西伊豆(宇久須)だより

山・海そして里が広がる西伊豆町。都会の喧噪を離れて、一緒に豊かな自然、健やかな社会とは何か、探っていきませんか?

懇談会「西伊豆の山を知る」(1)

2012-06-24 15:22:29 | 日記
  遅くなりましたが、2012年5月1に 宇久須防災センターで開いた懇談会「西伊豆の山を知る」の記録です。長文注意。

司会・藤原 皆さん、今晩は。回覧板でお知らせしましたとおり、「西伊豆の山を知る」というテーマで懇談会をいたしたいと思います。先日、桜井先生に牧場の家の方から、仁科峠をへて大沢里、それから林道倉見線を戻って来まして、だいたい西伊豆の山をほぼ見ていただきました。懇談会ですので、どんどん意見をだして桜井先生にいろいろ疑問をぶつける、桜井先生が自分の感想を述べる、そういった会にしたいと思いますので、ご協力よろしくお願いします。とりあえず、桜井先生の方から。



 桜井尚武 私はこの3月まで日本大学の森林資源科学部というところで、造林学、森林生態学、樹木学、こんなものを学生に教えておりました。3月31日で定年退職いたしました。何となくよくわからない性格の会ということで今日は集まっていただきました。

 そもそもの発端はと申しますと、砂漠化の進む中国の緑化をして日本人として少しでも貢献したいと、中国の大同というところで活動している「緑の地球ネットワーク(GEN)」というNPOがあります。高見邦雄というのが事務局長をやっておりまして、1992年、そこに飛び込んで20年間緑化活動をおれはやるからやらしてちょうだいよといって続けてきました。ことしで20年たったから、さあこれからどうしよう、そんなことをやっている団体なんですね。

 その団体の活動に賛同、あるいは興味を持っている人たちが集まったうちの関東部分の世話人を立教大学の上田信先生というのがやっております。
 私も高見さんと知り合いだったこともあり、何となく巻き込まれた次第で、GENに顔を出しておったということです。そこに藤原さんがお出でになりまして、町おこしというか、宇久須をもう少し元気にする活動をやってみたいよなというお話が最初に出た。

 「緑の地球ネットワーク」そのものは、中国の緑化がメインだからそこの活動ではないけれども、地域でそういう活動をやっているのは、それはそれで面白いのではないだろうか。いまのところよくわからないけれども、そういうところに人が沢山集まるというのはどっかに何か解決策が見つかるのじゃあないだろうか、そのようなこともありまして、宇久須でとくに木を燃やして炭を作っている藤原さんのところにいってみようじゃないかと、いうことになりました。

 ことしもそこの東海工業の所長宿舎の跡を9月まで借りて、あしたは藤原さんを中心にやっています地域起こしの元気づけのいろんな仕事の中にクビをつっこんで、自分でなにかを育てようかということをやってみようとしています。
 ここには農業ばかりではなくて、財産区の森林という大きなものがあるということですから、この森林資源をなんとか活用できないかということもありまして、桜井は少し森林の担当をしているから何とかしろということであろうか思います。
 先々週でしたか、浅賀さんらに現場をみせてもらいました。そこで何か問題があるか、あるいは何かいえることがあるかというふうな話がありました。

 緑の地球ネットワークにも、いろんな自然利用活動にがんばっておられる方がいますので、上田先生が指揮をとりながら、とくに西伊豆の森林にかかわっている方々といろんな話をしていけば、そこから意見が出て、なんらかの打開策なり、今後の活動方針が見つかるんじゃないか、あるいはタネが出来るんじゃないかと、いう話です。
 これは桜井が得々として喋るんじゃなくて、あいつがなんか、どっかで見たことがある、知ってることがあるということを、こちらの方で考えている問題に対していろいろと意見を答えてみようとか、言って貰おうとか、そんな場にしようと考えました。

 まず最初に私が何が出来るのかということも含めまして、たたき台的にちょっと30分くらい喋ってみたいと思います。資料をいくつかお手元に用意しました。ほとんどは役所のホームページからひっぱりだしたものです。

