忘憂之物

男はいかに丸くとも、角を持たねばならぬ
             渋沢栄一

2011.11.11

2011年11月11日 | 過去記事
http://www.fnn-news.com/news/headlines/articles/CONN00211387.html
<野田首相、米元国務長官と会談 TPP交渉参加に向けた決断伝える>

<野田首相は11日夜、アメリカのキッシンジャー元国務長官と会談し、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)の交渉参加に向けた決断を行ったことを伝えた。
キッシンジャー元米国務長官は「オバマ大統領も、首相とお会いすることを心待ちにしています」と述べた。
会談では、12日から始まるAPEC(アジア太平洋経済協力会議)の首脳会議などについて、意見交換が行われた。
野田首相は、東日本大震災の際のアメリカの支援に感謝の意を伝えたうえで、「震災の際に足りなかったのは、政治の決断だった。わたしはきょう、新しい決断をした」と述べ、TPP交渉参加に向けた決断を行ったことを伝えた。
これに対し、キッシンジャー元米国務長官は「困難な中、素晴らしい決断をした」と歓迎する意向を示した>



NHKラジオを聞きながら出勤していると、ラジオなのに料理番組をしていた。朝鮮料理だ。出てきたのは「朝鮮料理研究家」という肩書の、ナントカいう朝鮮人の女だった。最近、台所に立つ回数が増えている私は、職場の先輩諸氏との話題に料理がよく出るのだが、この意思疎通がなかなか「言葉」だけでは難しいのだと実感もしていた。どの程度の焼き色になれば火を弱める、とか、どの程度の状態までかき混ぜるのか、など、これを「言葉だけ」で教わるのは結構、コツもいるし骨も折れる。しかしながら、コレを見事に、まあ、流暢な日本語で解説しながら朝鮮料理を作ってしまう朝鮮人がいることに改めて驚いた、と日本語で書く在日の私であるのだが、このアメリカの元国務長官、ヘンリー・キッシンジャ―も以前、ドイツ訛りの英語を記者からつつかれて「私は外国語を流暢に話す人間を信用しない」と斬って捨てたことがある。言い得て妙だ。

今回、その「外交の達人」と言われたキッシンジャーが、野田総理を<困難な中、素晴らしい決断をした>と褒めた。キッシンジャーが言う<困難な中>というのは、参加表明をする、と公言していた10日になってイモ引きした「慎重さ」もあろうが、それよりもこの日の昼、参議院で行われた国会質疑で自民党の佐藤ゆかり議員から、およそ、一国の総理、それもTPP参加を決意する立場にある衆議院議員らしからぬ無知を露呈されたことも含まれていると思われる。実に皮肉たっぷりの<困難な中>である。

野田総理はこの日、日本国民に対して記者会見も行った。そこで<貿易立国として繁栄を築き上げてきた我が国が豊かさを次世代に引き継ぐためには、アジア太平洋地域の成長力を取り入れていかなければならない>という財務省の作文を読んだ。続けて<世界に誇る日本の医療制度、日本の伝統文化、美しい農村、そうしたものは断固として守り抜く>と無理も言った。大前研一もTPP反対論者の根拠は<あまりにも主体性のない脅し>だと断じながら、外国産の農産物の輸入について<仮に、「それが安全なものでない」と言うのなら、日本政府が食品衛生法などに基づいて取り締まればいいだけの話だ>と無茶を言う。苦労して法学部に放り込んだ倅ですら「日米安保条約」を引き合いに出し、国と国との条約が国内法に優先される、という常識を説いていた。つまり、場合によれば、コレは無理な話であると、そこらの学生でも知っている話だった。

それに、いつの間に日本は<貿易立国>として繁栄したのか。日本は世界でも有数の「内需国」である。それはもちろん、輸出もしている。輸入もしている。「鎖国」と言われた時代ですらそうだった。江戸幕府は自主的にポルトガルとスペインを遠ざけたに過ぎない。世界とはポルトガルとスペインだけではない。独立国家オランダの誕生は1648年である。日本がオランダとは活発に貿易もしていたことを否定する人はいまい。つまり、日本が積極的に世界のパワーバランスを吟味しながら「切り替えていた」のだとわかる。また、その頃、日本はタイ国王からの申し出も受けている。今で言う「国交」を回復させてもいる。当時の支那大陸の覇者、明も徳川からは除外されていた。支那人は江戸参府も許されていなかった。これも「鎖国」ではなく、明朝が満州族に滅ぼされつつあったからだ。しかし、日本は清朝も相手にしていなかった。北京などなくとも、日本は世界で経済的にもやっていける、と判断したからだ。これを自主的外交という。

日本は別に「貿易立国」ではないが、今も普通の先進国として輸出もするし輸入もするだけのことである。これを「国を開かねばならない」「日本が取り残される」などと抽象的な表現でTPP賛成を叫ぶ連中は、その「あまりにも主体性のない脅し」を止めた方がいい。経団連の米倉会長の<不参加はあり得ない>も結論ありき、反対派の国会議員をして<反対しているのは、次の選挙で票を押さえようとしている人たちが中心だと思う>というのも「あまりにも主体性のない脅し」としか思えない。それに「選挙目当て」になるほど、国内世論が反対、あるいは交渉参加に慎重であることを公然と認めてしまってもいる。

約1カ月前に初開催されたPT総会では、藤井裕久元財務相が<経済的に国境を高くしている国は衰退する>と言ってTPP反対派の議員を説得しようとしたが、そういうことは北朝鮮や支那共産党に言うべきであって、日本のどこを見れば「経済的に国境が高い」などと言えるのか、もっと、ちゃんと説明すべきではないか。世界のどこでも日本印の製品は見ることができるし、日本のどこでも外国産の製品を買うことも出来る。外国人の医者は既にいるし、街で「働く外国人」を見て驚く日本人はいない。どころか、流暢な日本語で朝鮮料理の解説ができる朝鮮人も珍しくない。在日の私が日本語でブログを更新しても誰も驚かない。日本は既に開かれまくっている。もう少し戸締りした方がいいくらいだ。

野田総理も国会でバカがバレて恥ずかしかったが、マスコミは報じないし、キッシンジャーは<素晴らしい決断だった>と褒めてくれる、と安心しないほうがいい。<素晴らしい決断だった>ということは、つまり、それは“アメリカにとって素晴らしい”わけであり、反対派の懸念が杞憂ではなかった証左である。バカがバレた動画もネットを駆け巡るが、そんなことが気にもならないほど、今回のTPP参加表明はスムーズに運ばない。相手はアメリカである。アメリカが参加しろというから、わけもわからず、無理矢理にでも参加表明したのに、そこからまだまだ揺さぶられることになろう。要するに「交渉事」である。相手はアメリカである。アレはどうなるのか、コレはどうするのか、と不安を隠さず、おろおろと交渉してくる素人など、自覚している間もなく丸裸にされる。

交渉参加は既定路線であったが、しかし、なんとも最悪の形で引き摺りだされたものだ。

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