本朝徒然噺

「和」なモノについて気ままに語ります ※当ブログに掲載の記事や画像の無断転載はご遠慮ください

歌舞伎座特別舞踊公演

2007年09月27日 | 芝居随談
歌舞伎座の特別舞踊公演へ行ってきました。

尾上松緑丈、中村雀右衛門丈、中村富十郎丈、坂東玉三郎丈の踊りが一挙に見られるというなかなか豪華な公演ですし、雀右衛門丈が出演されるとあっては、何はさておいても行かねばなるまい!
……というわけで、前もって午後半休を取得しておき、がんばって仕事を一段落つけて行ってまいりました。6時30分開演だったので、普通に5時終業の会社だったらわざわざ有休を使わなくてもいいのですが、なにせウチの会社は、定時ジャストで出たとしても開演時間に間に合わないので……

■「三升猿曲舞(しかくばしらさるのくせまい)」尾上松緑丈

此下兵吉(木下藤吉郎のちの豊臣秀吉をモデルにした役)が、打ってかかる奴を払いのけながら颯爽と踊る、歌舞伎舞踊らしい舞台です。
立ち回りもどこか軽やかで楽しげな雰囲気で、幕開きのご祝儀にふさわしい一幕でした

■「高尾」中村雀右衛門丈

「仙台高尾」と呼ばれた吉原の太夫・二代目高尾の霊が、自身の塚の前に現れ、廓勤めの様子を語るという設定の舞踊です。
荻江節のしっとりとした響きにのせて、吉原の紋日の様子や廓の四季の風情、そして苦界勤めの苦しみを表現する雀右衛門丈の高尾は、なんとも幻想的でした。
おみ足の調子もあるせいだと思いますが、雀右衛門丈の踊りは動きのごく少ない振り付けになっています。でも、手の動きやたたずまいなどで、見事に「高尾」の世界が表現されているのです。体全体から役の風情がにじみ出ているような感じで、「『芸』ってこういうことなんだなあ……」と思いました。
こうした雀右衛門の踊りを「動きがほとんどない」と敬遠される方もいらっしゃるのかもしれませんが、「役者の踊り」は「舞踊家の踊り」とは違うのだろうし、違うべきであろうと、私は思います。
動きの如何にかかわらず、「役の世界を表現している」という点において、雀右衛門丈の踊りは「役者の踊り」として素晴らしいと思うのです。

最近、本興行に出演される機会が少なくなっている雀右衛門丈ですが、これからもお元気で、舞台に立ち続けてくださることを願っています

余談ですが……、この日、雀右衛門丈の踊りのおしまいのほうで、2階席か3階席の中央あたりから「きょうや~」という、いささか間延びした女性のかけ声がかかりました
幸い、この日のお客さんは、かけ声に笑うようなことはありませんでしたが、幻想的な雰囲気が一瞬こわれてしまって残念でした
声をかけたくなる気持ちはよくわかりますが……中途半端なかけ声は芝居をこわすので、もう少し練習してからかけていただきたいなあ、と思ったりして……

■「うかれ坊主」中村富十郎丈

こちらも、「俗っぽいお坊さん」の雰囲気が絶妙に表現されている、素晴らしい踊りでした
軽やかでユーモラスで、でも決して下品ではなくて、観ていて気持ち良く、楽しくなりました。
富十郎丈、さすがの貫禄です……

■「雪」「鷺娘」坂東玉三郎丈

「雪」は地唄舞、「鷺娘」は長唄舞踊です。
ちなみに、地唄は上方のものなので、「雪」は「き」のほうでなく「ゆ」のほうにアクセントをおいて読むのが正式です。

この日、「雪」の三絃と唄を担当されていたのは、何と富山清琴(とみやませいきん)さんでした
富山清琴さんの地唄を生で聴けるだけでも、十分価値ある舞台だったと思います!
「ほんに昔の 昔のことよ」というあの有名なくだりで、富山清琴さんの美しい声が響き渡った時は、ゾクゾクしてしまいました

玉三郎丈の踊りは、もちろん美しかったのですが……、「雪」と「鷺娘」ではどうしても「カブる」ような感じだったのが残念だったなあ……と

もちろん、片や地唄、片や長唄、片や芸者さん、片や鷺の精という大きな違いはありますが、しんしんと降る雪の中で叶わぬ恋を嘆いているという点において、根本的なテーマは共通しています。
そのうえ、衣装は両方とも白無垢だし(「鷺娘」のほうは引き抜きで衣装が変わりますが)、両方とも傘を持って踊るし……。
例えて言うならば、寄席で「替わり目」のあとに「親子酒」がかかっちゃうような感じで……。寄席だったら間違いなく、前座さんから「似たような噺がすでに出ています」の合図の太鼓を鳴らされてますよね(笑)。
似たようなご趣向が立て続けになってしまうと、それぞれの良さが相殺されてしまう感じがして残念です。

「雪」の衣装を芸者の拵えにして、傘を使わず「座敷で来ぬ人を待っている風情」というふうにして踊ればよかったんじゃないかなあ……(2004年10月に国立劇場で京舞の会があった時、坂田藤十郎丈(当時・中村鴈治郎丈)が「雪」を舞われましたが、その時はそういうやり方をなさっていました)。
あるいは、踊り手を別の人にするとか。
地唄だし、「雪」はやっぱり藤十郎丈あたりにお願いしたほうがよかったんじゃないかと……。中国公演があったりして、スケジュールの都合がつかなかったのかなあ……

まあ、でも、たとえカブっていても、きれいだったからいいんですけどね……


話は変わりますが……、歌舞伎座の2階ロビーに、10月の演目「恋飛脚大和往来」のポスターがはられていました。ええ、もちろん、山城屋さんです!

「恋飛脚大和往来」ポスター

このポスター、欲しいなあ……。タダでくれとは言いません、せめて売店で販売してもらえないかなあ……。そうしたら5枚、いや10枚くらい買うのにっ。で、少し会社にも貼らせてもらって宣伝するのにっ。


最新の画像もっと見る