みどりの船

絵本と絵本まわりのこと、日々の雑感を少し。

メイおばちゃんの庭

2006-04-23 | 読書雑記
C.ライラント 作
 斎藤倫子・訳 / 中村悦子・画 あかね書房

奇跡は起こると、ときどき思う。

わたしの力ではなくて、何か大きなものの力で、動かされて
いる、と感じることもある。

ときどき、置かれた状況にいたたまれなくなって、
もがいて逃げ出したくなるけれど、あとから振り返れば
それだって、自分にとって必要なことだった・・・・
と思える自分がいたりする。

このお話を読んでいたら、主人公サマーが、自分のあふれる
気持ちを、泣きながらようやく口にしたところで、
気づいたら、私も泣いていた。
本当に胸がいっぱいになってしまって・・・涙が流れて
しまっていた。

ずっとずっと、我慢して。
ずっとずっと、オブおじちゃんを気遣って。
でも、サマー・・・あなただって、寂しかった。

         

サマーは母を亡くしてから、親戚をたらいまわしにされた。
でも、オブおじちゃんとメイおばちゃんにひきとられ、
トレーラーハウスで暮らすようになってからは、
本当に愛情に満ちた、素敵な毎日を過ごしていた。

メイおばちゃんは明るく、生活の細かいところまで気を
配り、誰だって、メイおばちゃんの前では、素のままの
自分でいられた。
オブおじちゃんも、素敵な”風舞”を作っては、
トレーラーハウスの内外に飾った。
普通の人が作る風舞とは違って、独特なものを。

そんなあたたかい生活が、突然かわったのは、あの
「愛情がいっぱいつまった大きなたる」のようだった
メイおばちゃんが、自分の愛した庭で、突然亡くなった
から。
あまりの哀しみのため、抜け殻のようになってしまった
オブおじちゃん。
風舞すら、作ろうとしなくなった。
そんなおじちゃんを、唯一なぐさめられるのは、
自分(サマー)ではなく、変わり者のサマーの同級生・
クリータスなんだ・・・・と思う、サマーの気持ちを考えると、
胸がふさがりそうになる。

メイおばちゃんの霊にあうために、旅に出た3人に起こった
奇跡! 起こるべくして起こった必然のようにも思える。

どんなことだって、あとから思えば必然かもしれないって
思えるほど、オブおじちゃんにも、現実を受け入れる時間が
必要だったんだ。

このお話に出てくる”風舞”という日本語が美しい。
風見鶏でも風車でもなく、”風舞”と訳されたのが、素敵
だなぁと思う。
メイという名の風舞は、どんななんだろう?

大切な人の死を、残されたものがどうとらえ、乗り越えて
いこうとするか、静かに語られる中で、サマーやオブおじちゃんや
クリータスのそれぞれの愛情が、胸にじ~んと染みて、
とても心があたたかくなるお話だった。


          

この本を読んでいるときにちょうど、実家の母の元気のない
電話口の声が気になって・・・・。
7年前に亡くなった父の愛車が、ぶつけられダメになって
しまった話を聞かされた。

だから・・・・なおさら・・・・お母さん!大丈夫だよって。

きれいな面の写真だけとってもらって、
無傷だったことを感謝して、
守ってもらえてると思ったほうがいい。
そのほうが、お父さんだって喜ぶよ。
そう話して電話を切ったけど・・・。

私も、オブおじちゃんを励ますサマーになりたいって
思ってるからね、お母さん。
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6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
とっても、いいです! (こうめ)
2006-04-23 23:25:20
何回も、何回も、読み返してしまいました。

わたしの感想文より、全然いいですー・・

気持ちが、とても伝わってくる感じ。



わたしがいつも泣いちゃうのは、

最後にサマーが、夢の中で聞くメイおばちゃんの言葉です。



やさしさと思いやりで紡がれたような、

大好きなこの物語を共有することができて、

とてもとてもうれしいです。

ブログやって、よかったー・・



実家のお母さん、きっと励まされたんだろうな。

だって、ほんとうに、お父さんが守ってくれたみたいに、

感じますよね。
返信する
読んでから・・ (はねうたゆみこ)
2006-04-24 22:07:08
この絵本、知らなくて、でも読みたくて、

読んでからコメントしようかな、と思ったけど、

さきに書いちゃいます。



出てくる人の、いろんな気持ちが、フラニーさんのブログを読むと、胸にせまってきます。



やさしいきもち、の絵本なのかな。

明日さがしに行ってみます。



いつもご紹介、ありがとう~。
返信する
よかった! (フラニー)
2006-04-24 23:37:40
●こうめさん



こうめさんのブログ記事を読んで、読みたくなった

この本、本当に心がポッとあったかくなりました。

とても興奮して、一気に書いたので、その感動が

出ていますかね。

ほんと、ブログをやっていなかったら、こういう

本を知ることもなかったかもしれないと思うと、

やっててよかったし、とてもうれしいです♪



母もブログを読んでいるのに、ついつい書いて

しまいました。

多分、もう大丈夫・・・かな。
返信する
ぜひぜひ! (フラニー)
2006-04-25 00:04:18
●はねうたさん



ほんとですか? 書いてよかったなぁ。



絵本というよりは、読み物かなという文章量ですが、

流れるようなすてきな表現が多いので、きっとあっと

いう間に読んでしまいますよ~!



私は、何度も中断されるので、戻っては読み直して、ゆっくり味わって読みました。



心にひたひた染み入る感じ・・・っていうのかなぁ。

あまりうまく説明できないけど。

こうして書いてしまうとうそっぽいので、

ぜひ、また感想を聞かせてくださいね。
返信する
トラバありがとうございます (jasumin)
2007-10-24 09:27:32
初めてトラバというものを頂きました。
と思っていたら、以前(夏!)rucaさんから頂いていた
トラバも発見して、自分の音痴加減に驚いています。

読んですぐなのに、あ~そうそう。と、
またまたいろいろと思い巡らしそうです。
私の母は11年前から寝たきりで、父が看護しているんです。
たぶん多くの人が想像する寝たきりとは違っていて
自分の意思ではどこも動かなくて、食べられない話せない
新生児のように首も座らないのですが。
私、帰省したとき、実家の鍋をものすごく焦がして仕えなくしてしまったことを思い出しました。
そのときから気になっていたんだけれど、
「あ~、お母さんが・・・」って父が言葉を飲み込んだんですよね。
お母さんが買ったのか、お母さんが使っていたのか。
私たちが簡単に言う、改築しちゃえば?の家も、この鍋も
父にとっては、フラニーさんのご実家の車なのですね。

今は、サマーになるのが難しい毎日です。

風舞、美しい言葉ですよね。
どれも想像の中の形でしか感じられないところも、素敵です。

返信する
●jasuminさんへ (フラニー)
2007-10-24 23:18:55
TBがうまくいってよかったです。うまくいかないことが多くて・・・。
NO、2のTB。光栄です(笑)
わたしもそんなことがしょっちゅうなので、わかりますよー。
rucaさんなら、許してくれますよぅ♪

jasuminさんのお父さんの気持ちも、飲みこんだ言葉も、深く伝わってきます。
いろんな葛藤も痛みも悲しみも、全部ひっくるめて受け入れていらっしゃる気がします。
jasuminさんは、遠くにいて、すぐかけつけることはかなわないけれど、でもいつも心に気にかけているでしょう?
それだけでも、お父さんにとって十分サマーに違いないですよ。きっと・・・。

このおはなし、本当にステキなお話ですね。
もう一度じっくり読みたくなってしまいました。
jasuminさんが書いてくれて、その思いが深まりましたよー。
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