Entrance for Studies in Finance

portfolio insurance or dynamic hedging

portfolio insurance and dynamic hedging 1987年前後の議論
Hiroshi Fukumitsu

 まずportfolio insuranceとは投資戦略の名称で、1987年の株価暴落のとき話題になった記憶があります。ポートフォリオの価値が下落するとき、逆に利益が出る金融派生商品(たとえばプットオプションを購入する、あるいは指数先物を売るなど)を組み合わせることで下落リスクをヘッジ(回避)するといった投資戦略をportfolio insuranceと呼びます。おそらく金融派生商品を購入することを、価値下落リスクに保険をかける行為になぞらえているのでしょう。portfolio insuranceのなかで、原資産の変化などに応じて先物やオプションのヘッジ量を変動させる戦略はdynamic hedgingと呼ばれます。
 ブックステーバーによると、原資産に対してヘッジするべき量の割合はデルタと呼びます。この戦略は、まず原証券のボラテリティ(価格変動性)を正確に算定できるかにかかっています。そしてさらにその前提には、市場の流動性が確保されていることがあります。しかし現在では、多くの市場参加者が同様にportfolio insurance戦略をとった場合、価格の下落がさらなる価格の下落を生むということが明らかになっています。(Marc Levinson, Guide to Financial Markets, 4th ed., Bloomberg, 2006, pp.197, 212-215.ブックステーバーRichard Bookstaberの遠藤真美訳『市場リスク 暴落は必然かA Demon of Our Design, 2007』日経BP社, 2008, 第2章, pp.18-58。
 ベルンシュタインは、1976年9月 カリフォルニア大学のファイナンスの教授であったヘイン・リーランドが投資ポートフォリオを保険をかける仕組み、ポートフォリオ・インシュランスportfolio insurance:PIを思いついた瞬間を描いています。最初に顧客がついたのが1980年の秋でたちまち大手が参入してきたこと。1983年にS&P500の先物市場が創設されたことで取引のリスクは軽減され、実行メカニズムも簡略化された。1987年10月の株価暴落で明らかになったことは、PIが売りの連鎖波及に貢献したこと、PIのプログラムは、市場のボラテリティを過少評価し、流動性を過大評価していることでした。PIのコストは、紙の上で計算したものよりはるかに高くなることが判明しました。(Peter L.Bernstein, 青山護 山口勝業 訳 証券投資の思想革命 The Ideas: The Improbable Origins of Modern Wall Street, 1992 東洋経済新報社 2006 第14章 pp.403-439.
Peter L.Bernstein, リスク 神々への反逆Against the Gods, 1996 青山護訳 日経ビジネス文庫 下巻 2001 第18章 pp.243-251.

