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現場知略

株式会社自動車情報センター、白柳孝夫の取材メモです。

2009年調査の「自動車分解整備業実態調査報告書」発表

2010年07月01日 19時47分55秒 | 自動車整備

国土交通省の「自動車分解整備業実態調査報告書」が7月13日に発表された。
調査は2009年6月末現在。
整備売上については最も近い決算期分となる。
すなわち2008年度の数値である。


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対前年比94.7%の5兆4671億円となった。
リーマン・ショック以降の急激な景気の落ち込みの中での数字なので、これは已むを得ないと思う。

 

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チャネル別に見ると、整備工場の落ち込みが、あまりにも急激だ。
ディーラーは、あの厳しい中でも、プラス成長している。
リーマンショックの直後、ディーラーのサービス部長の目は据わっていたが、整備工場の社長の目は、まだ余裕があるようだった。
ディーラーのサービス部長の目が据わってたのは、逆風の中で相当な努力をして入庫促進していたのか・・・。

整備工場は、顧客管理をちゃんとしている工場は何とか守り切ったが、入庫を待つだけの受けの商売をしていた工場は、暇そうであった。


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整備分野別に見ると車検も事故車整備も、その他整備も全てダウンしている。
今後、車検市場はますます縮小するだろう。
・登録車の車検台数が減少(単価ダウン)
・指定比率がアップ(大手に集中する)
新しい整備分野の開拓と市場定着が必要だ・・・と言われて久しいが、いっこうに出てこない。
このままではヤバイですよ。

なお、自動車分解整備実態調査は、今年から、その調査主体が国土交通省から日整連に移るという。
来年は日整連から発表される。


日整連の「自動車分解整備実態調査」に期待

2010年06月15日 18時33分26秒 | 自動車整備

私が自動車整備業界を取材するようになってから、
整備工場で入庫車両数、売上高等の質問をすると、
社長が必ず机の中をゴソゴソやるのに気が付いた。
何を捜してるのですか?と聞くと・・・「アンケート用紙じゃよ」との返答。

そうなのだ。
以前は「自動車分解整備実態調査」は、
全ての整備工場とディーラーにアンケートしていたのである。

ところが、数年前から全数では無く、一割の抽出調査になった。
これは、総務庁から「全数調査は民間の業者に迷惑がかかるので、やめれ」
と国土交通省が勧告を受けたからである。
民間の業者は、別に迷惑とは感じてなかったし
「年一回、アンケートを書くと会社の状態が良く分かる。
大変、良いシステムじゃのう」と話している経営者が多かった。

今回、この調査の主体が日整連に移行することで、もう一度、全数調査に戻すという話が、日整連の記者会見で出たとのこと。
また、今までアンケートを書いてから結果が発表されるのに、約1年を要していたが、
これを早めて、年内発表を目指すという。
2010年調査は、2011年の発表ではなく、2010年末には出るとのことだ。
今年の整備白書は、2009年調査と2010年調査の両方が掲載されるらしい。


これからの整備工場経営を考えるセミナー

2010年03月10日 12時49分00秒 | 自動車整備
本日付けの日刊自動車新聞に「三井住友海上火災保険、整備工場経営テーマにセミナー 」と言う記事が掲載された。このセミナーに、私も係わっているので、以下に記事を転載する。
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三井住友海上火災保険は「これからの整備工場経営を考えるセミナー」を開催した。
三つのテーマを設定し、整備工場経営の方向性を考える個別セッションに続いて、国連環境計画・金融イニシアティブ特別顧問の末吉竹二郎氏を招き「CO225%削減が自動車整備業に与える影響」について特別講演を行った。
同社が実施している整備工場経営者向けとしては最大規模のセミナーとなった。

個別セッションの一つ「自動車整備工場の経営戦略」をテーマに講演したビーシーエーグローバル・インクの山口隆二社長は、これからの経営戦略として、電子診断器による診断への移行と車検店から整備店への原点回帰、ユーザーサイドに立ったサービスの提供の3点を挙げた。

「カー・テレマティクスの方向性とホンダの取り組み」について解説したホンダの今井武インターナビ事業室室長は、ガソリンエンジンから電動駆動に移行していく中で、情報センターでの車両モニタリングシステムが必需品になるといった将来像を説明した。

