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Entrance for Studies in Finance

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Note:トヨタ FCVからEVへの戦略転換に遅れをとる

2017-12-25 08:31:39 | Management

トヨタはHVやPHVにこだわって電気自動車EV(動力源の効率の高さ 温暖化ガスの排出の少なさなどが評価)に熱心でないとこれまでもいわれてきた。背景にはHVのプリウスで世界に先行した成功体験があるとされ、さらにFCVの開発で先行しているとの思いもあるようだ。今トヨタは次世代自動車として燃料電池車FCVにこだわったためにEVの開発が後手になったという批判が強まっている。

英仏政府は2017年7月 将来の(2040年までの)ガソリン車の販売禁止をうちだした。続けて中国もガソリン車ディーゼル車の販売禁止の検討に入っていることがわかった(2017年9月 2018年あるいは2019年にも自動車メーカーに一定比率以上の生産を義務付けるとのこと)。これで欧州と中国のEVへの転換が事実上きまった。つまりHVもPHVも終わった(背景には日本車がHVで得意であるので、欧州や中国がEVシフトを進める側面もあるようだ。他方で、HV車は電力事情の厳しい新興国でまだ売れるとの指摘があり、トヨタは日米欧中ですでにHVの一貫生産体制を構築している)。トヨタはHVやFCVにこだわってEVで立ち遅れたのではないかとの評判が広がっている。すでにベースの問題としてFCVはEVの倍の販売価格になっており、価格競争力の勝負はついている。

トヨタがEVの課題として挙げるのはまず航続距離がまだ短いこと(EV400km HV1500km ガソリン車1000km) 充電時間が長いこと 電池の寿命が短いこと(その結果 短期間で中古車の値段が下がると予測されている)。またEVになると部品点数が4割減り部品メーカーへの影響が大きい、FCVの方が現在のサプライチェーンをいかせるなど。しかし後段の理由付けは従来型の部品メーカーの存続にこだわって、産業構造の変化にまさに立ち遅れることを意味しているのではないか?

燃料電池車FCV:fuel cell vehicle。 2014年12月15日 世界に先駆け トヨタが燃料電池車MIRAIミライの市場発売を開始した(価格は723万 航続距離650km 年400台生産の想定 国が200万程度の補助を予定なので負担は523万 受注2015年1月で1400台 納期に3年と説明 潜在的にはさらに大きな需要が存在 生産規模拡大へ) 。水素5kgで700km走行可能(3分程度でフル充填 ガソリン車並み) 現在は末端で1キロ1000円 廃棄は水だけの究極のクリーンカーとされる。しかしこれらを総合したとき、計画に無理があることは明らかではないか?

トヨタは普及にむけて特許技術5680件の無償提供を表明した(2015年1月)・・・オープンアンドクローズド戦略 自社の技術を業界標準とすることで市場で主導権確立 (米インテル:PCのマザーボードの技術を台湾企業に提供 米アップル:端末の製造情報などを中国企業に開放)

⇒ サムソンとアップル 特許戦略の違い サムソン:標準化 アップル:オープン&クローズ 日本企業:自前主義

FCVが普及する上での壁(2016年度FCVの国内販売台数約1000台 )は、水素ステーションの整備が遅れていることと、水素価格がなお高いこと(2016年度FCVの国内販売台数約1000台 )など極めて多く厚い。水素ステーションの普及はその後もめどが全くたたない(国が設置経費の半額を補助)。ステーションの建設費も高額、現在4-5億を1億円台(ガソリンスタンド並み)に引き下げる事が課題。水素の製造流通コストの大幅な引き下げが必要とされる。これらに関連する膨大な投資のめどもたっていない。問題なのは、日本だけでステーションを整備してもFCVは世界レベルで普及しないということ。・・・結論から言えばFCVの構想は将来図として根本的に実現の見通しに欠陥がある。このように欠陥のある計画を現在も進めているトヨタのこのこだわりや経済産業省の支援はよく理解できない。はっきりいえばFCVの課題よりはEVの課題克服に全力を挙げるべきではないだろうか? 中途半端に水素ステーションを整備することは膨大なムダを作り出す可能性は高いのではないか。FCVでは水素ステーションの整備が必要。他方、EVは逆に自宅充電が可能で、ガソリンスタンドを不要化することも可能。こうなるとどちらを普及させるべきがすでに結論はでているのではないか?一説にはFCVはEVの次の技術だという。そうだろうか?EVで負けてしまってからFCVで巻き返しは可能だろうか?

Case Studies

2017-12-25(2015-05-05)


Case Study on Renovo and IBM

2017-12-17 13:12:35 | Management

レノボ(聯想集団) 2005年に米IBMパソコン事業買収 売上の8割がパソコン 売上の4割が中国 2013年現在パソコンの世界最大手パソコン、スマホ、タブレットを合わせたシェアは2013年韓国サムソン電子、米アップルに次いで3 パソコン タブレ スマホを合算すると1位はさまざまな地場メーカーで2位にサムソン 3位にアップルとなりレノボの存在感は薄くなるとも指摘されている 楊元慶CEO(2014年1月)

200412月 レノボが米IBMのパソコン事業を買収  IBMからThinkPadに代表されるパソコン事業を買収

2005年IBMのPC部門 ThinkPad製品ライン買収 から統合戦略(NECとのPCでの合弁 ドイツMedion(パソコン製造)買収 ブラジルCCE(パソコン スマホ製造)買収 米EMCと提携 中国Compalと合弁)IBMはいち早くパソコン事業を売却しITサービスにシフト

 2009年PC世界シェア HP19.7% デル12.6% エイサー12.6% レノボ8.2% 東芝5.2% アスース5.2% アップル4.1% アップル3.7% 参考 NEC0.9%
 2009年PC国内シェア NEC18.3% 富士通17.9% 米デル12.1% 東芝11.2%   
 2009年サーバー世界シェア   IBM32.9% HP29.9% デル12.1% サンマイシステムズ8.8% 富士通5.1%
 2009年ITサービス世界売上  IBM550億ドル HP345億ドル 富士通233億ドル アクセンチュア209億ドル 

2009年 NEC  海外市場から完全撤退 

2010年4月 NEC 赤字の元凶の半導体について子会社のNECエレクトロニクスを同業のレネサンステクノロジと統合
2010年6月 NEC 携帯電話事業をカシオ計算機、日立製作所と統合

20111月 レノボとNECがパソコンで合弁事業で合意
20117月 レノボとNECが日本で合弁会社設立

2011127日発表(NECとレノボの提携) NECを事業統合 生産・保守の効率化 品揃えや営業戦略で現地拠点への権限移譲 NECの量販店での販売網を生かして成長
 中国のレノボグループ(聯想集団 PC出荷量はNECの10倍 中国ではシェア27%)とNEC(NECパーソナルプロダクツ)がパソコン事業で合弁(51%-49%)
 2011年6月にレノボNECホールディングスを設立(傘下にレノボジャパンとNECパーソナルプロダクツ)へ
 2011年7月合弁会社を日本で設立(レノボが51% NECが49%)
 (2012年9月4日 NECがこの合弁で取得したレノボの株2億8000万株の売却(レノボ全株の2.7%)をすることが注目された。
 2年間のロックアップ期間前の売却で異例)売却額2億3000万ドル180億円
 これはNECの保有資産売却による財務基盤強化の一環(同時期にホンハイに対して液晶DPに関する特許の一部を100億円で売却)。ただ合弁を維持して持合いを続けなかったことは注目できる。
 合弁の内容:NECパーソナルプロダクツの雇用維持 NECブランドの継続 NECは経営の主導権はこだわらない 両社は規模の利益を追及
このほかレノボ本体についてNECが2%出資
 まず日本に合弁会社設立 互いの販売網使い相互に連携・拡販を行う。 
 NEC 売上高3兆5800億円のうちパソコンは2500億円程度(2010年3月期 国内ではトップ)総従業員14万2300人 純利益114億円
 レノボ 売上高166億ドル 総従業員数2万人 純利益1億2900万ドル

提携の背景
 パソコン:汎用品commodities化 利益を生まない商品に
 しかし 
 NECは成長路線への転換を決断 提携によりグローバルな競争力を確保
 NEC本体はスマートフォンにシフト
 今後の戦略
 クラウド事業を考慮してパソコン事業を維持
 タブレット端末を共同開発

2012年2月6日 ハンセン指数の構成銘柄に選ばれる
2012年3月期 売上高295億米ドル2兆3000億円 前期比37%増
       純利益4億7200万ドル 73%増
2012年4-6月期 前年同期比 30%の増益 世界シェア15%でHPに迫る
2012年10-12月期 純利益2億487万米ドル190億円 前年同期比34%増 四半期ベースで過去最高

2013年1月 カナダのブラックベリ買収観測流れる
2013年4-6月期 レノボ(売上の8割がパソコン パソコンより採算のいいスマホとタブレットの比重を14%から
2016年には5割程度目指してパソコン依存からの脱却目指す 2012年10-12月期に中国でのスマホ事業が黒字化)は米HPを追撃 

PC販売で世界最大手になったのは2013年4-6月期 レノボ16.7% HP16.4% デル12.2% エイサー8.4% エイスース5.9% アップル5.0% 米IDC調べ。IDCの調査とガートナーの調査のいずれでも世界topになったが、はからずも消費者はタブレット等に移りつつあるとも。世界的には低価格のスマホやタブレットで新興国を攻めている。投入機種の数で年間50機種と群を抜く。新興国では現地メーカーとの価格競争で苦戦する可能性も指摘され、ブランド力をつける必要があるとされる。

2013年10-12月 純利益前年同期比30%増2億6531万ドルで過去最高 パソコン1530万台9%増(世界首位) スマホ1930万台47%増 タブレ340万台4.3倍(各世界5位) パソコンで成功体験をスマホ タブレットで再現ねらう(NECとの携帯電話事業統合交渉は決裂) 新興国に食い込むが現地の低価格メーカー(地場メーカー)との争いで利幅は薄い 
201312月 ハンセン銘柄の構成銘柄への採用決まる

携帯電話 2013年中国市場 サムソン>レノボ>華為>中興

2014123日 米IBMからPCサーバー(低価格サーバーx86サーバー)事業を23億ドルで買収(2400億円 全従業員7500人ごとひきつぐ)へ(交渉は2013年から続いていた。サーバー事業の不振から株主からは売却のプレッシャーがIBMにかけられていた)。RenovoにとりPC+とは異なる新たな領域 世界第3位のサーバープレイヤーに サーバー市場はすでにコモデティ化(DellやHPはサーバー事業でソリューション提案と連動させて収益性を高めている 之に対してx86の3割ハクラウドサービス3社のデータセンター向け)

 今後低価格化進む レノボのサプライチェーンにより低価格のメモリ購入できるなどの規模の経済効果が働き 移管により価格競争力高まる したがって売却ではなく「戦略的提携」であるとされる
 企業向けサーバー事業(IBMのシェアは8.5%世界で3位 レノボの現在ノシェア6%6位は11.1%3位へ上昇 トップはHP 2位はデル)に本格進出 個人向け主体事業から転換
 他方IBMは高採算のクラウドに注力 ハードウェアは高性能機(メーンフレーム大型汎用機)に絞り込むことで収益率を高める戦略

 2013年のPCサーバー市場シェア 世界 HP31.4% デル21.9% IBM(レノボ)12.9% シスコシステムズ5.9% 富士通3.0% 日本ではNEC31.4%  富士通19.2%  HP14.8% IBM(レノボ) デル8.7% 日立8.6%

 他方でフェイスブック、グーグル、アマゾン等大手クラウド事業者はサーバーを自ら設計して受託製造大手(台湾のクワンタなど)に数万台単位で発注しコストを削減している。こうした「無印サーバー」の登場は、サーバー事業の生き残りをさらに困難にしている(台数として全体の15%を占めるにいたっているとのこと)。フェイスブックは開発手法でオープンソース方式を応用、設計図の公開でコスト低減に努めているとのこと。

2014129日 グーグルからモトローラ端末Motorola Mobility事業(現在は赤字)を買収(PC+戦略を加速する狙い 第3位のスマホメーカーに浮上) 29億ドル 合わせて52億ドルは レノボの時価総額の半分に相当 保有現預金は38億ドル (北米・南米に強い)の携帯端末事業の事業買収 1年から1年半で黒字転換する スマホとタブレットを合わせた携帯端末で年1億台の販売目指す(アップルやサムソン電子に追いつけるか)。大型のM&Aの連続(積極策)に市場には警戒感広がる

20144月 組織替えで4事業部制として売上げで5%に過ぎないエンタープライズ事業、クラウド事業の2事業を今後の成長の柱に位置つけた。

2014年第3四半期では売上げ108億ドル前年同期比15%増 税引き後利益は26500万ドル同30%増 PC市場シェアは18.5%前年比2.5ポイント増 ノート型で18.8% デスクトップで18.0%

2014年10月2日 レノボ日本法人 法人向けサービス拡充 サーバーとPCの一体販売(事業の連携で1割程度のコスト削減余地) 懸念はIBMのPCサーバーの売れ行きが事業売却発表以降激減。製品サポート力の低下について顧客が不安を感じたことが原因。

2014年10月7日 NECとの合弁契約(2011年開始2016年6月まで 法人向けで首位を守る 13年度日本国内法人向けでNECーレノボは27.5% 富士通が22.3% 米デルは14.9% HPは14.9%)を2026年まで10年間延長 米沢工場でレノボ製品もつくることで稼働率向上 カスタマイズを中国生産から国内生産切り替えで納期短縮(国内生産している富士通 HPにあわせる  国内は人件費は割高だが生産性は高い 修理も国内で顧客満足度もあがる)

2015-2016 国内外でスマホのシェア低下 中国への新型スマホ投入にこだわり(しかしブランド力が中国で低く) 結果として海外では投入遅れる

レノボ 2017  脱パソコンを狙って拡大した、モバイルのほかデータセンター事業も不振(赤字に落ち込む) 脱パソコンがうまくいってない 

2017年11月2日 富士通(17.5%)とパソコン事業(24.6%)で合弁会社設立を発表(レノボの国内シェアは国内4割へ デル12.3% HP12.2% すでに外資系が圧倒的)

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IBM ハード事業を売却 ソフトウェア システム開発やコンサル(高性能コンピューターは残している)などに転換 また中小のソフト会社を買収して、事業構造の転換を進めた。2000年から2009年の間で220億ドルを投資。108社を買収している。自社の営業基盤に乗せれば収入が急増するような小規模企業に投資するとのこと。ソフト、サービスを重視するのはハードに比べてソフト、サービスは需要が堅調で利益率が高いことに着目した戦略。サービス事業(例 経理業務の委託)は顧客との長期契約によるので収入が安定するとのこと。2009-2010年はこの戦略が奏功。増収増益を続けた。 

2011年3月 IBMは保有していたレノボ株すべてを売却した。2005年にレノボにパソコン事業を12億5000万ドルで売却したときにレノボ株15%を保有。しかし次第に売却。この時点で残り(出資比率で4.3%分 2億6500万ドル)をすべて売却したもの。

2011年11月にはウオーレン・バフェット氏がIBM株大量取得5.5%107億ドルがわかり、そこでもIBMの事業戦略が肯定された形だった。

2012-2013年ハードウェア事業の不振から減収続く 2013年10-12月 売上高277億ドル弱(前年同期比5%減) 純利益62億ドル弱(6%増) ハードウェアの不振 新興国事業の減速 売上高(ハード事業の売上が2割を超す減収:とくに中国で)は7四半期連続で前年実績下回る ロメッテイは経営責任をとり経営幹部が2013年の賞与を辞退すると表明(ロメッテイは2012年12月 米IBM初めての女性CEOとして就任 前任はサミュエル・パルミサーノ) 

2014123日 Renovoに対して低価格サーバーx86サーバー事業を23億ドルで売却と発表

12億ドルかけて2014年内に世界15ケ所にデータセンターを建設する構想を表明(2014年1月) クラウドコンピューテイングで攻勢をかけている(これによりIBMのデータセンターは世界で40ケ所になる) IBMはクラウドに2007年に乗り出した 全世界の顧客は3万社。これまでのビジネスモデルはプライベート(専用型)クラウド。2013年の売上は40億ドル(推定)

IBMの相手は2006年にクラウドを始めたアマゾン。こちらはパブリック(共用型)クラウド。コストが安く使い勝手がよいとされ中小企業を中心に大手にも利用者増える。2013年の売上は30億ドルを超えたとされる(推定)。2013年夏 IBMはパブリッククラウドに強い米ソフトレイヤーテクノロジーを20億ドルで買収 パブリック型サービスの強化を急いでいる

2014年1-3月 ハードの不振 新興国の販売低迷 サーバーなどハード事業で大幅減収

2014年4-6月の売上は243億ドル(前年同期比2.2%減 9四半期連続の減収)  ハードの落ち込みニブレーキ 主力のサービスヤソフトが伸び悩む 純利益は41億ドル弱(同28%増 コスト削減やリストラ効果) バージニア・ロメッテイCEO

2014年7月-9月 売上げ233億ドル(前年同期比4%減 10四半期連続の減収)

2014年10月1日 ニューヨークに人工知能型コンピューター ワトソンの世界本部設置(グーグルでは量子コンピューターを独自開発 人工知能の飛躍的向上につながる同様の人工知能AIの開発と応用は マイクロソフト アマゾン ヤフーなどでも進められている)

20141020 不採算の半導体製造部門を米半導体受託製造会社(半導体製造で台湾のTSMCに次ぎ第二位)グローバルファウンドリーズGFに譲渡。 今後3年間で計15億ドルをIBMがGFに支払うとのこと(GFはIBMの設備技術を獲得して生産効率化を急ぐ GFは今後10年間サーバー用半導体を供給する) 業績変動の激しい部門の切り離し 付加価値の高い事業に経営資源を集中

米マイクロソフトとクラウド分野で提携(2014年10月)

米ツイッターとビッグデータ解析で提携(2014年10月)

2017年5月 長く(約6年間)IBM株を保有してきたバフェット氏が保有株の30%を売却したことが明らかになる

IBM 2012年からロメッテイ体制 クラウド 人工知能AI(ワトソン  これを使った業務改善で収入を得る)などの成長分野への移行を掲げるがうまくいっていない。減益続いている 2017年11月ワトソンの無料提供うちだす(情報を集めることでAIを鍛える狙い→グーグルの情報解析力は大量の情報がベースになっている) アマゾン、グーグル(量子コンピューターに注力)によるクラウドを通じた低価格サービスに押され高性能コンピューター(メインフレーム)売り込めない クラウドでも攻勢 しかしクラウドを強化すると従来業務を共喰い(カニ張りゼーション)する側面 ITを軸にした顧客のコンサルを強化

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日本IBM 1970年代から80年代 IBMの大型汎用機は技術的に圧倒的に優位。日本ノメーカーはIBM大型汎用機向けソフトが使える互換機を開発していた 1983年にIBMと日立富士通は秘密協定で和解。やがて日立はIBMと密接な関係に。他方、コンピューター専業の富士通(大型汎用機Mシリーズを生産)は強気の姿勢続ける。85年 IBMと富士通はAAA(米仲裁協会)に紛争を持ち込み 88年10月 AAAが最終裁定(和解金額3億3700万ドル)。2001年の1兆6268億円をpeakに売上高減少 2011年には8681億円に。日本の売上は全体の1割。売上高利益率で米IBMは15%。日本IBMは3% ThinkPadの開発は藤沢研究所の成果(1991年に原型を開発 丸山力氏)

1977年アップルⅡ発売 ヒット 1979 NECがPC-8001(MS-BASIC採用) 1981年IBMがパソコン参入(MS-DOS採用) NECはいちはやくBasicを採用。NECの9800シリーズは80年代後半に国内で5割強のシェア 90年代IBM互換機

2011年7月報道 セールスフォースドットコムと組んでクラウド型サービスをはじめる(営業支援や顧客管理のシステムをクラウド型に移行する)と発表

2012年5月 日本IBM 56年ぶりの外国人社長マーティン・イェッター氏就任

2014年8月報道 日本IBMではクラウドサービスとしてはサーバーやストレージをネットを通じて貸し出すサービスを手がけていた(サーバーの販売を優先)。2013年内にも顧客情報管理サービスに参入する方針(報道 先行しているのはセールスフォースドットコム)。

2014年10月報道 日本IBMでは2014年内にも金融機関向けクラウドサービスを始める(例 顧客個人の取引内容に応じたお勧め情報送信など営業支援 小売業にも応用可能 先行はセールスフォースドット込むやアマゾン)

日本IBM 2014年内に東京にクラウドセンターを設置すると発表(2014年11月10日)

2017-12-17更新( 2014-11-10)


TAKATA's air-bag scandal

2017-07-12 10:59:45 | Management

TAKATA's air-bag scandal (2014-2017)    

タカタ(エアバックとシートベルトで世界で2割シェア)の高田重久会長兼社長が2016年6月28日の定時株主総会で辞意表明した。死亡事故が多発したことが背景(16年11月までに米国だけで11人)。それからほぼ1年 タカタは2017年6月26日東京地方裁判所に民事再生法の適用を申請し受理された(米国子会社連邦破産法11条を申請 タカタは私的整理を模索したがメーカー側が透明性の高い法的整理を求めたとのこと)。3月末のグループの負債総額は約3800億円。しかし自働車会社が肩代わりしているリコール費用(全世界で約1億個のリコールとなるが、米国でも6割以上の未回収分がある)1兆3000億円を含めると戦後最大の製造業倒産となる(これまでの最大は2016年11月のパナソニックプラズマデイスプレイ5000億円 2番が2012年2月のエルピーダメモリ4480億円)。再建のスポンサーは中国寧波均勝電子傘下の米自動車部品大手キーセイフテシィシステムズKSS(均勝は2016年6月にKSSを1020億円、9億2000万ドルで買収したばかり)。再建は健全な事業を新会社とし、悪化したエアバック事業を旧会社に残して旧会社ここがリコール費用などを弁済するというもの。その代り新会社は旧会社にリコール費用などの補償基金として1750億円を支払うとのこと。つまり自動車各社が取り立て不能として弁済を厳しく求めなければ、旧会社も存続できることになる(ホンダをはじめメーカー各社はタカタ支援を表明している)。また三井住友など取引金融機関も特別融資枠設定で支援するとのこと(DIPファイナンスともよばれる つなぎ融資。なおDIPファイナンスとは、民事再生法など法的な経営再建手続きにある企業では、経営者が引き続き経営にとどまって経営再建を進めるが、このような企業に対する融資を指している。DIP:debtor in process)。タカタはブランドとして残った。

問題は未回収のものから将来発生する事故に対する補償負担をどするか。問題は起きていないものの 生産している乾燥剤入り製品の安全性は問題なしといえるか(2017年7月11日 NHTSAは乾燥剤入りの270万個をリコール対象にすると発表した)。など。

東証は2017年6月26日 タカタの株式を7月27日付けで上場廃止を決めた。翌6月27日 タカタは株主総会を開いた。

タカタのエアバックで、リコールを生んだ原因はエアバックを膨らませるのに2000年ごろから爆発力の強い硝酸アンモニウムを使うようになったこと。高温多湿の環境での品質劣化への対策が十分でなかったことだ。タカタはトラブルが2005年ごろから生じたのにこれを放置。2009年に米国で最初の死亡事故が生じた後も、問題放置を続けた。

他方で日本車にエアバックの搭載がいち早くはじまったのは同社の存在があったからこそともされる。問題の背景として、創業家が6割の株を支配する中での社内の風通しの悪さ。エアバック事業の連結売上高6割を占める米州拠点の独立性が強く、本社がコントロールできなかったこと。メーカー側には、インフレーター(ガス発生装置)の作動を検証する装置がなく、事故原因の究明をタカタ任せにしたことも、解決の遅れにつながった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2017年1月13日にまず米司法省はタカタ元幹部3人を詐欺罪で起訴。同社と最大10億ドルの和解金(うち司法省への直接の罰金は2500万ドル)での合意を発表している。極めて納得できないことは起訴されたのが、すでに退職している技術者で、高田重久会長兼社長ではないことだ。また和解金額は、リコール関連費用が1兆円を超えるとされるなか最大10億ドルとされたことだ。背景にある問題は、オバマ大統領の任期切れである1月20日までの決着を急いだとのこと。

2017年4月までに、タカタを法的整理する前提でタカタを事業を継続する新会社と、リコール債務を弁済する旧会社に分離する案が検討されていることが明らかにされている(出資者は米キーセイフティシステムズKSS.その親会社は中国の寧波電子)。タカタの中古品は流通を続け、さらに新たに装着されて事故が続く問題が浮上している(17年4月)。

タカタが財務アドバイザーに米投資銀行ラザードを選んだことが発表された。又投資ファンドKKRほか投資ファンドがスポンサーとして名乗りを上げたこともわかった。自動車メーカーはこの投資ファンドの動きを警戒している。ファンド側は、債権をもつメーカー側に巨額の債権放棄を求めて利益を上げる可能性があるからだ。タカタ(エアバックとシートベルトで世界シェア2割)はスポンサーとして競合2社オートリブ、TRWを除く判断を示したとされる。メーカー側は部品調達の円滑性を考慮して3社体制を望み、独占禁止法への配慮もあって競合2社を外す判断となった。

2016年11月になると、再建の方向は自動車メーカーの意向を強くさらに反映したものになった。まず米子会社については破産法11条申請で調整。タカタ本体については投資ファンドKKRが意見交換の相手から消えた。しかしスポンサーにはなお4つの候補が残り、選択は難航している。1)ダイセル―ベインキャピタル連合 2)オートリブが有力だが、1)については日本国内での法的整理という方針が難点(中小メーカーに配慮して私的整理を模索)、2)については独禁法との調整が難点とされた。

タカタの取引先は日米欧の車メーカー10社以上。ホンダに直接影響が大きいことは分かっているものの、金額の違いもあり、ホンダを含めメーカーは互いに主導権を取れない状況とされる。すでに米運輸省高速道路交通安全局NHTSAは、硝酸アンモニウムを使いながら乾燥剤を含まないエアバックすべてのリコールを決定してタカタに命じている(2016年5月)。この結果、リコール台数は世界で1億台を超えることになった。これまでの事故を起こした型式を中心としたリコールのやり方が最終的に見直されたかたち。リコール費用は1兆円を超える。2016年3月末のタカタの現預金は537億円、自己資本は1218億円である。

タカタ製のエアバック(世界シェア2割で2位 トップはスウェーデンのオートリブ 2000年代前半品質管理が不十分なまま米国やメキシコの工場から出荷 ホンダのほかトヨタ、日産にも納品 

リコール問題は、2008年11月にまずホンダがタカタ製エアバックで異常破裂があるとしてリコール2009年5月には米国でホンダ車が死亡事故 2013年4月にタカタ製補助(助手)座席エアバックに問題があるとしてトヨタなど4社が世界で380万台リコール 2014年6月に問題なしとしたものも含めエアバックも含めて追加リコール:これはNHTSAの指示(6月調査リコール決定 運転席用エアバックの異常爆発 4地域)により4地域(フロリダ ハワイ バージン諸島 プエルトリコ)に限定して実施。 2014年7月マレーシアでホンダ車で死亡事故 2014年10月に再度リコール 対象は米国だけで780万台)をめぐるリコールでホンダがゆれた(死亡事件は5件。2009年に米国で2件 2013年に米国で1件 2014年に米国とマレーシアで各1件)。製品の欠陥については弁解の余地はないとされる。2014年10月2日にはフロリダ州でエアバックの破片がのどに貫通して女性が死亡した。

2014年11月20日、米連邦議会上院商業科学運輸委員会はタカタ問題に関する公聴会を開催。タカタとホンダの幹部が追及を受けた(タカタは2つの原因を示した。一つは部材をプレスする際の力の加わり方。一つはエアバックを作動させる火薬硝酸アアンモノウムの湿度管理)。ホンダはこのほか2003年以降1792件の事故の報告を怠っていた(として不誠実さが指摘されている この事実の公表は11月23日)。かつそこにはタカタの死傷事故8件が入っていたとされる。ホンダはタカタのエアバック問題についても2004年に把握しながらまずは放置(2005年になってタカタに写真報告)。2007年に複数の異常破裂でようやくタカタと調査を開始。そして2008年11月に始めてリコールを出したが、結果として2009年以降の死亡事故の発生を防げていない。報告漏れの可能性についても2011年には気がつきながら調査を実施したのは指摘が強まった2014年9月からとされ(NHTSAのよる指摘は2012年1月とされる。ホンダの釈明は報告範囲についての認識の相違で独自に入手した警察の捜査記録や委託した民間会社から得た情報は報告の必要はないと考えていたというもの。しかし仮にそうだとしても死傷事故に関することまで報告から外すのは意図的といわれてもやむを得ないのではないか)、タカタだけでなくホンダも企業として不誠実、安全を軽視していると指摘される状況に陥った。これは2000年成立のトレッド法(車両の構造的欠陥が疑われる事故や損害賠償の通知がメーカーに届いた場合、四半期に一度NHTSAに報告を義務付けたもの)に違反する。ただ社内にも法務担当セクションもあるはずなのに、このような法解釈がなぜ生じたのかは理解できない。さらにコンピュータのプログラムミスを一因に上げているが、報告書類でプログラムミスがあって放置されているというのは論外、企業としてあってはならないレベルではないだろうか。報告漏れは報告すべき件数の6割に及ぶとされる。