 まず財産区から。財産区というのは何なんだということを、当然浅賀議長を始め地元の方はよくご存知でしょうが、初めての方もいらっしゃるようなので、用意しました。

 これを読んでいくと、各地域にある財産区はそれぞれ、みんな違ってますよ、過去の履歴も違うし、現在の運営の仕方も違いますよ、という書き方をしています。でも、親分、すなわち持ち主は市町村長であります。

 その市町村長のもとで、ここでは議会を作っているということでしたが、いろんな運営委員会、財産区議会議員といったものがあります。非常に厳格に運営されるべきスジのものでありますよということが書いてあります。

 それぞれの地区の経済的活動を便利に容易ならしめるために応援するような仕組みでつくったんだというのが、最初にいわれております。

 ネットで調べていきますと、西伊豆宇久須財産区森林整備事業補助金交付要綱がありまして、これが次のページでは西伊豆町宇久須財産区議会は、宇久須は西伊豆町と合併したんですかね、それで色々変わったよという話が書いてあります。色んな運営の仕方が書いてあるかなり細かいものまで、ホームページでは出て参りました。

 この付則の一番最後の所に、賀茂村の宇久須財産区議会設置条例は、賀茂村の分については廃止して、新しいものを今度はやりますよ、新しいというのは西伊豆町宇久須区になりますよということが書いてある。基本的に中身はほとんど変わってないと思うんですが、それを適用してやってくださいよという、こういうことをもっても、作られた山がかなりいい山としてあるということではないかと思いました。この前見てきたんですが、もちろんよくないというか、これからよくなるような状態になっている山もずいぶんあるんだろうと思います。

 それをどう使うか。財産区を本当の財産区として、資源として地域の活性化のためにどう使うというのを考えるのが、財産区の議会の仕事ですけど、それを利用する側の、管理する側以外の人達の仕事でもあるんだろうと思うのです。それから、財産区の資源にまつわる地域の方々あるいは、影響されるとくに川下といわれる人たちの仕事でもあるんだろうとも思います。というところで、何か使う道があるんだろうと思うわけです。

 いまでも材木というのは大事な資源で、実はかなりしっかりと使われている。私の友達にも山持ちがいまして、工場をつくってプレカットをつくり、俺ん家のヤマの材木を使った住宅資材ということで丸々売って、それなりの会社を経営しています。

 彼は大学のころ一緒にいろんな仕事をしたことがある人です。材木は安い安いというけれど、あれからずっと現在まで、会社もつぶれずにやっているから、儲からないという割は、潰れない程度の仕事はちゃんとやれているということですね。

 子どもを慶応や早稲田に行かせることが出来る程度の生活費が稼げているということであって、ちゃんとやれるじゃないかと思いました。昔みたいに左うちわにはならないかもしれないけれど、やれてる林家がある、そういうふうにやれてる山が実際ある以上、この宇久須財産区の山の木もそういったことが出来るとはずだというところで、それを考える道をつくってほしいと思うのです。

 私は山の運営は出来ませんし、材木を実際に使う側のことについては、口先労働者のレベルなので、あまり出来ませんけど、可能性がある以上は出来るんだろうということで、少し説明したいと思います。

 資料のタネとして田中淳夫(あつお)さんという方が書いた文章のコピーを用意しました。田中淳夫さんのブログから写したものですが、2010年6月11日と書いてあります。田中さんは林業ジャーナリストだと自分をいっております。おれしかいないんだ、林業ジャーナリストは、なんていってますが、静岡大学の林学科を卒業した物書きで、ゴルフ場は自然がいっぱいとか、割り箸が森を守るだとか、いろんな変わった視点での本を書いてる方です。

 最近、森林林業再生プランというのができました。これは、梶山恵司(ひさし)という人の考えたプランです。この人は、ドイツで勉強した人ですが、菅元総理がまだ総理でない時分に、将来の民主党の政策として、コンクリートから木材へ、コンクリートから人へというタネをつくるもとになるようなアイデアを与えた人です。

 ドイツの山を見ると、ドイツの国内で材木がちゃんと売れている。しかもドイツの北側の北欧の材木がいっぱい日本に来ている。それから、アメリカ西海岸のカナダ、アメリカのホワイトウッドといわれている樅の仲間とスプルースというトウヒの仲間、この二つの木でWWウッドというんですが、それが日本に随分きてますね。

