名古屋旅行2日目の10月9日、再び御園座へ。
坂田藤十郎襲名披露興行の昼の部を観てきました。
この日ももちろんキモノで行きました(というか、洋服は最初から持って行きませんでした……)。
帯は前日と同じ、坂田藤十郎丈の紋にちなんだ星梅鉢の帯で、着物だけ替えました(キモノの写真は、この記事の末尾にあります)。
昼の部の演目は、尾上松緑さんの「矢の根」、中村時蔵丈の「藤娘」、坂東三津五郎丈の「越後獅子」、そして坂田藤十郎丈の襲名披露狂言「盛綱陣屋(もりつなじんや)」です。
「矢の根」はいわゆる「曽我物」と呼ばれる、曽我兄弟の仇討ちに題材をとった演目で、「歌舞伎十八番」の一つにもなっています。
主役の曽我五郎時致(そがのごろうときむね)は、勇壮・豪快な芸風「荒事(あらごと)」の代表的な役どころです。尾上松緑さんの若さあふれる演技がとても印象的でした。
「藤娘」は、有名な長唄舞踊です。
最初は舞台と客席が暗転していて、パッと明かりがつくと、大きな松の木と長い藤の花房を背にして藤の枝を肩にかついだ、美しい藤の精が立っているのです。このオープニングだけでも、場内は必ずと言っていいほど歓声に包まれます。
しかも、中村時蔵丈の「藤の精」はとても美しくてかわいらしくて、客席からは何度も大きな拍手と歓声が起こっていました。
「藤娘」に続いて上演された「越後獅子」も、長唄舞踊の代表的な曲です。
踊るのは、舞踊の名手・坂東三津五郎丈。
とにかくすばらしい踊りでした。名曲にあわせて名人が踊る、これ以上素敵なことはありません。
「越後獅子」というのは別名「角兵衛獅子」とも呼ばれた大道芸で、越後の国から農閑期に江戸へ出てきた人々によって披露されていました。
長唄の「越後獅子」では、その角兵衛獅子が故郷に残してきた妻を想いながら芸を披露し、再び故郷へ戻っていく様子を描いています。
角兵衛獅子が芸を披露する場面では、何と一本歯の下駄を履いて、長い晒の布をくるくると振りながら踊るのです。
あざやかな三津五郎丈の踊りに、目が釘付けになってしまいました。
昼の部を締めくくる「盛綱陣屋」は、時代物の義太夫狂言。
それまでの、長唄の軽やかで楽しげな舞台とは一変して、義太夫ならではの重厚な雰囲気が場内を包みます。
兄弟で敵味方にわかれている佐々木盛綱と高綱。
高綱を討ち取ったので兄の盛綱に首実検(首が本人のものであるかどうか確かめること)させようと、北條時政が盛綱の陣屋へやってきます。
しかし、実はこの首は別人(影武者)のものだったのです。
首桶を開けた瞬間、それに気付いてハッとする盛綱。
しかしそのとき、高綱の息子小四郎が、首が父のものではないことを知りながら、父の後を追うと言って自害します。首が高綱本人のものであると時政に思い込ませようとしたのです。
幼い小四郎が自ら命を投げ打って功労を立てようとしたことに、盛綱は心を打たれます。
盛綱を演じるのは坂田藤十郎丈。何と、初役(初めてその役を演じること)なのだそうです。
貫禄のある重厚な演技で、知と情を兼ね備え品格のある武士を見事に演じておられました。
欲を言えば、前半と後半でもう少しメリハリがあったほうがよかったんじゃないかなあ……と思いました。前半から重みがありすぎて、後半の山場が引き立ちにくく感じられて残念でした(それに、前半ちょっと眠くなってしまいました……)。
でも、武将らしい品格を保ち決して感情をあらわにしないのに、その奥にある心情がとてもよく伝わってきて、さすがは人物の心根を大切にして演じる藤十郎丈だなあ……と思いました。
共演の三津五郎丈や菊五郎丈もかっこよかったです。
<当日のキモノ>
帯は、前日と同様、藤十郎丈の紋にちなんだ星梅鉢の帯です。
着物を紺の鮫小紋に替えました。
御園座の客席には、着物姿の女性がたくさんいらっしゃいました。
全体的に、訪問着など華やかな着物の方が多く見られました。そうなると、あまのじゃくな私は地味めの着物を着たくなってしまうのです……(笑)。
個人的には、地味な着物のほうが帯が引き立つ感じがして好きなのですが……。
同じ帯でも、合わせる着物が違うとだいぶ雰囲気が変わりました。
↑帯枕の紐に匂い袋を通して、帯の脇にさげてみました。かすかにお香の香りがただよってきて、何となく落ち着く感じがしました。
坂田藤十郎襲名披露興行の昼の部を観てきました。
この日ももちろんキモノで行きました(というか、洋服は最初から持って行きませんでした……)。
帯は前日と同じ、坂田藤十郎丈の紋にちなんだ星梅鉢の帯で、着物だけ替えました(キモノの写真は、この記事の末尾にあります)。
昼の部の演目は、尾上松緑さんの「矢の根」、中村時蔵丈の「藤娘」、坂東三津五郎丈の「越後獅子」、そして坂田藤十郎丈の襲名披露狂言「盛綱陣屋(もりつなじんや)」です。