2014年11月26日NHTSAは、タカタは地域限定リコールが適切であることを裏つける情報を提供していないとしてあらためて全米規模でのリコールを要請。12月2日までに対応しない場合は1台に月7000ドルの制裁金を課すとした。全世界で1000万台以上のリコールと見込まれている。

タカタの対応は分かりにくい。タカタは自動車会社のリコールには協力するとしながら、NHTSAから求められている全米規模のリコールについては2014年12月3日午前の米連邦議会下院の公聴会でも明言を避けた。この12月3日の清水博副社長の発言は、地域限定のリコールは最善といっているように読める。この発言は人命軽視ととられかねない。確かにどういう発言をしても批判を受けたろうが、望ましいのは全量リコールでそれに向けて、準備を開始していると踏み込むべきではなかったか。おそらくそう言えないのは、会社のトップでないので会社の方針について責任ある発言はできないからだ。つまりタカタ会長がここに出席して、自社製品で死者がでたことにきちんと謝罪するとともに全米規模のリコールを明言するべきではなかったか。対応の稚拙さをみているとタカタの将来については絶望的にならざるをえない。折も折、2014年11月 日本の岐阜でトヨタ車の助手席用エアバックが廃車解体時に異常破裂を起こし、トヨタではリコールを発表した。運転席用エアバックのリコールの全米への拡大が実現しても問題は終息しないという指摘が出た。 

タカタの主張は全米規模の運転席用エアバックのリコール(800万台追加)の根拠がないということと、リコールは自動車メーカーに対してなされるべきもので部品メーカーへの指示は筋違いであるとの2点。しかしタカタがもしそう考えるなら、なぜ地域限定のリコールで安全を確保したと言い切れるのかについて、タカタ自身が資料を示すべきだろう(タカタの主張は調査リコールで回収したなかから不具合は発見されていないというもの。ただタカタに絡む追加リコールが終息しないことが、タカタの発言力を弱めている)。NHTSAは高温多湿地域外のノースカロライナでフォード車で不具合が見つかったことを、全米へのリコール拡大の根拠としている。この主張の方がタカタの主張より説得的だ。不安が広がっているのに、タカタの態度はその不安に答えたことになったいない。根拠を示せていないのはタカタも同じ。タカタの製品で死者まででているときに、タカタの態度は賢明とは思えない。原因ははっきりしないとしても消費者の不安を鎮めるために、自動車メーカーに協力して最大限の努力をしますと答えれば十分だったのではないか。タカタの態度は、不必要にリコールの要請にリコールを要求する相手は誰かとか、全米リコールの根拠はないとか、争う姿勢を示した。結果として、タカタの対応は、日本の自動車全体の信用を落とした。

Takata takes no action, Dec.2,2014
Takata rejects US demand, Dec.3, 2014
トヨタがタカタ問題で動くワケ 2014/12/05
NHTSA Defects Investigation, Dec.6, 2014
タカタは何を間違えたのか 東洋経済2014年12月6日 
タカタの火薬は安全だったのか 東洋経済2014年12月12日 タカタが使っていた硝酸アンモニウムについて他社が使っている硝酸グアニジンに比して安定性が劣ることが語られている。製品の安全性検査が不十分だった可能性もある。
タカタ会長米公聴会に出席せず 2014/12/10タカタのエアバック問題特集 2014/12/24
他方、ホンダは原因究明と交換部品の調達をタカタに依存。原因究明のため、自動車メーカー間に協力を呼びかけたトヨタ(12月3日公聴会)と印象で大きな差がついた。 

ホンダはその後2014年12月8日に タカタ製エアバックについて米南部に限定していた調査リコールを全米に広げると発表した。背景には 関連部品の調達問題があるとのこと。その後2015年3月12日には交換部品を2015年春内に調達するメドがついたとしている。

  死者が出る重大事態にもかかわらず、タカタの姿勢は誠実さが感じられないものだった。事故は2015年1月にテキサス州でも再発。死者が再び出る。米運輸省高速道路交通安全局NHTSAとは対立を続けた。2015年2月20日にNHTSAは、提出資料に求めていた補足説明がなく調査協力が不十分として姿勢を改善するまで1日あたり1万4000ドルの罰金を科すとした。2015年2月25日には回収したインフレーター全品の保管命令。タカタは自身が進めている原因説明の調査結果の詳細を明らかにしない態度を貫いた

2015年5月19日 米運輸省とタカタは欠陥エアバッグで全米で過去最大3400万台のリコール(回収無償修理)で合意に達したと発表した。最初の2008年のリコールから7年。タカタは原因を究明できず、死者は分かっているだけで8名。1台平均8000円程度の経費とされるので、リコールの負担だけで1000億円を超える。タカタは自動車メーカーと経費分担を協議するとした

2015年5月29日の国土交通省の発表ではタカタのエアバックの異常破裂は国内でも2011年から15年の間で計12件〔その多くは製造が2001-2003年の間で長期間高湿度のもとで火薬が劣化 エアバック作動時の異常破裂の原因になるとの仮説と対応している〕。走行中の事故は4件。残り8件は解体中の破裂。12件中の10件については、タカタの工場の品質管理がずさんでインフレーターに水分が入り込むなどして火薬が劣化したことが原因とのこと。であればタカタに釈明の余地はない

 2015年6月22日 米上院商業科学運輸委員会が出した報告書で、安全性より利益を優先していた可能性を指摘された同社は、報告書は多くの誤解を含んでいるとして、反論する姿勢を示した。もちろん事実誤認があれば反論は当然であるが、大事なことは人命を重視する姿勢を実際の態度で示すことであった。実際には同社はリコールについて 限定しようとする態度 自動車メーカー任せの態度を貫いた。その姿勢のどこが人命重視だろうか?6月23日の公聴会証言でようやくであるが、タカタはドライバー席のエアバックのインフレータを全製品取り替えると明言した。この言葉が正直遅すぎた。

タカタは、大半の事故が高温多湿な地域で起きている(そもそもの原因は湿度管理が不十分だったことにある)、また交換品の供給能力に限界があるとして危険性が高いと判断するフロリダなど高温多湿地域にリコール対象を限定した(2014年10月20日に米運輸省高速道路交通安全局NHTSAは問題が指摘されているタカタ製のエアバックを搭載している自動車の保有者に対して修理を促す声明を発表している。インフレーターという部品の不具合が原因とされる。そのなかでこの事故は高温多湿地域で起こりやすいとしてフロリダ・ハワイ州など7州地域でとくに緊急性を要するとしている 対象は474万台 うちホンダが280万台と6割を占める 当初高温多湿地域に限定する判断はNHTSA自身が2014年6月時点ではそうしていた。その後、NHTSAは世論に押される形で組織防衛もあって全米リコールに進んだとされる。)。10月21日にNHTSAはリコール対象を780万台に拡大。10月22日には連邦地検がタカタの情報開示について調査に乗り出したとの報道。10月23日日産は運転席用も含めタカタのエアバックのリコールを発表。タカタは米運輸省高速道路交通安全局NHTSAによる11月18日までに全米規模にリコール対象拡大を求めた要請に対して態度を保留したが、このタカタの態度は厳しく批判されている。車というのは移動が前提であり、タカタの主張には合理的な根拠が考えられない。厳しくいうなら人命軽視となるからだ。そうした人命感覚をもつメーカーがエアバックを作ること自体が許されがたいことだろう。タカタの対応や責任者の発言はどうも世間感覚とずれているようにみえる。原因が明らかでない以上、欠陥の可能性のあるすべてのタカタ製エアバックについてリコールをかけるのは当然。そうでなければ不安が解消されず問題は拡大する一方ではないか

2015年7月9日 ホンダは新たに世界で450万台の追加リコールを発表。これまでのリコールは世界で2450万台(ホンダの2014年世界生産台数の5倍)。理由が全く分からないのはホンダがタカタに対して責任追及の姿勢を見せないことである。ホンダ側にもこの問題で責任があるということであろうか

2015年11月3日 米NHTSAはタカタに対して最大2億ドルの制裁金を科すと発表した。1)エアバックのリコールで情報提供が遅れたことに対して7000万ドル(現金で)。2)火薬に硝酸アンモニウムを使ったインフレータの出荷停止を求め、違反した場合は1億3000万ドル。

2015年11月4日 ホンダがタカタ製インフレーターを使ったエアバック部品の採用中止を決める。・・・しかしこの決定は遅すぎるうえに ホンダは、タカタが自社以外のインフレータを使って製造したエアバックについては、搭載中止を明言しなかった。問題はタカタというブランドへの信頼が失われていることではないだろうか。なぜホンダはタカタを守り続けるのか?この不可解な姿勢には説明が欲しいところだ

2015年11月17日 日産自動車は2015年10月 国内の自動車事故で助手席のエアバックの異常爆発によりケガ人が出たことを国土交通省に報告した。国土交通省によると2011年9月以降 タカタ製エアバックによる異常爆発14件起きておりこのうち走行中は今回を含め6件。今回は金属片が女性の額と左腕に突き刺さるという「重大な事故」だといえる。海外で死亡事故は8件。もはやタカタ製エアバックを放置することは許されなかった。

2016年1月22日 米運輸省高速道路交通安全局NHTSAはタカタ製エアバックで米国で9人目の死者がでたと発表した。

2016年2月23日 タカタ製エアバックの欠陥について調べていた独立委員会(日米欧10社)が原因を特定したと発表した。(1)硝酸アンモニウムを使いながら乾燥剤を入れていない製品があった(2008年から乾燥剤投入開始) (2)高温多湿な環境への長期間の露出 エアバックをエアコン近くなどにとりつける (3)湿度管理が不十分な組み立て工程 の3点。タカタが依頼した独フラウンホーファー研究所も同様の見解とのこと。しかしこれら(硝酸アンモニウムを使うことがそもそもの原因である)はすでに早い段階から指摘されていたことがらで 結論がここまで伸びたのは、外から見ている者には奇妙だとしか言いようがない(理由(3)は組み立て工場での湿度管理が悪かったことを意味する (1)は工程管理上の問題 (2)は設計上か工程上のことのいずれかともとれるし、広く言えば環境を広く言っているともとれる:タカタの製造過程の問題が中心だが、メーカー側の取り付け位置の問題、使用環境の問題も指摘されている)。

リコール台数は世界で6000万台。かかった費用は6000億円を越えた。タカタが自社で負うべき費用を免れるために、あるいはそれを少しでも減らそうと、調査の結論を長引かせ、本格的リコールを遅らせて死者を拡大させたとしたらその責任はあまりにも重い。タカタは創業家が株式の6割を占め、その高田重久氏が会長と社長を兼任する会社。2015年3月期の売上高6428億円。問題発覚時、高田会長が、監督機関や議会と対策で協調するのではなく、争うような態度を続けたことは、タカタブランドの評価にマイナスに作用した。

 2016年2月23日 ロイター通信の報道は、米当局は硝酸アンモニウムを使ったタカタ製エアバックすべてのリコールの必要性を調査しているとのこと。仮にそうなれば対象は米国だけでこれまでの2900万個から1億2000万個に拡大するとのこと。またタカタエアバックによる死者はこれまでに10人でているとしている。

2017/07/12修正更新(original Nov.4, 2015;revised Nov.26,2016) 

分類:Business Focus 


Case Study on Sony

2017-06-20 21:45:36 | Management

ソニーの復活?ゲーム事業の成績改善(2017年3月期)

 携帯の普及でもう来ないと思われていたゲーム専用機のブームが再びきている。きっかけは2013年発売のソニーのPS4。おいかけるようにマイクロソフトがXboxの新機種を発売。2017年3月発売の任天堂スイッチ。任天堂のゲーム専用機としては2006年のWii(世界で1億台売ったデイスプレー)以来のヒットになりそうだ。ソニーのPS4の販売ダウンが懸念されている。今注目は2016年10月 ソニーのグループ会社SIEが発売したプレイステーションVR(PSVR)(この発売はその後好調 仮想現実ゲーム機の先駆けとなった 専用のVRゲーム VRMVも伸びている)。 

 もともとソニーの収益を押し下げていたゲーム部門の収益改善の意味は大きい。ソニーの利益を支えているのはエレクトロニクス部門の中の(画像センサー含む 画像CMOSセンサーで世界シェアの半分近く)半導体事業の収益改善(スマホメーカーから引き合い)とされる。ただどこまで収益の柱になるか?

  Sonyは2016年11月上旬に赤字の電池事業(2006年発火問題:燃えるソニーのパソコン問題起こす 収益悪化の大きな要因になる)の2017年春の売却を決めた。すでにテレビ(高単価の4Kテレビは好調。スマホは黒字化)。2017年6月有機ELテレビ発売(2007年世界に先駆け月倍開始 2010発売停止へ 背景 小型であったため販売伸びず 液晶パネルの価格低下から韓国サムソンとの合弁事業解消)。パネルを韓国LGデイスプレーから調達.国際分業を肯定 自前主義にこだわらない再参入となった。有機テレビとも今後価格の低下見込まれる。どこまで収益の柱になるか? ゲーム、映画(動画配信の影響で今後DVDソフトの発売は苦戦)、音楽は黒字が定着。

2016年3月期

最終損益で3期ぶり エレクトロニクス事業も5期ぶりに黒字転換。2018年3月期の営業利益5000億円 ROE10%以上を目標。

2016年6月 2006年に業績不振で撤退したロボット事業(1999年に犬型AIBO発売)への再参入を表明。

2016年10月 ソニーのグループ会社SIEがプレイステーションVR(PSVR)を発売(この発売はその後好調 仮想現実ゲーム機の先駆けとあんった 専用のVRゲーム VRMV)

2015年4-9月期

5年ぶりに黒字。構造改革の成果ようやく。画像センサー、ゲームが好調。リストラによるスマホの赤字額が縮小(固定費削減 前年同期はここで大幅赤字 15年3月期は初の無配転落)。純利益で1159億円(前年同期は1091億円の赤字 上期の黒字は5年ぶり)は電機6社中最多。16年3月期の営業利益予想3200億円。

2015年7月 26年ぶりの公募増資で約4200億円調達。

2015年9月 7年ぶりに技術者中心に中途採用再開 リストラは2015年3月期まででほぼ完了 中途採用は2009年3月期を最後に凍結

画像センサー CMOS(相補性金属酸化膜半導体)で世界シェア4割。ソニーの業績回復に貢献。スマホ、自動車に搭載。ロボット制御など。部品事業=デバイス事業で成功。15年度の設備投資額2100億円。2015年後半には東芝の大分工場の先端工場棟を買い取ることになった。競合はサムソン電子 オムニビジョン など。アップルのほか小米にも供給。

他の電機との違いは消費者向け事業からなお引かないこと(他社は価格競争激しい消費者向けを縮小)

2015年後半。デバイスがアップル減速(アイフォン向け 高精細技術が評価され独占状態)のを受けて鈍化する一方、テレビとスマホが利益を稼ぎ、構造改革の進展を印象付けた。

スマホ:固定費下げる従業員2000人減らし5000人体制に、14年10月に1000人減員発表 2015年1月さらに1000人の追加削減発表

テレビ事業:2014年7月分社により事業リスク下げる 11年ぶりに黒字化 ・・・ 顧客との接点として維持・・・高級化 経費削減で維持 エンターテイメント中心に 消費者との距離にこだわる 他の電機メーカーとは異なる戦略

パソコン事業:2014年7月に売却

デバイス ゲーム 音楽 映画などに投資

ROE:経営の最重要指標として位置付け 事業はいずれも分社化 本体は持ち株会社風に デジカメ 放送機器などは投資控える スマホ テレビなどリスク低減と収益改善急ぐ デバイスゲーム映画音楽集中投資 (2015年2月に発表された中期経営計画)

デジタルカメラ テレビ収益改善

高価格帯のミラーレス一眼が好調(2014年4-9月 営業利益率11%弱) テレビ米販社の人員削減による固定費削減効果 他方中核事業のはずのスマホ事業は赤字(2014年4-9月期1800億円の減損損失 拡大戦略から利益重視に転換 販売4100万台:15年3月期 計画より200万台低い 日米欧ではエクスペリアZ好調だが中国東南アで不振 中国専用モデルの開発中止背景は低価格機との競争 海外生産のため円安で収益圧迫 ⇒今後は先進国市場に注力 米ベライゾンげスマホを供給へ:従来からタブレットを供給+スマホ供給へ 先進国で高機能品を安定販売米国のスマホ市場は1億7000万台規模 アップルが4割 サムソン電子が3割 米国の販売チャネンルの弱さが積年の課題 営業赤字は9月段階で1800億円⇒2015年3月期1800億円の減損損失計上で エレクトロニクスが不振である反面 ゲーム機 画像センサー 映画 金融などは好調)

2015年3月期も2期連続最終赤字見込まれ経営トップの平井社長CEO(ストリンガー氏系で英語は使えるとのこと エンターメイント系とされる)の責任は重い。すでに勝負がついている(敗北している)携帯事業を拡大し巨額損失を作る。後任と目される吉田憲一郎CSO(最高戦略責任者)(米国流のEVA経営をソニーに持ち込んだとされる出井信之氏系とされる)が、進めたのが後述するVAIO売却やテレビ事業分社化。確かにこうした構造改革は財務上の即効性はあったとえいる(参照『選択』2014年12月号86-87)。しかし長期的な戦略をどう描けるかは疑問かもしれない。ソニーの破たんは米国流の経営による企業破たんの先例になるのかもしれない。

画像センサー(後述するCMOSセンサー)はアップル、サムソンにも供給。世界シェアも首位。こうした優位を生かすことも必要。ゲーム、音楽、映画などコンテンツ制作はアップル、サムソンにもない側面。

14年 デバイス(スマホ向け画像センサー)とゲーム(プレステ4)が好調。ネット経由サービスのブランドをPSに統一(2015年1月) 音楽配信については自前主義を転換、英スポテシィファイと提携へ(15年3月末)

AV機器は高音質なハイレゾ対応機種中心へ(2015年1月)。テレビデモ画質音質使いやすさなどで高価格帯商品目指す

エンターテイメント事業の扱いをめぐるサードポイントとのやり取り(2013年)
ソニーとその大株主のサードポイントとの間でエンターテイメント事業の分離上場をめぐって議論がかわされた(2013年5月から8月)。
提案を受けたにはソニーのエンタメ事業子会社の分離上場による価値の顕在化(5月14日)。(このあとサードはソニー株の買い増しを
進めたとされる)。このサードとソニーのやり取りは、経営の在り方をめぐる、論争として興味深い。
ハゲタカファンドが圧力 この紹介(広瀬隆雄さん)はハゲタカファンドと紹介するが サードポイントは同時期に問題になったサーベランスからの西武鉄道への株主提案に比べると明らかに違ったことをしている。長期的な経営の 有り方として、エンターメイント部門の切り離し分離上場を提案したと思われる。一つ見えることは、分離上場した方が、その部門の経営陣にとっては、自分たちの評価が市場で明確になるので、経営効率を改善するインセンテブが高まるということだ。
 背景にある問題は、ソニーのエンタメ事業の収益力そして経営の透明力のいずれもが低いことだとされている。
確かにこの問題は実はこれまでも議論されていたところでソニーは決断してよかったのではないか。

 これに対して ソニーはこの問いかけに直接答えず、まずエレクトロニクス事業(モバイル事業含む):2013年3月期に1344億円の営業赤字。を2015年3月期に3000億円の営業黒字に転換する計画を発表している(5月22日)。これは現経営陣の問題意識があくまでエレクトロ部門の立て直しにあることを反映している。しかしこのようにエレクトロニクスの再建にだけ目がゆき、ほかの事業の低収益をチェックし切れていない点がソニーの経営の問題なのではないか。

2013年3月期のソニーは2300億円の営業黒字(前期は672億円の営業赤字)
 テレビ事業の赤字(前期1480億円)は継続(9期連続営業赤字)。ゲームパソコンの販売不振もありエレクトロニクス全体は営業赤字。
 黒字は生命保険など金融事業で多くを稼いでいるとされる(それも株高による運用益とも)
 そして問題のエンタメ部門は営業黒字ではあるが収益力の低さが問題になっている
ソニー 決算発表 発表資料から事業部門ごとの
 数値を参照。なお2013年3月期についてセグメント別の売上高営業利益率を試算したところ
 金融18.2% 音楽9.6% デバイス(半導体など)5.5% イメージ(IP デジカメ ビデオなど)4.7% 映画2.3%
モバイル(MP 携帯など)1.5% ホーム(HE テレビなど)1.2% ゲーム-17.6%
となっている。数値からあれば、ゲーム事業やテレビ事業(今後は高精細4Kテレビや 超薄型で省電力の有機ELテレビが考えられるが世界市場は縮小気味)からの撤退。金融・音楽事業への特化などがソニーに与えられるべき戦略なのではないだろうか。

サードポイントによるさらなるゆさぶり
 このあとサードポイント(運用資産140億ドル:1兆3700億円 投資額の約15%を日本向けにする有力ヘッジファンドとアクテヴィストファンドとして有名 ダニエルローブCEO)はソニー株を約7%に買い増しことを明らかにするとともに、映画音楽を中心とするエンターテイメント部門の分離上場により同部門の事業価値の顕現化を求めた(2013年5月から6月)。ソニーはこの提案を拒否するが(正式の拒否の書簡は2013年8月6日付け)、問題はソニーの業績の低迷にある。ソニーはここでエンタメ部門とエレクトロニクス部門の一体的運営(One Sony)の必要性を主張した。ソニーがエンタメ事業(CBSのレコード事業買収1988 コロンビアピクチュアーズ買収1989)はソニーのブランド価値には貢献したが、コンテンツをエレキ事業に生かしていなかったことは指摘通り。ただ素人目にも、エレクトロニクス部門を維持する理由はよくわからない。

ソニーはサードの提案に対して取締役会で審議した(2013年7月31日)ものの結論として正式に拒否した(8月5日)。
拒否回答 ロイター8月5日
 考え方としてはこれからコンテンツの重要性はますます高まる。エンタテイメントとエレクトロニクスの融合を進めることは
たとえばサムソンと比較したソニーの比較優位につながるといったところか。
 しかし
 ソニーの現在の収益構造はエレクトロニクスは構造的赤字で黒字を出せても低収益。
 エンタテイメントとくに映画は利益は出しているものの同業他社に比べて
 収益力が低いとの批判があり、稼ぎ頭は金融になっている。この状況の放置は典型的な「もたれ合い」経営ではないだろうか。
 だとすればエンタメの切り離し(売却)はソニーを再生させるまともな提案だった可能性は高い。

ソニーはこの間 エンターメイント事業そして金融事業と事業を複合化させてきた。複合化は収益を安定させる
効果がある半面、その連携が取れているか もたれ合いになっていないかはしばしば批判の対象となることろだ。
 サードによる批判はその意味で「まともな批判」であった。それを拒否したソニーの経営陣の経営責任は大変重い。

 債務超過のソニーエリクソンを完全子会社化(2012年 エリクソンとの合弁を解消 完全子会社化)することには社内でも異論があったが封殺された。だとすれば強行した現執行部の責任は重い。さらにスマホ事業などエレクトロニクス事業にこだわり投資を集中した責任も明らかであるように見える。14年9月に示された改革は高付加価値品への集中。展開地域の絞り込み。低価格モデルの削減。で十分説得的ではない。
進まない構造変換

  国内でドコモと携帯販売で蜜月関係 ソニー国内ではドコモにだけ主力(旗艦)モデル供給 ドコモは販売奨励金をソニーに集中 この結果 ソニー国内販売シェアを2012年の10%台から2013年20%台に拡大。しかしドコモはiPhone販売に踏み切ったことで(2013年9月)、ソニーは主力モデルをAUにも供給するように方針を転換したとのこと(2013年9月)。
 2014年1月 ムーディズがソニーを投機的等級に格付けを引き下げた(Baa3から一段引き下げた)。ムーディズは2012年11月にもBaa2からBaa3に引き下げている。これは電機事業の大部分で収益がぜい弱であることを指摘したもの。
 1月の格下げの直後だが、サードポイントが投資家むけの書簡(2014年1月21日付け)で、パソコンとテレビ事業のリストラをソニーに迫っていることを明らかにした。
 2014年2月 パソコン事業売却を決断
2014年3月 旧本社ビル(NSビル 1990年竣工)と4号館を入札により住友不動産に売却へ(品川駅南口の本社ビルに移転) 売却価格161億円 ソニーは1946年に日本橋で東京通信工業として設立 1947年に御殿山エリアに移転 すでに2007年に御殿山エリア北側を売却 今回南側を売却 歴史資料館などが残るだけになる ソニーのエレクトロニクス事業は2011年から赤字 スマホ ゲーム 画像センサーを中心とするイメージング事業を成長3分野とするが、戦略には多くの疑問が出されている。 
 2014年3月期 新型ゲーム機プレイステーション4(2013年11月発売)の販売が好調(700万台近く) 世界でゲーム機を1870万台(台数的には前年比2割減) 任天堂は1631万台で前年同期比3割減。他方米マイクロソフトは1160万台で16%増。SCEの販売台数トップは2006年3月期以来。任天堂を圧倒したものの、家庭用ゲーム機はスマホゲームに押され縮小傾向は止まらない(ゲーム機のpeakは2009年3月期)。

 2014年5月1日 14年3月期連結決算(米国会計基準) 1300億円の赤字(前期430億円の黒字) 営業利益260億円(89%減) 2014年3月期について3度目の下方修正

2014年5月 有機ELテレビの商品化に向けた開発を当面凍結 4K(フルハイビジョンの4倍の解像度)液晶に経営資源を集中(6月2日に4K試験放送が始まる。単価の高い4Kの比率を上げて採算を改善へ 他方でテレビ事業を7月に分社 収益管理を徹底+家電販売の人件費を2割以上削減 15年3月期にテレビ事業の黒字化目指す 他社に比べて大きな販売会社のコスト⇔消費者向けが多い 4Kの使用は2014年のうちにビデオに加えてスマホが加わった。2015年には監視カメラにも拡大されるとのこと)。テレビの販売は地デジ移行の2011年を控えた2010年がpeak(2519万台)。以降激減(13年は前年比16.7%減の537万台)。地デジ開始は2006年。以降の買い替え需要がそろそろ。

ソニーの4Kシェアは66.4%(2013年 国内出荷額ベース 2位はシャープ17.5% 世界出荷額でも23%とtop 2013年の世界出荷額ランキング ソニー22.9% 創維集団14.4%  サムソン電子11.9%  海信集団10.2%  長虹電器9.7%  TCL集団9.2% LG集団7.8%  その他13.9%)。薄型TV全体ではシャープが34.4%でトップ。ソニーは20.2%で2位。4K戦略には力がはいっている。パネルは台湾メーカーから調達(友達光電 群創光電など)。2014年の4KTV販売台数予想は前年比8倍弱の1930万台。サムソン電子や中国メーカーはソニーの半値以下の値段で対抗するとみられる。

2014年5月14日 15年3月期500億円の最終赤字と発表 翌15日株価は失望売りで一時前日比147円安 終値1695円 3ケ月ぶりに1700円台割れ スマホで前期比3割増 テレビで2割増という甘い今期(15年3月期)予想に懸念高まる

 2014年7月 パソコン事業(1996年からVAIOブランドで。2011年度以降低価格品、スマホヤタブレットとの競争 ウインドウズ8の不振 新興国景気低迷などから次第に販売不振へ)を売却 パソコン新会社VAIO(日本産業パ-トナーズ95%   ソニーが5% ブランド権はなおsony ) 育てるのではなくリストラのための独立分社。従業員規模240人。親離れして自己変革.低価格モデルは台湾などでEMS生産。上位モデルを本社工場で。

