忘憂之物

男はいかに丸くとも、角を持たねばならぬ
             渋沢栄一

忘憂之物 17

2013年08月30日 | 過去記事



去年のことだが、2012年度から使用される中学教科書の検定結果を文部科学省が公開した。このとき合格した全4社が竹島を記述し、全7社が尖閣諸島を取り上げることになった。これに対して毎度お馴染み、怪しげな「市民団体」とやらがイチャモンをつけた。

今回は「えひめ教科書裁判を支える会」という連中が検定撤回を求める抗議声明を出した。内容は<竹島や尖閣諸島問題で政府見解を押しつけるなど、違法な政治介入>とのことだ。また、彼らは扶桑社系の育鵬社と「新しい歴史教科書をつくる会」の自由社の記述は<特に領土ナショナリズムが際だっている>として憤っていらっしゃる。

そこで先ず、言葉のアゲアシを取りたい。「領土ナショナリズム」とはなんのことか。「ナショナリズム」とは「国家主義」の意味であるから、その対義語は「インターナショナリズム」であり、これは「国際主義」のことである。つまり、彼らの言う「領土ナショナリズム」とは「領土的な国家主義」というほどの意味となり、彼らのレベルに合わせて意を汲むなら「とくに領土については国家主義が際立っている」と解釈することも出来る。

しかしながら、これをそのまま世界に発信しても、どこの国の誰もわからないはずだ。そもそも「インターナショナリズム」という言葉が大好きだったマルクスがいたロシアは現在、旧ソ連時代から変わらず世界有数のナショナリズムを誇る軍事国家であり、日本の北方領土を不法占拠してずいぶん経つ。国後、択捉には既に3500人のロシア部隊が駐屯していたが、同年の3月には対艦巡航ミサイル、新型対空ミサイルなども配備された。もはや「領土ナショナリズム」どころか「軍事ナショナリズム」であるはずだが、これに日本人からなる「市民団体」とやらは抗議の声を出さない。

また、こういう連中の「アレルギー」であるはずの核の軍事利用もロシアは日本国内である北方領土近海で行う可能性もある。2011年の秋、ロシアは新しく原子力潜水艦を開発、それから発射可能な弾道ミサイルは核を搭載する。発射実験は成功した。これは米軍のミサイル防衛網を突破することを意味する。この原潜はオホーツク海に配備されるわけだ。

尖閣諸島での事件後、中露は同年の9月に「主権や領土保全にかかわる核心的利益」を協力すると共同声明を出した。鳩山―菅と続いた民主党政権のお粗末で日米関係が揺るがされた、と産経新聞などは怒るが、これはもう、支那・ロシア・韓国・北朝鮮・民主党という反日連合軍の描いたシナリオ通りに事が進んでいた、と認識した方がいい。各々、目的と手段に差異はあれど、いずれも「日本」という国家を利用、且つ、搾取しながら、どうしようもない自己問題(国内問題)を解決、あるいは先延ばしにしようと必死なのだ。

その先兵がマスコミやら日教組となる。

彼らは自覚の有無にかかわらず、ともかく、日本に対しては大袈裟に騒ぐ。日本の教科書に竹島が日本の領土だと書くと知れば「政治介入」だと騒ぐ。いまは韓国が不法占拠している状態だと真実を書けば、それは日本の政府見解だろう、我々はそうは思っていない、と騒ぐのだ。コレは普通、韓国人の見解であり、韓国人のナショナリズムである。

教科書では今年も揉めていた。朝日新聞も24日の社説<教科書選び―教委の介入は要らない>で怒っていた。要すれば真っ赤な教科書で有名な「実教出版」をどこも採択しなかった、と怒っているわけだ。それで冒頭<教育には、政治やイデオロギーをもちこむべきではない>と、それを朝日が言うのか、と何度でも呆れる文章を書く。

それに今回、べつに政治的な意図やイデオロギーばかりで蹴ったわけでもない。この実教出版というところは、例えば慰安婦問題をして未だに「日本軍兵士の性の相手として連行された」と書かねば気が済まない。官憲や軍による強制連行はなかった、は日本政府の公式見解、当時の内閣が閣議決定したはずだが、実教出版は「強制」を外すのもイヤだった。そして白々しく「女性国際戦犯法廷」を紹介して、あとは現場の教師に任せます、となる。こんな危ない教科書、マトモな親や教師なら敬遠して当然だ。

朝鮮戦争は「北朝鮮による“急進撃”」と書く。コレは朝日社説のいう<教科書を使う生徒や先生にとっては、大事なのは、古代から現代までの歴史全体が正確に分かりやすく書かれているかどうかだ>に照らせばどうなのか。とても<正確に分かりやすく書かれている>とは思えないのだが、どこの国の子供らからして<正確に分かりやすく>なのか、なにか間違えていないか。ま、そもそも日本人の子供らに教える教科書として「即位の礼」を「天皇の代替わりの儀式のこと」でお仕舞いにするのは異常だ。

だから今回、そっぽを向かれた「異常さ」に自覚もない。朝日新聞も気付かないのか、朝日がいう「問題とされた部分」とは<3教委が問題にしたのは、国旗と国歌について「一部の自治体で公務員への強制の動きがある」と書いた一文だ。東京や大阪などで起立や斉唱の命令に反した教員が処分された。そのことを指している>ということだ。朝日はコレに対し文科省のコメントを引用して<文部科学省は「校長の職務命令に反すれば懲戒処分になりうるのだから、一定の強制性はある。『強制』は必ずしも誤った表現ではない」としている。常識的な解釈だろう>としている。非常識な連中は常識がわからないから非常識なのだ、という見本だ。

