41('66)年にリリースされたアルバムです。
前作“RUBBER SOUL”でのアレンジや歌詞などの新しい試みを、さらに押し進めた形で曲作りがされています。特に、楽器の選択のみならず、当時のスタジオ機材を駆使した実験的な音作りは、その後の彼らの進むべき道を決定付けたようです。
ヴォーカルは電気的に変えられ、逆回転のギター、テープ・ループ、多重録音、オーバードライヴさせたギター、ブラス・セクションや弦楽八重奏の起用など、それまでに見られない多彩な味付けが見事に施されています。
曲作りではHarrisonによる‘Taxman’‘Love You To’‘I Want To Tell You’という全く異なるスタイルの楽曲が3曲も採り上げられました。
LennonとMcCartneyの曲想もはっきりと別れてきて、各ソングライターの個性が出て来たのもこの時期です。恋愛ソングはほとんどありません。
ジャケットのコラージュとイラストは、彼らの旧友であるKlaus Voormanによるものです。単なるアイドル・グループではなくなった彼らを、明確に印象付ける傑作でしょう。
アルバム・タイトルが一瞬、どちらから読んでも“REVOLVER”と読めそうな気がするのは、私の錯覚です(^^ゞ McCartneyが日本公演の警備についていた日本の警察官の拳銃を見て思いついたそうです。
●Taxman
不気味なカウントで始まる、アルバムを象徴しているような楽曲です。作者はHarrisonですが、一部の詞作をLennonが手伝っているそうです。
間奏とエンディングのギターソロはMcCartneyによるものです。テープを編集して同じテイクが繰り返し使われています。
ベースもMcCartneyで、多重録音のテクニックが駆使されています。このベースのフレーズは、後のポピュラー音楽に多大な影響を及ぼしました。このアルバムの中では‘And Your Bird Can Sing’でも聴かれます。
ミドルの‘If you drive a car, I'll tax the street’の部分の韻を踏んだバカらしい内容が最高に皮肉的!
メロディにHarrisonの癖であるシンコペーションが強く出ています。
●Eleanor Rigby
何とも暗い内容がアルバムの2曲目とは思えません。しかも、この楽曲はシングルカットされました。McCartneyはこの楽曲でグラミーのヴォーカル賞を受賞しています。
ギター・バンドとしてヒット曲を作ってきた彼らが、演奏は全く外部の弦楽八重奏団に委ね、ヴォーカルに専念していることに驚きです。こんなアプローチに、当時のファンは戸惑ったことでしょうネ。
ほとんどマイナーの1コードで押し通されていますが、それにもかかわらずメロディアスなのに驚きます。
オリジナルのミックスではメインは右チャンネルに振り切られていますが、“YELLOW SUBMARINE SONGTRACK”ではヴォーカルが中央に定位していて聴きやすかったです(^^ゞ
●I'm Only Sleeping
3曲連続でマイナー調! 何とも暗い幕開けのアルバムです。ここでやっとLennonの楽曲が登場ですが、これまでのアルバムでは考えられません。
気だるい詞が気だるいヴォーカルで歌われていきます‥‥。逆回転のギターは悲しげで、しかし温かみのある音を添えていますが、目新しい音であるだけでなく、曲調によくフィットした選択だと思います。
●Love You To
哲学的なんだかよくわからない歌詞です。Harrison以外は全て外部のミュージシャンを起用して、本気でインド音楽に取り組んだ最初の楽曲です。
こんな歌が飛び出してきたら、当時のファンは絶対に戸惑うって!
この歌のメロディにもシンコペーションが強く出ています。
●Here There And Everywhere
やっと明るいポップソングが登場したと思ったら、これが珠玉の名曲! オープニングの‘To lead a better life, I need my love to be here’と、エンディングの‘I will be there and everywhere, Here, there and everywhere’が他とは異なるメロディなのに驚きです。
サビの転調が自然に流れ、楽曲を上手く盛り上げています。
メロディはこの上なく美しいのですが、アレンジは手抜きのような気がします^^;
●Yellow Submarine
ここでいきなりの童謡‥‥。しかも‘Eleanor Rigby’との両A面のシングルになりました。当時のファンは絶対について行けなかったと思います。私が当時のファンだったら、この歌で見切りをつけたかも‥‥(^^ゞ しかし実際には、最初にこの歌に接してからBeatlesを知った私は、何の抵抗もありませんでしたが。
2コーラス目の‘And the band begins to play’の後にブラスバンドが演奏するアレンジとは、何だかニヤニヤしてしまいます(^o^)
3コーラス目のRingoのヴォーカルを追いかけるヴォーカルはLennonです^^; ハジケきっています‥‥。
●She Said She Said
エピフォンのラウドなギターに乗って、不条理な歌がスタート!
