西伊豆(宇久須)だより

山・海そして里が広がる西伊豆町。都会の喧噪を離れて、一緒に豊かな自然、健やかな社会とは何か、探っていきませんか?

懇談会「西伊豆の山を知る」(2)

2012-06-24 15:35:49 | 日記
 田中淳夫さんの資料に戻ります。ここで言っているのは、森林経営計画の目的のところで、これが問題になっているよと指摘しています。



 それからもう一つ。森林林業基本法、再生プランでは、年間7800万立方メートルという量の材木を現在日本人は使っているんですけど、そのうち1800万立方メートルくらい、総使用量の28%くらいが国産材です。3900 万立方メートルが約50%になるから、国産材を50%自給しましょう、というのを大きなスローガンにたてたのが再生計画だといっていいと思います。そのためにはどういうことをするかです。

 それから再生プランでもうひとつは、将来にわたって残った林が、とくに人工林の場合には放っておいたら共倒れする危険性がある。ちゃんと間引きのできたいい、農作物に負けない林作物を作ろうと、そういう二つが入っているのだと思います。

 その中で田中さんの言っているコメントは、「この新制度は森林の所有者や森林組合が隣接する森林を数百ヘクタール規模ごとにまとめて間伐計画や林道の整備計画を策定した場合に助成対象とし」、助成という事は補助金を出します、ということです、あんたが出すお金の半分、3分の2か、7割くらいはあげますよということです。コスト削減をすることによって国産材をいっぱい切って出そうということをいっている。そのあとにこれを諄々と彼が批判をしています。

 今回提案の森林経営計画というのは、これまで所有者あるいは所有者の代行者がやっていた仕事に助成していたのを、今度は変えまして、まとめて大きなものにしたその団体に補助金をあげることにした。それを誰がまとめるんだということをいっております。

 森林組合なら順当だが、それは今だって森林組合の仕事じゃないか。いままで森林組合がやらなかったのじゃないの、みたいなことをいっているわけであります。

 そのあといろいろ書いてありますけど、一番むつかしそうなものは、その集約化だろうと書いています。財産区のことを考えますと、財産区はすでに100ヘクタール規模以上で、集約化ができちゃっていると言えます。

 ですから、隣や周りの山を巻き込んで一緒にやろうぜというのが実現すれば、かなり大きな山を、そこの山を使って自分らが長い将来にわたっていわば無限に、一定の量の木材を売ることによって、一定の収入が入るようにしようということが可能になるでしょう。財産区をそういう風にもっていけるといいでしょうね。ただし、だれがまとめあげるのといいますと、これは財産区の議会がやるんです。議会がやるんだけど、じゃあ自分がやるわけじゃないで、やらせるんです。やらせるものが、出来るかどうか。そういうことが田中さんの批判です。

 ところで林業再生とは、簡単にいって林業を産業として成り立たせるということでして、言い換えると現在は採算があっていないものを合うようにすることです。

 田中さんというのは、割とまともな提案をする人だと私は思っています。採算が合うようにするためには利益を出るようにすることが肝心だ。いま木材を利用することが赤字を生むことになっているがそれはおかしい。ビジネスとして利益が出るようにするにはどうしたらいいかと検討しています。

 一つはコストダウンで、一つは値上げだ。
 コストダウンはもう目一杯しちゃっただろうという、こういう風になってきてるわけですね。

 この計画ではコストダウンしかいっていない。つまり、大きな団地にして、林道を通して大型機械を入れて。
 われわれが知っている森林組合で成功している歴史は、京都にある日吉町森林組合という森林組合で、日吉町森林組合の湯浅さんという参事がいうには、一人当たりの木材を伐り出せる量が、1日8立方メートル以上にならないと採算がとれない。

 現在日本ではだいたい2立方メートルくらいです。普通の大型機械がないところは、0.8立方メートルくらい、かなりがんばった日本の普通の山では、4立方メートルくらい。

 でも北欧、それからドイツあたりでは、8立方メートル、10立方メートルときには20立方メートル出しているところがあります。という風なことで、よそは出来るじゃないかといったのは、さきほどの梶山恵司さん。俺は見てきた、というところから始まるんですが、伐ればいいという話ではないだろう、材の値段は今でも安いのにどんどん切ったら、材木出したらもっと安くなるじゃないか。こういう意見もあります。

 いい方法がいまのところないから林野庁も困っている訳ですが、商品の価値を上げて、価格を高くするという施策が見られない。なぜなら木材価格は国際的な取引で決まってくるから、値上げすると売れなくなると思いこんでいる。もしかしたら建築業界の反発がこわいのだろうかと書いている。このへんは嫌みですね。

