交通 JR上野駅から徒歩10分。
捨人や上野歩行(あるい)てとし忘れ
独り身や上野歩行てとし忘れ 文化11年1814年
夕凉や草臥(くたびれ)に出る上野山 文化12年1815年
鶯(うぐいす)も人ずれて鳴く上野哉 文政4年1821年
畫中の堂静かなり蓮の花 明治27年1894年夏
ふゆ枯や鐘にうつる雲の影 明治28年1895年冬
辨天をとりまく柳櫻かな 明治29年1896年春
寄席はねて上野の鐘の夜長哉 明治29年1896年春
「ただ一つ私の記憶に残っていることがある。或る時花時分に私は先生と一緒に上野に行った。そうしてそこで美しい一対の男女を見た。彼らは睦まじそうに寄り添って花の下を歩いていた。場所が場所なので、花よりもそちらを向いて目を峙(そば)だてている人が沢山あった。」
「岡田の日々の散歩は大抵道筋が極まっていた。寂しい無縁坂を降りて、藍染川のお歯黒のような水の流れ込む不忍の池の北側を廻って、上野の山をぶらつく。それから松源や雁鍋のある広小路、狭い賑やかな仲町を通って、湯島天神の社内に這入って、陰気な臭橘(からたち)寺の角を曲がって帰る。」(明治44年1911年執筆)