現場知略

株式会社自動車情報センター、白柳孝夫の取材メモです。

トヨタ、リコールで賠償金を支払う 中国の事例

2010年03月30日 12時52分30秒 | 中国ビジネス

トヨタのリコール問題では、米国発のニュースが多く伝えられている。

中国では、どうなっているのか?
中国情報局「サーチナ」の記事を紹介する。

まずは3月30日の記事。
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トヨタ自動車は30日、中国浙江省の工商局および消費者保護委員会と協議を行い、リコール(回収・無償修理)に伴う顧客の損失を負担することについて合意した。
浙江在線が報じた。
報道によると、同省工商局および消費者保護委員会はトヨタに対して5つの要求を提出、トヨタはその全てにおいて承諾したという。

同省側の要求は、以下の通り。

1.トヨタ自動車は浙江省内の問題のあるRAV4すべてを4月末までにリコールし、その品質を保証する。
2.現時点でリコールされていないRAV4については、消費者の要求に基づいてリコールを行い、サービスを提供する。3.RAV4がリコールのために回収された場合、顧客に代車を提供する。
4.現時点で納車されていないRAV4については、トヨタ自動車は顧客の選択を尊重し、顧客が解約を申し出た場合は全額を返金する。
5.「中華人民共和国消費者権益保護法」に基づき、トヨタは消費者に補償を行う。具体的な補償方法については、各地にある販売店が顧客と直接協議する。

また、トヨタは3日以内に各地の販売店にこの旨を通知する。

浙江省がトヨタに上述の要求を提出したのは3月14日だった。
要求の提出から、トヨタがわずか16日で全面的な受け入れを決定したことに対し、
報道では「トヨタ側の迅速な行動は評価される」とし、「浙江省は完勝を収めた」と報じた。
今回の要求は浙江省内にあるRAV4が対象だが、中国全土が同様の対応を求めることは必至であり、リコール対応コストが増大する可能性は大きい。
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不思議なことにトヨタ側は何も発表していない。
トヨタの中国でのリコールはRAV4だけであり、原因はアクセルべダルの不具合。
部品メーカーは米国のCTS。
このCTSのアクセルべダルを装着したRAV4は2009年3月~2010年1月まで生産の約7万5千台だけ。
なお、このアクセルペダルは、結露が凍ることで、動きが鈍くなる。
そのため最初に欧州でトラブルが発生した。
その後、米国でも道路が凍結する季節となり、トラブルが増えた経緯がある。

浙江省は極めて寒い地域なのだろうか?

なお、次は、中国の消費者は差別されているとの記事。
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リコール問題で社長が自ら訪中しなければならなくなったトヨタ。豊田章男社長は中国の消費者に向かって愛想笑いをし、3度も頭を下げて謝罪した。
ところが、米国でのリコール対象車のユーザーには修理期間中に交通費を支払うが、中国のユーザーにはそうしたサービスは実施されないという情報が伝えられると、国内では不満の声が渦巻いた。
以下はチャイナネットが伝えた文章より。

中国国家質検総局によると、2004年6月18日に中国で自動車に関するリコール制度が整備されて以来、09年12月31日までに届け出された自動車のリコールは約210回、のべ321万台に上ることが分かった。

米国のリコール対象車はユーザーの家まで出向いて回収。
また自ら運転して販売店に届けてくれたユーザーには交通費を支払い、修理期間中は同じモデルの車両を提供する。

しかし同じリコールでも中国のユーザーへの待遇は全く違う。

それに関してトヨタの関連責任者は「今回の中国でのRAV4のリコールでは、中国のユーザーへの補償はない」と話す。だが中国の消費者が関心を抱いているのは、謝罪する姿勢ではない。
今回のリコールでトヨタがどのような措置を採り、過失を補って評判を取り戻すかだ。
米国と中国での異なる対応は、トヨタの中国の消費者への謝罪と誠意が足りないことをはっきり示した。
トヨタがリコールを実施したあとに行われた国内のネット調査会社の調査では、中国の69.7%の消費者が、「トヨタの態度は、米国政府と世論の圧力によるものだ」と回答している。
米中での対応の違いは、トヨタの謝罪と誠意が不十分である以外にも、中国の消費者の合法的な権利を守る意識の不足や、中国のリコール制度の不備を露呈させた。

中国は2004年から世界を参考にリコール制度を実施。
これは中国自動車消費市場では大きな進歩だったが、この制度がまだ完全ではないことは否定できない。
まず中国の消費者は、世界でユーザーが受けている品質保証期間中の返品や交換、修理は享受できない。

また、クルマ社会の国々のように強制措置は採られない。
中国では多くの品質問題が発生すると、マスコミの報道で強力な世論の圧力が形成され、やっとのことで政府は表に出てきて関与する。
トヨタがあえて米中で二重の補償基準を作るのは、米中の消費者の態度が明らかに違い、中国のリコール制度が「強硬」でないことに原因があるからだろう。
リコール制度の実施は、消費者への自発的な権益保護であり、メーカーに対して絶えず品質向上を促すことができる。
それに社会全体に国民本位の考えを体現し、消費者の権益保護がより高くなった目印になり、自動車購入の促進に役立つ。
トヨタの米中での違った対応は反感を抱かせるものだが、今回のトヨタが米中の対応で見せた違いを通して、私たちは自らの合法的な権利を守る意識や、中国のリコール制度を反省しなければならない。
中国は現在、世界一の自動車消費大国になった。
もしトヨタが本当に中国市場を重視しているのであれば、誠意を見せて米中の消費者を同等に扱う必要がある。
さもなければうまくやろうとして結果的に悪い結果を招くだけだ。

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次は、中国の国産メーカーの車両はリコールが少なく、リコールしているのは日本車ばかり・・・という記事。

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中国でリコールを行った企業は、回数が多い方から

広州トヨタ(日本)
広州ホンダ(日本)
一汽トヨタ(日本)
一汽フォルクスワーゲン(ドイツ)
長安スズキ(日本)
東風日産(日本)
北京ヒュンダイ(韓国)
長安フォード(米国)
トヨタ(日本から輸入)
東風ホンダ(日本)だった。

ここに挙げられたリコール回数トップ10企業のうち、トップ3はいずれも日系企業で、トップ10のうち日系企業は7社がランクインした。
これに対し、中国メディア「広州日報」では、「これまでに上海GMがリコールした回数は全体の1.84%にすぎず、上海フォルクスワーゲンにいたっては、リコール台数はほぼ0台であることが意外だった」と指摘。

さらに、「理解に苦しむ」こととして、記事では「天津一汽やBYDなどといった一部の中国自動車メーカーはこれまでに一度もリコールを行ったことがなかった」とした。

記事では、中国製自動車と日本車を比べれば、日本車の方が品質的に優れているのは明らかであり、また、米国では中国の80倍以上もの自動車がリコールされているという現実から、「リコール回数は品質が劣っていることを証明するものではない」と指摘。

続けて、中国で自動車のリコールを行った企業のほとんどが日系企業であり、中国自動車メーカーにリコールが見られないことに対し、「中国製自動車の品質が優れているからではなく、リコールという行為を正視していないためである」と中国企業を批判。

また、社会的責任を有する企業こそが過ちを認め、過ちを正し、人びとの心をつかむことができるのだとした。


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