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歯止めのない中国「不動産倒産連鎖」7月開催『三中全会』に期待が持てのか?

2024-06-14 04:52:08 | 日記
不動産デベロッパーにとって苦しい状況が続いている中国では、いかにして金融危機を回避するかが重要な課題になる。不動産の関係者は救済を期待するだろうが、中央政府はその全員を助けることはない。
誰を優先的に救済するかを決めることが重要になってくる。中国は透明性のない社会なので、各々の関係者は政府とのバーゲニングとロビー活動を強めるだろう。
そのなかでもっとも不利な立場に立たされるのは、マイホームを買った個人と、不動産デベロッパーの理財商品を買った個人投資家である。独裁政治の政府救済計画において、個人はいつも劣後になる。
政府にとって心配しなければならないのは、デベロッパーの連鎖倒産が起こることである。目下、中国政府のなかでは、すべてのデベロッパーを救済するのではなくて、救済するデベロッパーと救済しないデベロッパーを分けた「ホワイトリスト」が作成されているが、救済するデベロッパーと救済しないデベロッパーの線引きの基準がはっきりしないというモラルハザードが起こる可能性も高い。
政府がデベロッパーを救済する条件としては創業者あるいは経営者に経営権の譲渡を求めることは当然だ。
国有企業による吸収・合併となるだろうが、その後の不動産開発がうまく行く保証はほとんどない。そのほかには、国有銀行による融資の増額でキャッシュフローの難関を乗り切るやり方も考えられる。
しかし、銀行融資の増額は経済危機の根本的な問題解決にはならない。逆に採算性を度外視する、ソフトな予算制約が引き起こすモラルハザードは、経済効率をさらに悪化させ国有銀行を巻き込み壊滅的になる可能性すらある。
経営難に陥ったデベロッパーにとって、政府の指導に基づいた国有銀行のレスキュー融資はフリーランチのようなもので、このような融資はデベロッパーの経営を改善することにほとんど寄与しない。
中国では、不動産バブル崩壊のリスクが囁かれるようになって久しいが、政府、国有銀行、デベロッパーと個人はいずれもきちんとリスクに備えてこなかったようで壮大なツケを支払わせられる可能性が高い。
中国経済が直面する「失われた20年ないし30年」
不動産バブルの崩壊以降、一部の研究者の間で中国経済の日本化が議論されている。現象面では似ているところがあるかもしれないが、本質的には異なる問題だ。
米国スタンフォード大学客員研究員の許成鋼(専門は理論経済学)は、目下の中国経済は日本のバブル崩壊とはならず、構造的に、政府による経済統制という点で1970年代のソ連経済とよく似ていると指摘している。
30年前の日本のバブル崩壊は、基本的に市場の失敗だった。後処理の段階で政府が失敗を犯し、立ち直るのに時間がかかり、失われた30年を喫した。
それに対して、中国の不動産バブルとバブル崩壊は、中央政府の失敗が引き起こしたものだ。
中国政府は不動産開発を経済成長の牽引役として位置づけた。土地の公有制を堅持し、不動産課税、すなわち、固定資産税は導入してこなかった。
習政権は金融緩和政策をもって不動産バブルの崩壊を食い止めようとしているように見える。しかし、効果は今の処ない。
現状において不動産デベロッパーを救済する融資を小出しに実施しても、問題の解決を先送りするだけである。重要なのは構造改革だ。そこで注目は『三中全会』、昨年より異例の遅れに遅れた『三中全会』が7月に開催される。三中全会というのは、5年に1度開かれる共産党大会の間に通常7回開かれる中央委員会全体会議の3番目の会議という意味です。歴史的に見て、重要な経済政策が発表されたり、中国経済に大きなインパクトを与える決定がなされる。 今回は低迷している中国経済にとって特に重要な会議になるでしょう。

日本のデフレは30年間続いたが、輸出製造業は順調に日本経済を支えていた。それに対して、中国には米中対立とサプライチェーンの再編という壁が立ちはだかる。習政権は目の前の状況の深刻さを十分に理解しておらず、国内循環、すなわち、自力更生で経済成長を実現しようとしているようだ。
しかし、中国の経済構造は輸出依存であり、内需だけで成長を持続させるのはそもそも無理なことである。
中国国家統計局報道官の記者会見を聞いていると、都合の悪い経済統計を言葉で粉飾しようとする傾向が強くなっている。具体的な経済統計をいわずに、経済が改善に向かっているというように言葉を濁す場面が多い。
実際のところ、不動産バブルは崩壊して、経済が回復する力は弱くなっているはずだ。国家統計局が正しい統計を発表しなければ、正しい政策を考案する根拠をもてない。このままいくと、中国は失われた20年ないし30年を喫する可能性が高くなっている。
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