Lennonが奔放に作ると、自然とこんな変則拍子の歌になってしまうそうです。
●Good Day Sunshine
ブルーノートを含んだメロディが、なぜか爽やかに聞こえる不思議な楽曲です。
ドラムスを多重録音する手法は、後に発展していきます。
●And Your Bird Can Sing
歪んだエピフォンのギターの、ツイン・リードが炸裂!
ベースは‘Taxman’に似たフレーズで構成されていますが、こちらの方が4拍目の裏にも八分音符が演奏され、よりメロディアスです。ところどころにある四分音符の流れるようなラインも心地よいです。
このアルバムの中でLennonが書いた唯一のポップナンバーは、歌詞が不可解です‥‥^^;
●For No One
打楽器はタンバリンのみ。またまた思い切ったアレンジで聴かせてくれます。この辺りのアレンジの感触は“WHITE ALBUM”に近いと思います。
ホルンの音色が歌詞の内容を引き立てて切ないです。
●Doctor Robert
歌詞は薬物に関するものです。‘Well well well, you're feeling fine’なんてアブネー!!
メロディはあまり練られていないようですが、歌詞の皮肉っぽさは本気です。お手軽にアレンジされたようですが、なかなかギターの和音の構成や、サビの前やエンディングのリードギターは凝っています。
●I Want To Tell You
Harrisonの3曲目はラーガ・ロックです。イントロの不思議な味わいが私は大好きです。サビの後の激しいドラムスもキャッチーです。
私はこの歌からの最後の3曲の流れが、このアルバムの中でもっともお気に入りです。
●Got To Get You Into My Life
ブラスの決めのフレーズは嫌いですが、メロディや躍動感が好きな歌です。
この歌の間奏のギター・ソロもそうですが、この時期はエピフォンのカジノが大活躍しています。
エンディングのMcCartneyのシャウトとブラスに痺れます。かなりMotownの音が意識されていますが、完全に黒っぽくならないところがBeatlesらしいです。
●Tomorrow Never Knows
そして最後はこのアルバム最大の問題作。セッションがこの歌のレコーディングからスタートしたというのに驚きです。
ずっと同じ音を弾き続けるベース、そして同じフレーズを叩き続けるドラムス。こんなアイディアがどこから出てくるのでしょう‥‥。エンディングに突如として現れる激しくも美しいピアノ、間奏の逆回転ギターのソロ以外には、楽器の演奏はありません。全てテープ・ループの「音」で構成されています。デタラメのようでいて、しっかり和音を構成しているループを使っているところが、非凡なるミュージシャン集団であるBeatlesならではでしょう。
同時期のセッションで‘Paperback Writer / Rain’のシングル曲もレコーディングされました。
●Paperback Writer
「作家志望の男」を題材に曲を仕上げるところがMcCartneyらしい曲作りです。
ベースの音色にかなり神経を使ってミキシングされ、カッティングの段階でも前例の無いレベルだったそうです。そのため、針飛びが心配されたそうです。
Ringoのドラムスもドライヴ感たっぷりで、Beatlesの楽曲の中では‘Magical Mystery Tour’と並ぶ、ツッコミ加減の素晴らしい演奏です。
武道館公演での、マイクスタンドが動いてしまうのに合わせて体を捻って歌っていたMcCartneyの姿が印象的でした。
●Rain
イギリス盤アルバムには収録されず、コレクター泣かせの楽曲でした。
曲名から私は勝手に静かな曲のイメージを持っていて、イントロの激しいギターやドラムスに驚きました(^^ゞ
2回のサビでは、それぞれベースが異なるフレーズを演奏するなど、McCartneyが多くのアイディアを意欲的に持ち込んでいた時期であることがわかります。
Ringoのドラミングは、ノリがいいのかどうかわからない不思議なフィル・インを叩いています。
アウトロでは‘If the rain comes, they run and hide their heads’の部分のLennonの逆回転ヴォーカルが聴けますが、このアイディアはMartinのものだそうです。メンバーが食事に行っている間にMartinがヴォーカルのトラックを上手くはめ込み、戻って来たLennonがこれを聴いて驚嘆して感激したそうです。
裏ジャケットの全員サングラスをかけたモノクロ写真が、やはり「もはやアイドルではない」という雰囲気を感じさせます。
Ringoがあまりカッコよくない‥‥。
前作“RUBBER SOUL”でのアレンジや歌詞などの新しい試みを、さらに押し進めた形で曲作りがされています。特に、楽器の選択のみならず、当時のスタジオ機材を駆使した実験的な音作りは、その後の彼らの進むべき道を決定付けたようです。