 ソニーはテレビやスマホなど消費者向け製品が多く企業向け取引への拡大が遅れている(パナソニックは自動車と住宅にシフト  日立はデータセンター向け機器など社会インフラ 東芝はスマホ向け半導体 三菱はファクトリーオートメーションと中核を定めた) 日立は重電部門など安定収益部門に軸足移す。パナソニックはプラズマテレビ撤退や半導体工場売却など構造改革実施。ところがソニーはゲーム、スマホなど事業利益たかだか200-300億の事業にこだわり続けている

2014年7月から8月 賃金制度を改定 年功要素を廃止して役割に対する報酬 8月にも労働組合と団体交渉 2015年度からの導入目指す

          テレビ事業の分社化(ソニービジュアルプロダクツ)

 7月末 スマホの販売台数計画を4300万台(前期比10%増)に修正(従来5000万台)

 2014年8月1日 4-6月期の好決算で株価1887円まで上昇(高値)

 2014年8月13日 PS4の販売台数が1000万台突破(ゲーム事業は4-6月期に黒字回復)

      8月15日 自動車のカメラ用センサー(自動運転技術の中核)への参入報道で株価一時1883円50銭 ソニーはCMOS(相補性金属酸化膜半導体)センサーで世界首位(2013年世界シェア33%)。車載用では米アプテイナ、米オムニビジョンが先行。ソニーのセンサーは現在の一般的センサーより感度が10倍ほど高いとのこと(CMOSこれまでの電荷結合素子CCDに比べて高速で読みだせる上に消費電力が少ない 画質の性能を左右する アップルiPhone向けにソニーが供給しているとされる)。このほかソニーはiPad向けに電池の供給もしている。。 

 2014年9月17日 15年3月期見通しを下方修正 スマホで1800億円の減損処理(完全子会社化したスマホ事業の帳簿価値を引き下げ) 1958年上場以来の無配を発表 スマホ事業7000人の15%にあたる1000人程度を削減 販売地域 機種の絞り込み 1350億円程度の構造改革費用 最終赤字は2300億円程度(当初見込み500億円程度から拡大)

ソニーのフェリカ(非接触ICカード規格)とブルートウース(近距離無線通信)とを組み合わせることで認証装置にかざすことなく、入退室管理ができるシステムが2014年度中にも実現化される見込みだ。これはほかの認証用途にも応用可能。また2015年にはウエラブル機器にフェリカを搭載するとしている。

 サードがソニー株全量売却(2014年10月判明)  サードの売却益は20%程度。映画、音楽の分離、米国での上場迫る。ソニーは提案を拒否するが他方でエンタメの情報開示拡大。コスト削減打ち出す。2014年に入り パソコン事業の撤退。テレビ事業の分社化など構造改革加速。

遅すぎる決定 顧客への配慮
ソニーがパソコン事業(出井伸之氏が始めた事業 2013年1-9月の世界出荷台数シェアはわずか1.9% 14年3月期は2012年3月期以来2期ぶりに最終赤字見込み 背景にはパソコン市場の縮小があり、パソコン出荷台数のpeakは2011年で2年続いて市場はスマホやタブレットの台頭で大きく縮小している ソニーの販売台数のpeakは2010度で870万台。2012年度760万台。2013年度は500万台程度まで縮小)の売却(相手は日本産業パートナーズJIPという実態のないファンド) テレビ事業の分社(分社により経営破断のスピードを高める 高精細高画面など高付加価値のテレビに移行) 人員削減などの合理化策を発表した(2014年2月6日)。(もともとソニーはシェアよりは採算を重視するところがある。たとえば付加価値の高い大画面に商品を絞り込むなど)
 しかしソニーの再生を期待する声は小さい。パソコンやテレビは赤字事業。やや信じがたいのはスマホ(大画面スマホのエクスペリアZ 2013年2月発売 2013年7-9月の世界シェアはこれもわずかに3.5& 世界ではサムソン電子31.4% アップル13.1% 華為技術4.8% レノボ4.7% LG電子
4.6% 酷派4.1% そのほかの筆頭がソニーで3.5%)、ゲーム(プレステ4 2013年11月発売)への経営資源集中方針だ。競争の激しいスマホでの中国、米国への本格参入(スマホで今後とも台数を伸ばすの至難)。そのスマホとの競合が激しいゲームで収益を稼ぐことを構想が示されたからだ(ゲーム機は誰がみても過去の遺物だ)。
 2012年以来経営Topを勤める平井一夫氏(就任直後1万人の従業員削減を発表 2013年12月には国内家電でリストラを発表 今回の2014年2月もリストラを発表した)は、赤字のエレクトロニクス部門を、スマホやゲームでいたずらに延命させているように見える。収益を稼げる金融部門にシフトするべきだろう。
 パナソニックが自動車や住宅分野の強化で次の柱を見つけていることと比較すると、ソニー経営陣が次の成長分野を詰め切れていないことが目立つ。ソニー株のPBRは版年以上1倍割(2月7日現在0.77倍)
 
資産売却による営業利益かさ上げ
 ところで2012年から13年。ソニーはNYそして大崎でビル売却など資金回収進めた。
 しかしこれは営業利益のかさ上げにつかわれてもいる。
2013年1月18日NY本社ビル11億ドル(987億円)で売却を発表。3月末までに手続き。うち6億8500万ドル(615億円)を営業利益に組み込む。資産売却益を営業利益に組み込めるようにしているとのこと。
2013年3月1日 ソニーシティ大崎の売却が正式に発表された。売却価格は1111億円。譲渡益410億円はやはり営業利益に組み込むということ。
 他方でソニーは多額の投資もおこなっている(携帯合弁会社の完全子会社化 ソネットの完全子会社化 オリンパスへの出資など)
 資産を売却 営業利益をかさあげするテクニックに利用。入手した資金で投資。資産のくみかえをしているともいえる。

転換社債発行の意義
 他方で手元資金が多額にある(2012年9月末で4000億円)としながら1500億円の転換社債発行を発表している(2012年11月)。しかし手元資金があるとしながら、転換社債発行をするのは、やはり必要な投資額に比べて、自己資本の不足が意識されているのではないか。

08年3月期決算:V字回復? (2008年6月稿の再録)


 ソニーの決算の08/03期決算が明らかになった。03年3月期に予想より大幅に下回る決算で市場に「ソニーショック」を起こしてから5年。ソニーは業績のV字回復を達成したともされる。しかしその数値は実態を示すものだろうか。数字上では利益は回復しているのだが。また同時に06/3-08/3 3ケ年の構造改革が終わり、工場の統廃合、人員削減、資産売却など目標がおおむね達成されたことも明らかにされた。

部門別営業損益 単位:億円 構造改革費用など込み

部門 06年3月期 07年3月期 08年3月期
電機 -309 1567 3560
ゲーム(SCE) 87 -2323 -1245
映画(SPE) 274 427 540
金融 1883 841 226
ソニー全体 2264 718 3583



08年3月期決算
 まず数字は関連会社のものが連結されているので、実態を読み取りにくい。数値では資産売却など特殊要因も影響している。今回は後述するソニーSFH上場の問題(07年10月11日)も気になる(調達額3780億円)。

部門別の概要
 主力のエレクトロニクス部門で利益が回復 営業利益1500億円→2倍3560億円となった。売上ではデジカメが対前期比6割増。液晶テレビ(ブラビア)は世界シェア1位。ところがサムソン、シャープに収益性で劣るとされ、その主力の液晶テレビで巨額の赤字が拡大している(投資を拡大しているためであろうが収益の低さも影響している)。なお有機ELテレビで先行 (07/12商品化 08/01 米国で売り出し)が注目される。 
 ゲーム部門では営業赤字が縮小した。2000億円→1000億円程度。プレステ3の販売は対前期比2.7倍。ソニーはPS3のセル生産で2000億円の量産投資をしてその後苦戦した。ゲーム部門の戦略の影響は現在も深くソニーの経営を苦しめているといえるが、時間の経過とともに赤字は縮小するだろう。果たしてブルーレイで勝利するためには正しい戦略だったかを判定するにはもう少し時間が必要だろうが、ゲームソフト開発が伴わなかったためにゲーム機としてPS3の影は国内ではすっかり薄くなっている。
 こうしてソニーは数字としては2008年3月期に営業利益で3744億円。純利益3694億円を計上している。

投資計画
 再建が軌道にのったとして2008-2010年の3年間で1兆8000億円の投資をするとした(08/06/26)、9000億円をデイスプレーや電子部品。液晶パネル工場(with Sharp) 有機EL用パネル量産体制 など。

SFHの上場(2007年10月)の回顧
 かつてソニーが行った金融事業部門の上場。
 ソニーは金融統括会社のソニーフィナンシャルホールディングス(SFH)を東証1部に上場した(07/10/11)。上場時、時価総額9000億円。主幹事は国内が野村證券、海外がJPモルガン証券。ソニーの金融事業はソニーの営業利益の3割を稼ぎ出すまでに成長した。業務多様化による収益の分散・安定化効果は出ている。上場に伴いソニー保有株の3割を売り出し処分することになった。この上場については、SFHの独立性が軽視されていることに批判がある。
 SFHの利益の中心はソニー生命の保険料収入と資産運用収益。なおソニー銀行は資産運用が中心で独自性があったが、ジャパンネット銀行やイーバンク銀行も資産運用業務を強化しつつある。
 SFH上場公開は2007年最大のIPO(新規株式公開)。主幹事は野村證券とJPモルガン証券。2006年11月の「あおぞら銀行」(3800億円)以来の大型案件となった。この上場によりソニーは、SFH株の40%を売り出し3180億円を調達。これを電機部門に振り向けるとした。この戦略的資金の調達が、今回の上場の大きな目的。その意味では成功だった。

ソニーの金融事業の事例:ソニー生命 ソニー銀行

営業開始 社名 状況(2008)
1981 ソニープルデンシャル生命としてスタート 1991 現社名になる ソニー生命 主力の個人保険好調 契約高で業界9位
1999年 ソニー損害保険 ネットによる自動車保険販売の中堅
2001年6月 ソニー銀行 ソニーFH、三井住友Bが出資 資産運用に軸 低手数料の外貨預金・投資信託 ネット専業のなかでいち早く黒字化


Originally appeared in Aug.17, 2008
Corrected in February 14, 2014
Revised in Oct.1, 2016

分類:Case Studies


鈴木敏文会長の退任劇 社外取締役の見識かあるいは横暴か

2017-05-21 08:42:46 | Management

 

Case Study : Seven & i HD  鈴木敏文会長の退任劇  社外取締役の見識かあるいは横暴か

2016年3月8日 セブン&アイHDは、傘下の百貨店2つとイトーヨーカ堂の不採算店20店の閉鎖を発表。コンビニに経営資源を集中へ。2016年度過去最高の1800店の大量出店へ(2015年度末で1万8600店)⇒国内2万店が視野に。(ファミマとユニー:サークルKサンクスが経営統合基本合意で1万8000店で後を追う 2015年10月統合合意発表)

2016年3月27日 米投資ファンド サードポイントも反対(2015年10月業績不振のイトーヨーカ堂のGからの切り離し求める。2016年3月27日には鈴木敏文氏(20年以上top 83歳)の井阪社長交代案に反対。これは次男の処遇とからんでいるとの指摘も出た。 

3月末の指名報酬委員会(4人 鈴木氏 村田氏に社外の一橋特任教授伊藤邦雄氏 元警視総監米村俊朗氏の二人)で社外取締役(村田氏と伊藤氏)が井阪氏の交代を含む人事案に反対し、結論を出せなかったたとされる(後述)。だが米村氏は警察の公安畑の出身。経営者をどうするかについて特段の強い判断(失礼ながら見識)があるとは思えない。となると・・・・ただ一人の社外取締役(伊藤氏)が経営が振りまわしたようにも見える。

背景としてセブンイレブンの業績が好調(5期連続最高益)であるなか。創業家伊藤雅俊は名誉会長は交代に反対。8歳年上の古屋氏への交代について指名報酬委員会(4名)は社外取締役2人の反対で結論だせず。鈴木氏の判断に次男の鈴木康弘氏の処遇と実は関係していたとのお話しもある。

2016年4月7日鈴木敏文会長(1992年にトップに就任 米社の救済合併 銀行業への参入を指揮 日本式ビジネスモデルを確立 業界を牽引 コンビニ=社会インフラに成長)による井阪隆一社長兼COO(セブンプレミアムの立ち上げ開発を指揮などで手腕 利益率の高いPBの売上高に占める比率を上げる作戦 メーカーも専用商品を提供)58歳セブンイレブン交代案(後任に古屋一樹氏66歳)を取締役会が否決(賛成7 棄権2 反対6)した。人事案流れたことで鈴木氏が退任へ(4月7日午前取締役会 午後全役職:セブンイレブンジャパン会長兼CEO イトーヨーカ堂会長兼CEO 米セブンイレブンインク会長 からの退任表明 ただ票数をみるとこの決定は微妙で社外取締役がいなければ結論が違ったことがわかる つまり社外取締役が鈴木氏のリーダーシップを否定した。これは正しい結論の導き方だったかどうか)。鈴木敏文氏は井阪隆一氏のリーダーシップに不満があったとのこと。
 
4月15日の指名報酬委員会 井阪氏をセブン&アイ 社長に昇格 村田紀敏社長(鈴木氏の人事案に賛成)の退任 セブンイレブン社長に古屋一樹副社長の昇格を決める副社長には後藤克弘氏。 鈴木氏の処遇で最高顧問案(村田氏が提案)に社外取締役が反発。・・・・任意の諮問機関で決定権は会社側との考えもあるともされるが、鈴木氏に追い出されるはずであった井阪氏が、逆にtopに昇格。社外取締役がこの場合 機能はしているわけだが。鈴木氏の処遇は最高顧問でなく名誉顧問としたの(5月26日 株主総会)は 井阪氏の意向ともされる。鈴木氏の影響力を排除したいということであろう。他方、加盟店オーナーからは、鈴木氏を慰留する声が強かった。
 
この「事件」は社外取締役が、会社のトップを誰にするかという問題で、社外取締役が「機能」した事例なのか。あるいは逆に「暴走」した事例なのか。少なくとも社外取締役の存在によって、次期経営者を誰にするかという企業経営の根幹で社内取締役の多数派の意向が否定された可能性を示したことは間違いない。社外取締役を導入を進めようとする上場会社に対して、大きな警鐘になったことは間違いない。 

この鈴木氏の井阪氏交代案に先立つものがある。2016年1月に生じた、イトーヨーカ堂戸井和久社長の辞表提出劇。2014年に就任後1年8ケ月で自ら退任し、2014年5月までつまり前任の社長の亀井淳顧問が社長に復帰した。このときも退任は自発的とはいえ伏線は鈴木氏が戸井氏のリーダーシップに不満を示したこと。GMS(総合スーパー)という業態では集客売り上げが困難になっており、特に従来型の単独店舗を中心に売り上げ不振が続いている。しかしこちらはまだ売り上げ不振で責任をとったともいえる。GMSは従来型のメーカー卸から仕入れる流通構造にのっていたため、商品開発・価格体系の見直しまですすめなかった。これに対してSPAに示される垂直統合型のファストや良品計画などでは、明らかに製造に踏み込んで買いたい商品の提供にまで進んでいる。従来型では、商品が標準化で魅力がなく、価格面でも特徴を作り出せない。

専門店に特化したdiscount storeや、独自商品で売るSPAに対して、総合スーパーは特長を出せず後退が続いている。利便性ではコンビニやネットストア(電子商取引)との競争もある。総合スーパーの多店舗による大量購入低価格というモデルでは、店舗に魅力が出ないということだろう。それは詰めて言えば、販売している商品そのものの魅力を高めるということだろう。

総合スーパーのもう一つの問題それは郊外にある単独店舗だろう。人々が都市に集中して住み、高齢化を前提に出歩く範囲にコンビニ(1974セブニレブン開業 営業時間帯 定価販売でも客は来る バーコード 共同配送による物流合理化=系列物流網の否定 収納代行会誌1987 セブン銀行2001 米セブンイレブンを子会社化2005  セブンプレミアム開始2007 社会インフラとの評価)がある。

流通3極 スーパー主体のイオン(7兆800億円) コンビニ主体のセブン&アイHD(6兆400億円)、コンビニ主体のファミマ+ユニー(スーパーが収益のあしかせ)1兆4000億円 ファミマユニーの1万8000店舗はローソンをうわまたった。2015年4月から統合協議 8月の基本合意を延長 10月に基本合意 2016年5月の株主総会で合意 9月新会社発足

2016年10月 井阪隆一氏のもとでの新たな経営方針(構造改革 就任後100日以内を目指したが133日後発表となった)が発表された。業績不振の百貨店部門の縮小(H2Oとの資本提携 関西3店舗のH2O:阪急・阪神への譲渡 首都圏への経営資源転換 2006年にミレニアム:そごう・西武買収に始まる百貨店事業の思い切った縮小)。総合スーパーについては不振店の閉鎖と店舗特性(ショッピングセンター型 食品主体型 総合スーパー型)に応じた改装。伸びが続くコンビニは高水準の出店と並行して出店基準も厳格化(平行して閉店)するとした。

この方針そのものは支持できる。商品知識のない店員が店頭に溢れかえり割高なものしかない百貨店や、ただただ面積が広いだけの売り場に安物が大量に並ぶ総合スーパーはいずれも過去の遺物、そもそも存在を続けることが社会悪だろう。総合スーパーGMSは、薄く幅広い品ぞろえ。1990年代に入り、豊かさが進むと、奥行きのある品ぞろえと低価格を実現した、垂直統合型専門店チェーン(SPA 製造小売り ユニクロ、ニトリ、無印良品など)が支持されるようになった(ニトリの百貨店への進出が最近では注目されている2016/09東急百貨店東横店 2016/12タカシマヤタイムズスクエア)。

もともと米投資ファンド サードポイント(2015年10月に大量保有が判明)は、百貨店事業の切り離しを求めており、その障害となる鈴木敏文氏の経営からの排除を求めていた面がある。井阪体制(持ち株会社側)の改革案は、結果としてサードポイントなど外部資本の意向に沿ったものになった。また、百貨店事業、ネットと実店舗の融合を目指したオムニチャンネルという鈴木氏の路線をいずれも否定。それを表現する言葉として投資リターン重視を上げた。

2017年2月期 セブン&アイHDは連結営業利益で7期連続過去最高益を記録したとのこと。スーパーでのコスト削減が進めた成果が表れているとのこと。(なお人手不足が販売管理費用を押し上げ加盟店の経営が悪化している。本部の負担を増やすなど支援コストが上昇している。「スーパーではセミセルフレジ:バーコード読み取りを店員が行い、精算は顧客が行う。の普及が始まっている。コンビニについてはICタグを使った無人レジが構想されている)。主力のコンビニは一見安泰。しかし2016年9月に伊藤忠商事が出資するファミリーマートがサークルKサンクスと合併。2位連合となり、セブンイレンブンとの店舗差を一気に縮めた(19400対18000 19年2月末としていた転換を前倒しで急いでいる)。他方、三菱商事はローソンをTOBにより完全子会社化。反抗を急いでいる。こうしたなか、2017年4月7日、 セブン&アイHDは米国の中堅コンビニ、スノコLPから1100店舗を33億ドルで買収するとした。国内の成長に限界があるなか、成長余地のある米国での積極策は好感できよう。

百貨店の売上高は1991年がpeakで9.7兆円。2016年の売上が5.98兆円で1980年以来36年ぶりに6兆円割れとなった。それらの中で免税店、新業態店、不動産事業、商業施設運営に取り組む高島屋が堅調。反対に経営不振を極めているのは三越伊勢丹。同社は旧態以前の百貨店事業への依存と高級路線。極めて高い人件費体質。肥大化した間接部門で知られる。ゆえに売上が落ちれば減益は当然。この結果を受けて、2017年4月 大西洋社長が辞任し、杉江俊彦氏(取締役 経営戦略本部長)が新社長に就任した。大西改革に対する現場の反発があったとされるが、大西氏が進めた多角化路線そのものは正しい。そもそも取締役で経営戦略本部長だった人が、大西改革に無縁だったとも思えない。とするとこの人事で三越伊勢丹の事業が回復するとは即断できないのではないか。

2017/05/21加筆修正更新(2016/05/26投稿)


Case Study on Yamato ヤマト

2017-05-20 21:40:10 | Management

ヤマト個人向け基本運賃を引きあげ

ヤマトは5月19日 基本運賃を10月1日付けで改定するとした。平均で約15%の値上げ。値上げは27年ぶりであるからこれは努力してきたといってよいのではないか。大口客にも特別扱いはしないという姿勢は立派。 当日配送に割り増し料金請求。今後料金面で宅配ロッカーやコンビニでの受け取りへ誘導することも重要だろう。

2017年3月 ヤマトがサービス見直しに動いた

ネット通販(通販サイト運営者+出店者+小売店+個人間取引)の拡大(荷物の小口化・多頻度化)と人手不足が背景 2016年末 滞貨遅配が発生 ➡ サービス維持のため運賃の引き上げ 荷受け量抑制に踏み込む トラック業界 体力+運転技術+長時間労働の割に低賃金 慢性的人手不足 高齢化 女性パートの就業確保に社会保険の条件化が制約(年収106万以上は加入対象)

年収106万円の壁 2016年10月から

➡ 2016年3月期には外形標準課税の強化による減益 メール便廃止(2015年3月末 メール便は再配達不要のため収益性高い商品 廃止に決定は戦略ミスではないか? 日本郵政のメール便がその後爆発的に増加している)の影響もあった。・・・・ここのところ制度改正は収益のマイナス要因になっている

外形標準課税の強化 2015年12月決定

佐川急便は既に採算の悪い荷物の引き受けは断るように 2013年アマゾンの宅配から撤退

➡ 配送の9割は法人(荷物の量で割り引くため利益が出ないことになっている➡この料金体系を変更するべき) アマゾン(ジャスパー・チェン):過剰なサービスを物流に要求していることを真摯に反省するべき

➡ 細かな配送サービス(時間帯指定サービス) 再配達(全体の2割)送料無料にも問題 当日・翌日サービスは海外ではめずらしい

➡ 利益なき繁忙 人件費などコストが増えて利益が出ない

➡ 配送業者は販売業者からこのようなサービスを安い単価でうけおうべきではない

単価の安いネット通販の扱い問題(収益悪化要因):アマゾンジャパン(独自の物流センターで有名)などは通常の半額以下しかし払っていない

一部のネット販売業者は配送時間を指定させないことで再配達を増やしている。➡ 配送業者はこのような業者を断るべきではないか。

2016年の宅配便役38億6896万戸 前年比6.4%増 10年間で9.4億個ふえる

業界は寡占構造 ヤマト(1976年宅配便編み出す)が5割 佐川と日本郵便併せて9割(自社で扱いきれず配送業務を中小に委託するように変化)➡いっそ3社で共同配送とか?

ネット通販は今後も拡大(現在は物販の5%だがまだまだ拡大する)

注目される物流合理化の限界と打破(ロボット 自動運転技術)

 物流の限界は一方では人の面ででてきている。トラック運転手が不足しているほか、パートの確保もむつかしくなっている。人の不足は賃金の上昇を生むがそもそも人が足らないとなると、輸送手段を運送会社として確保できないことになる。いくつかの方法が考えられている。たとえば共同配送(2017年1月 アサとヒトキリンが共同運送で手を組んだなど)による運送の効率化。トラックを鉄道に切り替えるモーダルシフト。

 ➡ トラックや鉄道の自動運転で無人化 物流施設・ドローンで結び最適なタイミングで配送 完全無人配送サービス

 さらに2017年2月16日 アスクルの物流拠点(埼玉県三芳町)で起きた大規模火災は衝撃的だった。東日本全体の個人向け通販ロハコの配送拠点。アスクルは物流を外部企業に任せるのではなく、独自に整備してきた。こうしたモデルのリスク、物流拠点の防災の必要性を強く意識させる事故となった。このような物流拠点でも人の確保は深刻化しており、ロボットの導入が進んでいる。

 物流施設にロボットを入れる動き進む(2016年12月) 倉庫内仕分け 商品棚の移動 受注商品の仕分け取り出し 梱包など

物流:宅急便の開拓者 ヤマト運輸

個人相手の物流サービスの提供(個人向けはもうからないとの常識への挑戦)は、日本独自のビジネスモデルとされる。もうからないとされていた小口物流に注目し、新商品をつぎつぎに開発して業界をけん引してきたヤマト運輸の功績は大きい。また最近はネット通販が宅配をけん引。近年では企業のさまざまなビジネス需要を取り組み、ヤマトは内外に向けて発展を続けている。

宅急便では1位がヤマト(4割強) 第2位の佐川急便(4割)との競り合いも注目されている(3位が日本郵政G 1割)。半面 市場は飽和 競争も激しい 宅急便は大手3社でシェアが9割となる寡占市場。ヤマトは海外にも市場を広げることで個数の拡大をはかっている。
 2012年 宅急便のシェア ヤマトが42% 佐川急便が39%
 卓越した情報システム投資 基幹システム更新頻度
 6000箇所の配送拠点 毛細血管のような配送網と決済機能
 荷物の追跡サービス
 時間指定配送 などを可能にしている

 ネット通販(顧客獲得のため配送無料が増えている運賃値下げ圧力も強い)とともに宅急便伸びている 。消費者向け国内電子商取引の規模は2011年に8兆5000億円 前年比9%の伸び。 ネット消費 2012年度の規模 9兆5000億円 小売サービス市場の3%(米国は5%)の拡大で増加続く。宅配便の扱い個数は11年度に34億個前年度比6%の伸び 13年度に36億個程度

 ヤマトの配達日時指定サービスの質をネット通販大手は評価している。→ 大口客 取扱い個数増える。配達時の代金回収(宅配便コレクト)の利益率高さも相乗効果
 問題は人手不足:人件費率は売上の5割 景気回復によるドライバー不足 トラックの共同運行(地方路線で2014年秋にも施行) 主婦を配送に戦力化(佐川急便が2014年中実施へ)
 大型物流施設への投資:一段の機械化 業務効率の改善は不可欠だが 201310月 羽田クロノゲート稼働。今後関西圏、中部圏にそれぞれ200億円投資して大型物流施設更新。 


20143月期2013年度
宅急便の取扱い個数16億6587万個 12年度比12%増 売上は6%増の1兆3600億円程度 連結純利益は5%減の335億円。ただしクール宅急便で問題露呈(2013年10月) 宅急便の1割を占めるクール便は210-610円の追加料金徴収 宅急便の平均単価が低下する中で収益を支える存在。 再発防止策の発表(2013年11月)

2013年度宅配便の個数36億個程度(20年前の3倍 1998年度比2倍)4%程度増 ネット通販が広がった影響 このうちヤマト単体の個数は16億6587万個前年度比12%増

2014年6月 ヤマト運輸 コンビニでのネット通販荷物受取を拡大(事業者や提携コンビニを拡大 顧客囲い込み:システム連携必要+集配効率向上)事業者が自身でやるためにはコンビニのシステムとネットワークを連携させる必要がある。

ネット通販で代金立て替えサービス(20141月から)
  ヤマトが利用者の支払い能力など審査して与信管理。5万円を限度に立て替え。返品配送にも対応。 顧客は2週以内にコンビニなどで支払。顧客のネット決済回避、商品確認後支払ニーズに対応。 通販業者:代金回収リスク減らせる。2014年1月 通販利用者に後払いサービス始める(カードを使わず商品を手にしてからの支払いが可能に) ⇒ 2014年9月 SGHD(佐川急便)も後払いサービスを導入(カードを持たない消費者の利用を増やす効果 また返品OKというものも一部の商品に認める通販業者もいる 通販でも店頭に近い感覚で買い物ができる)

大口顧客向けに料金値上げを実施

 薄利多忙,豊作貧乏からどう脱出するか:売上高営業利益率低下 大口顧客に値上げ交渉(佐川は2013年運賃値上げ要請でアマゾンジャパンを失うなど取扱個数を大幅に減らすが採算は改善)、コスト削減努力⇒ 宅急便の品質を守るために料金の適正化(サイズ別に正確に徴収 実質値上げ)に理解求める(2014年1月―3月)。

2015年3月期見通し 24年ぶりに値上げ約2% 荷主100万社と交渉 個数も2%増(年200億程度の売り上げ増) 約380億円の増収

すでに日本郵便(2010年夏日本通運ペリカン便を吸収 全国配送網いかした輸送能力)が2011年 佐川(98年宅急便参入以来はじめて)が2013年 2014年3月期に6%値上げ。大口顧客に値上げ 2014年8月には日本通運が24年ぶりの値上げ発表(9月からトラック輸送の料金引き上げ 燃料費の高止まり 運転手の人件費上昇 顧客5万社 2014年9月実施)

