あらためて、嫁として、守り神である神様が奉られている祠への挨拶をすませた。
しばらくぶりに訪れると、静まり返える沼には、沼の主には少し小さいと思われる魚が泳いでいる。
今思うと、あの日の怖い出来事は夢だったんじゃないかと思う。
祠の周囲は、あの時と空気も違うと感じるくらいに、清々しい。
「ギシ……」
…え?
例の音だ。
祠から母屋に戻ろうとしたとき、突然、樹木が軋む音が聞こえた。
……気のせい?
「ギシ……ギシ……」
気のせいじゃない。
祠から聞こえてくる。
この『ギシ…ギシ…』から始まった恐怖…。
この音は、家の中にまで入ってきた💦💦
…ダメだ💦💦
もしも、祠からの音であっても、それを確認したくない。
嫁となって、これからこの祠を奉っていかなければならないだろう…。
だから、この音の出どころの確認したくはない。
聞こえなかったふりをして、急いで母屋に戻った。
「ミルク、必要なら言ってね。オムツは買ってあるからね」
お義母さんは孫のことを一番に考えて、いろいろ準備をしてくれていた。
今夜泊まる部屋は、広々としていて、襖を開けて隣の部屋まで使っていいと言われている。
襖を開けると、さらに広々とした部屋だ。
とにかく、今日は敬さんも一緒だし、穏やかに眠れそうだ…。