候補者9

2020-09-04 08:19:58 | 日記
「ただいま~」

玄関だけでも、自分の部屋より広いのではないか…と思われるくらいのスペースだが、昔作りの土間という空間を残した、特に飾り立てることもない、質素で上品な玄関だ。

「どうぞ、入って!」

敬さんに促され、中へ。


公民館の体育室くらいはあるんじゃないか…と思われるほどの広々とした居間に通され、

部屋の中央には囲炉裏…。

本当に日本昔話の世界だ…。

どこを見ても、これは…、かなり高いハードルになりそうだ…。



「いらっしゃ~い❗」

お義母さんが奥から小走りに走ってきた。

小柄でかわいい人だ。


「いらっしゃい。遠いところを、よく来たね」

お義父さんも、奥の座敷からゆっくりと現れ、笑顔で歓迎してくれた。


「…は、はじめまして…。お邪魔します」

イケメン敬さんの結婚がうまくまとまらなかった理由は、きっと親にあると思っていた美枝さんは、拍子抜け、

お義父さんもお義母さんも、笑顔で歓迎してくれていて、優しい人柄のようだ。

「妹は、I市に住んでるんだけど、君に会いたくて、今日夕方には帰ってくるよ」

…そっか…妹がいたのか…。

それじゃ、妹がイジワルだとか…。




「兄さん、お帰り❗美枝さん、はじめまして‼️兄から噂は聞いてます。」

夕方、買い出しの荷物を抱え、キラキラの瞳で美枝さんの手をとった。

…これまた、拍子抜けだ。

イジワルな要素は全く感じられない妹だ。

…皆が皆、絵に描いたように理想的な家族だ…。

これにさえ違和感を感じてしまう。