ヴォーカルは電気的に変えられ、逆回転のギター、テープ・ループ、多重録音、オーバードライヴさせたギター、ブラス・セクションや弦楽八重奏の起用など、それまでに見られない多彩な味付けが見事に施されています。
曲作りではHarrisonによる‘Taxman’‘Love You To’‘I Want To Tell You’という全く異なるスタイルの楽曲が3曲も採り上げられました。
LennonとMcCartneyの曲想もはっきりと別れてきて、各ソングライターの個性が出て来たのもこの時期です。恋愛ソングはほとんどありません。
ジャケットのコラージュとイラストは、彼らの旧友であるKlaus Voormanによるものです。単なるアイドル・グループではなくなった彼らを、明確に印象付ける傑作でしょう。
アルバム・タイトルが一瞬、どちらから読んでも“REVOLVER”と読めそうな気がするのは、私の錯覚です(^^ゞ McCartneyが日本公演の警備についていた日本の警察官の拳銃を見て思いついたそうです。
●Taxman
不気味なカウントで始まる、アルバムを象徴しているような楽曲です。作者はHarrisonですが、一部の詞作をLennonが手伝っているそうです。
間奏とエンディングのギターソロはMcCartneyによるものです。テープを編集して同じテイクが繰り返し使われています。
ベースもMcCartneyで、多重録音のテクニックが駆使されています。このベースのフレーズは、後のポピュラー音楽に多大な影響を及ぼしました。このアルバムの中では‘And Your Bird Can Sing’でも聴かれます。
ミドルの‘If you drive a car, I'll tax the street’の部分の韻を踏んだバカらしい内容が最高に皮肉的!
メロディにHarrisonの癖であるシンコペーションが強く出ています。
●Eleanor Rigby
何とも暗い内容がアルバムの2曲目とは思えません。しかも、この楽曲はシングルカットされました。McCartneyはこの楽曲でグラミーのヴォーカル賞を受賞しています。
ギター・バンドとしてヒット曲を作ってきた彼らが、演奏は全く外部の弦楽八重奏団に委ね、ヴォーカルに専念していることに驚きです。こんなアプローチに、当時のファンは戸惑ったことでしょうネ。
ほとんどマイナーの1コードで押し通されていますが、それにもかかわらずメロディアスなのに驚きます。
オリジナルのミックスではメインは右チャンネルに振り切られていますが、“YELLOW SUBMARINE SONGTRACK”ではヴォーカルが中央に定位していて聴きやすかったです(^^ゞ
●I'm Only Sleeping
3曲連続でマイナー調! 何とも暗い幕開けのアルバムです。ここでやっとLennonの楽曲が登場ですが、これまでのアルバムでは考えられません。
気だるい詞が気だるいヴォーカルで歌われていきます‥‥。逆回転のギターは悲しげで、しかし温かみのある音を添えていますが、目新しい音であるだけでなく、曲調によくフィットした選択だと思います。
●Love You To
哲学的なんだかよくわからない歌詞です。Harrison以外は全て外部のミュージシャンを起用して、本気でインド音楽に取り組んだ最初の楽曲です。
こんな歌が飛び出してきたら、当時のファンは絶対に戸惑うって!
この歌のメロディにもシンコペーションが強く出ています。
●Here There And Everywhere
やっと明るいポップソングが登場したと思ったら、これが珠玉の名曲! オープニングの‘To lead a better life, I need my love to be here’と、エンディングの‘I will be there and everywhere, Here, there and everywhere’が他とは異なるメロディなのに驚きです。
サビの転調が自然に流れ、楽曲を上手く盛り上げています。
メロディはこの上なく美しいのですが、アレンジは手抜きのような気がします^^;
●Yellow Submarine
ここでいきなりの童謡‥‥。しかも‘Eleanor Rigby’との両A面のシングルになりました。当時のファンは絶対について行けなかったと思います。私が当時のファンだったら、この歌で見切りをつけたかも‥‥(^^ゞ しかし実際には、最初にこの歌に接してからBeatlesを知った私は、何の抵抗もありませんでしたが。
2コーラス目の‘And the band begins to play’の後にブラスバンドが演奏するアレンジとは、何だかニヤニヤしてしまいます(^o^)
3コーラス目のRingoのヴォーカルを追いかけるヴォーカルはLennonです^^; ハジケきっています‥‥。
●She Said She Said
エピフォンのラウドなギターに乗って、不条理な歌がスタート!
