候補者20

2020-09-16 07:24:59 | 日記
あらためて、嫁として、守り神である神様が奉られている祠への挨拶をすませた。

しばらくぶりに訪れると、静まり返える沼には、沼の主には少し小さいと思われる魚が泳いでいる。

今思うと、あの日の怖い出来事は夢だったんじゃないかと思う。

祠の周囲は、あの時と空気も違うと感じるくらいに、清々しい。



「ギシ……」

…え?

例の音だ。


祠から母屋に戻ろうとしたとき、突然、樹木が軋む音が聞こえた。


……気のせい?


「ギシ……ギシ……」


気のせいじゃない。


祠から聞こえてくる。

この『ギシ…ギシ…』から始まった恐怖…。

この音は、家の中にまで入ってきた💦💦

…ダメだ💦💦

もしも、祠からの音であっても、それを確認したくない。

嫁となって、これからこの祠を奉っていかなければならないだろう…。

だから、この音の出どころの確認したくはない。

聞こえなかったふりをして、急いで母屋に戻った。




「ミルク、必要なら言ってね。オムツは買ってあるからね」

お義母さんは孫のことを一番に考えて、いろいろ準備をしてくれていた。

今夜泊まる部屋は、広々としていて、襖を開けて隣の部屋まで使っていいと言われている。

襖を開けると、さらに広々とした部屋だ。

とにかく、今日は敬さんも一緒だし、穏やかに眠れそうだ…。