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日本も格差拡大、構造改革を…OECD事務総長(読売新聞)>2012.4.25

2012年04月25日 | 過去記事
日本も格差拡大、構造改革を…OECD事務総長(読売新聞) - goo ニュース

<経済協力開発機構(OECD)のアンヘル・グリア事務総長は25日、東京・内幸町の帝国ホテルで開かれた読売国際経済懇話会(YIES)で講演した。

 日本が取り組むべき課題として、労働市場の二極化や男女格差の解消、財政再建などを挙げ、「格差の原因となっている構造の改革が必要だ」と訴えた。

 グリア氏は、日本でも他のOECD諸国と同様に、1980年代半ばから所得格差が拡大していると指摘。最大の要因は賃金の格差にあり、非正規労働者の社会保障の適用範囲の拡大や職場訓練の充実などが必要との見方を示した。

 少子高齢化が招く労働力不足については、「移民の受け入れよりも女性の進出を」と処方箋を示した。夫婦の共働きがメリットをもたらすような税制の導入や給与制度の見直しなどを進めるべきだと指摘した>




『人間を幸福にしない日本というシステム』という本があった。これは30万部以上売れてベストセラーになる。「薬害エイズ」のあの頃、1996年だ。この本を書いたオランダ人のウォルフレンは、日本に来て「日本人の生活コスト」を知って愕然とする。衣食住はもちろん、光熱費もすごいじゃないかと。日本の貧乏人は死ぬしかないのかと驚くが、実は死ななくてもよい「システム」があると知ってもっとびっくりする。それなら日本人はいくら働いても福祉に金を持って行かれる。これでは「幸福」にはなれないはずだ、と決めつけてこの本を書いた。ウォルフレンはついでに当時の厚生大臣・管直人を「偉大な政治家」とも称した。先見の明があったのかなかったのか、とりあえず、左臭い連中は喜んで「説明責任」という言葉も教えてもらった。

このオランダ人ジャーナリストは知らなかったかもしれないが「世界で最も生活費がかかる都市」の第一位は長らく東京であり、大阪が2位についてしばらく経つ。それが良いか悪いかはともかく、このオランダ人はそんな超大国・日本の心配をするより、ヨーロッパの真ん中にある自国の失業率6.5%越えを心配すべきであった。己の国が軋み始めていた。オランダ史上最悪、「オランダ病」と呼ばれた1980年代の経済危機よりも深刻とされる現状を憂うべきであった。財政赤字削減策のめどが立たず、今月の23日には連立政権が崩壊。オランダ女王のベアトリックス女王は9月に総選挙するように、と求めた。つまり、政治も機能障害を引き起こしている。「幸福にしないシステム」どころか「仕事がない」と国民が怒っている。火炎瓶が飛び交う祖国を案じたほうがよかった。

日本人は怒らないと知る外国人は、日本相手になら上から目線で偉そうにする。このOECD(経済協力開発機構)とやらの事務総長も同じだ。このメキシコ人は真上から<日本が取り組むべき課題として、労働市場の二極化や男女格差の解消、財政再建などを挙げ、「格差の原因となっている構造の改革が必要だ」と訴えた>とある。大きなお世話であると同時に、やはり、お前がそれを言うか?と思わざるを得ない。1982年のメキシコ債務危機もあったし、その後の1994年、メキシコ通貨危機では額面が「ペソ」で元利金の支払いが「ドル」という珍しい政府短期証券「テソボンド」を発行、危機が収まるとメキシコの富裕層は大儲けしていた。泣いたのはメキシコに投資していた投資家と、急激なインフレと貧困、大失業時代を喰らった貧困層ではないか。

治安の悪化も洒落にならない。日本では工藤会が警察に喧嘩を売ってニュースになるが、メキシコ北部のアセンシオン警察署では、麻薬組織の襲撃を恐れて警官全員が辞職してしまった。数十人が殺されてゴミ捨て場に捨てられたり、ガレージに吊るされたりする国だ。怖くて逃げるのも無理もないが、その国の経済の専門家が東京の帝国ホテルで「日本の格差」を叫ぶ呑気が笑えないのである。

また、このアンヘル・グリア事務総長だが、昨年4月にも東京都内で「対日経済審査報告書」とやらを発表、記者会見で<日本は消費税率が低く、引き上げのチャンスがある。一朝一夕にやる必要はなく、徐々に行うことが重要だ>と述べて財務省を喜ばせた。最終的には<消費税率は20%相当まで引き上げることが求められる>ということだった。もちろん、当時の野田財務大臣も<一つの考え方>と応じている。それから1年、一つの考え方どころか「不退転の決意」で「政治生命をかける」と増長したわけだ。ったく、このドジョウがどこを向いて仕事してきたのかがよくわかる。

賢い日本人はこんなの気にしない。「中国の市場を掴まねば!」も「スウェーデンを見習わねば!」も「あ、そうですね」と聞き流している。「増税しなければ財政が破綻するぞ!」と言われても「ああ、そうなんですか、こわいこわい」と言っておけばいい。

最近、内閣府所管の財団法人NIRA(総合研究開発機構)が日本の政策体系について提言書をまとめた。中身は<税制による分配を重視する社会民主主義的な「スウェーデン型」と市場のメカニズムによる分配を重視する自由主義的な「米国型」を折衷した社会を目指しリスクを分散するべきだ>というものだ。北欧とアメリカ、そのどちらからも「いいとこどり」しましょう、ということだが、よく読んでみよ。そんなの我々の親や祖父母、御先祖様は知っていた。言われるまでもなく、ちゃんとやっていた。つまり、それが「日本型」だ。学ぶのは向こうだ。





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