20133月期2012年度

2013年03月期実績
 売上1兆2823億円(前期1兆2608億円2.2%増)
 営業利益662億円(前期666億円0.6%減)
 純利益351億円(前期197億円78.2%増)大震災被災地企業への支援策修了による増加が主因 
 宅急便の回復は予想どおり。しかしメール便の回復が予想より遅れているとのこと。
 同業との競争のほか、文書の移動というニーズ自体が低下しているのではないか。

2012年11月15日よりアジア向け国際宅配便の翌日配達サービス
  関東関西地域から発送する重さが1キロ以下の書類を一律950円で
  上海 香港 台北などに翌日までに配達 など
 201211月 2016年までに3大都市間で当日配送を打ち上げる
  3大都市近郊の大型物流拠点整備へ
2012年度 クロネコヤマトが上海とシンガポールでサービス開始
 2012年度 アジア諸国との間で翌日配送へ(これまでは4日かかっていた)生鮮食品 クールも扱う
 (夜間飛行制限がない 羽田を活用 沖縄経由でアジア各地に飛行便)
  先行する日本郵政翌日配送サービスは割高かつ常温輸送に限定
 クロノゲート(羽田空港近くの物流拠点 投資額1400億円)の稼働
 国内外1枚の伝票出届くバーコードによる配達先指定 荷物の動きをリアルタイムで追跡
 企業の輸出支援+決済代行
 現地の集配員を独自に雇用 時間帯別配達 カード決済などのサービスを海外に伝承
 人材育成のシームレス化に取り組む
 2013年から ビルや商業施設の物流を丸ごと請け負うサービス開始
また 企業が持ち情報機器の運用管理を請け負うサービス(提携先:OKI) をそれぞれ開始させた。後者はリース費用より割安な価格水準をめざし 企業の管理運用コストの低下を目指すもの
  20129月から受取場所選択サービスを実施(背景:一人暮らしの女性の自宅受取敬遠 運転手の負担軽減 利便性)。コンビニ:24時間受取に対応できる

20123月期:(2011年度) 
 2011年度売上高 1兆2608億円 東日本大震災に寄付を計上 特別損失(142億円)で処理
 純利益の4割を寄付:宅急便1個につき10円 農水産業に助成金 顧客支援の狙いも
 審査委後 佐川とヤマトは東北被災3県での宅配便事業再開を急いだ 
佐川による回復は2011年3月24日 ヤマトが3月25日
  2012年3月期 宅急便取扱い個数14億個 過去最高 6%弱増
       クロネコメール 信書を送れない説明の徹底などで取扱い件数5%減
       信書についての重要なお知らせ(2011年9月)

2011年度 通販家電の保証期間延長サービス開始
グループ会社として 家電の修理会社設立済み
2011年度 ネットス-パーサービス事業 全国化打ち出す
201104 2012年度末をめどに 中小スーパーと組んで展開中のネットスーパー事業を全国に拡大へ。 201104段階で13都府県で提供中

2010年度 宅急便受取指定開始
受け取る本人にメールで事前連絡 都合に合わせて配達日時を変更できるというもの
 受取場所の指定(変更)も可能 ベース:クロネコメムバーズ(2011会員数730万人)

2010年度 海外でサービス開始
 長引く経済不況のもとにあっても、ネットや通販事業の増加を背景に宅配便事業は2007年度までは市場拡大を続けた。しかし2008年度に国内宅配便は初めて減少に転じた。そこで改めて注目されるようになったのが、海外である。海外でも個人間物流はなお未開拓な市場として、国内で培ったサービスの展開余地が隠されていると考えられた。2010年1月、ヤマト運輸が中国上海で宅配便サービスの提供を開始したこと(2009年10月 上海巴士物流公司に35億円出資 出資比率65% 2010年1月18日雅馬多運輸有限公司と改称して業務開始)は、新たな一歩(宅配便の海外展開)として大変注目された。
 ヤマトが上海で業務開始
 ヤマトが上海で業務開始当面、営業エリアが上海に限られ、料金も現地業者の2倍前後とのこと。
 クロネコの上海路上デモンストレーション
 なおヤマト運輸では、シンガポールで上海より少し早く2010年1月8日にサービスを開始している。
  ヤマトが1月8日業務開始
 シンガポールでTA-Q-BIN シンガポール経済新聞2010年1月12日

宅急便の歴史
宅急便は1976年に「電話一本で集荷 翌日配送」を標語にしてヤマト運輸が開始(開始1年で目標の20万個を超える170万個 背景に1960年代の高速道路の整備 運輸各社が長距離大口貨物の取り扱い強化 これに遅れた大和運輸は打開策として小口貨物で新商品 宅急便を開発した)。当時の社長が小倉昌男氏。

 3辺合計1m以下。重さ10kg以内 料金500円均一 翌日配達
 サービスが先 利益は後 全国路線網の形成急ぐ
 遠隔地を含む全国サービスの実現が1997年。
 2010年にはサービスをアジア圏の一部に広げた。現在は2016年メドに3大都市間で当日配送が一つの目標になっている。

ヤマトは商品をつぎつぎに開発して市場を掘り起こしてきた。
 顧客の要望・不満
 顧客ニーズ
 採算性

 家電修理サービスの短期化(最短3日)
 離島僻地の小店舗への毎日配送
 過疎地でのネットスーパー などを実現

クール宅急便(1987)
ゴルフ宅急便(1984)
スキー宅急便(1983)
時間帯お届けサービス
代金引換 1986から 通信販売の基盤つくる アマゾンは2007年度から会員制サービス開始。
収納代行
クレジットカード決済 宅急便コレクト
メール便 1997年取扱開始 クロネコメール便
メール便速達サービス
時間指定サービス
翌日お届けサービス→通販業者のニーズつかむ
オークション宅急便
メンテナンスサポート
海外展開

組織的には2005年11月 持ち株会社移行
西濃運輸、日本郵船などと提携

海外物流で企業間物流でも新機軸示す
 海外との物流では企業向けの国際物流でもヤマトは2007年4月から新機軸を打ち出した。これは輸出メーカーから輸送品を、ヤマトが買い取って一貫輸送するというもの。これは従来商社が行っていた貿易金融機能である。
 海外輸出では輸送期間が航空機で5日程度、貨物船で3週間程度かかり、輸出側の在庫を増やし資金回収が遅れる。輸送品をヤマトが買い取ることで、企業側では在庫圧縮、資金効率改善効果が生じるとされる。このビジネスのポイントは買い取りのリスクをヤマト側が十分調査できるかであるが、今後の推移に注目。
 商社金融

増減要因
人件費(売上の半分)
 パート削減
 積載効率改善によるドライバー賃金
 積み込み作業の効率化
 外注費(トラック利用料)
穴を埋める 
小口化・域内・近距離需要も取り込む
大口顧客(→単価は安い)
 通販業者 値下げ要請
 ネット通販の伸びが反映
引っ越し
国際宅急便
 ⇔輸出入の荷動き次第の側面
 海外の会社との提携必要
 国際間ビジネス需要中心

日本郵政と激しく対抗
 なおヤマトの郵政との対抗意識は激しいものがある。
 ヤマトは郵政に対して信書便の独占に異議申し立て。もともと日本郵政では一般小包郵便物をおこなっていた。1987年にその販売ロゴを「ゆうパック」とした。2007年の郵政民営化により、郵便物の範囲は限定され、小包は宅配貨物に分類され小包郵便物という名称は使えなくなった。ヤマトでは信書便を郵政が独占する状況での小包取扱は、「不当廉売」に当たるとの主張を行い、法廷闘争も続けた。

 郵便事業はメールによる通信の一般化により、取扱件数の減少傾向が国際的にみられる。私見ではヤマトを始め宅急便は、新たな市場を開発拡大するとともに既存の郵政の小包事業を食いながら伸びてきたのではないか。その意味では郵政への対抗意識は、理解できるようで理解できないところがある。郵政が対抗意識を示すのはわかるのだが。
 現在、かつての小包事業(荷物事業)を含む郵便事業は赤字であり、精彩を欠く。日本郵政は利益の多くを「ゆうちょ」「かんぽ」から稼ぐが、これらの残高の縮小傾向が止まらない。また運用のほとんどを国債に依存していることは、利ざやが極めて小さいことを意味しており、リスクを抱えているのと同じと形容される。

 なおコンビニでの販売差し止め訴訟はヤマトが敗訴
 2004年9月 差し止め訴訟(2006年1月請求棄却 2007年11月控訴棄却)
 2006年9月12日 ヤマトはゆうパックは不当廉売だとして 公正取引委員会に経費実体の調査申し立てた。

日通は宅配便事業から撤退 企業間物流に特化で生き残りへ
ペリカン便のゆうパックとの統合の合意文書発表は2007年10月。しかし2008年10月にも2009年10月にも統合を行えずようやく2010年7月に共同出資会社JPエクスプレスの休眠会社化、ペリカン便事業の日本郵便への移管を実現したがゆうパック遅配などの混乱が生じた。なお日本郵便ではJPエクスプレスの従業員4100人を引き受けたとのこと。
デイリーヤマザキがヤマトに切り替え
 デイリーヤマザキが宅配便業者を2010年9月から日本郵政からヤマトに切り換えるのはこの遅配問題の影響と噂された。
 現在、宅配でヤマトと連携しているのは、セブンイレブンジャパン、ファミリーマートなど。他方、ゆうパックを取り扱うのはローソン、サークルKサンクス、ミニストップなど。
 実はこの敵失によりヤマトの宅配業務は2010年度に大きく拡大する。
サークルK 宅配便をヤマトに切り替え(2012627日)
もともと2005年に安いという理由でヤマトからゆうぱっくに乗り換えたものが戻った。これでコンビニの7割はヤマトに。店頭受取サービス メール便などサービス内容はヤマトが上。ブランドイメージでヤマトが上。 ゆうパックに残るのはローソンとミニストップ 

日通の強みは運送事業 国内物流企業では最大国際物流網(世界40ケ国223都市に拠点 世界のどこに荷物があるかリアルタイムでわかるITシステムも構築済み)。企業間物流。広域の移動に強い。売上が11年3月期で1兆6000億円規模で純利益は120億円規模。
日通は売上の3割を国際物流で稼ぐ。
主力は
国内トラック輸送 混載トラック
倉庫業務 
鉄道貨物
国際貨物
航空貨物(利益率高い):日本から中国への自動車部品輸送 欧州への家電部品輸送
海運

Hiroshi FUKUMITSU©2010-17 This blog was published at first in Aug.10, 2010.
It has revised often and this final edition issued in Mar.20,2017.

Area Studies Business Models Business Strategies

 


Video Lectures on Management

2017-02-08 16:18:58 | Management

ACDCLeadership
demand and supply explained(2-1)
demand and supply explained(2-2)
Costs of Production and Cost Curve(2-1)
Costs of Production and Cost Curve(2-2)
maximizing profit MR=MC
perfect competition

MOOC massive open online course
Class Central included Cousera, Udacity and edX

cowsngrass produced business planning process
Business Planning Process: Overview
Business Planning Process: Asessing current situation
Business Planning Process: SWOT analysys
Business Planning Process: Developing the Vision

Crash Economics 
Behavioral Economics
Economic Schools of Thought
Environmental Economics
Imports, Exports and Exchange Rates
Income and Wealth Inequality
Monetary Policy
Money and Finance
Monopolies and Anti-Competitives
Revenue, Profit, Price 
Economicsfun

Budget lines and equations economics
Consumer Theory

Introduction to budget lines
Introduction to cost theory
Introduction to perfect competition

 

Introduction to monopoly

Flash Economics-Business Economics
costs to a firm
economies of scale
monopolistic competition
monopoly
motives of firms
oligopoly
perfect competition
why do firms grow?
why do firms remain small?

Investor Trading Academy
What is woking capital
Kelly School of Business
Introduction of Business and Management(Indiana University, Kelly School of Bussinesss) Kenneth Wendeln
Accounting and Business Environment(Indiana University, Kelly School of Business) Rebecca Trax
Foundation of Finance(Indiana University, Kelly School of Business) W.Todd Robertson
Marketing and Society(Inidiana University, Kelly School of Business) Kim Donahue

Kyle Purpura
perfect competition(3-1)
perfect competition(3-2)
perfect competition(3-3)

Marginal Revolution University

Importance of Institutions

Open University(UK)

60 adventures in economics
invisible hands
paradox of thrift; Phillips curve
comparative advantage; rational choice; impossible trinity

Policonomic

Microeconomics-Production 
Utility function
Production function

strategic management Patrick McNamee
Chapter 1 the masters of business administration
Chapter 2 what is strategic management
Chapter 3 overview of the timeless models of strategic management
Chapter 4
Chapter 5 part 1
Chapter 5 part 2
Chapter 6
Chapter 7
Chapter 8
Chapter 9
Chapter 10
Chapter 11
Chapter 12 product market portfolio

richardmckenzie
Microeconomics for MBAs (University of California, Merage School of Business) Richard McKenzie
1.1 introduction
1.3 compartive advantage
3.1 competitive market efficiency (1 of 2)
3.1 competitive market efficiency (2 of 2)
7.4 elasticity (1 of 2)
7.4 elasticity (2 of 2)
7.5 indiference curve (1 of 3)
7.5 indiference curve (2 of 3)
7.5 indiference curve (3 of 3)
8.1 marginal cost
9.1 firm cost structure (1 0f 2)
9.1 firm cost structure (2 of 2)
9.2 long run cost structure
9.3 long run cost
10.1 production in perfect competition (1 of 2)
10.1 production in perfect competition (2 of 2)
11.1 monopoly production (1 of 2)
11.1 monopoly production (2 of 2)
11.2 inefficiency of monopolies
11.3 monopoly profit and taxation
12.1 monopolistic competition
12.2 cartels

WKU, HyperManyMedia Platform currently Management Lectures and Accounting Lectures are available, it seem suitable for introductory level

Video Lectures on Accounting and Finance

Video Lectures on Markets and Investment
Lecture Notes of MIT and Open University

Videos of Outstanding Speakers
hypertext and tutorial in Finance
English Tutorial


Case Study on Sharp シャープ

2016-10-01 14:45:43 | Management

鴻海による支援の話が2016年に復活

 2012年第三者引受1株550円で9.9%の取得でいったん合意。その後株価が3分の1程度に下落したことで両者に亀裂。破談にいたっていた。

 2016年1月 産業革新機構からの3000億円規模の出資案でいったん話がまとまる。3000億円規模の出資(将来的には液晶事業を分社 ジャパンデイスプレイとの統合  白物家電は東芝と統合など) 3500億円規模の金融支援 (シャープ側にとっては分社解体であること その過程でリストラをさらに強要されること 金融機関にとっては2000億円の優先株の無償譲渡 つまり債権放棄 債務を優先株に切り替えるなど金融支援の積み増しであることなどが問題) → この産業革新機構案は正直に言えばあまりにも人を小ばかにした提案 なぜ銀行は2000億円を放棄しなければならないのか? などシャープは解体されリストラされて消滅されねばならないか? 

 産業革新機構案(今後の成長戦略になっていないと批判された) 3000億円を本体に出資(内1000億円は白物家電買収用 実質2000億円) 2000億円の融資枠(誰が出すかは不明と批判された部分) シャープの液晶事業をJDと統合 東芝の白物家電事業などもシャープに統合など(東芝の経営危機の受け皿にシャープを利用しようとしたもの)。銀行に対して追加の3500億円(優先株の消却2000億円 負債の優先株式振替1500億円)の金融支援を求めたことで銀行への負担が増えるだけの提案に銀行は離反。 → 国内再編にこだわりすぎ → 民間企業や民間の再生ファンドにまかせるべきという批判もある

  2016年1月30日 郭董事长柄直接説明したことで流れ変わる。巨額支援のほか 従業員は現状維持 現経営陣維持などに釣られたか。銀行にとっては負担軽減になっている。→ 銀行は当然 革新機構案にはのれないはず。

 2月5日の発表では、太陽電池を除く主力事業を一体運営。40歳以下の雇用は維持。26日にも保証金1000億円が払い込まれる。第三者引受により3分の2の株式取得(4890億円) 主取引銀行の優先株買い取り 堺DP(SDP液晶生産会社)の資産取得など。生産・販売で相乗効果を期待。 

 液晶DPの特徴 製品寿命サイクルが2年と短い 価格はブラウン管の4分の1 生産規模は億台 決断を大胆かつスピーデイにできる会社の世界 

 シャープは3月末に3000億円規模の融資枠が返済期限迎える。 

偶発債務問題:確かに不誠実なシャープ旧経営者

 2月24日にシャープは3500億円に達する偶発債務リストを突然提出したとされる。郭理事長は激怒したとされ買収契約の延期を表明。この偶発債務の経緯は外部からはよくわからない点の一つだ(どの程度のリスクであるのか その大きさは妥当かなどは1件ずつ検証しないと実際のところはわからない 偶発債務の金額そのものは開示されていたはず その詳細がこれまで伝えられなかったということかどうか しかし買収に当たっては当然精査すべき対象。この時点までリストがわたっていないのはどうにも不可思議だ。この提出の経緯もサムソン側が要求して出したとみるのが自然だが、事情はわからない)。これで鴻海の協議の求めをいわば無視して取締役会で鴻海の提案受け入れにシャープは進んでいる。この経緯もよくわからないところだ。シャープとしてはほかの選択肢はもうなかったということだろうか。

 2月25日 シャープの臨時取締役会(13人の取締役のうち5人が社外 そのうち2人は銀行系ファンド出身)は鴻海の買収提案受け入れを決めた(買収きまれば保証金1000億支払との約束が利いた)。出資を含め支援額は6600億円規模。

 2月26日 シャープは4890億円の株式取得(うち銀行から1000億円の優先株取得)などを内容とする鴻海側提案受け入れを発表した。他方で鴻海側が偶発債務の精査を主張している。

  当初2月29日までとした交渉期限を3月7日まで延長。鴻海側が精査を主張したため買収協議さらに延長されて長引く。また鴻海側は主取引銀行と偶発債務発生時の追加金融支援を協議()融資枠の設定2000ー3000億程度)。鴻海側は3月末に5100億円の協調融資の期限を迎える主力行に対して金利の引き下げを要求。さらに出資額の減額1000億円を主張した(買取り予定の優先株の減額あるいは買取り延期→買取り延期へ)。公表されているとおりであればシャープに対して 鴻海が不誠実を主張するのは当然。なので出資額減額という流れはわからなくない。

 2016年3月期は2年連続の巨額赤字(2559億円 昨年は2223億円)計上となり、連続債務超過で行き詰まった。

 経営方針はその後揺れ動いた。一つは人員削減問題。そして不振の太陽電池の扱い。

 交渉では 鴻海は交渉を進める前提として 保証1000億円の使途限定(成長分野に優先投資 運転資金には使わない)と 破談になった場合 鴻海がシャープの液晶事業を買い取る条項の設定を求めた。  

買収契約に正式調印(2016年4月2日)

 2016年4月3888億円出資して第三者引受で議決権66%を取得する契約を締結した(4月2日 偶発債務を問題視した鴻海は出資額を減額したとされる 主力行から優先株を買い取る話は3年程度延長された)。主取引銀行は3000億円の融資枠を設定。有機ELパネルなどへ投資(有機ELパネルに経営資源集中2000億円を投資の予定 韓国勢の投資の前に設備が確保できないと ジャパンデイスプレイとの協業も検討:2016年8月 液晶に600億円 家電などIoTに400億円など)。

 2012年3月にも資本業務提携に至りながら破談になったこともある。今回は3月31日に買収契約保証金として1000億円を支払い済。各国に独占禁止法の審査承認手続気がある関係で、払込期限を10月5日とした。

  シャープを苦しめるのは主力の液晶事業の不振。その後は一時は太陽光バブルを受け太陽電池で伸びたが失速。他社のように次の成長の糧を見いだせないまま現在にいたった。

 当初6月中の出資を目指したが、中国の独占禁止法に関する審査に時間がかかり8月11日に審査終了。払込修了は8月12日になった。

 6月23日の株主総会で新役員が承認されている。取締役は13人(社外5人)は社内出身の一人を除いて退任。9人(社外2人)と削減し、9人の役員のうち6人(社外2人含む)を鴻海が選んだされる。

 一時 人員削減の話が出てそれが途中で消えたのは、人員削減で固定費は削減できるが、社内のモチべーションの低下 人材の流出 

 新たな社長は戴正呉氏(ホンハイ精密工業副総裁) 朝7時から幹部会を開くなど規律にうるさい。2016年1月頃は雇用の原則維持。しかし交渉が有利になってからは40歳以下は切らないに変更(腐った卵しか産まない鳥はいらない)。2016年3月期 最終損益2559億円の赤字(昨年は2223億円の赤字) 特別損失も膨らみ債務超過 8月1日付けで2部に降格 ただし鴻海による3883億円の出資で 債務超過は解消見込む

 8月12日 増資の払い込みが終了。同時に高橋興三社長が退任。近く鴻海の戴正呉氏が新社長に就任する見込みとなった。

ホンハイのもと 液晶強化に方針転換

 復活への柱の一つは鴻海(傘下に液晶のイノラックス:群創光電)との協業によるテレビ事業強化(テレビ事業を再び強化) 国内の買い替え需要だけでなく 東南アジア向け拡大を狙うが 値付けが低いと協業による コスト削減効果が消える可能性がある。これまでは切り離すはずだった 液晶事業への投資に戻る構想。堺での有機EL製造に2000億円の巨費を投ずる(その後 日本国内での投資計画見直し2016/08;9月30日には国内で574億円の有機EL試作ライン設置投資を発表。さらに中国で量産ライン検討2016/10と変わってた) 液晶でも600億円投資としている。これによって、韓国勢に対する投資の遅れを挽回するとしている。対米では販路確保に向け、米コストコ、アマゾンと協議開始とのこと。」

 他方で2013年以来のサムソンからシャープへの出資が解消されたことから、最大顧客サムソンへの大型パネル供給の安定性が懸念がでている(16年9月)。販路を確保できないまま、サムソンとの取引が失われると量産規模維持の痛手になる。

中国向け生産で一時復調(2014年3月期)も再び困窮(2015年3月期)

 2013年夏 中国のスマホメーカーとの交渉で販路を拡大に成功(省エネ型イグゾーパネルの外販)。とくに小米やZTE向けのパネルでは販路拡大に成功した。これにより2014年3月期に中小型パネルが一時黒字化(同期は115億円の最終黒字 1085億円の営業黒字)。これはアップル依存を修正する戦略でうまくゆくかに見えたが、2014年末にシャープの液晶にタッチ機能を付けて小米に納入していた台湾企業が破たん。タッチ機能のないシャープの液晶は行き場を失い、タッチ機能のあるジャパンデイスプレイの液晶(インセルと呼ばれる技術で量産体制)が小米の仕事を取ったとされる(なおシャープ自身もインセル方式を使ったFDフリードローイングパネルを開発しており2014年6月に発表している。今後量産化を進める方針2015年3月)。加えて中小型パネルは中国メーカーなどとの競争激化による単価の下落で利益率低下。
 2015年1月にはアップルとの間で亀山第一工場で中国スマホ企業向けパネル生産を可能とすることで合意。
 2015年3月 シャープの経営は主力2行に資本支援を要請するまでに悪化した(2014年末で有利子負債9972億円 うち6000億円主力2行分。なお3月段階では支援は1500億円規模で別途300億円出資を募るというもの。2015年3月期の連結で2223億円の赤字(2期ぶりの最終赤字 大半は単体での赤字で単体で債務超過 前期は115億円の黒字 液晶工場の資産価値引き下げ=減損処理で赤字額拡大 液晶在庫評価減295億円 液晶・電子部品などの生産設備での減損処理995億円で減価償却費を落とすことで2016年3月期 液晶事業の業績を大幅改善してV字回復を狙う方針)。営業損益も480億円の赤字。売上高は前期比5%減の2兆7862億円。
 資本要請額は2000億円 融資を優先株に切り替えるDES(debt equity swap)手法で支援決定は4月23日 出資側には2行(各1000億円)のほか2行が出資する企業再生ファンド:ジャパンインダストリアルソリューションズも加わった(実施は6月末)。こうした支援をテコに人員削減 あべのの本社売却 欧米での太陽光発電事業からの撤退 太陽電池事業からの撤退 4カンパニーに再編 本社代表取締役を5人から3人へ削減 などを進める一方 今後3年間で2700億円の設備投資をする計画。シャープは、アップル、小米へのいずれからも過度の依存からの修正を掲げている。選択肢としてシャープは他のメーカーへの依存を強める戦略をあくまで取らなかった。結果として金融機関への救済に頼った。
 ジャパンデイスプレイ(JD)との関係でも、まずJD設立時(2012年)にJDへのの合流を拒否。2014年10月にもJDに出資する革新機構からの液晶事業買収買収の動きがあったが、これに乗らなかったとされる。⇒ Case Study on Japan Display
こうした経緯をみると、経営方針で自立(単独路線)にこだわるのがシャープの特徴ではないか。

興味深いDESへの評価
 2015年5月14日 資本支援策が発表となった。ここで債務の資本への切り替えでは新規資金が入らないとの評価はDESの問題点を示すもので興味深い。新規資金はファンドが優先株で出す250億円だけ。他方で、累積損失一掃のため資本金1218億円を5億円に減らすとのこと。2015年3月末の現預金2322億円。
 2015年6月末で支援策が実行されると、自己資本比率は3月末で1.5%(前期8.9%)まで低下していたのが5%強まで回復する。有利子負債は9742億円から7742億円に減少はするものの高水準。そのうち5100億円は2016年3月末期限の主要行からの協調融資。有利子費用の削減が必要であるほか、リストラや投資のための費用もあり資金繰りは楽観できない。
 
亀山工場の業績不振改善に期待(2013年11月)
 亀山第一工場 アップル(アイフォーン)以外に供給先を広げる予定 設備投資負担をしたアップルとの契約上 他社向けに生産できず、アップルの発注が少ないと売上高減少につながることの解決が経営上の課題になっていた。 
 亀山第二工場(大型液晶パネルの工場) 中国の通信機器大手中興通訊ZTE向けに省エネ型のIGZO出荷を決める(これまでは
スマホ向けでは自社端末にのみ搭載 IGZO:2012年3月に世界で初めて量産に成功 生産上の優位性2年程度 従来パネルの2倍以上の価格ガネックこれまでは天理工場のみで生産 今後亀山第二工場でも 生産体制整える 従来パネルに比べて消費電力8割以上少ない)

複写機事業でHPと合意(2013年11月)
 米HP向けの複写機のOEM生産で合意(複写機事業では韓国サムソン電子との合弁会社設立が
事実上とん挫。A3対応の業務用について。)中国の常熟工場で生産。2014年1月から供給。
稼働率引き上げ、増収効果。

シャープを苦しめる社債償還(融資は相手との交渉で返済期限延長でしのげるが社債は償還が不可欠)

2012年3月期 3760億円の最終赤字(同時期に赤字のソニー パナソニックは経営再建に成功)
2013年3月期まで2期連続最終赤字 CB償還に懸念 ⇒ 2013年5月 主要行からの協調融資でしのぐ

 2013年6月 高橋興三が社長就任
2013年9月 
 約2000億円の新株予約権付き社債(CB)の償還を予定
2014年3月 300億円の普通社債償還を予定
2014年9月 1000億円の普通社債償還を予定

興味深いDESへの評価

 2015年5月14日 資本支援策が発表となった。ここで債務の資本への切り替えでは新規資金が入らないとの評価はDESの問題点を示すもので興味深い。新規資金はファンドが優先株で出す250億円だけ。他方で、累積損失一掃のため資本金1218億円を5億円に減らすとのこと。2015年3月末の現預金2322億円。
 2015年6月末で支援策が実行されると、自己資本比率は3月末で1.5%(前期8.9%)まで低下していたのが5%強まで回復する。有利子負債は9742億円から7742億円に減少はするものの高水準。そのうち5100億円は2016年3月末期限の主要行からの協調融資。有利子費用の削減が必要であるほか、リストラや投資のための費用もあり資金繰りは楽観できない。