また「自動車整備工場の高度電子化対応」をテーマとしたセッションでは、自動車情報センターの白柳孝夫社長をコーディネーターに、ボッシュオートモーティブアフターマーケット事業部チームリーダーの小野庸司氏、日立オートパーツ&サービスダイアグ推進本部部長の内海和博氏、玉野自動車社長の平林潔氏がそれぞれの現場における取り組み状況などについてパネルディスカッションした。

特別講演した末吉氏は、温暖化時代の自動車整備業について「リスクは確実に広がる一方、チャンスも広がる」として、「温暖化自動車モータリゼーションを目指してほしい」とエールを送った。

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なお、セミナーの開催は3月11日である。
なぜに、今頃になって記事が出たのかは不明。

以下の玉野自動車の平林社長のプログに記事&写真が掲載されている。

http://eco-pit.com/president/2010/03/post_151.html

事業用自動車総合安全プラン2009

2009年09月08日 13時01分01秒 | 自動車整備

平成16年をピークに交通事故件数が年々減少し、死者数についても近年着実に減少している。
しかし、事業用自動車については、事故件数・死者数ともに、自家用自動車に比べて減少の歩みが鈍い。
また、酒酔い運転等の社会的影響の大きな事案についても、自家用自動車に比べて減少幅が小さい。 


・長期間にわたり高速道路が通行不能にするタンクローリーの横転・火災事故
・タクシーの死亡事故が増加に転じる
など緊急対策が必要となった。

 そこで、国土交通省は、2008年11月に「事業用自動車に係る総合的安全対策検討委員会」を設置し、ソフト・ハード双方の幅広い観点から総合的な安全対策について、5ヶ月にわたり検討を進めてきた。
こうして、本年3月に「事業用自動車総合安全プラン2009」がまとめられた。
目標を設定して社会的に取り組む内容である。
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<事故削減目標の設定>

(目標)
①10年間で死者数半減(平成20年513人を10年後に250人、中間年である5年後には380人)
②10年間で人身事故件数半減(平成20年56,295件を10年後に3万件、中間年である5年後には4万3千件)
③ 飲酒運転ゼロ

<目標達成のため当面講ずべき施策>
(1)安全体質の確立
中小規模事業者の中には未だ安全に対する意識が不十分な者も見られ、業界全体として安全に対する取組を進めることが必要である。
① 安全マネジメントの評価の対象を中小規模事業者にも拡大。
② 講習会の開催等事業者団体による安全マネジメントの浸透のための支援の拡充。
③ メールマガジンの発信等による業界全体での事故情報の共有
④ 映像記録型ドライブレコーダー、デジタル式運行記録計等の活用による運行管理の高度化。
⑤ 労働・社会保険関係法令違反に対する行政処分の強化、

労働・社会保険関係行政機関との連携、運行記録計の義務付けの拡大等による、運転者の労働環境の改善。

(2)コンプライアンスの徹底
自動車運送事業者に対しては特に高いコンプライアンスの徹底が求められる。
加えて、自動車運送事業者がコンプライアンスを徹底するためには、荷主や旅行業者等、発注者サイドの理解や協力のもと、公正な事業環境の醸成に努めることが重要である。
① 監査要員のさらなる増員。
② 労働・社会保険関係法令を含む法令違反に対する行政処分の強化。
③ 被監査事業者の車両移動等による処分逃れを防止するため、事業譲渡先への処分を可能とする等の処分基準の改正、刑事告発の活用等。
④ 重大事故の発生等に関与した発注者の名称等の公表。
⑤点検整備未実施に係る行政処分の強化等による整備管理の徹底。
⑥スピードリミッターの不正改造に係る改造施工者、運送事業者に対する監査の実施。


(3)飲酒運転の根絶
① 点呼時におけるアルコールチェッカーの使用の義務付け
② 飲酒運転に対する行政処分の強化
③ アルコール・インターロック装置の普及。

(4)IT・新技術の活用 

現在開発が進んでいる新技術については、行政による強力なリーダーシップのもと、今後10年間のできる限り早期に本格的な普及を実現すべきである。
① 実用化されたASV技術の普及促進、新たなASV技術の開発
② 衝突被害軽減ブレーキの普及促進とそのための装着義務化の検討
③ 映像記録型ドライブレコーダー、デジタル式運行記録計等の一層の普及促進。