 利益が薄いから量で稼ごうとするわけですけど、いま以上に伐採を進めると、はげ山が増えることにつながる。再造林と育林がちゃんと出来るようにしない以上、絶対に資源が枯渇するんだよ、というふうなことが、この人の結論で、いい方法は、いってない。簡単には売れない、出来ないことも知っているわけです。

 どっちにしろ、木材産業と建築業界だけはもうかるとしても、山には利益は還元されずにはげ山が増えるだけになりかねない。

 この下に書いてある森林施業計画とはというのは、現行の森林施業計画がどんなものかという、これも林野庁のコピーです。このへんは参考にしてもらえればいいと思います。

 最後に「石村様 桜井」と書いたレポートです。この石村さんというのは、「環境(森林)破壊という負の遺産を子孫に残してはならない」という宣言をいたしまして、「緑のダム北相模」というNPO法人をつくり、とにかく15年間えんえんと個人の山を借りまして、森林整備という名前のもとに一般の人を集めて、月1回の活動を、旧相模湖町(現相模原市)の嵐山という相模湖のほとりでやっている人です。

 また、小原という中山道の与瀬町の奥の地域に、いろんな人が権利をもっている50町か80町の小さな団地の山を、集約化できないかとクビを突っ込んでやってます。半分、4分の3くらいまではとにかく境界測定くらいまではやろうということで、了承をもらったというところまで来ているそうです。

 そこに、相模原市が平成の大合併で、相模湖町ですとか、あのあたりの山を合併いたしまして、神奈川県で3番目という政令指定都市になりましたが、ここがいままで市面積の3%くらいしか森林がなかったのが、突然50%以上森林がある市になっちゃった。

 その結果、山のことなんか知らないという役員ばかりで山の管理運営ができない、わからない、ということになったのですが、ついでにガタガタとうるさくて文句の多い、北相模の石村さんよ、なにか教えてよという話が回ってきたそうです。最近は緑のハブシティ相模原という案を出して、こうハブにして山の材木を相模原なり東京に売ったらどうだという、緑のハブシティ構想なんて打ち上げているのですが、具体的にどうするのといって、市の側から話をもってきたそうです。

 ちょっとメモでもちょうだいと石村さんがいうので、簡単なメモを私が書きました。表向きいろいろ書いてありますが、材木というのはとにかく資源だとまず考えて欲しい。相模原市に考えさせて欲しい。それは環境だけじゃなくて、伐って家を作るための材料にして売る、建物を作るなり、パルプを作るなり、色んなものを売るということを考えるための提案をするのが良いのではないかと言うことです。

 そのために何をする必要があるかというと、こんなことがあるんじゃないか。これを県、市にやらせたらどうか、というつもりで渡したものです。

 まず森林の区画を明確にすることが必要です。地図の上には、皆さんの個人の土地も町の土地もそうですが、線は引いてあるんだけど、現地にいくと、どれがどれだかわからないというのが随分あります。ただ、スギが植わっている場所で、でっかいスギが植わっている場所、小さいスギが植わっている場所、広葉樹が植わっている場所、これらの区分は見たら相観でわかるんです。

 分かるけど、それを地図の上に全部描けといわれると、わからない。測量し直さなければいけない。現実に日本の国の山の測量実績は、たぶん3割か4割以下なんですね。それ以外は、あるはずだ、書いてあるからあるんですけど、現地にいくと分からない。こういう状態です。そういう状態でもって、土地の売り買いがされたり、いろんなことがされています。

 次にどこを経済林として、どこを環境林とするか、あるいは保安林とするのはどこか、これをしっかり分けてください。共通して使う部分も含めて機能区分をして欲しい、要するに経済林でもあり、環境林でもありということも含めて分けてください。
 ただし、この区分は人が変われば、あるいは要求が変われば、みんな変わるものなのです、変わっていいんです。

 環境林はさておき、経済林ではそれをどう管理し、どう利用するのか計画を立てなきゃいけない。第三者が計画を立てても仕方がないので、やはり関係する人が立てるのでしょう。その上で、第三者はその計画についてが文句をつける立場です。

 対象林は地図上で決める。この地図はやがてしっかりしたものに、活動した結果改善されたものになっていくんですが、ついでに決めた森林は林相ごとに区分して下さい。林相ごとに区分されたまとまりを林分といいます。