2012年3月末ホンハイとの資本業務提携発表(2012年3月27日)するも挫折
 ホンハイとの水平分業に踏み切るという内容。ホンハイは売上高10兆円 従業員規模100万人の巨大会社。ホンハイにシャープは技術協力 他方ホンハイの協力で市場開拓する。堺工場の運営会社(堺デイスプレイプロダクト テレビ用大型液晶パネルを生産している)の株をホンハイGに売却 連結外にする。2012年7月12日 ホンハイが運営会社に出資 46.5% 660億円。かくして堺工場生産の液晶パネルの半分をホンハイへ(ホンハイ向け生産始まる 半分引き取る 2012年7月)が始まった(最終比率は37.6%ずつで共同運営)。資本業務提携にはもう一つの核があり、それはシャープ本体へのホンハイの出資だった。

 (ホンハイ 郭台銘董事长)からのシャープ本体への出資交渉は長期化(2012年8月3日 ホンハイは合意内容見直しで両社が合意と発表した)

 9.88% 550円で 2013年3月26日までに。669億円.これが2012年3月27日時点の約束。ところがシャ-プの株式は8月3日には192円(一時は140円台)。2012年3月末のあとのシャープ株価の急落によって、ホンハイは出資の見直しをせざるをえなくなった(株価下落を減損損失として計上が必要 またiPhone5の販売が伸び悩み生産調整にはいっているとも・・・そのためシャープとの提携の意味は薄れているとも ホンハイの最大の狙いはシャープの中小型パネル事業ー三重県の亀山工場とその技術)。予定されていたのは669億円。この1000億円規模の自己資本の必要がシャープをなお悩ませている(2013年4月現在)。なおシャープの株価は2013年3月25日で295円(3月18日で307円 3月6日は341円の高値)。
考えられる代案
出資比率を変えないのなら出資額は234億円どまり(8月3日の株価による)にする。しかしそれではシャープの資金繰りが苦しい
 出資額を変えないなら出資比率を大幅に引き上げること(取得価格引き上げ)が考えられるがこれにシャープは抵抗しているとのこと。
 そこで奥の手としてでてきたのは内外工場の売却やホンハイ以外からの出資。それが実現すればホンハイの出資比率を変えず、シャープの財務基盤も改善できるというもの。
 疑問として、ホンハイにシャープが妥協しなかった理由がある。シャープ側がホンハイ側が経営権を一気に掌握する意図を感じて、ホンハイとの出資を回避する判断に至ったという解釈がある。あるいは、アップルの販売不振もあり、ホンハイ側にシャープとの提携への意欲が薄れたという解釈もありうる。

ホンハイの出資が実現せず シャープの自己資本比率は急低下
自己資本比率低下が急低下(製造業では20-30%が健全の目安)
 2012年3月末 23.9% 6月末 18.7% 9月末 9.9% 12月末 9.6% 
連結有利子負債増加
 3月末 1兆1000億円 6月末 1兆2500億円 9月末 1兆2000億円 12月末 1兆1800億円

2012年以降の展開の目玉はサムソン電子との資本業務提携
2012年8月末 みずほと三菱UFJ 1500億円の追加融資枠設定
2012年9月 みずほコーポレート銀行・三菱東京UFJ銀行 3600億円の協調融資契約(期限2013年6月)(CPの償還資金 うち1800億円は融資 残りが融資枠)当初は10以上の金融機関による融資団方式だったが。
2012年12月 米半導体大手クアルコムから最大100億円の出資をうけてタブレットなど次世代DPを共同開発で合意(金額がわずかに見えるが自己資本比率10%を回復するためのカンフル注射となった 年内に50億円 残りはパネル開発のめどがついてからとの説明)
2012年12月27日 クアルコム払込実施(1回目約50億円 2回目は3月末を予定 この実行は遅れ2013年6月末と訂正された 2013年5月)
2012年10月~2013年3月期 連結営業損益で200億円強の黒字(従来予想は138億円の黒字)
2013年3月期通期では1400億円台の赤字(前期は375億円の赤字) 在庫圧縮 固定費削減 リストラ経費
2013年1月 レノボとの間で中国南京市にある液晶テレビ工場売却(テレビ工場運営会社の全株式を年内に売却) 中国向けテレビの開発販売で合弁事業開始(開発販売の子会社についてレノボの出資を受け入れ合弁に切り替える) テレビの拡販で日本の液晶パネル工場の稼働率向上へ(このほかマレーシアのテレビ工場売却を台湾のウイストロン緯創資通と交渉中)

2013年3月6日 サムソン電子から約3%の出資を受け入れる。第三者割当増資で103億円出資。(ホンハイからの出資が実現しないなか金額は小さいが意味は大きい。):日韓の電機大手が資本提携するのは初めて、信用補完にもなる。すでに亀山第二工場で32インチパネルの一部をサムソン向けに生産。背景 アップルの販売伸び悩み → 亀山工場の稼働率が5割以下に低下 → 減損処理リスク
2013年3月18日 クアルコムの2回目の出資(3月29日に50億円の予定が3月末の業績見極め後の6月末まで協議継続に変更・・・不透明に)
2013年3月28日 シャープ サムソン電子から払込完了を公表(103億円 サムソンに大型液晶パネルを安定供給)
        本社人員を1400人から700人に半減する
2013年3月 みずほ信託 三菱UFJ信託 りそなの3行が300億円融資

2013年4月15日 シャープ株価 午前中前日比68円(20%高)一時400円台(403円) 終値35円高370円
013年4月 サムソン電子に対して中小型液晶パネルのIGZO(省電力が売り まとまった外部受注はアップルのタブレット以来
)を供給・・・亀山工場の稼働率引き上げにつながるを発表 サムソンは有機ELに経営資源集中 液晶は外部調達増やす
2013年5月 みずほコーポレート銀行と三菱東京UFJ銀行 合計で1500億円規模の追加融資枠を設定を検討. 幹部クラスを役員に派遣する。
 6月に期限がくる3600億円の協調融資枠は返済期限延長。既存融資2000億円規模(2012年3月末)と合わせて両行の融資規模は8000億円規模。有利子負債に対して8割程度に上昇。
2013年9月 
 約2000億円の新株予約権付き社債(CB)の償還を予定

シャープの株価急落 業績不振の原因
 垂直統合モデル(研究開発 部材 組み立てまで)の限界 円高 法人税
 国内テレビ市場の急激な縮小 主力のテレビ事業不振(世界的な需要低迷)
 テレビ用パネル パナソニックは工場の集約 5工場⇒2工場
         ソニー 韓国サムソンとの合弁解消
 単価下落による堺工場(大型液晶工場 4300億円とされる巨費をつぎ込んで完成 一貫生産の象徴 2009年10月稼働 液晶パネルの主力工場 60型以上の超大型液晶パネルを量産できる最新鋭工場 しかし結果的には在庫の山を築くことに 2012年2月 1-3月期 5割減産を正式に発表 今後は高機能化 省エネ 画面精細度向上 液晶の制御に酸化半導体IGZOを使ったパネル 解像度が高く省電力も5分の1以下と小さい)稼働率低下(液晶パネル、太陽電池ともに供給過剰で在庫増える)
 2011年12月からテレビ用液晶パネルの生産調整に入っている亀山第二工場は中小型液晶に転換へ

4-6月期 1000億円前後赤字(昨年は492億円)
液晶パネルのカルテルめぐる和解金160億円を特別損失に
2013年3月期 2500億円の最終赤字予想
シャープの株価急落によりホンハイの出資が6月末から遅れる事態に
シャープ苦境説あり
そうした流れの中で社長会見によるリストラ策表明(2012年8月2日)

2012年8月2日 リストラ策発表するも危うい鴻海(ホンハイ)からの出資
3月末で5万5000人の連結従業員を2013年3月末までに国内中心に5000減らすなど人員削減含むリストラ策発表
現状は国内2万1000人(ドイツなど欧州でも実施)
 希望退職実施は1998年以来 
 削減数には6月末に連結子会社から外した堺市の液晶パネル生産子会社1300人を含む
 太陽電池 パネル原料のシリコンを生産する富山事業所を停止
 葛城工場や堺工場では薄膜系太陽電池の生産とりやめ
 堺工場、東京支社などの土地を売却リース化へ
テレビを作る栃木工場と太陽電池を作る葛城工場 事業規模縮小へ
(テレビ用液晶パネルを作る堺工場の稼働率低迷 4-6月に3割前後に落ち込む 7月に8割まで戻す)
本社スリム化 16ある本部組織を9つに再編

直接金融依存経営の末路(2012年9月)
 1980年代以降 銀行融資から、自身の信用力の高さを生かして社債やCP発行にシフトする大企業は少なくなかった。シャープのCP残高は約3000億円。その償還が近いほか、2013年9月に転換社債2000億円の償還を控えている。8月20日にはR&IがA-からBBBに2段階格下げ(8月31日にS&Pが長期格付けをトリプルBから投機的水準のダブルBプラスに2段階引き下げ。また9月5日には短期格付けをプライム3から投機的水準のノットプライムに1段階格下げ)。市場からの資金調達の道は完全に閉ざされた。
 シャープは銀行との関係を疎遠にしてきたほか、これまでコミットメントラインの設定も節約するほど、直接金融に傾斜していた。現預金2000億円、売掛債権等流動資産は償還資金の見合いとすれば、営業資金に枯渇する状態。主力行である三菱東京UFJとみずほコーポからの融資が今年度に入り急増合わせて2000億円程度とされる。主力行はこれ以上の融資については、ホンハイとの提携の取りまとめを強く強く求めているとされる。主力行は融資団を編成して、追加支援を検討するようだが、ホンハイとの話の話の決着がつかない状況で、追加融資に応じるには、極めて厳しいリストラ(資産売却 人員削減など人件費カット)の実行が条件になるのではないだろうか。
 このような苦境に立ち入った理由の一つに、直接金融依存による市場資金への傾斜があげられる。外部から見ていて理解できないのは、シャープ経営陣が自身の苦境を全く理解していないように見えることだ。ホンハイとの妥協(出資受け入れ)を戦略的にもっと前倒しで判断できれば、よりよい条件での出資が可能だったのではないか。

ホンハイとの交渉は難航(2012年12月)
その後 2012年9月にシャープは みずほコーポレート銀行 三菱東京UFJ銀行と総額3600億円の協調融資契約を締結。当面の運転資金を確保した。しかし2013年には約2000億円の新株予約権付社債の償還が控えており、「危機」が去ったわけではない。2013年3月期についても2期連続で3000億円を超える巨額の最終赤字が見込まれている(2012年11月1日の2013年3月期見通しは連結最終では4500億円の赤字)。
 こうした状況でホンハイとの提携交渉の進展は公開されなくなり、難航の可能性が指摘された。シャープがはホンハイ以外の企業との資本提携を模索。具体的な交渉先として米インテルや米クアルコムの名前が上がる。そして12月に入ってシャープはクアルコムとの新型パネル共同開発を発表(2012年12月4日)。これはクアルコムからの低い額だが出資を伴った。12月27日に第三者割当で約50億円。2013年3月29日にさらに50億円を受ける予定だったが、こちらは6月末まで延期された(クアルコムがシャープの2012年度業績を見極めることを求めたため)。

ホンハイからの出資は払込期限内に実現せず(2013年3月末)
 2013年3月26日。ホンハイからの出資は結局この期限までに実現しなかった。大きな原因は株安。シャープの株の9.9%を1株550円で取得約670億円払込予定したものの シャープの株は一時140円台まで下げた(2012年10月など)。ホンハイが取得価格の引き下げに加えて 最新型液晶パネルの技術供与を求めていることもあり、シャープは粘り、ほかの提携先を探る。取得価格の引き下げは減損損失の計上となる。なおシャ-プの株価は2013年3月上旬には300円台前半まで回復している。ほかの提携先としては、2012年12月のクアルコムに続いて さらに2013年3月には韓国サムソン電子との交渉が実を結ぶ。これはアップルに依存する再建計画とは反対のもの。しかしアップルの販売が急速に不振化するなか、魅力的にも見える。
 シャープの2012年末の自己資本比率は9.6%まで低下(製造業では20%から30%が望ましいとされる)。また2012年末の有利子負債は1兆1827億円。
 サムソンとの合意では堺の亀山第二工場でつくる32インチパネルの購入とシャープ本体への103億円出資が導かれた(出資比率約3% 3月内実施)。比率金額とも低いがシャープにとり 信用補完上助かる。また工場の稼働率を上げる願ってもない対策でもある。サムソンにすれば 低い投資で高性能パネルの安定調達ができる。
 もともとホンハイの裏にはアップルがいてアップルはシャープの亀山第一工場アイフォン向けパネルの供給基地としてきた。そのシャープの
経営危機をアップルの意向を受けてホンハイが動いた形。しかしホンハイ側も米アップルの販売伸び悩みから 余力がなくなってきた。
 結局 シャープの亀山工場は、第一がアップルが事実上支配。そして第二はサムソン電子に依存することになった。この2本足経営には不安要素も指摘される。アップルとサムソンは競合相手同士。スマホの2強に依存する経営は魅力的だが、本体へのサムソンの支援でアップルが離反するリスクが残るとされる。
 もともと2012年9月に経営再建計画をまとめたシャープは、みずほコーポレート銀行と三菱東京UFJ銀行との間で総額3600億円の協調融資契約を結び運転資金を確保。しかしその期限は2013年6月まで。また財務体質の改善(経営改善計画の上)でも有利子負債を減らし、自己資本を増やす必要がある。サムソンからの100億円では力不足でさらなる自己資本強化策は欠かせない。
 2013年3月期に予想された巨額赤字。6月末の協調融資契約切れ。2013年9月に予定する新株予約権付社債約2000億円の償還を控え、シャープの自己資本強化策をめぐり2013年のシャープは目を離せない状況が続いた。 

ホンハイとの提携発表から1年後(2013年3月26日)
2012年3月27日 シャープは2012年3月期 過去最大の3760億円の連結最終赤字(前期は194億円の黒字 最終赤字の計上は09年3月の1258億円以来3期ぶり 単年度で過去最大)を計上した。有利子負債1兆1500億円に膨らみ(13年9月に2000億円の社債償還を控える状況)そうした状況でホンハイとの業務資本提携が発表した(2012年3月27日)。ホンハイがアップル製品の一大供給メーカーであることからすると、これはシャープのアップル依存を強めた形であった。それから1年。ホンハイとの提携は、堺工場の共同運営についてはホンハイの郭董事長の個人出資という形で実現(これによりシャープは稼働率3割を切っていた堺工場の減損処理を免れた)。しかしシャープの株価急落もあり、ホンハイからシャープ本体への9.9%出資については実現しなかった。

アップル、サムソン両社に供給という選択(2013年3月)
 その間に、アップル製品の販売が伸び悩み、亀山工場の稼働率が低迷するという問題が表面化した(亀山第1ではiPHne5向け IGZOパネルの生産で知られる亀山第2ではiPad2向け ベースの問題で他社向け大量受注がないと稼働率が維持できない点がそもそも問題だが2012年秋の亀山第二の稼働率は3割にまで低下 減損処理の危機にあった これをサムソン向けテレビパネル生産拡大で乗り切った)。シャープは、ホンハイ以外の提携先獲得を急いだ。2013年3月には、サムソン電子からの3%出資受入(シャープ内部の反発に配慮して意図的に抑えた数字とされる)と、サムソンへのパネル供給(つまりは亀山工場の稼働率引き上げによる減損処理回避)が発表された(発表当日 たまたま来日していたホンハイの郭董理事長は、この提携をシャープによる裏切りとして反発したとされる)。
 携帯でサムソンがアップルと争い、サムソンが優勢とされるなか、これはアップル(ホンハイ)だけでなく、サムソンにも軸足を置いた経営への転換、高度な生き残り策とも言える。2012年春から2013年春にかけての経緯を振り返ろう。

液晶で中国CECでの合弁明らかに(2013年6月)
2013年6月 中国電子信息産業集団(CEC)と液晶で合弁で合意。シャープの技術(大型パネルで世界6位6.7% 2012 3月末には
そのサムソンから3%出資)+CECの資本力 CECパンダ(子会社の南京中電熊猫信息産業集団が南京で建設する工場にIGZO技術を供与

経営陣交代 銀行から役員受け入れ 強まる銀行依存(2013年6月)
2013年5月 中期経営計画と経営陣交代を発表
奥田隆司氏から高橋興三氏へ 奥田氏は2012年4月に社長に就任したばかり。町田勝彦会長による
 ホンハイとの資本業務提携(2012年3月)。4月以降は片山会長主導によるクアルコムあるいはサムソン
 との資本提携にはさまれ主導力発揮できず。そもそも町田 片山は巨額投資の責任者。このように
 経営悪化の原因を作った人間が引退せずに再建を主導するところにこの会社のが経営不振の一因があるように見える。
 
 13年3月期 5000億円規模の連結最終赤字。
 取締役を12人から9人へ。銀行からの2人を取締役常務執行役員として受け入れへ。

2013年5月 みずほコーポレート銀行と三菱東京UFJ銀行 合計で1500億円規模の追加融資枠を設定を検討. 幹部クラスを役員に派遣する。
 6月に期限がくる3600億円の協調融資枠は返済期限延長(6月末から2016年3月末に延長)。既存融資2000億円規模(2012年3月末)+2012年8月末1500億円(期限は?)と合わせて両行の融資規模は8000億円規模。有利子負債に対して8割程度に上昇。

危機の根因
 液晶に偏った巨額投資(ハードへの投資に偏重 大型で世界6位6.7% 中古型で世界2位14.8% 2012町田勝彦社長(1998-2007 オンリーワン企業 売上の3割が液晶)
 片山幹雄社長(2007-2012 技術に限界なし)の暴走をチェックできず
 2004年 亀山第一工場稼働 液晶パネルからテレビまでの一貫生産体制確立(亀山工場) アクオス
 2008年3月期 過去最高の1020億円の純利益
 2009年秋 リーマンショック
 2009年 大型液晶パネルの堺工場稼働 → 在庫積み上がり招く
  想像を超えた液晶価格の下落

中国向け生産で一時復調(2014年3月期)も再び困窮(2015年3月期)

 2013年夏 中国のスマホメーカーとの交渉で販路を拡大に成功(省エネ型イグゾーパネルの外販)。とくに小米やZTE向けのパネルでは販路拡大に成功した。これにより2014年3月期に中小型パネルが一時黒字化(同期は115億円の最終黒字 1085億円の営業黒字)。これはアップル依存を修正する戦略でうまくゆくかに見えたが、2014年末にシャープの液晶にタッチ機能を付けて小米に納入していた台湾企業が破たん。タッチ機能のないシャープの液晶は行き場を失い、タッチ機能のあるジャパンデイスプレイの液晶(インセルと呼ばれる技術で量産体制)が小米の仕事を取ったとされる(なおシャープ自身もインセル方式を使ったFDフリードローイングパネルを開発しており2014年6月に発表している。今後量産化を進める方針2015年3月)。加えて中小型パネルは中国メーカーなどとの競争激化による単価の下落で利益率低下。
 2015年1月にはアップルとの間で亀山第一工場で中国スマホ企業向けパネル生産を可能とすることで合意。
 2015年3月 シャープの経営は主力2行に資本支援を要請するまでに悪化した(2014年末で有利子負債9972億円 うち6000億円主力2行分。なお3月段階では支援は1500億円規模で別途300億円出資を募るというもの。2015年3月期の連結で2223億円の赤字(2期ぶりの最終赤字 大半は単体での赤字で単体で債務超過 前期は115億円の黒字 液晶工場の資産価値引き下げ=減損処理で赤字額拡大 液晶在庫評価減295億円 液晶・電子部品などの生産設備での減損処理995億円で減価償却費を落とすことで2016年3月期 液晶事業の業績を大幅改善してV字回復を狙う方針)。営業損益も480億円の赤字。売上高は前期比5%減の2兆7862億円。
 資本要請額は2000億円 融資を優先株に切り替えるDES(debt equity swap)手法で支援決定は4月23日 出資側には2行(各1000億円)のほか2行が出資する企業再生ファンド:ジャパンインダストリアルソリューションズも加わった(実施は6月末)。こうした支援をテコに人員削減 あべのの本社売却 欧米での太陽光発電事業からの撤退 太陽電池事業からの撤退 4カンパニーに再編 本社代表取締役を5人から3人へ削減 などを進める一方 今後3年間で2700億円の設備投資をする計画。シャープは、アップル、小米へのいずれからも過度の依存からの修正を掲げている。選択肢としてシャープは他のメーカーへの依存を強める戦略をあくまで取らなかった。結果として金融機関への救済に頼った。
 ジャパンデイスプレイ(JD)との関係でも、まずJD設立時(2012年)にJDへのの合流を拒否。2014年10月にもJDに出資する革新機構からの液晶事業買収買収の動きがあったが、これに乗らなかったとされる。⇒ Case Study on Japan Display
こうした経緯をみると、経営方針で自立(単独路線)にこだわるのがシャープの特徴ではないか。

興味深いDESへの評価
 2015年5月14日 資本支援策が発表となった。ここで債務の資本への切り替えでは新規資金が入らないとの評価はDESの問題点を示すもので興味深い。新規資金はファンドが優先株で出す250億円だけ。他方で、累積損失一掃のため資本金1218億円を5億円に減らすとのこと。2015年3月末の現預金2322億円。
 2015年6月末で支援策が実行されると、自己資本比率は3月末で1.5%(前期8.9%)まで低下していたのが5%強まで回復する。有利子負債は9742億円から7742億円に減少はするものの高水準。そのうち5100億円は2016年3月末期限の主要行からの協調融資。有利子費用の削減が必要であるほか、リストラや投資のための費用もあり資金繰りは楽観できない。
 
亀山工場の業績不振改善に期待(2013年11月)
 亀山第一工場 アップル(アイフォーン)以外に供給先を広げる予定 設備投資負担をしたアップルとの契約上 他社向けに生産できず、アップルの発注が少ないと売上高減少につながることの解決が経営上の課題になっていた。 
 亀山第二工場(大型液晶パネルの工場) 中国の通信機器大手中興通訊ZTE向けに省エネ型のIGZO出荷を決める(これまでは
スマホ向けでは自社端末にのみ搭載 IGZO:2012年3月に世界で初めて量産に成功 生産上の優位性2年程度 従来パネルの2倍以上の価格ガネックこれまでは天理工場のみで生産 今後亀山第二工場でも 生産体制整える 従来パネルに比べて消費電力8割以上少ない)

複写機事業でHPと合意(2013年11月)
 米HP向けの複写機のOEM生産で合意(複写機事業では韓国サムソン電子との合弁会社設立が
事実上とん挫。A3対応の業務用について。)中国の常熟工場で生産。2014年1月から供給。
稼働率引き上げ、増収効果。

シャープを苦しめる社債償還(融資は相手との交渉で返済期限延長でしのげるが社債は償還が不可欠)

2012年3月期 3760億円の最終赤字(同時期に赤字のソニー パナソニックは経営再建に成功)
2013年3月期まで2期連続最終赤字 CB償還に懸念 ⇒ 2013年5月 主要行からの協調融資でしのぐ

 2013年6月 高橋興三が社長就任
2013年9月 
 約2000億円の新株予約権付き社債(CB)の償還を予定

 2014年3月 300億円の普通社債償還を予定

2014年9月 1000億円の普通社債償還を予定

originally appeared in Aug.7, 2012

(corrected and uploaded in Oct.1, 2016)

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Case Study:アップルとアップルリスク

2016-08-28 14:43:44 | Management

Case Study: Apple 苹果
  2014-2015年 2013年に続き再度 米アップルへの過度の依存が問題視される 逆にアップルの新製品(2016年9月)がでるときには

 期待に代わる側面もある。スマホへの依存という形でも語られる。2015年6s→飛躍的性能向上なかったことから販売不振

 ドル高による高価格 などから極度の販売不振へ 2013年に次ぐ生産調整へ(2016年11月ー)

  ⇔ 中国メーカー(華為技術 小米 レノボ ZTE)の台頭 → 同じ影響は韓国サムソン電子にも

 スマホそのものも伸びが鈍化 ⇔ スマホへの過度の依存を修正へ 15年11月以降 アップルは減産へ(アップルリスク:アップルに過度に依存することによるリスク)

 → 2016年秋iPhone 7も大きな変更はできない見通し 有機ELパネル採用?

 → 2015年 国内出荷台数初めて減少  世界でも同様の傾向

 → 関連する国内メーカーに打撃

 村田製作所(中国スマホ向け増やす 表面波フィルタ 医療機器向け電子部品) 京セラ 日本電産(自動車向け車載モーター ロボット ドローンなど) 

 日東電(主要顧客アップルのため最も大きな影響受ける 自動車向け 医療向けもあるが) TDK アルプス電気 

 旭硝子 ソニー 住友化学 セイコーエプソン 豊田合成 フジクラ

 2013年初にも iPhone 5発売伸び悩みで在庫増を経験 過度のアップル依存を避けるが共通認識になる

 アップル関連株(左 影響大きい 右 影響小さい アップルへの依存度引き下げが課題)

 TDK 太陽誘電 日東電 アルプス フォスター イビデン 東芝 村田製作所 京セラ ヒロセ電機

 積層セラミックコンデンサーMLCC 高周波部品のTDK、太陽誘電、村田製作所
 TDK インダクターコイル(回路の電流を整える)
 日東電工 液晶用偏光板
 ヘッドホンのフォスター電機
 京セラ 水晶振動子 
 ローム 抵抗器
 ジャパンデイスプレイ 液晶パネル
 エルピーダメモリ DRM
旭硝子 カバーガラス
 アルプス電気 カメラの焦点制御用部品
 東芝 中国メーカーや韓国サムソン電子との取引拡大
 ヒロセ電機 中国メーカーとの取引拡大
 村田製作所 自動車向け(求められる高い信頼性 利益率高い)の比率上昇 15%(13年3月期)

 アップルの経営を成り立たせていた高価格モデル(高い利益率)が崩れてきている。
 開発費用(高精度画面 新技術の採用)が増え、販売管理費が増加。他方 低価格競争で販売価格は低下気味。
 ブランド力で高く売ることがむつかしくなっているが低く、ハードに依存している。ハードの価格が下がると経営に影響を
 受けやすいとされる(売上高は増えたものの iPhoneが予想ほど売れず タブレットiPadの単価が下落した)。
2013年10-12月期 アップルの純利益は4期連続の前年同期比減となった。粗利益率は37.9%.
2013年7-9月期 売上高374億7200万ドル 前年同期比4%増 純利益は75億1200万ドル 9%減
 2013年10-12月期 575億9400万ドル 6%増 130億7200万ドル 0.1%減

 今回の発売ではNTTドコモが発売にようやく加わったことも日本では話題。
 (iPhoneで並んだ携帯各社は今後 通信速度など通信インフラの優劣で争うことが予想される
  LTE: long term evolutionあるいは4Gサービスの拡大 
  また モバイル機器の法人向け販売も注目される分野になっている
 また BYOD: bring your own device  個人所有機器を業務出使うことを指す 安全宅策必要
 他方 携帯メーカー各社はウエラブル端末の開発を急いでいるとのこと
 顧客の消費行動への利用 オンラインで興味を持った人をオフラインの実店舗に呼び込む:
 オンライン・トウー・オフライン O2O オートウーオー)

2013年10月 タブレット(アップルのシェアは低下中 2012年上期60% 2013年.4-6 32%)の新型機iPad Airを発表
薄く軽量化(最高水準の軽量化) DP精細度は? 高価格路線 2013年11月から発売開始
優位性はiTunesストア アップルストアにまだあるが限定的(ハードとソフトの融合
 ハードの顧客基盤 クレジットCの登録件数は5億件以上でアマゾンの2倍以上)
 広告やSNSで後れ グーグル、アマゾンに比べて
 iPad miniについては高精細DPを搭載した新製品を2013年11月中に発売開始
 (顧客は単価の低い旧型モデルに移動する傾向)

 なお2014年1月には中国通信最大手 中国移動通信(チャイナモバイル 契約者7億6000万人超)がiPhoneの発売開始。
 長期契約での値引き攻勢
 しかし低価格機主流の中国市場でシェアを伸ばせるかに疑問
 2013年のスマホ世界シェア サムソン電子31.3%(1増)に対して15.3%(3.4減)
 中国市場販売シェア(2013.7-9) サムソン18.4% アップル3.5%

