本朝徒然噺

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秀山祭九月大歌舞伎

2007年09月30日 | 芝居随談
秀山祭九月大歌舞伎の観劇日記です。

昼の部の演目は「竜馬がゆく 立志篇」「熊谷陣屋」「二人汐汲」、夜の部の演目は「阿古屋」「身替座禅」「二條城の清正」。

昼・夜それぞれ1回ずつ観たのですが(「二條城の清正」は2回観ました)、「できれば昼の部をもう一回観たかったな」と思いました。
というのも、「竜馬がゆく」がすごく良かったのです。
実は、観る前はこれにいちばん期待していなかったのですが(ゴメンナサイ)、観た後はこれがいちばん強く印象に残りました。
染五郎さん演じる竜馬も、染五郎さんの熱演がそのまま竜馬のひたむきさと重なってすごく良かったのですが、何と言っても素晴らしかったのは、中村歌六丈の勝海舟!
土佐浪人と幕臣という立場の違いを超え、竜馬と勝が近代日本の目指すべき道について熱く語り合う場面は、時間が経ってもすごく印象に残っています。

竜馬が勝海舟に「藩という小さな単位で世間をとらえて自分たちの利益ばかりを追求するのではなく、『日本』として一丸とならなければ外国と対等には渡り合えない。そのためには、藩をなくすべきだ」という考えを述べ、「俺は幕臣だぜ」と驚く勝に向かって「私は『日本人』です」と言い切ります。その言葉に心を打たれた勝も、きっと根本的な部分で目指すところは同じだったのだと思います。
時代が下って現代の日本を考えてみると、はたしてこの二人のような思いで国政や地方行政に携わっている人はどのくらいいるのだろう……と、複雑な気分になりました。


「二人汐汲」を踊ったのは、坂東玉三郎丈と中村福助丈。
能「松風」に題材をとった曲で、途中、能の舞を模した部分があるのですが、この時の玉三郎丈の舞がとても素晴らしかったのです。
お能にも造詣が深い玉三郎丈ならではの、気品ある美しい舞で、まさに「幽玄」の世界に誘われるような感じでした。


夜の部の「阿古屋」でも、玉三郎丈は舞台上で琴、三味線、胡弓を演奏し、八面六臂の活躍をされていました。
お琴もとても上手でしたが、いちばん印象に残ったのはやはり胡弓です。あざやかな演奏に、息をのんで聴き入ってしまいました。

阿古屋による楽器演奏が最大の見せ場とされるお芝居ですが、脇を固めた役者さんたちもまた素敵でした。
市川段四郎丈の「人形振り」も良かったですし、中村吉右衛門丈の「捌き役(知と情を併せ持った人物の役)」もすごくハマっていてかっこよかったですし、染五郎さんの郎党役も、出過ぎず良いアクセントになっていました。


「身替座禅」は、市川團十郎丈の山蔭右京、市川左團次丈の奥方玉の井という“異色”の(?)配役にも注目でしたが、長唄囃子連中に杵屋巳紗鳳さん、杵屋巳太郎さん、望月朴清さん、常磐津に常磐津一巴太夫さんと、人間国宝そろいぶみの音曲も豪華でした。
しかし悲しいことに、9月の興行の途中で望月朴清さんがご逝去されました
私が夜の部を観に行ったのは9月17日だったのですが、なんとその翌日から舞台を休演され、数日後にお亡くなりになったのです。
朴清さんの最後の舞台に巡り合わせることができたことを感謝するとともに、命の尽きる直前まで舞台に上がり続けた朴清さんの舞台人としての心意気に、尊敬の念を感じずにはいられません。


「二條城の清正」は、「清正役者」と呼ばれた初代吉右衛門丈の追善興行にふさわしい演目。
ぶっちゃけ地味なお芝居だと思いますが、私は結構好きです、こういうの。そして、これをあえて夜の部のキリ狂言にもってくるところが、播磨屋さんらしくて好きです(笑)。
地味な芝居なだけに、2回目に観た時はさすがに若干眠くなってしまいましたが……

でも、先代の思いを大切にして芝居をしている感じがよく伝わってきたというか、播磨屋さんが思い入れたっぷりに演じていらして、舞台に引き込まれました。
福助丈演じる豊臣秀頼も良かったですし、左團次丈演じる徳川家康もすごく雰囲気が出ていました。

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2 コメント

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舞台はみずもの (JoanneKathleen)
2007-12-03 22:53:04
二条城、放映されていましたね。でも舞台で観る方がやっぱりいいです。しっとり静かな「間」は映らない気がしますもの。
JKはこの月お昼を失礼してしまったのですが、お友達がやっぱり「竜馬」が思いの外良かった、と言っていました。
仕方がないので??!!今月の歌舞伎チャンネルで観ます・・・(_△_;〃 ドテッ!
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JoanneKathleenさま (藤娘)
2007-12-06 00:49:42
二條城の清正は早くも放映されたのですね~!

でも本当に、JKさまのおっしゃるように、芝居は生で観て舞台や客席の「気」を感じられるのがイチバンですよね

「竜馬がゆく」、すごく好評だったみたいです
あの歌六丈の勝海舟は、放送でも一見の価値アリだと思いますよ~!

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