例の都条例改正案についてあっちこっちの記事とか議事録とか読んでみました。まあ、言いたい
ことはわかるって感じですが、やはり賛成できませんねえ。
私は、基本的に、個人の思想・思考・信条・趣味・嗜好・認識などについて、国家その他の公権力
が積極的に干渉することはなるべくしないにこしたことはない、と思います。また、表現の自由に
ついても同様です。
まあ、絶対にそうだとは思いません。そのひとつの判断基準は、「コントロールできるか」と
「それを使うと社会に損害が出るか」という点につきると思います。消費者レベルで、あるいは
民間レベルでコントロールできるもの、またそれを使った場合に被害が出るということが定量的
にわかっていないものに対しては国家は極力介在するべきでないし、消費者レベルや民間レベル
でコントロールができないもの、またそれを使った場合に被害が出るということが定量的にわかっ
ているものは規制するのはやむを得ないと思います。
たとえば、大量破壊兵器なんかは、一介の消費者に管理を任せると、制御しきれずにターゲット
以外に破壊をもたらす可能性が大きいし、社会に甚大な被害をもたらす可能性が大きいです。
この種のものは被害が即効的だし明確だし深刻なので、個人や民間企業に取扱いを任せるべき
ではないでしょう。
麻薬なんかも、消費者側で使用を制御することが難しく、また使うことによって社会的な被害が
出ることが明白です。だから国家によって規制するのはやむを得ないでしょう。
問題は、制御しきれないとは言い切れないもの、社会にもたらす被害が定量的に計れないものに
対して公権力が規制する場合です。今回の都条例改正案はまさにこれです。私は、「18歳未満
の性行為の露骨な描写が盛り込まれた漫画やアニメ」が流通による管理・制御が不可能な状況に
陥って日常に氾濫しまくっているとは思いませんし、またそれが社会に定量的に計れるような
損害をもたらしているようには思えません。これを規制することで社会がどのような利益を被る
のかもわかりません。
都は「統計的なデータがないから犯罪との因果関係がないとは言い切れません」とか「科学的証明を
欠いていても規制することは違法ではありません」とか言ってるみたいですが、こういう思想
自体、政治的・社会的コントロールが難しくなる可能性が大きく危険であり、社会に甚大な被害を
もたらした歴史がありますので、こういう思想自体を禁止事項にすべきじゃないかとすら思い
ます。規制するのは、客観的・定量的なデータと、説得力のあるロジックをもってよく考え議論
してなおそうすべきだと社会が結論を出した場合にのみ行うべきでしょう。
それと、規制対象についても問題です。なんかどの資料を読んでも、具体的・客観的な定義をして
いません。「露骨な性交・性交類似行為」って何でしょうか。「類似」なんていったらもう何でも
アリです。「18歳未満の人間が女性のチクビを吸う」なんて行為はアウトでしょうか。そしたら
「授乳」なんて完全アウトですね。子供同士がキスするとかダメてしょうか。『ロミオとジュリ
エット』なんか規制対象ですね。あれ確か13歳とかでしょ? ロリコン文化とかいうのが存在する
ことがおかしいとか、何を根拠に言ってるんでしょう。古代ギリシア哲学当時の世界なんか美少年
ショタ文化だし、源氏物語なんかだってロリコン的描写出てきますね。規制しますか?
要は、「架空もダメ」だとか「類似行為」とかワイルドカード的表現を規制対象の文言に入れる
と、のちのち公権力のコントロールができなくなる危険が大きいということです。そのほうが
社会に対する損害があるように私は思います。
まあそんなことで、私が「ああそうかぁ。それじゃ規制してもしょうがないなあ」と感心する
ような意見は全然見あたりません。どうもこの条例の推進派はまあ総じて頭悪いなあ、という
印象です。私は今から30年ぐらい前は規制賛成派だったんですが、現在は規制すべきでない派
ですね。ていうか推進派は、相手を説得もできないような頭悪い理由しか持ってこられないくせに
これだけ危険な規制を進めようとするってのは頭悪い癖に傲慢でいかんですね。「議論が足り
ない」って、足りないのはおまいらの知能だ! って感じです。