 プレハブなんかの材料に使われてます。それにスギ材が負けている。材質から見ると、スギ材の方が絶対エライ。ヒノキはもっと丈夫、しっかりしている。でも、そういったものに負けているのを見て、日本の材木もちゃんと出せば使われるはずだったんだ、ドイツではこんなにうまくいって、オーストリアもこんなにうまくいっていると、梶山さんは菅さんを連れまわして、全部説明したんですね。菅さんはいたく惚れ込みまして、彼が民主党のトップになって、まずコンクリートから人へ、木材へと言い出しました。

 それで一昨年ですか、実際に梶山さんを総理府の内閣官房国家戦略室内閣審議官というのにつけまして、12月くらいから去年の5月くらいまでがんばらせました。その結果、森林林業再生プランというものができました。

 私はその時、それの管理人の方の側にいまして、こんなもんでよろしいかと答えを作るというところにクビをつっこんでおりました。でも実際には、林野庁の中枢の方には相談がきませんでして、いつのまにか先に話が進んじゃって、何だあの話はと、私はちょっといったことがあります。

 そのなかでひとつ、森林経営計画というのが話題になっていると田中さんのブログには書いてあります。
 森林林業基本法というのがあります。森林林業基本法で日本の国をうまく作るぞ、いままでの林業基本法ではなくて、生物多様性も考えた森林林業基本法に変えるぞということで、2003年に変えました。それを実行に移すために、森林林業基本計画という計画をつくりました。だいたい10年間を見通した計画を作りまして、5年ごとに見直して新しいものに作り直します。

 今回、民主党が政権をとったために、いままでの自民党が作ったやつよりはもっといいもの、それはコンクリートよりは人へということで、森林林業基本計画の見直しというのをやりました。それと並んでもう一つ、資料の中に「森林法の一部を改正する法律の概要」というのがありますが、これも林野庁のホームページからとったものですが、森林法の一部を改正するよ、というのを出しました。森林林業再生プランをやりやすくなるように法改正をやったわけです。

 その中身として、まず田中淳夫さんの文書に、「森林経営計画」というのが出てきます。それから「森林法の一部の法律を改正する法律の概要」という資料の一番下のところに「(3)森林計画制度の見直し」というのが出てまいります。

 森林所有者が作成する現在の森林施業計画を森林経営計画に改める。これが変わったところです。
 集約化を前提にして、これはあちこちにある山をぽちぽち切るのではなく、大きくまとめてしまって、一本の林道を通したら、その林道の上下で間伐も主伐も、あるいは新植もなんでも出来るという、まとまった団地にしましょうねということです。

 森林計画というのは、農林水産大臣が15年間先までを考える全国森林計画という計画を作ります。地域の計画は、民有林については県知事が作ります。これは10年間を対象にした計画です。国有林のは森林管理局長がつくります。その下の森林計画、地域計画は市町村長が作ります。そういう市町村長の計画のもとに、持ち主があるいは持ち主の委託をうけた森林組合などが、もちろんこの場合財産区も入りますが、こういったところが、森林施業計画というものを作ります。施業計画を作っているところには補助金をあげます、作ってないところにはあげないよ、こういう言い方で国は縛っているわけですね。

 その仕組みの細かいのは、県の農林担当のところにいくと教えてくれます。その施業計画は40ヘクタールプランをつくれ、40年間を見通して5年分をつくれと、こういう計画なんですけれども、これに対して、150ヘクタールあるいは300ヘクタールくらいの大きさがなかったらいろいろなものは引き合わない、ということで、大きな団地をつくろう、そのためには森林施業計画というものではだめじゃあないか、名前を変えて経営計画にすればいいじゃないか、簡単にいえばそういうことだと思うんですが、それに変えた。

 ついでに、「国会における修正の概要と」いうのがありますが、「新たに森林の土地の所有者になった者について届け出義務を課す」とあります。これは最近、国有林あるいは民有林を某国のひとたちが買う。外国人が買っていいのかよと、色々いってる問題がありまして、それについての歯止めというか、チェック用にこれを付けたということです。もとを正すと、なぜこんなことをやっていなかったのかと思うくらい馬鹿馬鹿しい話ですが。

 また、無届け伐採が行われた場合、伐採の中止命令が出来ることになった。まあ、こんな売りの文言が入ってますが、大きいのは森林計画制度の見直しです。(その2に続く)

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