 通常、まず林班という、そう簡単に変わらない、地勢、尾根ですとか川ですとかそういったもので、大きな区分けをします。これを一つのまとまりとして、その中に、植えた、植えなかった、伐った、伐らなかったというのがモザイクに出てきますので、そのモザイクをまた図面上に描く。これをだいたい普通、小班といっていますが、小班に区分けをする。

 林分というのは、そういった小班レベルのまとまり分です。林分というのは林があって、その一部を取り分けているから林分というのです。

 小学校の時に習いましたが、「線」というのは、無限に向こうから続いてこっちまで一本の線がずっとあり、その一部を取り払ったのが「線分」ですね。普通われわれが線といっているのは線分なんです。林といっているのも林分だというふうに考えてもらって、その林分に区分をしていただく。

 林分ごとに管理利用計画をつくることが大事です。地図上にも記載するし、位置測量はGISを使った簡単なものでいい。最初はそれでいいけれど、必要に応じて精密に測量するときには、確定をするときには山主にも立ち会ってもらいます。とくに個人の山主がいる場合には、ここのところから向こうまでがオタクだよね、俺こっちだよねということをカチッとやってもらうのが大事です。

 奥多摩の山持ちの田中惣次さんという人が、簡単な調査でだいたい1ヘクタールで3万円くらい掛かるといってましたから、結構簡単な話なんです。だから、そこのところにいっぱい精力をつぎこむことはないんです。合間合間にやってもらう。けど、その林分測定に国はまだ補助金をだしているはずです。

 それから、林分ごとに資源の内容を把握する。資源の内容というのは、毎木調査を行いまして、まず森林簿をつくるんですけど、これで資源棚卸しノートが出来るはずです。

 林分毎に(林班・小班といいかえてもいい)、どんな木が、何という種類の木が、どの位のサイズの大きさの、痛んだ木か痛んでいない木か、どれくらいの高さの木が、どれだけありますと、いうふうなことが大事で、それをしっかりわからないとダメです。

 樹種別の量と質の台帳を作るということですが、直径は林尺(輪尺とも書く)をあてて測定してもいいし、樹高は目測でもいいけどとにかく粗くてもいいからまずつくる。けど、これは売り物ですということを考えてやってください。

 だから、どのサイズの木がそれぞれどれだけあるか、柱材や板材、パルプ材のどんなものがどれくらいつくれるか、というのは、利用者が決めることですが、お宅の柱ですか、じゃあいますぐ太さ1尺こえる材木はこれだけありますよと教えるとか、何センチのものはどれだけありますよ等と、全部わかるようにしてあげるのが大事だろうということを、この前は浅賀さんにもいいました。

 利用経級に達している樹木のある林分はあるんだけど、伐ろうと思ったらその木は伐るなと言われちゃったら困るので、伐れるやつはどれだ、伐っちゃいけないのはどれなんだと、これもしっかり分かってないと売り物を提供する商売はできません。

 伐れるんだけど、それは林外に搬出できないよ、林道がないよというのも、これもないやつを売ろうとすると詐欺ですからこれもだめ。ということは、この様な情報管理、情報提供ももしっかりしていただきます。

 どんな林から、どんな木が、どれだけ出るのか、出せるのか、実際搬出できるのか、まずこれが一歩です。それから、利用経級に達しない林分については、あるいは長伐期にする、いまは伐らないという林分は、保育作業手順をきめて、これは相模原市を対象にした考えのやつですけど、目標林型という系、こんな林を最終的につくるつもりですよという目標を立てる、そのためにはこういった育林手順がありますよ、いくらかかるはずだから、これだけ金をかけていいか悪いか決断しなければならない、最後はそこにいきます。

 計画を立てるにあたり、ここが大事なんですけど、資源を循環利用するためには、伐りすぎちゃだめ、全体のバランスを見てください、もうかるからどんどん伐るなんて馬鹿なことはしないでください。いまもうかるけど、あとでもっともうかるかもしれないし、裸にしちゃった後はそのあとの経営はものすごく金がかかるかもしれないことがありますので、次代育成も計画してください。

 国だったら広いからあちこちに伐採林分を分散することでバランスを取れます。でも、他の所では一回収穫したあとにも同じ量再収穫出来るためには、成長した分だけしか伐っちゃいけないのですが、次に伐るまでの期間までを、これを回帰年といいますが、注意しなければいけません。地域レベルでは伐り過ぎる年が予算の都合上あるかもしれない。でも、別の年にはそうでもない年があるかもしれないから、長い期間では平準化してくださいね、ということがあって、最終的には伐ったら植える、植えたら育てることが原則です。(その3へ続く)

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