中国におけるGDP成長率は、2023年の予測値である5.2%から、2024年には4.1%に減速すると全米産業審議会は予測している。
理由は以下の4つだ。
1.潜在需要の減少
2.不動産不況はなくならない
3.中国製品に対する需要は減速傾向
4.中国当局は大規模な景気刺激策を実施できず、漸進的な対策にとどまる
2023年は中国経済の低迷が世界の注目を集めた。コロナ禍の反動から高成長が期待されていたが、蓋を開けてみると消費、輸出ともに低調。そして2021年から続く不動産市場の低迷はさらに深刻化している。
危機の嚆矢となった恒大集団(エバーグランデ)は前年、前々年の決算を2023年7月に遅れに遅れて発表したが、2年間で約11兆円という天文学的赤字を計上した。さらに創業者の許家印が当局の監視下に置かれていることも判明。建設資金をかき集めるための投資商品販売に詐欺容疑がかけられているようだ。同社はもはや実質的には破綻しているとはいえ、約48兆円にのぼる負債をどう処理するかという問題が残されている。
中国不動産市場の問題は個別企業にとどまらない。最大手の碧桂園(カントリーガーデン)は2023年上半期だけで1兆円もの赤字を計上。資金繰りが難航し、債務不履行寸前で回避するという綱渡りを繰り返している。中国誌の報道によると債務不履行予備軍は68社にのぼるという。
今回の不動産危機、その直接の引き金となったのは2020年夏の政策だ。過熱する不動産市況を引き締めることが目的だったが、「債務を削減しなければ新たな資金調達を制限する」というデベロッパー向けの規制が効きすぎた。「大大大!」、つまり債務を増やしてでも土地を買いあされば勝ちという勝ちパターンは一夜にして書き換わり、債務削減が至上命令となった。多くの不動産企業はまたたく間に資金繰りに苦しみ、物件の建設工事ストップが頻発した。これでは人民の不満が爆発すると、政府は慌てて工事完遂を厳命したが、今度は債務返済の金が足りなくなり……と悪循環が続いた。
建設工事完遂は購入者にとっては福音だが、中国全体を見渡すと果たしてこれ以上作るべきなのかとの疑問もある。少なくとも一部地域での供給は過剰だ。
習近平(シージンピン)総書記は就任以来、イノベーションの重要性を唱え続けてきたが、一方で不動産依存を克服する気配はない。その象徴が習近平総書記肝いりの国家プロジェクト、雄安新区だ。北京市南西約100キロの田舎に、ゼロから近代都市を作り上げる計画だ。
ハイテク企業や研究機関が集まる最新スマートシティとの触れ込みだが、結局は田舎での不動産建設にほかならない。現地を訪問すると、高層マンション、オフィス街、コンベンションホールと箱物だけはそろっているが、人影は皆無のゴーストタウンだ。一時は企業の進出ラッシュも伝えられたが、看板だけ置いて人はいない会社がほとんどだ。イノベーション駆動を口にするのはたやすいが、骨の髄までしみこんだ不動産と投資に依存した発想と経済体質を変えるのは容易ではない。