(5)道路交通環境の改善 

① 事故の発生割合が高い区間における交差点改良や歩道の整備、中央帯の設置、信号器改良等
② 通学路における歩道の整備やカラー舗装、防護柵の設置等
③ 生活道路への通過交通が多く、事故の発生割合が高い地区において、生活道路への通過交通を抑制するためのクランクやハンプ等の整備による、歩行者等の安心・安全の確保
④ 防護柵や道路反射鏡等の交通安全施設の適切な維持・管理を実施

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各地方ブロックごとに「○○地域事業用自動車安全対策会議(仮称)」を設置し地域における施策実施目標の設定、毎年における進捗状況の確認等についてPDCAサイクルに沿って進める。 

以上が概要である。

この中で、私が個人的に注目するのは点検整備未実施に係る行政処分の強化等による整備管理の徹底
1995年の規制緩和の時、「クルマの品質は良くなったのだから、定期点検はユーザーの自己管理に任せるべきだ」との方法で改革が行われた。
この「自己管理」が曲者なのである。
自己管理は、点検をやる時期を自主的に決めるという意味であり「やっても、やらなくても良い」と言う意味ではないのだが、多くは後者に解釈されている。
検査と整備の分離、ユーザー車検に、その要因はないのか?
諸外国の自動車整備工場の規制を調べると、社会的責任のある仕事なので経営者の人格に係わる部分まで評価される。
整備している車両と、整備してない車両は外観から判断できない。
「ちゃんと整備しました」と金を取り、実は整備してなくて、その車両のユーザーが事故を起した場合、整備を担当した整備工場の責任は大きいはずだ。 

日本でも整備工場に対する監査は実に厳しい。
それは当然であるが、ユーザーに対しては野放しである。

ユーザー車検の場合も、ユーザーが自己管理で整備を実施しているのかを評価する制度の導入が必要である。
整備を行わないユーザーには、ユーザー車検を許すべきではない。 

トラックなど「事故を起せば多大な社会的損失を発生させる車両は例外」とアナウンスしても効果は少ない。
車検時にブレーキ関係を全く見ないで、そのまま通し、行政処分されたディーラーまであるのだから。そこまで、点検に対する意識は退化している。
点検整備未実施への罰則強化が必要である。 

さらに「クルマの品質とは関係なく、公道でクルマを走らせる以上、他人に迷惑を掛けないため点検・整備は必ず行う」との意識付けが必要である。


電気自動車と故障診断

2009年07月01日 20時13分40秒 | 自動車整備

テレビやデジタル・カメラの修理は、製品にダイアグ(故障診断機)が組み込まれていて、テスタをそこに繋ぐと故障内容が分かるようになっている。10年程前に、我が家のテレビが故障した時、メーカーに電話を掛けると、出張修理のメカニックが自宅にやってきて、テレビ本体の端子にテスタを繋ぎ、それから故障原因を探り、部品を交換して修理を終了させていた。

この時、将来は自動車もこうなるのか?と思ったものである。

 

エンジンを持たない電気自動車(EV)が、果たしてどこまで普及するのか?
私としては、まだ、大いに疑問を感じているが(ハイブリッドの普及は確実と思う)、EVの修理は、家電と限りなく近いものになるだろう。

三菱自動車が7月に発売する新型EV「アイ・ミーブ」では、ECU(電子制御ユニット)から不具合を読み取る故障コードは200個あり、大半の故障は診断機で発見し、部品交換で対応するスタイルになるという。(国内営業・サービス本部談)。

こうなるとサービスの決め手は故障診断装置(スキャンツール)と、部品供給と言う事になる。
電気関係の修理そのものは、部品交換が中心となるので単純なものになるだろう。
部品交換をしないで、修理できれば、その方がもっと素晴らしいが、それには経験と情報が必要だ。

最近、電気自動車の修理を「難しいもの」「高度なもの」と表現する記事が多いが、何か勘違いしているのではなかろうか?
現場のメカニックに言わせれば「エンジン(ガソリン、ディーゼル)の分解整備より難しいハズがないでしょう」と言うことだ。

昔のトロリーバスの修理は、それ程のハイテクであったのか?
山手線の電車は難しくて修理できないのか?

・・・と言うことになる。

難しいのは、整備技術ではなく、故障診断機と部品供給なのである。
その意味は、お分かりであろう。