このところ興味を引く記事はいろいろあるんですが、ちょっとこれが気になりました。
アニメ製作者が、アニメの違法アップロード&ニワンゴに問題提起
http://blog.livedoor.jp/dqnplus/archives/1047553.html
>「偽まる」こと川瀬浩平(GENEON)、「UPLIFT」こと伊平崇耶
>(Showgate)、アニメプロデューサーの里見哲朗の3名が、
>ネットラジオでアニメの違法アップロードに言及。
>(略)
>「youtubeはおもしろい。自分の作った創作物をみんなに見てもらう、そういう場としては良いと思う。
> ただ、俺達が作った物をお前が上げる権利はどこにも無い、っていう(笑)」
>
>「タダで見れる環境に満足してる人たちがいる。」
>「人が汗かいて作った物に対して、お金を払わなくなっちゃった。」
これは大変難しい問題だと思います。私自身、コピーレフト的な考え方をもってはいますが、同時にコストをかけてソフトウェアやコンテンツを制作した人は十分な対価を受け取るべきだとも考えています。DVDで売り出されたパッケージをそのままアップロードされたらなるほど死活問題でしょうねえ。
よく言われる意見ですが、動画アップロードサーバに上げられたために宣伝効果を生み、結果として売れたコンテンツもあるでしょう。ハルヒとか。また、音楽の話ですが、Winnyでダウンロードして満足してしまう人は、アップロードされたものを視聴しようとしまいと結局パッケージは買わないという調査もあります。
>http://www.mainichi-msn.co.jp/it/coverstory/news/20050307org00m300062000c.html
(毎日新聞2005/03/07;リンク切れ)
>
>モバイル社会研:Winnyで売り上げ下がらず? 研究成果発表
> 活発な議論が行われたモバイル社会研究所のシンポ
>
> 急速に普及している携帯電話が社会にどのような影響を及ぼすか
>調査するためNTTドコモが「モバイル社会研究所」を設置してから
>まもなく1年となる。研究所では5日に、この1年の成果を社会に還元
>するためのシンポジウムを東京で開催した。著作権侵害として問題に
>なっているファイル共有ソフト「Winny」がCDの売り上げ減少には
>つながらない、衣服ごしでも非接触式ICカードの情報が盗み取られて
>しまうなど、貴重な研究成果が報告された。【柴沼 均】
>
>■■WinnyでCDの売り上げは下がらない?
>
> 田中辰雄慶応大学経済部助教授は「著作権の最適保護水準を求めて」
>との研究成果を発表。WinnyがCDの売り上げの相関関係を計量経済学的に
>分析したところ、売り上げ減少につながっていないとの結果がでた。
>
> 調査はオリコン売り上げ上位30枚のアルバムとWinnyのダウンロード数
>をプロット。CDの売り上げが増えるほど、ダウンロード数も増えると
>いう関係がわかった。これはダウンロードで売り上げが増えるわけで
>なく、人気があるからダウンロードが増えると推定される。
>
> このため、ダウンロード数が売り上げに及ぼす効果を操作変数法を
>使って分離した。ダウンロード数の係数が有意に負になっていれば、
>CD売り上げ減少になっているが、推定値は0.879であり、両者の関係は
>見出せなかったという。
>
> また、学生500人にアンケート調査を行い、1年に買うCD枚数を調査
>したところ、Winnyを使用前と使用後でも購入枚数に差がなかった。
>田中助教授は、「オリジナルがほしい人はコピーの有無にかかわらず
>購入し、コピーを利用する人はコピーを禁止されても購入するわけでは
>ない。両者の需要が違うため、影響はないのではないか」と分析した。
(後略)
たしかに、私もユーチューブとかでたまにTVシリーズの動画を観たりしますが、観なくてもたぶんDVDは買いません。やたら高いし。でも買うべきものは買います。押井守作品とか。