 販売ノルマは新規の4割をアップルとのこと 腕時計型は2013年9月にサムソン電子が発表
 そのほか 眼鏡型の開発進む
 背景はドコモの凋落にある。ドコモはiPhoneを扱わなかったため市場シェアを
 減らし続けた。このドコモの「戦略」は全く理解できないものだった。
 2003年3月末シェア ドコモ56.3% 現KDDIグループ 21.9% 現SOFTBANKグループ 20.8%  
 2013年8月末シェア ドコモ46.0% KDDIグループ 28.9% SOFTBANKグループ 25.1%
その後
   2008年にソフトバンクがiPhoneの発売開始(シェア急伸へ)
   2011年にはAUも発売開始(その後KDDIは大幅増益へ)
   ドコモはこの間 顧客流出を放置する信じられない戦略をとった  
 NTTドコモは2013年夏のツートップ戦略でも顧客を取り戻せなかった
   =韓国サムソン電子とソニー(エクスペリアA)のスマホだけを2枚看板とする 
それ以外の各社を切り捨てる裏切り戦略を5月15日に発表した
   これほどひどいことをして確かにこの2つは伸びた(国内でソニーの一人勝ち)が
   ドコモはシェアを回復できなかった ドコモに対する携帯メーカーの信頼も消えた

 → NEC スマホから撤退へ(携帯事業の半分強 レノボとの携帯電話事業統合交渉見送り)
      カシオブランドの携帯も同じ 
      NECカシオモバイルコミニケーション(主体NEC カシオ計算機 日立も出資)
      600億円の債務超過状態 
2013年7月31日発表 スマホの新規開発を中止 現在販売している機種をもって生産販売
      をやめる とのこと 2011年度には国内携帯電話市場で27%超のトップ が見る影もない凋落
      現在は5%程度 8位
      スマホには開発投資が必要なことが背景 人員を成長分野に配置転換へ
      2012年末から行っていたレノボとの統合交渉は合意できず
      レノボとは2011年にパソコン事業をレノボ51%NEC49%で統合 同様のレノボ過半出資で交渉するも
      合意できず 
      他社が手薄な従来型携帯(ガラケー)は継続   
    → パナソニック 今冬モデルの供給停止(個人スマホからの撤退視野入り)
      国内のスマホ事業から撤退(従来型は中国北京で生産 日本国内販売を継続)

 中国でも中国聯合網絡通信 中国電信がappleを扱い 中国移動(China Mobile)が
 appleを扱わない 中国移動が扱うようになるかが注目された。しかし結果として
 販売提携発表はなかった。投資家は5s 5cの新規性にも疑いの声を出しているとのこと。
 アップルに求められる驚きはどうもなかったようだ。
 (他方でアップルへの警鐘は9月2日にフィンランドのノキアが携帯事業をマイクロソフトに売却したこと
 売却金額54億4000万ユーロ 7140億円 約3万2000人の従業員のMSへの移籍という大きな動き。この背景は
 スマホの波に乗り遅れたこと アップルがこうならない保証はない ノキアの携帯事業は2011年まで14年間
 世界首位 フィンランドの輸出の看板だった。ノキアは今後通信インフラを事業の柱にするとのこと)

 2012年に入ってアップルの収益がすでに減り始めていた。スマホの販売台数でアップルは2012年以降 サムソンに抜かれる展開になった。アップルの変調により、アップルに依存していた(アップルは競合するサムソン電子からの部材調達を削減 iPhone5では液晶ヲサムソン以外から調達。モバイルDRAMやNAND型フラッシュでも非サムソンの調達増やす。)日本や台湾のメーカーが影響を受けているとされる(液晶パネルはジャパンディスプレー シャープ 韓国LGディスプレーの3者 のほか、東芝 ソニー TDK フォスター電機:ヘッドホン 村田製作所 セイコーエプロン 日本航空電子:コネクター イビデン:プリンと基板などが半導体メモリー、電池、電源コイルなど電子部品を供給 iPhone5の主要部品の4割程度は日本製 レンズは台湾の大立電子)。
 液晶ではジャパンディスプレイの能美工場、石川工場。シャープの亀山第一工場などは、2012年9月に発売開始されたiPhone5の専用工場化している(2013年1月現在)。それだけにiPhone5の失速(あるいはアップルの失速)は重く響く。なおiPad miniやiPadなどのタブレットの液晶はLGディスプレーが生産。
 より明確には2013年1―3月期決算 純利益95億4700万ドル(9750億円)が前年同期を18%下回る(10年ぶりの減益)。売上高は11%増の436億300万ドル。保有する現金は14兆円(1400億ドル)。課税を避けるため(海外に積み上げられたCASHに注目圧案る 節税か) 2015年までに配当と自社株買いで1000億ドルの株主配分(2013年4月22日発表 なお2012年にも450億ドルの株主還元を発表 これを上乗せしたもの 2012年9月下旬の705ドル以来 アップルの株価は低迷2013年4月18日には400ドル割れ これに対応した措置にみえる)。株主配分のために170億ドル(1兆7000億円)社債発行する 米国の事業会社の社債発行として過去最大規模。格付けAa2(Moodys) AAプラス(S&P)
 日本国内タブレットの市場シェア(2012年)は約50%で圧倒的。アップルのブランド力は日本 中国 シンガポールで高い。しかしインドではノキア タイではBMWやメルセデスベンツが高い。

新型アイフォンiPhone 5の発売が2012年9月になるとされると、買い控えがこれに重なった。
2011年10月発売の4S 2012年6月までに9700万台発売
2012年4-6月期 中国市場での販売で伸び悩みがめだってきた。
2012年7月iPadの新機種 中国で発売開始
そうした中 アップルの株価は上昇 2012年7-9月ピークを迎える。全世界の時価総額の1%を占める
(時価総額でトップ)とも騒がれた。しかしそれが頂点になった。


iPhone 5発売後 地図ソフトの不具合 中国での労働争議により企業イメージ悪化へ
2012年9月iPhone 5(解像度326ppi:Retina Dispaly)の発売が開始された(画面の大型化3.5→4 通信方式LTE
処理速度2倍速くなった など)→LTEが欧州で使えない。新興国では値下がりの旧機種がむしろ人気などの矛盾。
2012年9月 iPhone5 搭載の地図ソフトが誤表示問題起こす(10月末に開発責任者のスコット・フォーストール氏を事実上更迭)。
2012年9月‐10月 2010年に連続自殺事件を引き起こしたアップルの中国での生産ラインで再び労働争議が起きているとの報道増える
     広東省 河南省 山西省など各地で発生

2012年11月iPad mini (解像度163ppi=I\iPhone 3G/SGS並み Retina Displayから後退)
(背景は納入業者がRetinaの条件では応じなかった)
(納入期限 納入価格 品質基準量産の規模 などで 対応できなかった)
 アップルはこれまで発注数量を事前に保証しない一方 求める数量をいつでも
供給できる準備を要求 部品メーカーは在庫の積み増しや設備投資を自らのリスクで負ってきた。
 これは注文するアップル側の立場の強さを示すもの。
 そうした中で今回IPS方式の液晶パネルで生産の遅れが生じたとのこと
 供給元は韓国LGデイスプレイと台湾AUO。そのうち台湾AUO担当分で。
 AUOはこれまでTN方式で生産。IPS方式で不慣れで歩留り上がらず生産の遅れが生じた。
 iPad miniの販売は好調(2013年1月現在)。しかし利益率の低さからアップルの利益成長の制約要因になっている。

iPad miniの価格政策で戦略的に失敗
 アマゾン(キンドルファイアHD 199-369$) グーグル(ネクサス7 199-249$)とも 普及を優先した価格設定(7型で200㌦切る)
 アマゾンはコンテンツ、物品の販売やネット広告で採算をとる考えかた。2011年ニキンドルファイア199ドルでアップルノタブレット
 (499㌦)を出し抜く。グーグルのネクサス(2012年7月発売199$)も同じ考え。アマゾンは2012年9月キンドルファイアHDを199ドルに
 据え置き発売開始。」
 これに対してアップルは採算を度外視できなかった(2012年11月miniを329ドルで発売開始。iPod Touchの価格299$が制約になったとも)。
 ハードウエアに依存したアップルは安売り乗れず高めの価格設定(7.9型で329ドル) → 株価下落 へ
 しかし実はこの価格でもiPad miniはアップル製品の中では利益率の悪い製品。
 米連邦提出資料で明らかになったところでは2012年3月末までの2年間でiPhoneの粗利益率は49-58%
iPadは23-32% iPad miniはさらに低いのかも しかしそれでも高めの設定が問題になった
 ブランド力に依存した経営。しかし高い価格帯で勝負するアップルは顧客の満足感を失えば 
 値下げしないと売れない悪循環に陥る。
 先行企業が安売り戦略を展開しているタブレ市場に参入したことでアップルはワナに
 引っかかった。今後の市場は新興国とされるなか、アップル製品の割高さはめだつ。
 そしてあくまで「冒険をしない」価格設定を明らかにしたことは株主の失望に
 つながり株価下落につながった。
 
アップル株は暴落へ:ジョブズ死後1年で遂にふつうの会社になったアップル
 アップルの共同創業者 ステーブ・ジョブズがなくなったのは2011年10月5日。それから1年。
アップルはかつての輝きを完全に失った。
 2012年11月アップル株下落目立つparabolic move:放物線のように下落(関連銘柄も下落)
 9月21日の高値705㌦から2割超(140㌦以上)下落。

なおアップルの株価の300ドル超えは2010年10月3日
 400㌦超えは2011年7月21日
 500ドル超えは2011年12月13日。つまり2012年9月までの上昇ピッチは極めて早かった。
11月9日前日比1.7%反発して547ドル
 米 コネティカット州のロックデール証券のトレーダーが10億ドルのアップル株を無断で購入 損失を被る
 メイコー 太陽誘電 イビデン ミツミ 航空電子 住友電 村田製作所 日本電産 フォスター TDK 日東電
 業績に陰りがでる利益確定売り(+持ち高減らす)が増える
 アップル株は広汎な投資家が購入しているため影響が大きい
 
これまでのアップルの企業活動のイノベーションのまとめ
2001年11月(10月とも)  iPod発売で楽曲流通の仕組みを変えCDを主役から降ろしたこと
2003年4月  iTunes Store 配信開始
 音楽流通の形を一変へ
2007年9月 iPhone(基本ソフトはiOS)発売でスマートフォン市場(高機能携帯端末)拡大をけん引したこと
2010年4月 iPad発売(9.7型)でタブレット端末市場(キーボードがない端末)拡大に貢献したこと→高精細のタッチパネルの普及 
などがある。アップルの社会経済的影響はこれ以外にも考えられる(例 iPadと大学教育・大学図書館)。
2012年9月 iPhone 5発売。しかし既述のように、その売上は爆発的とまではいえず。アップル特需に頼っていた日本企業の間では、リスク分散(供給先分散)が重要な経営課題になった

アップルの知財戦略:オープン&クローズ
 標準技術を使ってコストを下げるオープン領域と、特許や秘密を使って徹底的に囲い込むクローズ領域とを
明確に区別。
 端末製造の情報は外部に開示し、安い部品を調達して新興国で生産する
 独自のデザイン、使い勝手の部分は特許権や意匠権で固めてライセンスしない。模倣は訴訟で争う。
製品の動きをつかさどるソフトはブラックボックスとして開示せず競争力を保っている(以上は小川紘一氏の指摘)。

アップル特需は多数の日本企業の経営戦略に影響 
 エルピーダメモリ ジャパンデイスプレイ 村田製作所 TDKといった日本メーカーが部品を供給 iPhone 5あるいはアップルの浮沈が日本企業の浮沈に大きな影響を与えた。アップルの製品が爆発的に売り上げを伸ばした結果、その製品や部品を生産する企業は、アップル特需により大きな影響を受けるようになった。それらの企業の経営戦略(提携・買収・設備投資)などにアップルが大きな影響を与えた。あるいはアップルの成長が、周辺の大きな企業群の成長につながった。アップル自身は工場をもたない(ファブレス企業)。また徹底した大量生産でコストの引き下げを追求した。そのことがこうした特需効果を大きくした。

台湾の鴻海G(ホンハイ)
 中核子会社が 富士康科技集団(フォックスコン)
 鴻海精密工業(EMSで世界最大手 広東省深�祁市に生産子会社 iPhoneの独占供給 iPodの製造代行で有名(iPhone iPadの大部分を生産とも) HPのパソコン 任天堂のゲーム機も受託)
台湾の奇美電子を2010年3月買収へ(液晶パネルの安定調達)

iPod以降の主要商品の年譜
(1979 Sony Walkman) 
(1981 IBM 最初のパソコン)
(1982 ノキア 最初の自動車電話)
2001年11月  iPod  発売 → 楽曲流通の仕組みを変える CDを主役から降ろす
2003年4月  iTunes Store 配信開始
 
2004年    カシオ計算機と日立製作所が携帯電話事業を統合
2005年   iPod miniヒット中に半導体メモリー搭載のナノを発売
2007年 高機能携帯電話 iPhone(基本ソフトはiOS)投入   → スマートフォン市場(高機能携帯端末)拡大をけん引
対抗軸 アンドロイド(米グーグル)搭載端末
              スマートフォン開発費を劇的に下げる → コモデティ(汎用品)化         
              米モトローラの復活に貢献  
              2010年1-9月の世界出荷台数(米ガートナー)によれば
                アンドロイド端末3632万台
                米アップルiPhone3059万台             
シンビアン(ノキア)
            ブラックベリー(リサーチインモーションRIM)
       ティーガイア 携帯電話販売最大手 
       ベルパーク ソフトバンク専売 
2008年 京セラが三洋電機の携帯電話事業を500億円で買収
       三菱電機が携帯電話事業から撤退
2008年7月 iPhone3Gの日本国内発売       
       フィンランドのノキアが日本市場から撤退(高級ブランドは残す) 
2010年1月 多機能端末iPad 発表 電子書籍端末の本命とも
2010年4月 iPad 発売(9.7型) → タブレット端末市場(キーボードがない端末)拡大に貢献
2010年6月  iPhone 4発売(従来機種より薄く 画素数4倍多く鮮明 バッテリー機能も向上) 記憶容量16ギガバイト 32ギガバイト
2010年6月1日 NEC カシオ日立モバイルコミニケーションズ(カシオ計算機 日立製作所)が携帯電話事業を統合
2010年7月  富士通(NTTドコモに供給)と東芝(主としてKDDIに供給)で携帯事業で統合新社設立で合意(富士通が8割出資 陣容は富士通が1600人 東芝が360人 新会社には東芝の開発陣など300人前後 両社の生産調達機能を統合 東芝はすでに国内生産から撤退・海外企業に生産委託 今回は携帯電話事業部門を切り離しそこに富士通が出資)東芝は半導体と原子力を中心に事業の選択と集中を急いでいる 富士通は通信事業の拡大を→ シャープにつぐ国内2位の携帯メーカーの成立
2011年10月 アイクラウド開始(パソコン使わずコンテンツをサーバーで共有)
2011年10月 ステーブ・ジョブス 死去 後任 ティム・クック
2012年9月 iPhone 5 発売

originally appeared in January 8, 2011
corrected in Aug.28, 2016 

Case Study: サムソンとアップル(2012年秋)
Area Studies Business Models Business Strategies 


Case Study on Panasonic パナソニック

2016-08-13 21:29:39 | Management

Panasonicは大きな赤字を出して リストラを進めた。自動車 住宅関連へのシフトすることで B to CからB to Bへのシフトを図ったことは有名。赤字を同じく出したソニーより改革が早く進展していて、14年3月期には黒字転換した。赤字を同じく出したソニーより改革が早く進展していて、14年3月期には黒字転換した。

B to B事業で量販店が価格決定権を持つ家電業界に比べて値崩れしにくいとされている その意味ではビジネスをB to CからB to Bに切り替えたことは有名。またさらにその背景にはIoT (or iot ; internet of things)の動きがある。また自動車の電子化、エレクトロニクス化といわれるように自動車や電子部品を使う時代がきている。自動車については自動運転車の問題が見落とせないし、住宅についても、たとえばITを活用してエネルギー使用の最適化を図る動きがある。

特許資産規模では国内企業首位を続けている。

20123月期から2期連続で7500億円超の赤字から、20153月期(純利益1794億円) 20163月期(1932億円)と増益基調で経営不振からの脱却をはたした(2016年4月段階)。2012年6月から津賀一宏社長のもとで構造改革進む。不採算事業からの撤退。余剰人員は配点職種転換。事業構成の組み換え進める。借入を減らして実質無借金化(2016年3月期)。2019年3月期の目標売上高10兆円自動車住宅関連が4兆円 家電は2兆円(2015年2月段階)。家電から 住宅・自動車…企業向けビジネスB to Bを成長の柱に転換。東南アジア向け事業を高級機種で強化し、サムソン電子・LG電子を追撃。2017年3月期からIFRS移行へ。

津賀一宏氏(専務)の社長就任(2012年6月) リストラに取り組む 
  プラズマTVからの撤退 半導体工場の売却 など 

プラズマなど不採算事業から撤退 住宅や自動車など安定収入に力を入れている。住宅建材、配線器具、車載機器が堅調。リストラ効果で家電事業の採算が改善。ネットキャッシュは2015年3月期末には6期ぶりにプラス1000億円前後に転じる見込み(2014年5月)

143月期 3期ぶりの黒字となったのは、不採算事業からの撤退切り離しと合理化効果が出たと思われる。しかし積極投資したテレビや半導体で採算が悪化しているのは皮肉といえる。家電では、他社も同様だがシニア向け(小さく軽くゼイタク)、美容家電の開発、音響ではハイレゾ(高解像度)商品に取り組んでいる。

分散型に事業構造を変える そのため 20134月事業部制を12年ぶりに復活。43ある事業部ごとに貸借対照表割り当てる内部資本金制度導入 CFの改善 5%の営業利益目標。CF計画とのかい離には改善計画策定させる。3年間で大きな減損リスクを抱える資産はなくなり 営業利益3000億円を安定的に稼ぐ体制。設備投資2500億円水準 FCF黒字傾向続く。自己資本比率40%への早期回復目指す。20153月期 6期ぶりcash rich=実質無借金に復帰へ

人事賃金改革も手を付ける。年功制度の廃止。職能等級から役割等級へ。グループチーム制から14年ぶりに部課制に戻すなど。グローバル人材の確保のためにも必要(2014年10月から2015年4月にかけて実施)。調達会社設立して(15年4月)部品資材調達1本化 コスト引き下げ図る。201410月より年功賃金廃止 役職 成果 手当 総人件費圧縮 13年ぶりに部課長制復活で責任 権限の明確化 年功要素廃止の動きはソニーでも進む。Gマネージャー チームリーダー原則廃止

  プラズマパネル事業(5000億円かけて尼崎市内にプラズマパネル工場を作り稼動させたが(2010年)すでに撤退 2013年末生産終了 3工場は売却へ2015-2016) 半導体工場の売却(2013-2014)など 

 テレビ事業ではシェアを追わず 商品顧客地域を絞って生き残る(中国 メキシコで生産から撤退:2014年1月→北米と中国で赤字が大きい) 国内ではデジタル放送への移行に伴う買い替え需要後の急減が大きな影響を与えた 2011年7月で東北3県を除く44都道府県でアナログ放送が終了 翌2012年3月 東北放送でも終了した。

 テレビ事業は高価格帯シフト 生産委託増やす 例 TCL集団:東芝 ソニー パナソニックから受託

 中国事業においても家庭用から業務用(コンビニの冷凍庫 冷蔵棚 さらに監視カメラや 大型電子レンジ LED照明 エアコンなど)にシフト 生産面でも自動化進める・・・日本国内と似た戦略(2015年11月 2015年2月 山東省の工場を閉め中国でのテレビ自社生産から撤退)

  ベトナムでつぎつぎに工場を稼働 冷蔵庫 洗濯機 プリント基板工場など(2012年稼動 他方でベトナムで首位の三洋電機の冷蔵庫 洗濯機事業をハイアールに売却する矛盾した行動もとっている パナソニックは東芝に次ぎ3位 2010年)

  空調 連結売上高3122億円(14年3月期) 国内家庭向けではシェア1位ながら収益上営業損益は105億円赤字 で体質改善必要

 成長分野とする自動車関連・産業機器部門は好調 リチウム電池(2012年パナソニック電工が三洋電機を完全子会社化 テスラと共同で電池工場を建設 2017年発売のテスラの普及モデルに独占供給へ)やカーナビ伸びる ADAS(先進運転支援システム)事業の取り込み 次世代画像センサー開発進める(ソニーが世界シェア4割握る パナソニックは開発で追う立場)

 デジカメ生産 2015年春をめどに 高級機以外は中国に移管(2015年1月)。

 航空機内の娯楽システム:アビオニクス事業 高精度監視カメラシステム(顔認証技術・・・暗証不要化の入退館システムも)など伸びる

 テレビ会議システム

 大型蓄電システムは伸びるが 太陽光発電システムは減収 

  家電の中で成長が見込める美容関連家電の強化(2015年度売上高2000億円規模)…・住宅との融合 白物家電の強化 住空間との一体化 ビルトインキッチン機器の強化

 住宅子会社のパナホームと一体で(18年度に住宅分野で2兆円 戸建てマンションの施工販売 リフォーム 海外で配線器具など住宅設備 太陽電池やエネルギー管理システム サービス付き高齢者住宅) 拡販はアジアなど海外でもすすめる

 介護ビジネスの拡大(2014年度売上が200億円 これを25年度に売上高2000億円目標)

 2014年3月 パナソニックヘルスケア(医療機器事業)をKKRに1500億円で売却 その後人材派遣事業をテンプHDに100億円規模で売却 など非中核事業を売却 財務改善につなげる

 2014年4月 国内家電事業組織 別会社化していた営業部門を一体化

 2013年11月 携帯向け回路基板事業からの撤退を発表(国内2工場のほかベトナム、台湾でも生産終了):大口顧客獲得できず 生産海外移転するも黒字化困難

 2013年5月 米国での太陽電池材料のシリコンウエハー生産から撤退へ(6月末で生産終了) マレーシアに集約して生き残り目指す(中国企業との価格競争厳しい)

 2013年3月 三洋電機のデジカメ事業を投資会社に売却

 2012年1月 保有するJVCケンウッドの株をほぼすべて売却 資本関係解消へ

 2011年12月 長年持合い関係にある ダイキン工業 小糸製作所の株を一部売却

工場ではITシステムを導入して 効率を高めた「スマート工場」を目指す データを解析して不良品の発生要因の特定に生かす 作業員にウェアラブルカメラを装着させて品質改善に役立てる 生産ラインの最適化を図る など EMSだけでなく 自社工場でもモノづくりの底上げを図る 2016年3月期から取り組み始める 在庫回転日数 固定費比率など業績評価指標(モノづくりKPI)の改善目指す 内外工場で生産ラインの自動化なども まず国内工場それから海外へ

BtoBへの転換の先例とされるのがオランダのフィリップス(2000年の売り上げ構成 家電44% 半導体16% 照明13% 部品12% 医療機器8%)。1990年代まで日本の家電メーカーにとりAV市場で最強の相手だったフィリップスは、高齢化社会をにらんで医療機器事業で大型買収を行い、2012年の売り上げ構成は医療機器41% 照明35% 家電24%となり現在ではAV機器からほぼ撤退 AV機器ではブランド供与(テレビ事業⇒台湾のTPVTとの合弁 携帯電話⇒中国企業 AV事業⇒船井電機)が中心。 他方、液晶パネル事業は韓国LGと合弁ではじめ持ち株をLGに売って撤退、半導体は2006年に分社、2010年に全株売却撤退した。こうした組み換えの結果、フィリップスは法人向け事業が売上の7割を占める企業に変貌している。最近2014年9月にフィリップスはLED化によって収益性が悪化した照明部門の分離を決めた。フィリプスは電球ソケット会社として始まっているため、この決断は祖業をも分離するものとして注目された。

Panasonicが2011-2012年と巨額赤字を抱えた直接の原因は三洋電機 旧パナソニック電工の買収 さらに大型パネルへの大型投資といった巨額投資の連続による手元資金の枯渇である。このうち三洋電機への投資は電池事業という将来のためであったが、三洋の企業価値の低下というパンチとなってPanasonicを苦しめた。そして間接的背景は、テレビ、半導体などの赤字事業の存在だった。とくにプラズマパネル事業への巨額投資は豊かだったPanasonicの金庫の金の流出にしかならなかった。

三洋電機の買収(2008年12月 買収に8000億円 2011年完全子会社化 ところがその後三洋の企業価値が5000億低下 2013年3月期までの2年間で赤字1兆5000億円の一因になる)⇒その後 白物家電事業ヤデジカメ事業など重複部門の売却 人事削減 リチウム電池事業や太陽電池に絞り込む。三洋の人材は流出したとされる。2014年4月両社の人事を統一。数年かけて賃金水準や福利制度を統一。

2011年4月は旧パナソニック電工の買収も重なり(両社を完全子会社)手元資金は急減。さらに薄型パネルへの大型投資。そして業績悪化で2012年9月期末に手元資金が1兆877億円マイナスとなった(手元資金から有利子負債を引いたネットキャッシュは2013年3月末で2012年3月期末で9620億円のマイナス)。このときS&PからはトリプルBの格付けをつけられた。事業のうちテレビ、半導体など課題7事業については最終赤字幅縮小。デジカメ、エアコン、携帯の3事業は営業黒字に転換。回路、光ピックは赤字幅縮小。運転資金の圧縮 在庫削減 遊休不動産や非中核事業の売却 有利子負債削減。2015年3月期で実質無借金目指す。格付けではA格(海外でM&Aができる財務)を目指す。自己資本比率は35%回復が目標(2014年3月ス末で29.7%)。この段階(2014年5月半ば)では2015年3月末で6年ぶりに実質無借金なる見込みとした。

20141 ①国際オリンピック委員会とのスポンサー契約を継続へ(2016年までをさらに4年) IOCと直接契約する最上位スポンサーを続けることに(1988年から 日本企業では同社だけ) 2020年の東京オリンピックにらむ
②東南アジアの半導体3工場を売却へ(2014年6月にシンガポールのUTACホールデイングスに116億円で売却)
     岡山工場は3月末で閉鎖
     中国の2工場は売却を検討

2014年3月 プラズマテレビの販売の終了
 2014年3月の3期ぶりの黒字転換を受けて役員報酬減額を解除 コスト削減+円安効果、事業売却収入ーリストラ経費(構造改革費用)
 2014年3月期 営業利益2900億円は前期比80%増。消費税前の駆け込み需要の恩恵
 事業売却のほか年金制度変更でも営業外収益
20144 リストラを継続 自動車など成長分野で攻めの経営へ 14年3月末従業員規模は27万1789人。2010年3月から11万減少。以下おおむね前期の決定事項。
 半導体の国内外主要事業を海外企業に売却
 プラズマテレビ事業から撤退
 テレビやオーデイオ事業を白物家電と同じ社内カンパニーに4月に移管
 国内の個人向けスマホ事業から撤退
 ヘルスケア会社(売上1200億円)を米投資ファンドに売却KKRに 1500億円(1650億円)で売却
 保有株不動産の処理を進め負債を削減する 物流事業を日本通運に譲渡
 システムLSI事業を富士通統合
 回路基板、光デイスク装置関連事業を縮小
 2019年3月期の売上高10兆円を目標 そのうち自動車住宅関連で4兆円
 2000年代初頭にも巨額赤字から立ち直った経験 その後薄型パネル巨額投資で再び赤字化を経験 
20145 ①有機ELデイスプレー(大型55型で100万程度 液晶パネルの3倍ほど製造費かさむ 発光する有機材料の使用で薄い特徴)の量産を2015年から2016年以降に先送りへ(背景 サムソン電子も投資凍結決定 量産コスト削減が難航 4Kテレビが値下がり30-40万) 有機EL商品化を凍結 4Kテレビの品ぞろえ充実へ 液晶テレビの高画質化 価格下落。2014年5月 50インチ以上の大型液晶テレビの販売で4Kのシェアが2割超え(ソニー5割超えで先行 東芝 パナソニック追う展開)。メーカー側は値崩れを警戒 半年で2割ほど値下がり。
②赤字のテレビ事業立て直し急ぐ 自社生産縮小 メキシコ工場の生産能力を6割減 タイ工場ではテレビ生産止めた 委託生産増やす。自社生産比率現在9割を7割程度まで引き下げ 黒字転換急ぐ 東芝ヤソニーはすでに3割程度まで落としている 赤字だが消費者向けのブランド価値が有るとの判断 販売量(薄型テレビ世界シェア2013/1-9は サムソン電子21.6% LG電子14.7 TCL6.4 ソニー5.8 ハイセンス4.7 パナソニック4.6の順) を追わず採算重視へ(価格競争できず数量での巻き返しも不可能 国際的には韓国勢敗北 デザインや機能を強調して高級家電として生き残り図る) 自社生産は4Kヘシフト(サムソンが有期ELパネル投資中断 ソニーが有機ELテレビ開発凍結 パナソニックが量産延期:有機ELテレビは当面延期 有機ELテレビハ自ら発光する有機材料をつかうので大幅に薄くでき画像が鮮明でくっきりしているとのこと) 

