「故郷」の条件

2006-02-10 19:45:27 | Weblog
故郷とはどういう所であるか、その「条件」についてちょっと考えてみます。三省堂の「新明解国語辞典」によれば、

故郷:(今は住んでいない)自分の生まれた土地。

さらに「ふるさと」を同辞典で引くと次のようです。

ふるさと:その人が短からぬ歳月住んでいる(住んだことのある)土地。

以上のようですが、ある土地が「故郷」であると感じるための条件とはどんなことか、に興味があります。なぜそんなことに興味を持つのかというと、最近のように人間が一箇所に落ち着かず、主人の勤務の都合上頻繁に転勤を繰り返し、けっきょく老齢になれば東京、大阪のような大都市に集中して住むことが多いような時代では、どこが「故郷」なのかはっきりとは分らないと感じる人が多いのではないでしょうか。新明解国語辞典のように「自分の生まれた土地」と物理的な定義で割り切ればコトは簡単ですが、人間そうも行かないことが多いのではないでしょうか。
数年経って行ってみると街の様子がまるで変わっていた、などということが日常茶飯事なのですから、単に「生まれた土地」を故郷と感じなさい、というのは酷であるように思われます。
むしろ幼少時代から青年期にかけて知り合った友人知人が今でも未だ生存している土地、と定義した方が実際の感情には合うのではないでしょうか。今は人々の移動が頻繁ですから、親しい人が一人も居なくなれば、そこは故郷と呼ぶには空しい土地になってしまうことでしょう。ですから今では「故郷」とは多くの人々にとって、一種の消耗品になりつつあるのかもしれません。侘しいことです。