何度か書いたが、私は以前、中型スーパーで働いていた。店長になって最初の年の棚卸、本社から「応援」と称して人が来る。昼前に来てくれたのは社長の彼女とその息子。「お昼まだでしょう?」ということで、かなり早い昼飯になる。既にペースが乱される。普段は近くの弁当屋か、店内で総菜を買って済ませていたが、せっかくだからと外に出る。20代半ばの息子は「肉が喰いたい」。
昼間の焼肉屋。1時間以上が過ぎて店が気になる。彼女と息子はまだ明るいから、という理由でビールを少々やっている。これから仕事だという緊張感はない。
話の腰を折って店に戻ると棚卸を始める。商品は閉店後、私と何人かの従業員でやるとして、いま、やらねばならないのは備品や消耗品になる。これとこれを数えて、この紙に書いてください、というだけの簡単なお仕事、私は通常業務の片手間にやっていた。
ところが息子がいない。とくに探しもしなかったが、こっちが汗まみれで商品出しをしていると、店舗入り口近くにみつけた。何をしているのかと近寄ると、腕組みしながら店舗を眺め非常階段のテント屋根が汚れてるとか、全体的に地味だとか、アイキャッチポイントがどうした、とアドバイザーの真似事を言う。当時は私も20代半ば。彼より2つほど年上だったが、こっちは朝の5時から仕入れもしている。肩書きもこちらは店長、あちらは本部の社員。偉そうに言われる覚えもないから、こっちで備品を数えてくれとやった。
夕方を過ぎると、もう退散となる。最低でもこれくらいはやっておいてくれるだろう、と遠慮気味に用意した仕事は半分以上、そのまま残っていた。息子はともかく、年増の彼女は本社を仕切る。私も世話になったから、お礼を述べて見送った。酒も残っているだろうに、親子はでかい車で帰って行った。
事務所に戻ると、何人かのパートさんが「あの人らっているの?」とズバリ。それから「あの息子さんが後継ぎなの?」と呆れていた。態度は悪いし、仕事はしないし。同感だったが立場上、表立って賛同するのもよろしくない。いろいろとやっているんでしょう、とお茶を濁した。
パチンコ屋のときもそうだったが、このチェーン店における「本部経費」や「事務所経費」というモノは小さくない。また、程度の低い経営者はなんでも私物化するから、そこに愛人とか平気で放り込んでくる。そうでなくとも小山の大将、周辺は茶坊主みたいな集まりになる。仕事が出来るかどうか、よりも忠誠心を問われる。そろそろおかしくなってくる。
今の職場。相談員の一人が病気で入院した。悪いことは続くもので、その翌月にはもうひとり、なにやら「家庭の事情」とやらで休職になった。数人が詰めている事務所から2人いなくなった。つまり、三分の一ほどになる。
現場で働く人は思い浮かべてみる。もし、いま、現場から三分の一もいなくなったらどうなるか。おそらく、通常の業務に支障が出る。交代勤務も限界があるから、近いうちに人員は確保せねばならなくなる。しかし、これが「なんとかなってしまう」部署がある。
事務所もとくに残業している様子もない。「大変だ」とは聞こえてくるが、多くの仕事は現場に流れてもくる。本部とか事務所とか、なんとかなっている。つまり、無駄の集積場だったわけだが、ボンクラ息子(娘)が社長ごっこをすると、この傾向は顕著になる。
ずいぶん前になるが、奈良の田舎に潰れたパチンコ屋があって「社長マン」と観に行った。大駐車場も込みで価格は1億円を少し切っていた。道路を挟んだ向かいには出来たばかりの「マルハン」があった。閉まったばかりだから状態も悪くない。店舗2階に上がると、大量の中古機がそのまま放置してあった。金に替える手間もなかったのだろうか。
社長マンが「どう思う?」と言うから、設置台数から売り上げと粗利を予想してみる。不動産屋も「ネックはマルハン」とか素人を言うから、これはいけると踏んだ。私の試算では稼働率が平日で3割、土日で4割あれば商売になる。やるならどうぞ、大丈夫と。
結論から言うと、社長マンは止めた。その物件はすぐに売れて、1年後に見に行ったら「あぁ~あ」と溜息だった。1年経っても8割稼働だった。集客は「マルハン」に任せておけばいい。こちらは「こぼれた客を拾う」に徹すればいい、という私の読みは間違ってなかったわけだが、そのとき、まあまあ乗り気だった社長マンが、大阪キタの寿司屋で「本社」の話をした。チェーン店を展開したら本社がいると。
私は猛烈に反対。今の店舗の2階で十分だと言った。そんな無駄な経費を発生させて、各店舗の管理者を苦しめても仕方がない。あんたはグループの若社長をみてわからんのか。
当時はまだ、パチンコ業界冬の時代入り口。借入を整理し、銀行融資が止まり、リースも組めなくなった、というパチンコ屋がちらほらあった。私の知り合い、とあるパチンコチェーン店の営業管理職のところもそうだった。一緒に飲みながら「大変だね」とあと、私は「でも楽になるね」と付け加えた。もう無理をしなくても言い分けもある。
そのグループでも本社経費は年間で数千万。でも店舗を縮小したら本社はいらない。それで何か困ったことが?と問うと黙っていた。遊技機の入れ替えも現金でやればいい。台数も機種も吟味すればやれる。無駄な販促ツールも要らないし、イベント会議ばかりで給料を持って帰る連中も要らない。無駄な経営理念や組織論を振り回している間に会社はどんどん悪くなる。どうせヒマなんだから、本社で威張ってないで、社長自らがホールに立って接客しているほうがためになる。これから極寒の時代がやってくる、生き残れるのはそういうホールだと思う、とか言ったら「うちに来てくれ」と言われたけど断った。ちょっと前、そこも見事に無くなった。行かないでよかった。
政治の世界もそう。身を削って勉強している1年生議員は民主党にもいる。汗を流して仕事している若手議員はいる。しかし、その上の執行部やら本部やらのエライさんは、なにもせずに威張っているだけだ。単なる無駄なら我慢もできるが、往々にしてこういう連中は健全な組織の害毒になる。無能なのは自分らなのに、頑張っている若手議員をして「能力が未知数」とか「経験が不足」と見下している。
立派な企業が内部から崩壊することはある。それから顧客に見限られる。政党も同じ。とっくに有権者から見限られている政党が「誰を社長にして計画倒産するか」をやっている。面白くもないし、不様としか言えない。
どこでも同じなんでしょうね
おなじおなじww
久しぶりに飲りたいねぇ