20146 ①茨木工場(かつてテレビ工場 2000年代にはいるとPパズルの一貫工場に。)を大和ハウス工業に売却。大和は物流施設を建設 ヤマトHDに賃貸しの方針。売却額は100億円前後。② 2014年秋以降 高齢者向け家電 国内で販売 スイッチの位置 開閉部 高級感のあるデザイン 小さく軽くぜいたく。
20147月 携帯電話基地局関連事業をノキアに売却へ。ノキアのシェアは26%で首位。パナソニックのノシェアは9%(2013年)。NEC 富士通に次ぎ国内メーカーでは第3位。売却額は数縦億円程度。売却時期は今年度末まで。同事業は海外勢との価格競争で採算悪化。パナソニックは自動車、住宅関連分野に経営資源を集中へ。
② 人材派遣会社(国内6位)を売却へ(G内外に事務系従業員を派遣 電子機器技術者派遣に強み) 2015年3月までに売却。
③ CATV(CATV受信機で国内6割のシェア 2016年に高画質4K放送開始 規格決定9月)の4K対応機を2015年春めどに発売 放送前倒し シェア7割へ上昇を見込む
④ 4Kに対応したコンパクトデジカメを発売(4K対応機種を増やす方針) デジカメ事業は2期連続赤字 スマホに押され販売低迷 高価格機種にシフト 機種絞り込み ミラーレス一眼に集中 レンズは自社生産に転換
20148 テスラと米国に大規模電池工場建設で合意 総投資額50億ドル規模とされパナソニックはすでにトヨタとともに出資もしている。大量生産により電池価格が下がるとEVの価格がガソリン車並みに下がりEVが一気に普及する可能性がある。
20149月末 ネットキャッシュ(手元資金ー有利子負債)が6期ぶりにプラスに転じるまで財務体質改善

20141017 4Kの液晶テレビ「ビエラ」7機種を発売。現在の5機種から12機種へ(4kでの出遅れを挽回 国内シェアup目指す 20%から25%が目標 買い替え需要本格化をにらむ 新製品投入でテレビ事業の早期黒字化目指す)。

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2013年3月期まで2期連続で7500億円の最終赤字計上 テレビ事業などが不振
 プラズマなど不採算事業からの撤退(13年末)尼崎第三工場を9月に不動産投資会社に売却、半導体工場も売却、利益が出ていても非中核事業は売却を徹底。 

201312 ①富士通との間でシステムLSI設計開発部門の14年1月統合で合意。    半導体事業再建のため岡山県と鹿児島の2工場を2014年度めどに閉鎖を決める(その後14年3月に閉鎖)。②富山 新潟の北陸3工場のイスラエル企業タワージャズへの売却で基本合意(大筋合意は11月。13年度中に分社 株式の51%を売却することで分離) 3工場はこれまでパナソニック向けの半導体生産が主力だったが、タワージャズが独自に販路を開拓することで工場の稼働率を維持改善できるとのこと。③国内生産の大幅な縮小急ぐ(背景 自社向け生産の減少で収益悪化) その後半導体部門の従業員を半減へ 半導体部門は韓国勢との競争で赤字の原因になっていた。⑤ PDP生産を終了

201310 プラズマ事業からの撤退を正式発表(12月にパネル生産止める 14年3月で販売もやめる 尼崎工場は売却へ) 住宅関連強化のため トルコのヴィコ(配線器具大手)を買収 2007年にインドのアンカーを買収

2013年9月 ①ヘルスケア事業でKKRと合意 株式の8割を1500億弱で譲渡 750億円の利益(2014年3月を予定) ② 欧州での太陽電池の生産を終了 ③個人向けスマホの開発休止を正式発表(NTTドコモの重点機種から外れたことが響く) 米アップルアイフォーン 韓国サムソン電子のギャラクシーに押され劣勢だった。

再建計画 20134 再建計画の発表 事業部制の復活 役員の責任明確化など
 2013年4月に白物家電、環境ソリューション、AV機器、自動車・産業用の4カンパニー制にする(ビジネスユニットは88から56に削減)
 2015年度には全事業部門で営業利益率を5%以上に引き上げる
 苦戦する民生用リチウム電池や太陽電池で拠点を再編する
 チェコ、マレーシアのテレビ用パネル組み立て工場を清算。
 リチウム電池の国内生産拠点を6ケ所から3ケ所に減らす。
 12年ぶりに事業部制復活(88のユニットを49に削減) 各事業部門に営業利益5%の必達を指示 売上高目標は掲げない
 事業部画それぞれ拡張 事業の重複 2002年3月期の赤字を機に中村社長が中央集権化 機能別組織に再編 戦略部門への機動的投資 開発・営業の人員を集約 → 営業と開発に距離 ニーズに合わせた製品投入に遅れ 収益管理もあいまい 事業部制は1933に松下幸之助が導入 
 当面はリストラ(拠点再編 従業員削減など)による採算改善か
 企業向けビジネスの強化 財務体質の改善
 テレビ 半導体 携帯電話など赤字事業の黒字化は16年3月期(中期計画)
 自動車 住宅で 19年3月期に2兆円の売上高目標(中期計画 具体策は不明)
 大坪会長の特別顧問に退くことで大坪時代の責任明確化
 ・テレビ用パネルの工場建設 プラズマでは累計5000-6000億円の投資
 ・三洋電機買収などで 巨額赤字の原因つくる
 また役員報酬の削減で責任明確にした(社長・会長について2012年11月から4割。2013年7月からさらに1割。:その他役員については2012年11月から2割。:管理職の年棒を2014年3月期から前期比1割:組合に対しては夏の賞与の2割削減 所定労働時間の延長などを申し入れ中)。
 白物家電の国内生産増やす(家電市場で10年ぶりに白黒逆転 デジタル家電1.6兆円<白物家電2.2兆円 デジタル家電 価格値下がり大きい:半年でも半値とも 2012年秋 :白物家電 高級機種に人気 利益率高い)
 2014年3月期中
 2期連続の巨額赤字による有利子負債圧縮 資産圧縮いそぐ 大阪高槻工場敷地の半分

2013329日 中期経営計画発表(津賀一宏社長)
 2013年3月29日 中期経営計画発表(2016年3月期に営業利益で3500億円以上目指す 赤字事業の縮小 各事業部門の収益改善) 
具体策に乏しい:不採算事業(携帯電話事業 プラズマテレビ事業など)からの撤退、給与カットなど固定費削減が明示されなかったこと、大胆なリストラ策でなかったことに失望の声
 133月期 7542億円の赤字(2年連続で7500億円超の赤字)
 
20133 ヘルスケア事業(血糖値測定システムで世界シェア2割 電子カルテシステムで国内首位)の売却表明 黒字企業だが世界展開のための巨額投資 ノウハウの不足から売却を決断

 2014年3月期中
 2期連続の巨額赤字による有利子負債圧縮 資産圧縮いそぐ 大阪高槻工場敷地の半分
 2013年3月期
 不動産株式を2500億円強売却済み 株式1000億円強 保有ビル(東京汐留ビル507億円など) 有利子負債1兆1433億円 2年間で5000億円策削減する(本業の資金効率改善 買掛金支払期間は延長 非主力始業 余剰資産を売却 ヘルスケア事業の米投資ファンドへの売却)。
  2013年3月期まで2期連続で7500億円の最終赤字計上 テレビ事業(5期連続の営業赤字)などが不振
プラズマなど不採算事業からの撤退(13年末)尼崎第三工場を9月に不動産投資会社に売却、半導体工場も売却、利益が出ていても非中核事業は売却を徹底。 

20121031日 133月期 巨額赤字決算予想
 三洋電機を買収したとき(2008-2009年)には、輝いてみえたパナソニックがわずかな間に経営を悪化させた。
2012年10月31日の発表によれば、2013年3月期見通しは7650億円の赤字(4400億円の構造改革費用含む。従来の見通しは500億円の黒字)。2012年3月期の7721億円に続き、パナソニックは2期連続で大幅赤字を続ける予想となり、13年3月期は1950年5月期以来63年ぶりの無配に追い込まれた。
 この段階で明確になったのは三洋電機買収の「失敗」か。8000億円を投じた買収について、結果として5000億円の減損損失の計上となった。このような財務体質な悪化は外部資金調達コストを上昇させる。パナソニックとしては内部資金の創出に努めることになる。
 家電業界の不振の理由として、なんでも保有しようとする自前主義 横並びの集中投資が挙げられる。結果的に値崩れ 商品の寿命も短期化。という批判がある。事業モデルとして垂直モデルは部品と製品の両方で儲けることを可能にした時もあったが。

2012年度に入ってからのリストラ
・約7000人の本社人員の大幅削減(配置転換 早期退職でスリム化するとのこと
最大1000人程度を削減 としている)
・携帯電話端末の生産を海外に全面移管
 不振の携帯電話事業は縮小。2012年春に再参入したばかりの欧州市場での販売を2012年度中に打ち切るとのこと。
この面では事業を拡大する構想だったというのだが、そもそもどのような成算があったのだろう。いずれにせよこの
事業だけで最大1000億円規模の費用が発生するとのこと(資産の減損損失+人員削減などリストラ費用)

2011年度に実施されたリストラ
・グループで4万人規模の従業員を削減(3万6000人を削減 2012年3月末の従業員数は33万人)
・半導体生産の外部委託拡大
・最新鋭プラズマパネル工場の稼働停止 5生産拠点を2ケ所に集約
・民生用リチウム電池の国内生産拠点を集約 中国に5割以上移管
・三洋電機の白物家電事業を中国ハイアールに売却
・JVCケンウッド株を売却

日本の家電業界不振の背景について若林秀樹さんの指摘(日経2012年7月8日)は示唆的。市場が拡大すると自社生産だけでは間に合わない。外部の生産委託会社をうまく使う必要がある。ところが日本の企業は外部化の流れに乗り遅れたと。台数拡大とともに製品サイクルの短期化が連動する。組織にスピード感がないと対応できないが、ここでも日本企業は対応できなかったと。日本企業の時間軸にあった事業に取り組むことが必要。それは市場規模がそれほど大きくなく、製品サイクルがないもの。白物家電 鉄道 重電 産業機械をその例にあげている。日立 日産 などこれまで大きな赤字を出した企業はV字回復するケースが多かった。しかしパナソニックは2期連続大型赤字に追い込まれた。これはリストラが一期で済まないほど問題の根が深いことを示している。 

液晶事業の赤字と対策
 採算の悪いテレビ向け液晶パネルの生産を縮小、テレビ用パネルの大半は韓国メーカー(韓国LGDなど)など外部から調達する。 千葉県茂原の工場はジャパンデイスプレー2012年春に売却の方針。
 中小型はテレビ用にくらべて1インチあたり単価が4~5倍高い。高精細な映像表示、省エネ機能でなお韓国勢と比較優位。世界シェアも高い(2011年で日本勢37% 韓国勢16%)。
 今後は薄く省エネの有機ELが焦点。テレビ事業不振の理由はパネルのコストにある。
 液晶パネルをつくる姫路工場はタブレットや医療用モニター向け中小型パネルの比率(現在は半々)を高めて収益を改善する。
 尼崎工場でつくっているプラズマパネルについてはテレビ向け生産を縮小、収益の高い電子看板電子黒板などを増やす計画。(その後撤退が確定する)
 すでに2011年度にプラズマパネルの最新鋭工場(尼崎第三工場)の稼働を停止(2012年3月期の減損処理)。その後第一工場も縮小としたので
尼崎工場は第二工場に集約。これら工場の減損処理やリストラは赤字を膨らませる見込みだ。
 2012年度のプラズマテレビ販売計画は昨年の半分。売り上げを減らしても収益性改善へ。
 2012年10月末白熱電球の生産を終了、LED電球への置き換え促す
 なお東芝や三菱電機はすでに白熱電球の生産を終了している
 このような不振は、実はシャープ、ソニーなどほかの電機大手にもみられる。
 主因はテレビなどエレクトロニクス事業の不振 とその理由 超円高 国内の電力料金値上げ ウオン安の恩恵を受ける韓国勢との価格競争 技術優先のモノづくり デザイン力の軽視

資金の内生策など問題の財務面的側面
 在庫の圧縮を進める
 部品点数削減
 製品モデル数削減

棚卸資産回転日数の短縮 背景には業績悪化 CCCの短縮 

格付け低下による外部資金コスト上昇 短縮により資金負担を減らす

保有株の売却を進める
 また保有株の見直しを進めて、保有株の圧縮を2011年以降進めている(2011年3月末2億4300万株 2012年3月末1億8700万株 23%減少)。従来パナソニックは持ち合い重視型の企業の一つとして知られていた。売却で得た現金は、資産リストラや成長投資に使われる。
 おそらくはその余波だろうか。経営再建を急ぐオリンパスの資本提携相手として、オリンパスから期待されながら、パナソニックは環境・エネルギー事業(問題解決型 2012年度に1000億円強の売り上げを目指している スマートタウンを世界で展開)の強化を優先するとして、オリンパスへの出資を見送り、結果としてオリンパスはソニーと組むことになった(2012年6月)。

巨額の資金融資枠を確保(2012年10月までに 来年9月までの設定)
融資枠。三井住友銀行が2500億円 三菱東京UFJ銀行が2000億円。三井住友信託銀行が1000億円
 りそな銀行が500億円 で計6000億円(日本企業の融資枠として2012年で最大) 
 背景にある手元資金の減少
 2010年9月末1兆9704億円
 2012年6月末  5547億円
 2013年3月の1500億円の社債償還は自己資金で賄う

 2012年3月末 ネットキャッシュ(手元資金ー有利子負債)が9620億円のマイナスになるまで財務体質悪化 これをネットキャッシュに戻す

格下げ
 2012年11月2日 S&Pがパナソニックの格付けをシングルAマイナスからトリプルBに2段階引き下げた 財務内容が悪化したと判断された

外部資金には頼らない
 借入金から手元のキャッシュを引いたネット借入金が2012年9月末 1兆800億円まで増えたがこれを2013年3月末までに7700億円まで 減らし 2016年3月期には ゼロにする方針。まずは本業の稼ぎで1000億円 資産・株式の売却で2000億円 今後も毎期2000億円内部で生み出す。融資枠は利用する予定はない(担当常務の発言 日経2012年11月15日)

三洋電機買収などで2010年3月期に借金が手元流動性を上回るようになった。でそこで2013年3月期から、持ち合い株や不動産の売却による財務体質の改善につとめてきた。

買収したパナソニック電工、三洋電機の承継分を含め社債の償還を進めるが新たに借り換えをしないで社債の償還を進める。2014年3月期から3年で5000億円の社債償還が予定される。償還には運転資金圧縮や不振事業の赤字削減でねん出した手元資金を充てる2013年10月からは電子記録債権を導入。取引先の債権の現金化がしやすくなったとのこと。他方、買掛金については支払延長を求める。在庫削減、売掛債権の早期回収に努める。投資対象については、過去の大型投資の経験を活かして、投資対象を絞り込む。

Written by Hiroshi FUKUMITSU©2014 original in July 13, 2013
revised in Aug. 13, 2016

Panasonic 財務業績関連情報

Panasonic 2016年度事業方針 利益重視
テレビ事業 パナソニック ソニー 東芝(2011年11月)
パナソニックによる三洋電機買収(2008年11月7日協議開始)

Case Study Sharp シャープ

Case Study : Sony

Area Studies Business Models Business Strategies  

 


Case Study on Komatsu コマツ

2016-07-26 20:49:07 | Management

コマツ:日本でも有数の国際化した企業(売上高の8割が海外 とくに新興国の比率が高い点に特徴)代表的G20企業 G7だけでなく 中國韓国 ロシア ブラジルなどを相手にする企業 日本の建設機械トップ 2位に日立建機 建機世界トップは米キャタピラ。

世界的な資源安は建機メーカの業績を悪化させている。とりわけ新興国での鉱山機械が需要減。その中でコマツは国内工場(省エネ徹底 電力消費抑える 生産性改善)機械に監視端末をつけてコスト削減、在庫の一元管理に取り組んできた。もともと建機の稼働状況を監視するコムトラックス

2015-16 新興国の鉱山機械需要の低迷続く 

2015-16 減収減益続く 背景:資源価格の下落 建設機械稼働率低下(需要低迷は中国だけでなく それを受けたインドネシア 豪州にも) 補修在庫を抱えざるを得ない特性から 需要減退から巨額の在庫が表面化(コムトラックスのシステムはあったが需要急減の影響は免れなかった) こうした中2016年6月 米ジョイグローバル28.91億ドル(約3000億円)で買収決定(2015-2016補筆) 

鉱山にたいしても無人化技術の提供 無人運転など(2008鉱山向け超大型ダンプの無人運航システムの実用化 2013-14 整地掘削などの自動建機導入 2015 GPSに頼らない走行含めた無人化の実用化目指す)

採掘から物流までの最適化を提案することで運営コストの削減を提案する(ソリューションサービス 分析サービスを鉱山側に提供 あるいは建設現場:スマートコンストラクション 2015年2月サービス提供開始)とのこと。

中国減速後は 中国外(とくに先進国向け)へのシフトを急いでいる(これまでアジアの比率が高かったことが強みだったが)。もともとは日米欧など伝統市場以外の戦略市場を意識的に開拓してきたのでこれは一つの方向転換。
新興国における鉄道・高速道路などインフラ整備 鉱山開発の波に乗って急速に成長 利益を伸ばしてきた。しかし中国での需要回復(とくに鉱山機械)が遅れる中(インフラ投資や大型プロジェクト絡みは活発ともされる)(オーストラリアでは鉱山機械販売が14年後半回復の兆し)、先進国向けの需要の伸びと円安が業績の回復を助けている(201410下旬)。

運転資金の圧縮などで純現金収支(FCC)を高くして財務体質の改善を目指している。有利子負債から手元資金を差し引いた純有利子負債が、自己資本の何倍かを示すネットDEレシオを2016年3月期に0.3倍以下にする目標を掲げている。2014年6月末では0.36倍。そこで有利子負債6105億円を1000億円削減して目標を1年前倒しで達成が名に入ってきた(2014年)。背景には今期のFCCが1000億円程度の黒字となる見込みがある。財務体質の強化は、将来の投資余力を高めるためとのこと。

2008-2009年 国内が公共事業の縮小で需要が伸びないうえに米国欧州中東などでも需要が落ち込んだ。それを中国(08年度に世界最大の油圧ショベル市場になった その中国で2009年シェアトップがコマツ コマツは2009年4-6月に建機売る上げだかで日中逆転が起きている)など新興国の拡大する需要でカバーしたことで注目された。さらに資源開発に使う大型機の需要もあった。欧米市場の落ち込みは続いているものの、新興国と資源開発需要で稼ぐ建機メーカーは2007年のサブプライム危機さらに2008年9月の金融危機のあとも落ち込みが小さく済んで注目された。

2010年には2007年水準の8割程度に需要が回復。しかし新興国需要が全体の7割と1990年代と先進国・新興国の需要比率はまさに逆転した。
 コマツや日立建機では2012年3月期 海外売上高比率は8割を超えた。中国 インドネシア向けが伸びた。 コマツについては2011年3月期に売上高が2兆円を超えるかが注目された(2008年3月期に2兆円超える。2010年3月期には1.5兆円割れ)。インドネシアなど東南アジア向け、中南米が高水準。日本北米も回復。太陽電池の生産に使われるワイヤソーの中国向け受注が高水準。
 またコマツ(野路国夫社長)は、製造原価を変動費のみで単純計算するSVM管理と呼ばれる独自のコスト分析、コスト管理がかねて注目されている。変動費のみの方が各国の比較がたてやすい。減価償却、間接費など固定費を勘案しないで利幅をみるというもの。2002年に導入。  
 考え方としては、供給先はSVMの大きいところから。SVMが小さいときは、売値が低すぎる(値引き)か、あるいは変動費にむだがあるとする。SVMが増えても営業利益がでないときは、固定費の削減必要とみなすもの(後に詳述あり)。
 コマツの生産コスト対策を具体的にみると、工場では→ラインの集約、部品共通化、多能工化により効率化 カイゼン提案を活用。また基幹部品を国内生産維持(原材料の海外調達を高める一方 基幹部品の国内組み立て 生産研究開発の国内維持を続ける 品質と国内雇用の維持を掲げる)は、技術優位確保策だが為替変動リスクをうけやすい問題を抱えている。 実際には、その基幹部品を輸出して組み立ては需要地に近い海外でローコスト化も図っている。需要動向から先進国の工場を削減、新興国の工場を増やしている。さらに人件費(→残業 出張の抑制)、水道光熱費(→夜間電力の利用)など細かな対策もみられる。またほかの企業と同様に流通在庫を含め在庫削減も進めている。
 各工場では製造手法の統一で、品質の一定化。それを前提にしたグローバル生産体制を布いている。世界2位だが、中国(新車の販売が多く利益率高い)、東南アジア、インドの販売シェアでキャタピラを抜きトップに立っている(しかしキャタピラも猛追)。キャタピラに比べ、エンジンから最終組み立てまで一貫生産という特徴も知られる
 こうした生産コスト管理をみていると、それがコマツの強みだということも理解できる。企業の成功にはこうした生産コスト管理と、どこで何をどのように売るかという戦略的な面の両面が必要だということであろう。
 なおコマツ、日立とも販売した建機にGPS(全地球測位システム)をとりつけて、稼働時間、燃費量把握している。このシステムは販売金融管理にも使える(日立は顧客の支払いが遅れるとエンジンの始動を止めている)。なお建設機械の動向は神戸製鋼所(コベルコ建機)、川崎重工業(油圧制御バルブなど油圧機器など建機の主要部品 モーター ポンプ)、住友重機械工業などの業績にも反映する。川崎の部品は中国や韓国の建機メーカーにも使われている。 

近年の経営状況

2008-2010年 先進国での需要減退に対しては在庫削減
純現金収支改善を目指したほか生産拠点の統廃合も進め固定費の圧縮に努めた。
2011年3月期の営業利益2200億円 これは前期比3.3 中国での需要拡大の追い風受ける(中国ブーム) 中国 建設機械 34割増える 沿岸部から内陸部に都市化進み インフラ整備進む  鉄道 高速道路の大規模な整備進む 9割以上は現地生産 中国建機の首位(1位コマツ 2位韓国斗山 3位日立建機 4位韓国現代 5位コベルコ) 
 北米では油圧シャベル+鉱山開発用機械
 世界的需要拡大
営業利益の源泉 海外生産販売で1300億円 輸出で800億円 国内で100億円 国内はデフレで過当競争の消耗戦
123月期(201203見通し) 売上高11%増2兆500億円 営業利益26%増2820億円 2011以降 中国が減速 依然として高い営業利益
コマツの地域別売上構成(201303:201204見通し)
アジア19% 日本16 北米14 中南米12 中国11 オセアニア10 欧州その他12
2010-2013 中国景気の悪化で建設機械の販売が次第に悪化 中国景気の悪化を受けたそれだけ中国に食い込んでいた 2011春頃からは前年比マイナスに2012に入り一段と悪化 前年比半減 建機メーカー(コマツ 日立建機 コベルコ建機)のダウン
建機部品メーカー(油圧機器の川重、東芝機、KYB、不二越 運転席のプレス工 エンジンのいすず 三菱重工など)に影響が波及
KYB 油圧ショベルアーム部分のシリンダーで世界シェア4割
 建機部品メーカーは日本メーカーだけでなく中国の三一重工などにも納品 中国メーカーの減速の影響も受ける なお コマツは内製率高いとのこと
20133月期見通し(201301 連結営業利益前期10%減の2300億円 売上は3%減1兆9200億円
2012年 中国の減速続く(コマツの中国工場は稼働率3割に低下201204) 加えて インドネシアで鉱山機械需要減少 しかしコマツは建機の環境悪化にも関わらず 売り上げを微減でとどめ なお高い営業利益を上げた
確かに 営業利益は減少 売上も微減 しかし環境を考えれば この結果は見事かもしれない。コマツは販売価格引き上げで収益改善目指した 逆風にひるまず毎年値上げを実施した。その結果 高い利益率を維持 201204-06 売上高営業利益率12%(201303予想は13% 中期目標は20%) シャープが4500億円の最終赤字見通し(201211)に対し コマツの収益は安定

2013年 機種数を減らすことで開発費削減(環境規制対応上も必要)
2015年度までに主力栗津工場での製品数を2割削減 100機種程度にするとのこと(201301)
また老朽化した国内工場刷新で経営効率改善 固定費を下げる
 背景 建屋や設備の老朽化
2013-2015効率化投資に300-500億充てる 建屋新設 分散ラインの集約 部品外注化 物流改善 使用電力量削減 など 固定費ふやさず 販売管理費圧縮 生産固定費削減 その分を研究開発費へ 国内4工場の生産コスト3-4割減らす 稼働率低下による採算悪化に対応 生産効率改善へ エンジンなど基幹部品を国内で集約生産(全量生産) 国内生産の利益率維持目指す 主要部品は国内で生産(技術優位を保つ 副作用としての円高 とくに栃木の小山工場 エンジンや油圧機器を生産 小山工場の能力を
繰り返し拡大している マザー工場国内論

得意な手法:借金に頼らず経営効率高める財務の安定
 負債に頼らずROEを高める 1420%へ
2011年3月期 見込み
 総資産回転率0.9回→1.0 
 売上高純利益率6.8%→8.7
負債依存度は2.3倍のまま

コマツに次ぐ日立建機はコマツの4割ほどの規模。コマツと同様に売上高は伸び悩んでいるが、円安で採算が改善している。日立建機がコマツ同様に有利子負債の圧縮を優先させている(2013年度にはオーストラリアでの鉱山機械新工場建設を先送り 鉱山機械は同社売上の3割)。2014年3月末で3600億円の有利子負債を2017年3月末までに2000億円台に圧縮するとこと。ネットDEレシオが2014年3月末で0.8倍であるのを0.4倍以下にする。SCMの改革で現金を創出するとするが、具体的には生産リードタイムの短縮、原価低減活動のグローバル化。同社のFCFは2014年3月で556億円。2015年3月も同水準を目指すとのこと。

 販売金融の重要性 なお需要落ち込みを経験する中で、購入に代えてリスクの低いレンタルに切り替える動きが北米では強まった(およそ半分以上にまで比率上昇)。こうしたレンタル需要の掘り起こしや対応も重要になっている(コマツ-住商 レンタル期間中 品質を管理することで中古価格の維持を目指す)。他方で資源開発絡みの大型機械については、リースにより期間貸し、割賦販売など顧客ニーズに細かく対応する必要もあるようだ(日立建機―丸紅)。こうした販売金融重要性は割賦販売比率が高い中国でもみられる。個人事業主相手のため与信管理が重要とされる。 

建機の巨人キャタピラ-との比較 規模には差があるものの売上高営業利益率ではむしろ上回る 高い利益率が売り 13%強(201303見通し:201208)建機最大手のキャタピラ-と互角の売上高営業利益率の高さが注目されている。
キャタピラ-13.7%(2012予想:201208市場予想) キャタピラ-は中国の影響をうけにくいことから久しぶりにコマツを上回る コマツは値上げや原価率引き下げで利益率改善を狙う 2012 建機への環境が悪化するなか コマツは営業利益の減少を最小で食い止めたように見える。金融危機の経営環境悪化に耐えた経営手法に関心が集まっている。

キャタピラ-は売上高に占める海外比率が高い、米国を代表するグローバル企業の一つ。同じような位置づけの企業には、コカコーラ、IBM,GEなどがあるが、それらのなかでも海外売上高の伸び率は断トツであった。

キャタピラー(2013年12月)とコマツ(2014年3月)を比較すると売上高規模はキャタピラ-が2倍(ただし為替レートでこの比率は変わる)。自己資本利益率で前者が19.7% 後者が12.4%。しかし自己資本比率では24.6%と51.9%。つまりコマツは財務体質の強化を選び、キャタピラ-は自社株の取得による自己資本の圧縮を選んでいる。

