本朝徒然噺

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南座・新派120年記念公演へ(9/20)

2008年09月24日 | 芝居随談
お盆に休みがとれなかったのでせめてお彼岸には……と、有休を使って飛び石連休を連休にし、帰省しました。

ただ帰省するだけではもったいないので、途中、京都で新派公演を観劇
20日(土)朝の新幹線で東京を発ち、いったん京都で降りて南座で昼の部の公演を観た後、再び新幹線に乗って帰省するという荒技に出ました(笑)。

台風の影響が心配されましたが、幸い、朝家を出る時には雨もやんでおり、新幹線も平常どおり運行
京都に着いたらすっかり晴れ渡っていました

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1月に三越劇場、6月に新橋演舞場でおこなわれた新派120年記念公演も、今回の南座でおひらき。
南座での演目は「遊女夕霧」と「明日の幸福」。今回も、新派の代表作といえる演目が並んでいます。

南座九月新派公演

■遊女夕霧

新派の「遊女夕霧」は、歌舞伎のほうの夕霧・伊左衛門の話とはまったく別モノで、舞台は大正時代の東京・吉原。
紋日であるお酉さまの日に、馴染み客が遊女に新調の夜具を贈る「積夜具」という風習があり、呉服屋の番頭・与之助が夕霧に積夜具をしてやります。
奉公人の身で無理をして積夜具をしてくれた与之助の心遣いに夕霧は心を打たれますが、実はそのお金は、与之助が店の得意客を騙して集めたものだったのです。
夕霧は、自分が原因で逮捕された与之助を何とかして助けたいと、被害にあった得意客のもとを訪ね、あることを頼みます。
被害にあった客のなかの一人、もと芸人で、講談の口述筆記をしている悟道軒円玉は、夕霧の頼みを頑として聞き入れようとしませんが……。

夕霧を演じるのは波乃久里子さん。
与之助の役で片岡愛之助さん、悟道軒円玉の役で笹野高史さんと、歌舞伎、新劇の役者さんが脇を固めておられます。

笹野高史さんの悟道軒円玉、筋の通らないことが嫌いで、頑固で、ぶっきらぼうなようで実は人情に厚い江戸っ子気質の芸人、という感じがとてもよく出て、すごく良かったです。
まだ若く視野の狭い夕霧に対しても厳しいことを言うのですが、その根底に優しさが垣間見えて、胸に響きました。
笹野さんの、自然体のように見えながらも非常に細やかな演技、声を作り過ぎずかつきちんと抑揚のある台詞とあいまって、舞台がすごく引き締まっていました
青柳喜伊子さん演じる円玉の妻・お峯も、酸いも甘いも噛み分けた、いかにも芸人の女房という感じの、人情味のある素敵な女性でした。

正直なところ、前半の吉原の場面では若干退屈していたのですが、後半、悟道軒円玉の家の場面になってからは、一気に舞台に引き込まれました。

■明日の幸福

昭和30年頃の、ある裕福な家庭の夫婦三世代の日常をコミカルなタッチで描いた「明日の幸福」。

家長として絶対的権力を持っているおじいちゃま・松崎寿一郎を安井昌二さん。それを支えるおばあちゃま・淑子を英太郎さん。
寿一郎の息子で、亭主関白ではないけれども家庭のことは妻にまかせっきりの寿敏を笹野高史さん。寿敏の妻で、舅姑に尽くし夫を立て、かつ嫁にも気配りをする「良妻賢母」の恵子を水谷八重子さん。
戦後育ちで自由奔放な、寿一郎の孫夫婦を片岡愛之助さんと瀬戸摩純さん。
世代の異なる三組の夫婦を、それぞれ個性豊かに演じておられました。

血のつながった男三代のコミュニケーションの希薄さに比べ、目に見えない結びつきを感じさせる嫁姑三代。
おじいちゃまが大切にしているハニワをめぐっての騒動のなかで、それぞれの思いや意外な事実が明らかになっていきます。

コメディタッチでありながら随所に核心をつくものがありますし、「ひと昔前」の話でありながら違和感なく楽しめる舞台でした
ぜひこれからも、どんどん上演してほしいなあ……と思います

「明日の幸福」が終わった後、出演者の方たちによる新派百二十年のご挨拶もあり、華やかな雰囲気でした

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今回は節約して、3階1列目(2等席)を購入。2等席でも、1等と5000円くらい違うので……。
南座は、3階席の椅子も比較的ゆったりしているので、快適です。背もたれも高くて楽ですし。
今回の芝居では花道は使用しませんでしたが、1列目からなら花道の七三も十分見えますよ

南座3階席からの眺め

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