 この戦略はコンピュターのプログラムに織り込まれますがプログラム(program trading)に従うと、機械的で加速的な売りをもたらすことになります。そしてあまりにも急激な下落は、買い手を躊躇させます(流動性は突然失われます)。買い手(流動性)の減少は、相場のさらなる下落をもたらす。つまり最も肝心な場面で、市場の流動性が失われる(蒸発する)現象が生じます。この混乱の理由についてブックステーバー(Bookstaber)は先物市場と現物市場との間で取引を可能にしている時間軸が異なっていることを指摘しています(現物市場の投資家はしばしば長期の投資判断を行うがそのためには意思決定の会議が必要になるなど)。
「価格があまりにも激しく下がったため、潜在的な買い手の多くが何が起こっているのだろうといぶかり、様子見を決め込んだのだ。」(遠藤訳p41)「買い手は、株価の下落を流動性が求められている表れとは受け取らずに、何か新しい市場情報によって引き起こされた可能性画あるかもしれないと警戒した。そのため、自分たちは不利な状況にあると判断し、様子見を決め込んだのだ。」(同前p.43)「1987年の暴落の主犯は、流動性の歪みであり、その原因は、二つの市場の需要側と供給側の売買の違いにあった。」(同前p.44)
 そしてモリス(Moris)はあまりにも大きな売りが先物市場に殺到したため、現物市場と先物市場のつながりが切れてしまった(市場の断絶)ことを暴落の原因としています(これはブックステーバーの記述とよく似ています)。
「先物市場と株式市場は正常な状態では、価格が密接に連動する。そうならなかった場合には安い方を買って高い方を売る裁定取引が行われて、すぐに連動するようになる。だが・・・売りの大波が押し寄せたために、先物と株式の価格のつながりが切れてしまった。」株式市場と先物市場で価格が連動する仕組みがはたらくなくなったことで、先物市場は株式市場以上に下落した。(チャールズRモリスCharles R.Moris 山岡洋一訳「なぜアメリカ経済は崩壊に向かうのかThe Trillion Dollar Meltdown, 2008」日本経済新聞出版社, 2008, 78-79
 ブックステーバーもモリスも市場の分断を問題にしています。しかし流動性が失せたのは、やはり過大な売り注文の殺到により多くの問題があると思います。モリスはつぎのようにまとめています。
「この物語でとくに目立つのは、ポートフォリオ・インシュランスが、理論としてはすばらしかったとしても、仰天するほど愚かな面があったことだ。この戦略は1社が採用しているだけであればうまく機能するが、市場全体が採用した場合には、ほぼ間違いなく悲惨な結果になる。」(山岡訳 p.80)
 同じ問題についてレヴインソン(Levinson)はオプションについて以下のように語っています。原資産の価格1%の変化に対してオプションの価格が何%動くかその比率示す数字がデルタ(δ)とします。これに対して原資産の価格の変化に対してδが動く割合がガンマ(γ)である。オプションを使ったダイナミックヘッジングの代表的な戦略はデルタヘッジング(delta hedging)でこれはデルタをゼロにするように、オプションと原資産の売買をするというものだそうです。デルタをゼロに保つために、投資家は、価格が下がっているときに原資産を売り、あるいは価格が上がっているときに原資産を買うことを求められるのだそうです。
 しかしこの取引は、原資産価格の振れ方は激しくする矛盾があるのではないでしょうか。
 原資産価格の変動に連れて新たなオプションが恒に購入可能であるとの仮定が誤りであることがわかるまでの1980年代の極めて間、このオプションを用いたdynamic hedging戦略は、株価下落から株式ポートフォリオを守る戦略として人気を得たものとして、記憶されることになりました。

 コールの売り プットの売り
 相場下落局面ではプットの売りで利益がでる。相場上昇局面は今度はコールの売りで利益がでる。逆張りであれば、下落局面でコールの買い。これは相場の反転上昇を想定するから。しかしそうならなければ損失が拡大する。

duration
portfolio insuranceと同様に一時神聖視されたものにduration managementがあります。durationは債券投資者が、債券の収益から得られる金利の複利効果を含めて、当初の投資価値を回収するのに要する年数を示しています。逆にいえばdurationは、金利変動リスクによる投資のリスクの大きさを示します。この金利変動リスクは、金利が高いほど、また償還までの年数が短いほど小さくなりますが直感的にわかりますね。durationの値は、債券の金利が高いほど、また償還までの年数が短いほど小さくなります。
 このdurationの大きさをリスクのコントロールに使うことがあります。その一つがキャッシュフローの年数との対比です。
 運用資産からのキャッシュのアウトフローの時期が明確であるときは、durationを債務側のdurationの年数に合致するようにポートフォリオを組めば、金利変動リスクを回避できることがわかります。このような運用をイミュナイゼーション(免疫化)といいますが、しかしそれでは明らかに運用者は運用によるリスクプレミアムをそれでは確保できていないことになりますので矛盾はあります。durationは起こりうるリスクの確率を示していないという問題もあります。

 マコーレー・デュレーション:債券価値の平均回収期間。
修正デュレーション:金利が1%動いたときの債券価格の変動の大きさ。

duration の計算(利回りcomより)
VaRの限界

Written by Hiroshi Fukumitsu. You may not copy, reproduce or post without obtaining the prior consent of the author.
Originally appeared in Feb.24, 2009.
Corrected and reposted in Sept.13, 2010 and February 4, 2012.

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