この論調ならば「義務を果たす」「責任を取る」「ルールを守る」などはすべからく「一定の強制性」が認められることになる。世の中の仕組みはぜんぶ「強制性」を帯びていることになる。コレはとんでもない間違いである。その証拠は「嫌なら辞める」が可能な社会だからだ。

左に巻いた学校なら「名札をつけるかどうかは自由」が許される。我が家の近くの中学校もそうだった。しかし、社会人になって、いや学生アルバイトでもいいが、出勤して「名札をつけなさい」と言われて断れば事務所に呼ばれる。それから採用を見直される。つまり、なんらかの「処分」をされる。書くのも馬鹿らしいほど当たり前のことだ。

朝日新聞の拡張員などは「宅配便です」とか「洗剤のサンプルを」と言って玄関を開けさせ、それから「なんちゃって。実は朝日新聞でした」が常識かもしれないが、普通、自分はどこのだれか、どこに属していてなにをしているのか、は隠すべきことではない。日本国で日本の公務員が日本国の国旗や国歌を敬う、というのはそれほどの常識だ。それでも、もし、万が一、日本国が大嫌いというなら、そんな日本の国の「公務」などしなければいい。「教師」という職にこだわるなら私立もある。塾もある。朝鮮学校もある。ちゃんと左に巻いた将来的展望も開かれている。


ちなみにこの「実教出版」は真珠湾攻撃の二日後、昭和16年12月10日に設立しているが、敗戦から3年後になる昭和23年3月にあの「新しい憲法のはなし」を出版、GHQの手駒として頑張ってきた。戦後日本人の子供世代に向けて「國際平和主義をわすれて、じぶんの國のことばかり考えていたので、とうとう戰爭をはじめてしまったのです」と教えてきた歴史がある。その「六 戰爭の放棄」をみてみる。ちょっと長いが貼っておく。



 <みなさんの中には、こんどの戰爭に、おとうさんやにいさんを送りだされた人も多いでしょう。ごぶじにおかえりになったでしょうか。それともとう/\おかえりにならなかったでしょうか。また、くうしゅうで、家やうちの人を、なくされた人も多いでしょう。いまやっと戰爭はおわりました。二度とこんなおそろしい、かなしい思いをしたくないと思いませんか。こんな戰爭をして、日本の國はどんな利益があったでしょうか。何もありません。たゞ、おそろしい、かなしいことが、たくさんおこっただけではありませんか。戰爭は人間をほろぼすことです。世の中のよいものをこわすことです。だから、こんどの戰爭をしかけた國には、大きな責任があるといわなければなりません>

<そこでこんどの憲法では、日本の國が、けっして二度と戰爭をしないように、二つのことをきめました。その一つは、兵隊も軍艦も飛行機も、およそ戰爭をするためのものは、いっさいもたないということです。これからさき日本には、陸軍も海軍も空軍もないのです。これを戰力の放棄といいます。「放棄」とは「すててしまう」ということです。しかしみなさんは、けっして心ぼそく思うことはありません。日本は正しいことを、ほかの國よりさきに行ったのです。世の中に、正しいことぐらい強いものはありません>




この駄文は朝鮮戦争が起こる1950年に副読本になり、2年後には消えていった。しかしながら、その腐臭漂う占領軍の悪意はなにも変わらない。それに乗っかる阿呆も、利用される阿呆もする阿呆も同じ理屈を呪文のように繰り返している。



<だから、こんどの戰爭をしかけた國には、大きな責任があるといわなければなりません>



こんな低レベルで都合のよい「はなし」を日本の政治屋だけではなく、旧連合国だけでもなく、支那朝鮮の政治家、あるいは国連事務総長までもが「当たり前のこと」として公然と発する。それによって日本は未だ、金を出したり謝ったり、言いたいことも我慢する。

実教出版の教科書が採択ナシまで70年。長かったが、まあ、なんとか「普通の国」の方向はみえてきた。また、このクソみたいな教科書も<正しいことぐらい強いものはありません>と書いている。歴史認識然り、戦争犯罪然り、その部分には賛同してもいい。





2 コメント

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Unknown (いつものオヤジ)
2013-08-31 12:37:28
ここんとこ、毎度毎度コメントするのもご迷惑かなぁ…と思いつつ。(ずっと読んではいましたが)
思い返せば(千代太郎さんよりン年ほど上の世代ですが)小中学校の頃からやんわりと(政治・歴史教育については)反日の洗脳を受けていたんだなぁ…と。
「日本は戦争を起こして世界に迷惑をかけた」「自衛隊は、本来あっては行けない」「平和憲法は大事」etc…
子供としては当然、素直に聞いてしまう訳で、そうなると自分の祖父やら親戚やらの戦争体験話をたまに聞くと
「悪い事に加担したのに、なんでそんなにのんきに話すの?」と嫌悪してしまった事もありました。
(そう感じている時点で、洗脳されているのですが)
もう、当時を知る人も少なくなってしまいましたが、本当の事が伝わらず、
恣意的な「平和・反戦(中身は反日)」が子供たちに刷り込まれてしまうのは、恐ろしい事です。
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Unknown (へびんがー)
2013-12-15 23:12:23
お千代さん、お元気ですか?
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