「矢の根」はいわゆる「曽我物」と呼ばれる、曽我兄弟の仇討ちに題材をとった演目で、「歌舞伎十八番」の一つにもなっています。
主役の曽我五郎時致(そがのごろうときむね)は、勇壮・豪快な芸風「荒事(あらごと)」の代表的な役どころです。尾上松緑さんの若さあふれる演技がとても印象的でした。
「藤娘」は、有名な長唄舞踊です。
最初は舞台と客席が暗転していて、パッと明かりがつくと、大きな松の木と長い藤の花房を背にして藤の枝を肩にかついだ、美しい藤の精が立っているのです。このオープニングだけでも、場内は必ずと言っていいほど歓声に包まれます。
しかも、中村時蔵丈の「藤の精」はとても美しくてかわいらしくて、客席からは何度も大きな拍手と歓声が起こっていました。
「藤娘」に続いて上演された「越後獅子」も、長唄舞踊の代表的な曲です。
踊るのは、舞踊の名手・坂東三津五郎丈。
とにかくすばらしい踊りでした。名曲にあわせて名人が踊る、これ以上素敵なことはありません。
「越後獅子」というのは別名「角兵衛獅子」とも呼ばれた大道芸で、越後の国から農閑期に江戸へ出てきた人々によって披露されていました。
長唄の「越後獅子」では、その角兵衛獅子が故郷に残してきた妻を想いながら芸を披露し、再び故郷へ戻っていく様子を描いています。
角兵衛獅子が芸を披露する場面では、何と一本歯の下駄を履いて、長い晒の布をくるくると振りながら踊るのです。
あざやかな三津五郎丈の踊りに、目が釘付けになってしまいました。
昼の部を締めくくる「盛綱陣屋」は、時代物の義太夫狂言。
それまでの、長唄の軽やかで楽しげな舞台とは一変して、義太夫ならではの重厚な雰囲気が場内を包みます。
兄弟で敵味方にわかれている佐々木盛綱と高綱。
高綱を討ち取ったので兄の盛綱に首実検(首が本人のものであるかどうか確かめること)させようと、北條時政が盛綱の陣屋へやってきます。
しかし、実はこの首は別人(影武者)のものだったのです。
首桶を開けた瞬間、それに気付いてハッとする盛綱。
しかしそのとき、高綱の息子小四郎が、首が父のものではないことを知りながら、父の後を追うと言って自害します。首が高綱本人のものであると時政に思い込ませようとしたのです。
幼い小四郎が自ら命を投げ打って功労を立てようとしたことに、盛綱は心を打たれます。
盛綱を演じるのは坂田藤十郎丈。何と、初役(初めてその役を演じること)なのだそうです。
貫禄のある重厚な演技で、知と情を兼ね備え品格のある武士を見事に演じておられました。
欲を言えば、前半と後半でもう少しメリハリがあったほうがよかったんじゃないかなあ……と思いました。前半から重みがありすぎて、後半の山場が引き立ちにくく感じられて残念でした(それに、前半ちょっと眠くなってしまいました……)。
でも、武将らしい品格を保ち決して感情をあらわにしないのに、その奥にある心情がとてもよく伝わってきて、さすがは人物の心根を大切にして演じる藤十郎丈だなあ……と思いました。
共演の三津五郎丈や菊五郎丈もかっこよかったです。
<当日のキモノ>
帯は、前日と同様、藤十郎丈の紋にちなんだ星梅鉢の帯です。
着物を紺の鮫小紋に替えました。
御園座の客席には、着物姿の女性がたくさんいらっしゃいました。
全体的に、訪問着など華やかな着物の方が多く見られました。そうなると、あまのじゃくな私は地味めの着物を着たくなってしまうのです……(笑)。
個人的には、地味な着物のほうが帯が引き立つ感じがして好きなのですが……。
同じ帯でも、合わせる着物が違うとだいぶ雰囲気が変わりました。
↑帯枕の紐に匂い袋を通して、帯の脇にさげてみました。かすかにお香の香りがただよってきて、何となく落ち着く感じがしました。
私なんどは、幾度か顔見世へは行くも、知識が無い旨
その、素晴らしい演技を理解するまではとてもとても・・・
やはり、何事においても、楽しいと思えるまでにはそれなりの努力が必要かと。
なお、私もかような場所へのお着物は晴れやかな物でなく、しっとりとした着物の方が賢明かと。実際手持ちの着物は地味な物ばかり(かなりのお婆さんになっても纏えますしネ)
歌舞伎をはじめいわゆる「古典芸能」と呼ばれるジャンルのものは、とっつきにくい部分も多々ありますよね……。
でも意外に、現代にも通じる人間の姿が垣間見られて、笑ったり泣いたり納得したり、純粋に楽しめる部分も多い感じがします。
「歌舞伎を観る」というより「芝居を観る」という感じで、気楽にご覧いただけるのが何よりだと思いますヨ
場内に着物姿の方がいらっしゃるだけでも十分に華やいで見えますが、襲名披露興行や顔見世興行だと、華やかな着物の方も増えて、いっそう華やぎますよね。
客席に着物姿の方が多いと、役者さんもうれしいらしいです