本朝徒然噺

「和」なモノについて気ままに語ります ※当ブログに掲載の記事や画像の無断転載はご遠慮ください

歌舞伎座・七月大歌舞伎(昼の部)へ(7/12)

2008年07月13日 | 芝居随談
7月12日(土)、歌舞伎座の昼の部へ行ってきました。

今年の6月は結局一度も着物を着なかったワタクシ。薄物の季節になり、夏キモノを満喫するぞ~!と張り切っていたのですが……今回も洋服
朝、歯医者さんに行かねばならず、歯医者さんから戻って着替える時間はなさそうだったので、キモノはとっととあきらめました。さすがに、歯医者さんに絹モノ着て行く勇気はないですしねぇ……。

そんなわけで、今回も「着物でお出かけ日記」ではなく観劇日記になっております。これからご観劇予定の方は、ご自身の責任と判断においてお読みください(笑)。

◆◇◆◇◆

今月の歌舞伎座は、昼夜ともに開演時間が30分遅くなっております(昼の部11時30分、夜の部17時)。

そのうえ、昼の部は35分の幕間が2つ。終演時間も普段より早めで、15時15分。
でも入場料はいつもと同じ

昼の部の演目は、「義経千本桜」の「鳥居前」「吉野山」「川連法眼館」。

■鳥居前

「鳥居前」では、忠信を海老蔵さん、義経を段治郎さん、静御前を春猿さん、弁慶を権十郎さん、早見藤太を市蔵さんがつとめておられます。

段治郎さんの義経が、台詞も所作もどっしりと落ち着いていて、いいなと思いました。
序幕にしては重厚すぎると感じる方もいらっしゃるのかもしれませんが、今回は全段通し上演ではなく三幕のみの半通しなので、この場面での義経はこのくらいどっしりしていたほうがいいんじゃないかなあ……と、私は思います。でないと、芝居がダレてしまうような気がします。

「初音の鼓」を静御前に与える場面でも、院から「この鼓の表は頼朝、裏は義経」と言われて拝領したものであること、それはすなわち「頼朝を打て(討て)」という院宣であること、しかし兄を討つことはできないからこの鼓を自分では打てないのだということが、台詞からしっかりと伝わってきたので、後の「川連法眼館(四の切)」とのつながりが、初めてご覧になる方にもわかりやすかったんじゃないかと思います。

そんなこんなで、いいなと思った段治郎さんの義経ですが、四の切では配役がかわるので残念

海老蔵さんの忠信は、花道の出も勢いがあって力強く、おしまいの狐六法もダイナミックで、さすが成田屋といった感じの、荒事の醍醐味を味わえるものでした。
台詞は、全体的にやや力が入り過ぎている感じもしましたが、一言一言気を配って丁寧に言っている感じがよく伝わってきて、好感が持てました。

■吉野山

「吉野山」はおなじみの場面ですが、今回のはいつものとはちょっと違ったご趣向になっています。

今回、浄瑠璃は清元ではなく義太夫。
幕が開いて、「あれ、なんかいつもと大道具が違うなあ」と思っていたら、途中で書割が左右に開いて、上手(かみて)に玉三郎さんの静御前が立っていました。

衣装も、いつもの白地の道行用の打ち掛けは着ておらず、いきなり赤の衣装(通常のやり方の場合に、道行用の打ち掛けの下に着ているやつです)だったので、目を引きました。
大道具も、上手のほうに遠目で蔵王堂、下手(しもて)のほうに吉野川が描かれており、華やかでした。

おしまいも、花道は使わず、文楽と同じように舞台に静御前と忠信がいてそのまま幕が引かれる形。藤太主従との立ち回りもありません。

私は、このやり方(おそらく文楽のやり方に沿っているのだと思います)での「吉野山」を観たのは初めてなので、新鮮でした。
これだけでも、観に行った価値は十分あったかも。

清元でないので「女雛男雛」のくだりがなかったのは残念でしたけれども(このお二人の「女雛男雛」はきっときれいだっただろうなあ……)、全体的に落ち着いた風情で、私は結構好きです、こういうの。

■川連法眼館

海老蔵さんの「四の切」を観るのは、2006年11月の新橋演舞場2007年10月の御園座に続いて3回目。

前回、前々回ともにガックリきて、しかも御園座からまだ8か月余りしか経ってないので、またガックリきたらどうしよう……という不安半分、歌舞伎座であえてこれを演るということは、きっとその後稽古を積んで満を持してのことなのだろうし、進歩しているのかもという期待半分で観に行きました。
もしもガックリきたら途中で出ることも覚悟して、16列目の通路横をとっておいたんです(笑)。

