からだはひとのかけがえのない
たったひとつの果実
1980年の詩集「てのひら」の〈果実〉でこう書いた征矢泰子が、自らその果実をあやめて世を
去ったのは、92年の暮れ。
〈逝った人に〉
死んでしまったあなたは
今ではもう
まるでわたし自信のように
わたしのなかで
わたしを重くしはじめているのだ
〈旅立つ夏〉
わたしたちはもう帰ってはいかない。
その木もれ陽の道水引き草がどれほどになつかしくゆれていても。
あの丘の斜面うめつくしてコスモスがどれほどか未練に咲いていても。
今 うつつの庭にはただ種子おとしつくしたサルビアばかり。
あつくかわいたこの夏の最期のとどめのように
とおくかなたから銃声がひびいてくる。
さようなら わたしたち仮そめの家族の肖像。
ばらばらになったジグソー・パズルは
おもいきって捨ててしまおう。
これからはただ往き往くばかり。
断片からめいめいのたったひとつの像(かたち)へ。
わたしたちは出発するのだけっしてふりかえらない旅を。
生んで・育てて・捨てて・はじめて
きれいなひとりになった。
わたしの行く先はだれにも教えない。
たったひとつの果実
1980年の詩集「てのひら」の〈果実〉でこう書いた征矢泰子が、自らその果実をあやめて世を
去ったのは、92年の暮れ。
〈逝った人に〉
死んでしまったあなたは
今ではもう
まるでわたし自信のように
わたしのなかで
わたしを重くしはじめているのだ
〈旅立つ夏〉
わたしたちはもう帰ってはいかない。
その木もれ陽の道水引き草がどれほどになつかしくゆれていても。
あの丘の斜面うめつくしてコスモスがどれほどか未練に咲いていても。
今 うつつの庭にはただ種子おとしつくしたサルビアばかり。
あつくかわいたこの夏の最期のとどめのように
とおくかなたから銃声がひびいてくる。
さようなら わたしたち仮そめの家族の肖像。
ばらばらになったジグソー・パズルは
おもいきって捨ててしまおう。
これからはただ往き往くばかり。
断片からめいめいのたったひとつの像(かたち)へ。
わたしたちは出発するのだけっしてふりかえらない旅を。
生んで・育てて・捨てて・はじめて
きれいなひとりになった。
わたしの行く先はだれにも教えない。
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