忘憂之物

男はいかに丸くとも、角を持たねばならぬ
             渋沢栄一

旨い焼酎が飲みたい日

2010年07月26日 | 過去記事
ニッカポッカを履いた「花紀京」が屋台で「熱燗」と頼んで一口呷る。そして「原哲男」扮する屋台の大将に「ヌルイがな、これ」とクレームを出す。原哲男は「そうか?ほな・・」と言って熱燗を注ぎ足す。また一口、ぐいっと呷った花紀京は「あっつ!熱過ぎるがな、これ」とまたクレーム。原哲男は「え?ほうか・・」と言って、今度は「ひや酒」を注ぎ足す。すると、また「ヌルイがな、ヌル過ぎるわぁ」と言って熱燗を注ぎ足させて、次はまた「あっつ!熱過ぎるちゅうてるやろ!」とやり始める。原哲男が「ええ加減にせんかい!どんだけ飲むんじゃ!」とツッコむまで何回もやる。情緒溢れる吉本新喜劇のギャグである。しかしながら、最近はこのギャグがもう、ギャグとして成立しなくなった。

「焼酎無料」の店である。東京を中心に大流行していると今朝の産経新聞に書いてある。「米・麦・芋」とだけ書かれた瓶の写真もあった。その店は「居酒屋革命」とかいうらしい。誰でも思いついていたが、誰もやらなかったことをやった人がいる。同店舗のオーナー兼プロデューサーの天野雅博氏だ。天野氏は「これまでの居酒屋の発想を否定してみた」とのことだ。夕方5時前には客が並び、満席状態が閉店まで続くという、大人気である。

底意地の悪い私は、この話を「山田バー」の向かいにあった「焼酎バー」のオサーンにしてみたことがある。その店は焼酎を100種類以上、梅酒もいろんな種類を置く店だ。無いのは色気と日本酒と洋酒、ビールはあったけど止めたそうだ。1杯600円~で飲めるが「たこわさ」と「かにみそ」で760円で済む「居酒屋革命」とは値段で勝負は出来ない。まあ、勝負する必要もないのだが、その「居酒屋革命」が出す無料の焼酎は「おそらく旨いだろう」という意見だった。私も同意見だ。「無料だからこの程度」という酒は置かない。置いてしまえば「革命」は達成されなかったはずだ。それも「うん、まあ、飲めるね」というレベルでは通用しない。金払って飲む焼酎と比して劣らぬ品質を維持しているはずだ。

マスコミが眉間に皺を寄せて「デフレスパイラル」を何度も擦り込んでいるところ申し訳ないが、別に世の中、デフレでは困っていないようだ。困っているところは雨が降っても困る程度のところだろう。商売の基本は創意工夫であるから、景気や天気を心配しているヒマがあるなら「やる気」の心配をした方がよさそうだ。あと「根気」とか「元気」とか。



ところで、イギリスでは飲み放題を政府が禁止した。いわゆる「ハッピーアワー」と呼ばれるサービスタイムのことだ。理由はアル中の増加だ。とくに「女性のアルコール中毒患者」が激増したらしい。彼女らが飲むのはビールやロングカクテルなどの「がぶ飲み系」から、ショットグラスで一気に呷る「ガツン系」と多種多様、つまり、何でも飲むわけだ。

しかしその昔、ロンドンで大流行していたのはブランデーだ。ロンドン紳士は食後にソーダー割でブランデーを飲んでいた。スコッチなどという酒はスコットランドの田舎酒、お洒落なロンドン市民が飲むはずもないと、スコットランドを併合した際には15%という強烈な税金もかけた。スコッチは大ピンチに陥る。しかしその頃、スコットランドではロバート・スタインという人が「連続式蒸留機」を発明する。グレーンウィスキーの誕生だ。

これで小麦やトウモロコシからでもウィスキーが作れることになった。これに大麦麦芽だけで作るモルトウィスキーを混ぜ合わせてブレンデッドウィスキーを生み出す魔法使い・ブレンダ―が登場する。しかし、現在では露助顔負け、酒なら何でも飲むイギリス人だが、当時はお洒落にこだわった。そもそも「ブドウ」からしか酒を造れないロンドンの紳士淑女は、これらのウィスキーをやはり飲まなかったのである。ま、確かにウィスキーはお洒落ではないがねw

しかしながら、1860年から大発生した「フィロキセラ」という害虫(わからない人は、し様に聞いてね)に「ブドウ樹」が全滅。ブランデーもワインも作れなくなった。慌てたイギリス政府は法規制をかけていたブレンデッドウィスキーを「保税倉庫内」に限り解禁、スコッチの阿呆みたいな税金も緩和するという、どこかの民主党みたいな身勝手をした。

ロンドンの紳士淑女は仕方がないからスコッチを飲んでみた。ブレンダ―の作ったブレンデッドウィスキーをソーダーで割って飲んでみる。するともう、とっくに「フィロキセラ」は駆逐したけど、もはやブランデーよりもグレーンウィスキー、モルトウィスキーのこの旨さは否定できず、こんな旨い酒もあったんだと愉快なロンドンはハマったわけだ。そして150年後、政府が飲み放題を禁止した。

先ほどの「居酒屋革命」では「一人当たり平均7杯」の焼酎を飲むという。日本人の酒の強さを考えると頑張ったほうだが、それより頑張っているのは「酒の味」だろうと思う。日本人はタダでも不味ければ飲まない。というか飲めない。なんといっても日本酒の国である。量を飲めない日本人は、猪口で少量をぐいっと飲める日本酒を考案した。ウィスキーでも日本のシングルモルトはスコットランド人が買って飲むほどの旨さである。日本人は「安ければ買う」とか「タダなら問題ない」という民族ではない。だからデフレを案ずることもない。「牛丼が250円になったら味が悪くなる」と騒いでいる森本某という電波芸人もいるが、この人は日本の良さを知らないんだろう。味を落とせば売れなくなるだけだ。



日本人は「口に入れるモノ」にはうるさい民族である。美味いモノ喰って飲んできた歴史がある。ただ「目や耳」から入れるモノには弱いようだ。だから民主党政権になるし、朝日新聞はまだある。早く法律で禁止すべきだ。



デフレ不況の正体
日下 公人
ベストセラーズ

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