ただ、「宣伝になっている」というのは、たまたまそういう一例があるというだけで、全称的に一般化して論じていいとは言えないようにも思えます。また、音楽におけるWinny利用(悪用?)のダウンロードと販売傾向とに相関関係が認められないという説は、そのまま動画配信サーバとDVDとの相関関係に結びつけていいのか、という疑問が大きいように思えます。それは、Winnyに比べてユーチューブやニコニコ動画は非常に手軽、すなわち工数的コストがかなり低いことなどから想像することでこれまた確たる根拠はないのですが。
どちらにせよ、前に中国のいんちき遊園地でニセキティちゃんとかがあったのと似たような現象であることは確かですね。本来なら彼らは然るべき対価を払わなくてはならないのに、コストの負担は拒否するわけです。韓国なんかも日本のアニメとか観放題ですよね。違法アップロードサーバで。こういうのはメシの食い上げでしょうな。
ここからは単なる愚痴モードなのですが、私としては現在のDVD価格が高すぎるというのも一因だと思うですな。まあ制作費に2千万とかかかるのはしょうがないし、それはどこかでペイしないとダメでしょうが、30分モノが2本入って6,000円とかの価格設定はどうなんでしょう。そんなに強い所有欲持ってないですよ当方は。となると貸しビデオ屋とかで借りたり、友人に借りたりして済ませちゃったりするわけです。
この価格に関しては、ビジネスモデルに問題がある部分が大きいようにも思えます。まず、この業界で喰ってる人はみんなちゃんと仕事してるのかという点です。昨今は多くの業界で、コストダウンとか業務の最適化とかでたいへんな苦労している訳ですよ。そういう中で、上の記事にも「既得権益です」とか平気で言ってるという状況がある。きょうびこんなんで許される仕事というのはどんどん減ってきていますね。おりしもJ-SOX的な流れで、丸投げ、すなわち元請けが仕事しないで下請けの仕事をピンハネするのは会計報告的に厳しくなるっぽい話も聞きます。この業界も、苦労して付加価値を創り出した者がきちんと対価を受け取り、仕事もしないしリスクも負担しない者が既得権益でカネをつまむという状況をなくしていくことが「あるべき姿」でしょう。
そのための方法としては、結局のところ課金方式だと思います。ユーチューブなりニコニコ動画なり、部分的に有料にするというか、「カネを払えるようなしくみ」を作るのがよいと思います。実際、私は「これはおもしろい」というコンテンツにはカネ払う気はけっこうあります。が、現在では、個人がリリース元にカネを払うルートが、「DVDを買う」という部分にしかない。これは面倒なのでけっこうダメです。私なんかめんどくさがりですから、そんな面倒をするならいいや、ということになります。
一方で、私はけっこうiチューンストアで音楽データを買います。わりとめんどくさくないし、けっこう安いからです。CDは比較的買いません。なんと言っても、CDを1枚買うと欲しくもない抱き合わせ曲が入っていて、3,000円とか払わされるからです。動画もこの方式を採るといいんではないでしょうか。動画アップロードサーバには、解像度を絞ったものを載せて、いい画像の画像データは画像のよさによって500円、1000円、2000円とか値段をつける。著作権制限とかしなくても、カネを払える、オヒネリを投げられるルートさえあれば、けっこうみんなカネ払うと思うんですが。あ、でも高すぎるのはダメです。価格設定はある程度みんな納得するぐらいの水準に押さえて、薄く広くサラミ法的に取るビジネスを考えないと。少数からどーんと取るビジネスはどんどんうまく行かなくなってきますよこれからの時代は。まあ、これをやると一部テレビ局、特に地方局は大きなダメージを受けることとなるでしょうが、時代に合わなくなった業種には退場していただくのが経済のならいです。しようがないですな。
あと、どうでもいい話ですが、私はニコニコ動画は敵対勢力と決めつけているのでアクセスしません。というか「あなたのユーザIDはアクセスできません」とか言って排除されるので2回しかアクセスに成功したことはありません。新しいIDだけがダメという不平等なシステムがムカつくので「じゃあこねえヨ」という感じです。いったんそうなるともう何もかもムカついていかんです。そういう不平等なシステムのくせに「あなたのブログに動画を貼りましょう」とか外部に出てくるのも腹立たしいですな。一部の人間には見せないというポリシーなら一般化すんなって話です。ってまあヤツアタリなんですが。どうも相性が悪いですな。