虚勢を張って小さな自分を大きく見せようとしたばかりに命を失ってしまった話がイソップ寓話にある。題して「カエルと牡牛」。
ある時、一匹のカエルが牧草地で牡牛を発見した。彼女はその牛の大きさに驚いたと同時に自分もあんな風に大きくなりたいと、むらむらとジェラシーと競争心が湧いてきた。そこで、皺くちゃになっていた腹に空気を一杯入れて、これを出したり入れたりして大きくなる訓練をした。その成果を見せようと空気をめいっぱい吸い込んだ大きな腹を子供たちに見せて、「どう、牡牛より大きいでしょう?」と言うと、子供たちは「牡牛の方がずっと大きいよっ」と答える。「なにくそっ!」、親ガエルは思いっきり空気を吸う。と、彼女の腹はパンクして、かわいそうに死んでしまった。この話は、「身の丈」を越えるような虚勢は張るものではないと言いたかったのであろう。
「『このサンドイッチにミルクティーの量が多すぎるだろ』『歯を見せて笑うな』。2019年9月、法相に就任したばかりの河井克行容疑者(57)が広島空港のラウンジで事務所のスタッフを叱責した。大臣警護の警察官の前では静かだったが、警護が離れた途端に態度が変わるという。このスタッフには約束された給料が支払われず、1カ月後に事務所を去った。 参院選が迫った19年6月には、気が高ぶっていたせいか事務所で「土下座しろ」と運転手を怒鳴ったことも。「皆があなたのために頑張ろうとしているのに」と、別のベテランスタッフがたしなめたが、克行議員は気にも留めない様子だった」(2020/06/20毎日新聞)
これはまさしく上記「イソップ寓話集」に出てくる「カエル」の同類。つまり「カエル」が大臣に抜擢された?のである。
なにも筆者は道学先生になりすまそうというのではないが、いくらなんでもこの男は小さ過ぎるだろう! 小さいがゆえに、その類たる安倍晋三氏のカムバック運動に身を挺し、あくまでもその側用人よろしく涙ぐましく仕えたのであったろう。そして、そういう自分を肯定したがゆえに、その哀れな「すさび」を自分の配下の者たちに強要して、自己を肯定する。
上記記事中には「皆があなたのために頑張ろうとしているのに」と他の秘書が宥めたとある。この人が居てくれてこの記事を読んだ読者は一様にほぅっとしたことであろう。だが、この主人公河井克行容疑者の滅私奉公のゴマすりを大いに感じ入ったがゆえに、安倍首相は彼を大臣に登用したのであろう。人権感覚の皆無の不適格者をよりによって法務大臣に任命したのである。
記事中の秘書が、その後公選法違反に問われて広島地裁の初審で有罪判決を受けた被告当人であったかどうか記事からは判然としないが、もしそうであったならその罪はすべて雇い人に課すべきであろうと判じたくなるのだが・・・。
現代日本政治が小さくなった原因は、畢竟政治家が小さくなったからにほかならないのである!