Lennonが奔放に作ると、自然とこんな変則拍子の歌になってしまうそうです。
●Good Day Sunshine
ブルーノートを含んだメロディが、なぜか爽やかに聞こえる不思議な楽曲です。
ドラムスを多重録音する手法は、後に発展していきます。
●And Your Bird Can Sing
歪んだエピフォンのギターの、ツイン・リードが炸裂!
ベースは‘Taxman’に似たフレーズで構成されていますが、こちらの方が4拍目の裏にも八分音符が演奏され、よりメロディアスです。ところどころにある四分音符の流れるようなラインも心地よいです。
このアルバムの中でLennonが書いた唯一のポップナンバーは、歌詞が不可解です‥‥^^;
●For No One
打楽器はタンバリンのみ。またまた思い切ったアレンジで聴かせてくれます。この辺りのアレンジの感触は“WHITE ALBUM”に近いと思います。
ホルンの音色が歌詞の内容を引き立てて切ないです。
●Doctor Robert
歌詞は薬物に関するものです。‘Well well well, you're feeling fine’なんてアブネー!!
メロディはあまり練られていないようですが、歌詞の皮肉っぽさは本気です。お手軽にアレンジされたようですが、なかなかギターの和音の構成や、サビの前やエンディングのリードギターは凝っています。
●I Want To Tell You
Harrisonの3曲目はラーガ・ロックです。イントロの不思議な味わいが私は大好きです。サビの後の激しいドラムスもキャッチーです。
私はこの歌からの最後の3曲の流れが、このアルバムの中でもっともお気に入りです。
●Got To Get You Into My Life
ブラスの決めのフレーズは嫌いですが、メロディや躍動感が好きな歌です。
この歌の間奏のギター・ソロもそうですが、この時期はエピフォンのカジノが大活躍しています。
エンディングのMcCartneyのシャウトとブラスに痺れます。かなりMotownの音が意識されていますが、完全に黒っぽくならないところがBeatlesらしいです。
●Tomorrow Never Knows
そして最後はこのアルバム最大の問題作。セッションがこの歌のレコーディングからスタートしたというのに驚きです。
ずっと同じ音を弾き続けるベース、そして同じフレーズを叩き続けるドラムス。こんなアイディアがどこから出てくるのでしょう‥‥。エンディングに突如として現れる激しくも美しいピアノ、間奏の逆回転ギターのソロ以外には、楽器の演奏はありません。全てテープ・ループの「音」で構成されています。デタラメのようでいて、しっかり和音を構成しているループを使っているところが、非凡なるミュージシャン集団であるBeatlesならではでしょう。
同時期のセッションで‘Paperback Writer / Rain’のシングル曲もレコーディングされました。
●Paperback Writer
「作家志望の男」を題材に曲を仕上げるところがMcCartneyらしい曲作りです。
ベースの音色にかなり神経を使ってミキシングされ、カッティングの段階でも前例の無いレベルだったそうです。そのため、針飛びが心配されたそうです。
Ringoのドラムスもドライヴ感たっぷりで、Beatlesの楽曲の中では‘Magical Mystery Tour’と並ぶ、ツッコミ加減の素晴らしい演奏です。
武道館公演での、マイクスタンドが動いてしまうのに合わせて体を捻って歌っていたMcCartneyの姿が印象的でした。
●Rain
イギリス盤アルバムには収録されず、コレクター泣かせの楽曲でした。
曲名から私は勝手に静かな曲のイメージを持っていて、イントロの激しいギターやドラムスに驚きました(^^ゞ
2回のサビでは、それぞれベースが異なるフレーズを演奏するなど、McCartneyが多くのアイディアを意欲的に持ち込んでいた時期であることがわかります。
Ringoのドラミングは、ノリがいいのかどうかわからない不思議なフィル・インを叩いています。
アウトロでは‘If the rain comes, they run and hide their heads’の部分のLennonの逆回転ヴォーカルが聴けますが、このアイディアはMartinのものだそうです。メンバーが食事に行っている間にMartinがヴォーカルのトラックを上手くはめ込み、戻って来たLennonがこれを聴いて驚嘆して感激したそうです。
裏ジャケットの全員サングラスをかけたモノクロ写真が、やはり「もはやアイドルではない」という雰囲気を感じさせます。
Ringoがあまりカッコよくない‥‥。