結果、途中で出ることもなく、眉間にシワを寄せることもほぼなく(笑)、おしまいまでちゃんと観ていられました。

御園座のときと比べて、確実に前進している感じがしました。
まず、台詞が上すべりしてない!
狐忠信(源九郎狐)になってから、何か所かフニャフニャしてしまったところがありましたが、全体的に台詞がすごく丁寧だったと思います。
フニャフニャしてしまったところはどうしても客席か笑いが起きてしまっていましたが、新橋演舞場や御園座の時と比べて、客席から(笑うところじゃないのに)笑いが起きる回数は明らかに減っていました。

所作も、以前に観たときは何だかふわふわして見えたのですが、今回はちゃんと芯が入っている感じがして、どっしりと見えました。

特に印象的だったのは、義経の前から立ち去ることを決意し、鼓となった親狐との別れを惜しんで地面に伏してもんどりうつところと、宙乗りになった後、鼓を持って手足を揺らす場面。
前者のほうは、後ろを向いていて表情が見えなくてもその嘆きがよく表れていたし、後者のほうは、ただ激しく手足を動かしてケレンに走るのではなく、源九郎狐の喜びがきちんと表現されていて、義太夫のラストの盛り上がりとうまくつながっていた感じがします。

所作というのは、カタチだけをなぞっているのとそうでないのとでは、見え方がこんなに違ってくるんだなと、あらためて思いました。
今回は、所作や台詞まわしそのものではなく、その根底にある「肚」を考えて演じておられるように見受けられました。だから、全体的に芝居に厚みが出ていたように思います。

細かな点ではまだ課題があるのかもしれないけれど、確かな手応えが感じられる舞台でした。
次にまた海老蔵さんの「四の切」を観るのが楽しみです。

◆◇◆◇◆

歌舞伎座のロビーに、猫グッズのお店が出ていたので(19日まで)、またもや散財
ネコちゃんの絵が描かれた小ぶりの(←私から見たら)ビールグラスを買いました。
缶ビールも、このグラスに移して飲めばグンとおいしくなりそうです。

猫のビールグラス

最新の画像もっと見る

4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
暑中お見舞い (やっぴー)
2008-07-20 21:54:21
申し上げます~
遠征やなにやらでお忙しかった事でしょう。
お元気そうで何よりでございます♪
今月の松竹座は行かれたの?

私、今月は歌舞伎座に行く時間が取れませんので
藤娘さんの記事を拝見出来て嬉しいです~ 
(私は今回、国立のみ)
ABさま、精進されてるんですねえ、よかった×2。
パパさまも心配ですしね、さすが息子 

とうとう梅雨も明けて本格的な夏ですね。
どうぞお身体にはお気をつけて~
返信する
お待ちしておりました~ (agma)
2008-07-20 23:28:40
日々お忙しく&楽しく過ごされているとは思っておりましたが、7月中旬を過ぎた頃から ちょっと心配してしまったのも事実・・・・。

ブログアップお待ちしておりました!!

『次にまた海老蔵さんの「四の切」を観るのが楽しみです。』との藤娘さんの感想が なんだか自分のことのように嬉しくもあり。(笑)

前回海老蔵丈の狐忠信で図らずも涙してしまった私と
しましては 今月やはり観るべきでした~。

残りの観劇日記も ごゆるりとで結構ですので
ヨロシクお願いいたします。♪
返信する
やっぴーさま (藤娘)
2008-07-20 23:39:09
ありがとうございます

松竹座には、今度の週末に参ります~
山城屋さん、音羽屋さん、松嶋屋さんが揃う豪華な顔ぶれなので、楽しみにしております

海老ちゃんは、五月の知盛といい今月の忠信といい、着実に前進している感じで、嬉しい限りです。
お父様も、一日も早く退院なさって舞台に復帰してくださるといいですね

暑さ本番となるなか、やっぴーさまもお忙しい日々と存じますが、どうぞお体に気をつけてお過ごしくださいまし
返信する
agmaさま (藤娘)
2008-07-21 00:03:57
ありがとうございます&ご心配おかけして申し訳ございません

6月後半に仕事が一段落つき博多遠征を楽しんだ後、ちょっとのんびりできるかな~と思っていたのですが、なんだかんだでまた仕事が慌ただしくなり、今年は残念ながら「すずめ二人会」に行くことができませんでした

今月の海老蔵さんは、「四の切」もさることながら「吉野山」での忠信がすごく良かったですよ~(さすがに男前でした
いつもと一味違った演出の「吉野山」が見られますし、今月は31日まで興行しているので、もしお時間がとれましたらぜひご覧になってくださいまし

昼の部のチケットは、当初は連日売り切れだったようですが、直前や当日になると、1等席・2等席に少し空きが出ているみたいですよ

積み残している観劇記も早めにアップせねば……と思っておりますが、次なる遠征が……(笑)
返信する