本朝徒然噺

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三越歌舞伎

2008年09月07日 | 芝居随談
9月7日(日)
三越歌舞伎を観に行きました。

やや朝寝坊をしてしまったので(正確に言うと、やたらと朝早くに目が覚めてしまったので「日本の話芸」の再放送を見て、その後で二度寝をしてしまったのですが)、洋服でのお出かけとなりました。

チケットWeb松竹では売り切れになっていたのに、なぜかイープラスの得チケが出ていた三越歌舞伎
得チケでとれた席は2階でしたが、舞台もよく見えたし、花道もないので、ノープロブレムでした
三越劇場の2階席には初めて上がったのですが、1階席で見るよりも、舞台との距離感が良いように思いました(というか、1階席が舞台と近すぎるのかもしれませんが……)。
天井のアールデコ調の装飾も近くで見られて、なんだか嬉しい気分になりました
ちなみに、2階席の後ろのほうであれば当日券もあったみたいです。

若手の役者さんたちの研鑽の場として定着している三越歌舞伎。
今回は、橋之助さん、孝太郎さんを中心としたメンバーによる公演で、演目は「ぢいさんばあさん」「手習子」「俄獅子」。

「ぢいさんばあさん」では、中村橋之助さんが伊織、片岡孝太郎さんが「るん」をつとめておられますが、これは史上最年少コンビなのだそうです。
るんの弟・久右衛門を坂東亀三郎さん、伊織の同輩・下嶋を中村亀鶴さん、久右衛門の息子・久弥を中村壱太郎さん、久弥の妻きくを坂東新悟さんという、フレッシュな一座です。

史上最年少の伊織&るんをはじめとしたフレッシュな顔ぶれによる「ぢいさんばあさん」、これがなかなか素晴らしい舞台で、感激してしまいました。

歌舞伎座では、何年か前に仁左衛門さんの伊織&菊五郎さんのるんで上演されたのが記憶に新しく、もちろんとても素晴らしい舞台だったのですが、その時とはまた違った感動がありました。

生まれたばかりの一人息子がいるおしどり夫婦の伊織とるんが、ある事件により離ればなれで暮らすことになってしまいます。
37年後にようやく再会を果たすことができますが、二人の間の愛息子は、幼くして疱瘡で亡くなってしまっていたのでした。
それも天から定められた寿命だったのだから仕方がないと、伊織はるんをなぐさめ、二人で新しい人生を歩んでいこうと誓います。
そこへ鳴き渡る鳥の声を聞いて、るんは一瞬「坊の泣き声がしたように」錯覚します。
孝太郎さんのるんは、この時、ただ昔を思い出して懐かしんでいる感じではなく、「離ればなれになる前の自分たちに一瞬にして戻り、隔たれていた時間がつながった」ように見えて、感動的でした。
伊織とるんが失った多くの時間を思うと切なくて、でも、それがこの瞬間に救われたのだと思うと嬉しくて、自然と涙があふれてきました

史上最年少コンビの伊織とるん、細かなところを言えばまだまだ改善の余地はあるのかもしれません。
若い時の伊織のほうがなぜかオッサンくさく見えてしまったり(笑)、おばあさんになったるんが登場する時、武家のおばあさんではなく町家(しかも上流ではない)のおばあさんに見えてしまったり……
でも、大ベテランの役者さんたちが演じる時のしみじみとした味わいとはまた違った、心の琴線に触れる何かがある舞台だったと思います。
観終わってからもずっと、心地よい余韻が残りました。

脇を固める若手のみなさんも、すごくしっかりと演じておられて、頼もしい限りです。
亀三郎さんの久右衛門は、芝居の序盤をきっちりと引き締めてくれていました。
亀鶴さんの下嶋は、「周りから嫌われているけれど決して悪人ではない」という人物像がよく表れていて、鴨川べりの料亭で伊織に向かって悪態をつく場面でも「自分だけ宴席に呼ばれず、そのうえ伊織から面と向かって『正直言ってお前のことが苦手だ』と言われてしまった」ことに対する孤独感や悲しみがにじみ出ていました。
壱太郎さんと新悟さんも、初々しく微笑ましい若夫婦を素直に演じておられて好感が持てました(夫婦ではなく「姉弟」のように見えてしまったところがなきにしもあらずですが……笑)。
若いメンバーでも、「しっかりと地に足がついた舞台」という印象でした

「ぢいさんばあさん」の後、30分の休憩をはさんで舞踊「手習子」「俄獅子」。
「手習子」を踊るのは孝太郎さん。あどけない少女の恋心を、品良く愛らしく踊っておられました。
「俄獅子」は、橋之助さん、国生ちゃん、宗生ちゃんによる親子競演。なので、鳶頭と芸者の組み合わせではなく、鳶頭と若鳶という組み合わせです。
国生ちゃん、宗生ちゃんの若鳶、とっても可愛らしかったです

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三越劇場のロビーには、歌舞伎関連の本の販売コーナーなど、特設の売店が出ていました。
榮太楼の売店も出ていて、豆大福などの和菓子が1個から買えるようになっているので、休憩時間のおやつにもぴったりです
写真左下に写っているのは、榮太楼の焼菓子「日本橋まんじゅう」。こちらもバラ売りしてくださっていました。

日本橋まんじゅう

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