建設機械の世界首位はキャタピラ(本社 イリノイ州ペオリア)
米国企業としては国際化 新興国にも進出。201112 売上は前期比41%増 自己資本利益率40%。資源価格高騰の恩恵受ける 通貨ドルの下落 金利負担低下の恩恵も。しかし最高益とは裏腹に米国工場従業員の昇給は凍結。3ケ月半におよぶスト生じる201204末から3ケ月半に及ぶスト。そして2012年2月には給与半減通告を拒否したカナダ工場を閉鎖。労働者に非情なやり方が目立つ。会社幹部は高額報酬。労働者は単に固定費として賃下げを迫る手口はいかにもアメリカ企業。背景には新興国市場失速があり、米国拠点の固定費引き下げは不可避との経営判断。2012 売上10%増5兆9287億円 営業利益20%増7715億円。売上の4割が北米 中国の比重は小さい(キャタピラのこと)
2012買収した中国の鉱山機械メーカーの減損処理実施(2012-10/12期)

中国をはじめ新興国の景気不安 による(石炭など資源価格の下落 2013年7月以降トン70ドル台の採算割れ そこに新興国通貨安)資源国の鉱山機械需要の減退(先送り)など かつての成長要因が逆回転している。(なお石炭の生産コストはトン当たり80ドル程度とされる。豪州炭の価格でみるとpeak2011年前半で120ドル超えていたが20148月には70ドルを割るまで低下している。 ← シェールガス革命)
鉱山機械は利益率高い稼ぎ頭 だがそこが売れなくなった。石炭価格の下落とインドネシア通貨ルピアの下落のため、期待していたインドネシアの鉱山機械需要伸びず(2014年4月)。正確な需要予測はコマツのお家芸のはずが予測しきれず。

コマツの遠隔監視システム コムトラックスで世界30万台以上をGPSで場所や稼働時間を把握・・・これが精度の高い需要予測のもととされていた。

従来の分析方法 採掘量 資源価格 機械の稼働時間の3つを点検するもの。為替動向や顧客がどの山を掘るかの選択が重要になる 顧客の採算ライン 廃車の計画・判断基準など情報を集める努力の欠如が需要予測を誤らせたという反省。

補給部品の販売は順調。過去の販売台数が生きる。

遠隔管理システム建設機械に情報端末付けて稼働状況(稼働時間 燃費など)を日々把握 このシステムは 機械之場所稼働状況がわかる(全地球測位システムGPS搭載
 オーナー側では経営管理に利用できる(リアルタイムで監視) 運転手の不正もわかる
 機動的な補修 顧客の与信管理にも利用できる
 コムトラックスは2001に搭載開始 営業からの日次の報告と合わせて需要予測にも利用 遠隔管理システムの標準搭載 2001から 2013年3月末で約70ケ国で30万台以上に搭載 →2013 本体だけでなく 部品の状態履歴を把握できる 新システム:コムトラックスパーツ導入へ 

建機本体が売れずともコマツは交換用部品でも稼いでいる 営業利益の3割程度
とくに稼働時間の長い鉱山機械 部品単価も高く 稼働期間中に本体と
同程度あるいは2倍の売上見込めるとのこと
建設機械摩耗激しく頻繁な保守点検が必要

鉱山用では消耗部品の供給事業を2009年ごろより強化 保守サービスで[利益を稼げる体制目指す 北米 ロシアが伸びる 金融引き締めの影響で中国では減収(2011年7月)

なお日立建機では建機にGPSを取り付け与信管理に利用していたが、日立製作所と共同して鉱山開発をクラウドで一元管理。鉱山機械の稼働や運行が効率的になるように遠隔操作して、時間あたり生産量を増やすシステムを開発中で2014年度中の実現を目指している(2014年1月)。日立建機は油圧ショベルに強いとされる。 

なおコマツについても、インドネシアの鉱山でGPSを用いて無人ダンプで運用するシステムを開発納入するとの報道があった(報道は2012年4月 納入予定は2015年)。運転手不足もあり、露天掘り鉱山の無人操業は広がっているようだ。

つぎのテーマは自動建機
→2013年6月 自動運転できるブルドーザーを北米で販売開始
 2013年内 自動運転できる油圧ショベル 欧州で販売開始
人手不足 高齢化など先進国事情に対応 次世代品としての自動建機
 測量機器のトプコンと共同開発 地面の凹凸を把握しながら土を削り整地できる
  → 放射線の除染現場で活躍
 事前の測量や運転要員は不要に
すでに2008に無人走行ダンプトラックを実用化
 2013年3月期研究開発費は前期比7%増の585億円(200)
 無人運転可能な次世代建機 低燃費技術 開発進める

シェールガス革命による石炭価格の下落+マネーの変調(20135月バーナンキによる金融緩和QE3縮小発言で新興国からマネー流出 新興国通貨切り下げ
石炭価格の下落とルピアの急落で狂う。ルピアは2013年夏から秋で対ドル2割下落 ドル建ての鉱山機械需要は減少へ。
日本での建機販売は伸びる。中国北米中南米など新興国で苦戦。

中国での販売が落ちる中(2012年から2013年)厳格な在庫管理でキャタピラより高い利益率保つ。コマツは2008年の金融危機の経験から在庫管理を徹底。当時代理店在庫ゼロ活動を展開。在庫が値下がりを生む悪循環を抑えた。反面 在庫に余裕があるとシェアは伸ばしやすい。シェアよりも利益率を優先する姿勢

コマツの考え方 売るものは世界単一モデル。新興国モデルは作らない。設計部品など世界共通。どの工場も世界対応とすることで個々の市場のブレを吸収する。クロスソーシング(相互供給)(北米の需要減→北米工場操業率ダウン タイ工場で増産:ユーロ安→英国工場から米国へ輸出)

判断の基準としてSVM(標準変動利ざや)管理制度がある。
SVM=売上高-(原材料+加工費+運送費+販売費など変動費)
SVMが大きい工場を活用
SVMが小さい 売値が低くなっているか 変動費にむだがある
SVMが伸びても営業利益がでない 固定費に削減余地
コスト高の原因が見えやすくなり対策がたてやすい

独自の採算管理手法 SVM(標準変動利ざや) 製造原価を変動費のみで単純算出 裁量性の高い間接費を原価に含めないことで
 課題を発見しやすいとのこと

コマツと中小企業との関係 理由のない値下げ要請はしない 注文のキャンセルは禁止をコマツは自らに課している
1990年代までは値下げ要請をしていた 2002年3月の最終赤字の経験 社員削減 持続成長のために社員取引先の力の結集を考えるように変化
互いに知恵をだして収穫を増やす。優先発注の代わりに優先供給求める
期間従業員の正社員化 全寮制の企業内学校

コマツの強みは 保守サービス デイーラーとの信頼関係
保守接客などアフターサービスで顧客との関係強化
顧客とともに改善する姿勢が好感につながっている

価格競争に巻き込まれない背景:盟主キャタピラの存在が大きい。米国流の経営はシェア第一ではない 利益を確保することを重視・・・topがシェアを追わないことで価格競争がおこりにくく市場が安定する そこでは選択と集中がうまく働く。
事例:GEが強い発電設備。IBMが主導するITサービス。米国メーカーが不在となったテレビ市場では価格競争が起きた。同様にDRAM市場でも価格競争が起きている。

シェールガス革命で石炭価格下落 インドネシアでの鉱山機械需要減速 期待は中国
201204-09 中国での建設機械売上がほぼ半減 これにインドネシアでの不振重なる
オーストラリア鉄鉱石向け 中南米銅向けは伸びる
201211の中国での販売は前年同月比4割減 中国景気の改善で復活期待
中国の建機需要は2010年をピークに急減した

なおコマツは1980年代 米2位メーカーと提携ドイツイタリア等で買収
ハイブリッド低燃費ショベル(価格は5割高)の販売を広げてきた

中国については現地会社トップを中国人に変える方針打ち出す(16社ある 2010年6月現在は 一人だけ 2012年までに実施 人材の現地化 国際化を進めている)

南米インドネシアで鉱山採掘用大型機械(油圧ショベル ブルドーザーなど)の需要 201304 16年3月期までの中期経営計画発表(売上営業利益率目標20%)

コマツの競合相手は 国内では日立建機 神戸製鋼所(コベルコ)など
日立建機売上構成(201303 日本以外74% アジア太平洋31% 米州15% 中国9% 欧州8% その他11%利益率高い鉱山機械で出遅れ・・・いろいろな側面でコマツより苦しい
日立建機2014年3月期営業利益830億円前後の見通し(201304)
売上高は8300億円前後の見通し(同上)
為替変動による押し上げ効果は200億円前後

中国の大手 三一重工業(サニー) 海外展開加速するも 中国が8-9割
三一集団(湖南省) しかし有力な競争相手
2011中国での油圧ショベル販売で首位に
(いすゞから車両の供給 川崎重工業から油圧機器 エンジンの供給受ける)
部品の多くを日本メーカーに依存
福島原発事故で放水作業用にコンクリートポンプ車を寄贈したことで有名になる
ポンプ車の高いところに送り込む技術では有数 すでに油圧ショベルで世界最大手
機械単体のコストが低い 日本大手に比べ2-3割ほど安い 頭金をなくすなど販売攻勢
→ 情報通信技術や低燃費技術では なお先進国勢と差がある

韓国の斗山インフラコアはさらに安値とも。フォークリフトではコマツは国内3位。

クボタは農業機械では世界最大手 農業機械需要は堅調で第二のコマツとして注目されている(中国メーカーとして第一トラクターなど)
農機メーカーとしてはあと伊関農機などがある。

This blog has written by Hiroshi FUKUMITSU. You may not copy, reproduce or post without obtaining the prior consent of the author. Original version appeared in June 5, 2009. It was corrected in July 26, 2016. 

KOMATSU REPORT 2016

KOMATSU Report 2015
コマツの2つの誤算東洋経済2015/05/13
KOMATSU 財務データ 過去5年
KOMTRAXの軌跡2013/03/11
2011年度Porter賞受賞2011/12


Research :the Fast Fashion

2016-07-03 17:48:34 | Management

5 truths the fast fashion industry don't want you to know 
Fast fashion wiki
従来のアパレル 中間卸の存在 売れない場合の返品自由 反面 小売りには価格決定権ない 売り筋の仕入れもむつかしい
ファストファッションfast fashion(語源はファストフードfast food)という業態をつくったとされる。GAPを追っていたユニクロは、業態の転換を迫られているのかもしれない。齊藤孝浩「ファストファッションって何?」『エコノミスト』2009.7.21,p.80-83.  宇賀神宰司「デフレに抗う経営」『日経ビジネス』2009年12月7日(pp.50-53)は、高速経営を続けるポイントに注目する。その分析によれば、同社は小さなブランドを複数育てることで、希少性を確保(多ブランド多品種戦略)、リスク分散を図っている。製品企画担当者であるバイヤーに権限を与えることで、販売直前まで引き付けた企画開発、数量調整を可能にして確実に売り切る商品を作っている。製造を商社に配送を宅配業者に委託することで経営益資源を店頭と製品開発に集中、これまではユニクロを上回る営業利益率(09年3-8月期で12%に対し15%)、在庫回転率(5.0回に対し11.5回)を実現してきた。 2009年ユニクロは一人勝ちといわれる減少を実現した(連続増収 2009年8-11月 11月21日には創業60周年記念大型セール開始)。
ファストファッション 卸を排除して 売れ筋商品規格 製造企画販売を結合 SPA 中間マージンの排除 広告宣伝費 

国内で高まる天井感(カジュアル衣料市場 競争激化 ファストリテイリング しまむら H&M:ファッション性高いなどが争う)

 H&M ヘネス&マウリッツ スウェーデン

 ZARAなど インデイテックス(スペイン)

 ファストリ ユニクロ 海外店舗の展開を加速。15/09-16/05 国内で36店舗 海外で143店舗新規出店 国内の総売上高利益

率は50.7%と高い(2016・03-05期) 国内店舗数840-850 国内ではネット通販で2016秋までに全国で翌日配送体制をとる(2016・06)

 2014 5%値上げ 2015 10%値上げ (背景 円安と原料高)→ 201509-201602 値上げによる客離れ 国内客足6.3%減(値上げにより低価格イメージ薄れる)=重大な戦略ミス → 2016年8月期 大幅減益へ 一部商品値下げへ(2016・1末)

 仏肌着プリンセスタムタムの日本事業撤退

 戦略ミス認める 週末限定の値下げを抑制 常に安い形へ(2016・04)

 しまむらは全国で1350 しまむらは店舗からの発注 店舗間の在庫の振り替え 値下げ指示などをITを使って自動化している(2016・07)

ユニクロ(ファーストリテイリング)国内SAPの代表格
 品質向上 コスト引き下げ努力 そして宣伝 大量販売 大量販売がメーカーとの連携を生んでいる。本格的製造小売業SAP(speciality store retailer of private label apparel)として知られる。アパレル業界で製造から小売りまでを一貫することで、自動車や電機など製造業においてsupply chain systemが成し遂げたような効率的経営を実現しようというアパレルなど専門店業界の動きをさしている。したがってSCMの専門店版との言い方がある。  これと対比されるのが、百貨店におけるかつての商売の仕方である。委託販売の商品を並べて、店員を並べて販売するという商売。消費者ニーズを生産につなげることができず、メーカーの側も見込み生産を繰り返すことになった。百貨店は、都市中心部に大きな店舗を抱え、多数の従業員を抱えるので固定費水準は高い。商品の価格設定は高くせざるを得ないが、自らの利益率も高くはないのである。またデパートの特徴は嗜好性の高いものを少量ずつおき品揃えを競う点。大量仕入れによるコスト削減とは正反対。顧客との長期の信頼で利益を確保するモデル。製造小売りは、これに対して大量生産とムダの排除で高い利益率を実現した。  生産工場は自社工場ではないが、委託工場との間の連携は緊密。発注したら買取の信頼関係の中で、高い品質の維持が可能になっている。  SAPは1986年にGAPの当時の会長が言い始めた造語。日本ではファストリが代表的企業

2007春 パートの正社員化(休暇制度 通勤手当) 社員のレベル改善に効果 地域限定正社員制度も導入07/02 人件費は増えたが、一人何役も果たす社員によって作業効率があがり残業がかえって減った 退職者が減り求人費・人員不足による販売ロスも減った。またあらかじめ決めた月間労働時間を超えると店長に休暇を取るよう命じる強制休暇制度もある。店長の働きすぎを抑制することで、仕事の仕方の効率化を目指す。  企業側は国際的にみれば日本の賃金は割高として賃金上昇を抑制している。その構造のもとで物価が上昇すれば消費が縮小するのは当然である。他方で企業側は消費者の階層分化に着目。所得のある階層は高機能商品や付加価値のある商品には対価を支払う傾向があると分析している。ユニクロの一人勝ちはそうした観点からも注目される。 品質・価格・流行性  衣料品は消費者の低価格志向で低価格衣料専門店に消費者は移動した。しかしその低価格衣料専門店の中で、しまむらや、ハニーズは苦戦。ユニクロの一人勝ちが際立っている。  商品の内容と販促で優れている(高品質低価格商品の大量販売)。物価高の逆をゆく値下げ戦略で集客力を高めることに成功。機能を含めた品質と価格がつりあっている(値ごろ感と品質の良さ)。低価格と流行性とを兼ね備えている。しかし定番中心のユニクロは上着に使えるファッション性に課題を残すとも指摘される。

好調だった国内販売(2009年まで)  国内販売が好調で値引き販売減少。着心地改良で平均単価の上昇。など収益・販売効率改善の好循環。中国・韓国など海外事業も好調。なお08年9月3日の事業説明では中国以外(ベトナム、カンボジア、バングラデッシュ)での生産を拡大するとしており、中国での生産コスト上昇を見越したグローバル対応が進んでいる。2008年11月の記者発表にいれば、インドなどでの生産を検討して3年以内に中国以外の生産の割合を3分の1にまで高めて生産の中国集中(9割が集中 人件費の上昇懸念 欧米アジアに安定した供給には不安)を転換する。  ユニクロは生産だけでなく、販売面でも海外展開を加速するとみられる(09年10月1日パリオペラ店開店 フランスでは2007年開店以来の2店目)。背景には国内市場の飽和があるが出店計画は大胆に加速されている(09年4月に新宿西口に大型店を開店 09年10月2日銀座店改装開店 2010年春ユニクロ渋谷プライム店開店予定 このほか国内の大手百貨店に2009年秋の西武百貨店東戸塚店を皮切りに一斉に出店を予定 当面の目玉は2010年明けに予定される新宿高島屋店への出店)。2008年8月期の店舗数は国内759に対して、中国21、韓国18、英国13、米国1、フランス1。シンガポール、ロシアにも2009年中に進出する。

国内ユニクロは大型商品なく減速(2010年春ー)  2010年3月ー8月 国内ユニクロが失速 大型商品 不在響く  2010年9-10月期 純利益前年同期比減少35% 売上高の下方修正 海外ユニクロ事業(中国 韓国 英国など)は好調。  生産は4極体制 日本 中国 ベトナム バングラデシュ 生産を分散させ 調達の安定化 中国の労働コスト上昇に備える また生産面では東レとの連携強化も重要な側面。  一橋大学と連携して教育機関を整備  世界各地にも順次整備     海外展開の加速・グローバル化を急ぐ 国内は大型旗艦店・駅構内小店舗(2010年ー)  

店舗の大型化とアイテム数増加 ユニクロはウイメンズ商品の販売拡大のため、店舗の大型化(500坪1650㎡以上)を進めている。背景には国内事業の好調がある。しかし大型店に見合ったアイテム数が不足している。アイテム数を増加させつつ、効率的在庫管理を維持できるか。注目される。高田橋範充「ユニクロ」『金融財政事情』2009.7.20, p.79-85.(この大型店化の方向はそのごも続き、2012年3月16日には売り場面積約5000平方メートルのユニクロ銀座店が開店している:この時点で3300平方メートル級の店は日本国内に5店舗とのこと) ユニクロはこれまでベーシックなものを大量生産していた。しかしユニクロの先をゆくZARA, H&M, Forever 21などは新しい商品をベストプライス(低価格)で次々に生産販売する

2010年度 ファストリは売上高で世界の衣料品専門店のなかで4位(前年5位)に浮上した。  1)H&M  2)インデイテックス(ZARA 1998年から日本進出 日本国内でZARAだけで60店以上を展開) 3)GAP(1995年に日本進出。2011年3月銀座に旗艦店開く。日本国内に約180店舗) 4)ファストリ  国内出店(2011年9月東武池袋に2floor展開へ これは2010年4月の高島屋新宿店への進出と似ているがさらに大規模 2010年5月に上海で開店した旗艦店を思い起こさせる 国内はすでに800店超 駅構内の小規模店を増やす)を減らしつつ海外へ(海外は2011年3月に150店舗。2010年10月の台湾1号店 同11月のマレーシア1号店に続き、2011年9月にはタイ・バンコクに出店。2011年内にタイに3店舗。タイは進出11ケ国目)。つぎの成長エンジンは海外(2011年4月期の採用はG3社で364人。海外でも約700人を採用 → 2012年には新卒採用の約8割1050人は外国人に 日本人管理職には5年内に海外派遣 また社内原語の英語化を図るとしている)。  売り上げ目標 4-5年後に海外半分に。国内外でネット通販も展開。

2010年度 ファストリは売上高で世界の衣料品専門店のなかで4位(前年5位)に浮上した。  1)H&M  2)インデイテックス(ZARA 1998年から日本進出 日本国内でZARAだけで60店以上を展開) 3)GAP(1995年に日本進出。2011年3月銀座に旗艦店開く。日本国内に約180店舗) 4)ファストリ  国内出店(2011年9月東武池袋に2floor展開へ これは2010年4月の高島屋新宿店への進出と似ているがさらに大規模 2010年5月に上海で開店した旗艦店を思い起こさせる 国内はすでに800店超 駅構内の小規模店を増やす)を減らしつつ海外へ(海外は2011年3月に150店舗。2010年10月の台湾1号店 同11月のマレーシア1号店に続き、2011年9月にはタイ・バンコクに出店。2011年内にタイに3店舗。タイは進出11ケ国目)。つぎの成長エンジンは海外(2011年4月期の採用はG3社で364人。海外でも約700人を採用 → 2012年には新卒採用の約8割1050人は外国人に 日本人管理職には5年内に海外派遣 また社内原語の英語化を図るとしている)。  売り上げ目標 4-5年後に海外半分に。国内外でネット通販も展開。

海外展開と低価格衣料が売り上げを伸ばすファーストリテイリング 2011年―2012年  不況の進展とともに、消費者の節約志向に対応できない企業が市場からの撤退を迫られている。また少子高齢化・人口の都市部集中という大きな変化への対応も迫られる。ファーストリテイリングは海外出店を加速、国際企業への脱皮を目指している(目標は2020年に世界トップ 現在は世界5位 2011年タイに進出 2012年フィリッピンに進出 2014年にはオーストラリアにも出店へ)。海外事業に積極的な姿勢は投資家の支持は集めている。  しかしZARAのインディティックス(スペイン)、ヘネスアンドマウリッツ(H&M スウエーデン)もアジアでの出店を加速させており、とくにすでに400店以上を展開しているZARAとは差が付いている。またZARAやH&Mに比べてユニクロの生産拠点が中国に集中し過ぎていて(75%)分散が不十分であること(今後はバングラヤミヤンマーに生産網をひろげ中国以外の生産比率を33%にまで高める計画とのこと)、高機能素材を使い機能性や質の高さを訴えるユニクロは原価率の高さが問題点として指摘されている。  2013年8月期に売上高の1兆円超えを見込んでいる(国内では国内既存店は売り上げは伸びていない 海外とくにアジアで売り上げの伸びと、ZARAなど外資のファストファッションを完全にまねた低価格衣料店のジーユーの伸びが支え 売上高は12年8zyuurai月期で前期比13%増の9286億円 純利益は32%増の716億円 うち海外売上高は41%増の2160億円 ただNYの繁華街などに出店した米国事業が足をひっぱているほか、イギリスでも赤字が続く すなわち欧米での事業はうまくまわっていない 加えて海外事業は中国と韓国では経済の変調あるいはときに表面化する対日感情の変化で波乱含みとなってきた)。

2014年から15年に2度にわたる値上げ

円安によるコスト増加(反面 業績押し上げ効果) 原材料 人件費の高騰 10%程度の値上げへ(2014年秋に5%程度値上げ 2015年4月開示 7月分から再値上げ)

円安による原料高で減益 価格転嫁に遅れ 2014年8月の秋冬物から値上げへ 5%前後 売上高を増やす政策 2014年2月以降 来店客数減少傾向 パートアルバイ1万6000人ト正社員化による(2014年6月から)接客の向上の反面 人件費は2割上昇 営業利益の7割を稼ぐ国内が鍵 機能性衣料に特徴 

ファストファッション 最新の流行を素早く取り入れ短期間で売り切る早くて安い

GAP(日本進出1995年 低価格帯 ファッション性に課題)に始まる H&M(スウエーデン)とZARA(インディテックス)が双璧 3番手にGAP ファストリは4番手で追いかけるが インディテックス 2兆3000億円(14年1月期)1998日本進出 H&M 1兆9000億円(13年11月期)2008日本進出 ファストリ 1兆1000億円

投資が先行し営業利益率でも差 

商品の現地化が課題 NY パリで開発へ

国内の専門店では営業利益額でトップ(2013年度) 2位ガニトリ 3位ガヨドバシ 4位にしまむら

2014年1月 ファストリの香港上場

アジアでの出店 2011年8月末165  2014年5月末555 中国      80         290 韓国      62         132 台湾      1          43 香港      15          22 タイ      0          18 マレーシア   2          18 シンガポール  5          16  フィリッピン  0          12 インドネシア  0          4 15年8月期の売上高1兆6000億規模・純利益1000億円規模(2014年10月段階推定) 13年8月期1兆円 14年8月期1兆3700億円(目標20年に5兆円 17年8月期 海外が国内上回る) ⇒海外の競合(H&Mなど)は2兆円規模 期末時点(推定)で海外818店 大和ハウス工業と新会社造り国内外で物流網整備。 ネット販売(現在は国内の4%)の強化 ローソンとの提携交渉中(ネット通販の分の受け取り 2015年4月)

ファストリの特徴 SPA 1999ユニクロの名前で店舗展開 少品種大量生産 単品大量MD

しまむらの特徴 伝統的卸の活用 多品種少量生産 最近は高品質PB 2012遅ればせながら中国進出

ZARAの特徴 日本への進出は1998年 SPA 多品種少量生産 高粗利益率

対比される「しまむら」 自前主義の物流 高度な物流効率化での利益率維持  ファーストリテイリング(2011年8月期連結売上高8203億円)と対比されるのは「しまむら」(2012年2月連結売上高4673億円)だ。大きな違いは「しまむら」は生産にかかわらないこと。しまむらの売りは効率的物流網(検品・店別に仕分け梱包の生産国への移管=直流 前提は物流センターの大規模化 2011年5月に完成した神戸物流センター 50億円投資 1日当たりダンボール箱10万個の処理能力 2011年11月には秦野市の拠点を増強 25億円投資 1日8万個の処理能力に 2014-15年には埼玉県に新物流拠点 コンテナでの一括輸送で国内物流センターへ 物流センターでは作業の自動化による人件費削減 効率化など 高度な物流効率化で中国での人件費上昇や原材料費高騰を吸収)。綿密な需要予測、トレンド商品PBの強化。郊外立地で賃借料を抑える(売り上げの5%程度に)など。ファーストリテイリングに比べて海外展開も控えめ1997年から展開する台湾の35店が目立つが後は2012年に4月に中国上海に進出した程度。  その「しまむら」が2012年度に出店の加速を表明して注目された(昨年度は80店程度)。手薄だった都心部への集中出店は注目された(都市部への進出でそれに見合った売り上げを確保できるかが注目点)。店舗を比較的大きくして品ぞろえを郊外店なみに増やした戦略が支持されているもよう。 利益率の高い若者向け「アベイル」。同じく利益率の高い子供用品の「バースデイ」などの好調も支えになっている。 その結果が規模の拡大にもかかわらず粗利益率や販売管理費比率が安定につながっているとされる。 注目されたユニクロの好調(2009年まで)  衣料品:値上げで消費者が離反するなかファッション性・新機能商品の開発でユニクロが独走体制(07秋以降)にある。ヒートテック(08上 発熱・保温機能の高い下着 東レとの提携 08年秋冬で国内中心に2800万枚売れる 03年発売開始 04年抗菌機能 07年牛乳成分配合で伸縮性・保湿性高める 08年初期03年モデルより12%軽く)、ブラトップ(08春発売 08下 ブラジャー内蔵キャミソール 300万枚売る)、ハイライトジーンズ(また上が深い)、スリムボトムズ(08秋 美脚パンツ 600万本売る)。  着まわしのできるものづくり。改良を続けて品質が安定したところで大々的宣伝で消費者に浸透はかる。 国内SAPの代表格  品質向上 コスト引き下げ努力 そして宣伝 大量販売 大量販売がメーカーとの連携を生んでいる。本格的製造小売業SAP(speciality store retailer of private label apparel)として知られる。アパレル業界で製造から小売りまでを一貫することで、自動車や電機など製造。SAPとして無印良品の良品計画、オゾックなどのワールド、コムサデモードなどのファイブフォックスなども挙げられることがある。 ユニクロがおもしろいのは1990年代終わりから2000年にかけてのフリースブームのあと、04年から05年にかけて停滞沈滞を経験して、復活してきたところ。そして最近は継続的に新製品を仕掛けることに成功しているように見えることだろうか。 2008年8月期の店舗数は国内759に対して、中国21、韓国18、英国13、米国1、フランス1。シンガポール、ロシアにも2009年中に進出する。親会社のファーストリテイリングの店舗網は、すでに靴や婦人服などで世界的に広がっており、今後はM&Aなどでブランド力を強化するとみられる(09年9月16日ユニクロシューズの発売開始)。欧米のファッション業界に仲間入りするには、店舗網をもつブランド企業の保持が不可欠。  2007年にバーニーズニューヨークの買収に失敗したが、すでに保有している仏婦人服専門店「コントワーデコトエ」は好調。ブランド「セオリー」などを展開する高級婦人服の「リンクセオリー」を子会社化する方針を固めた(09年1月末)。売上高の拡大には、海外戦略が欠かせないが、そこで重要なのは、海外ではなお不十分なブランドについての戦略である。  ファストリが追いかける世界大手には、ザラZARAを展開するインディテックス(スペイン)ヘネス・アンド・モーリッツ(H&M スウェーデン)。これらはファストリの2-3倍の規模。店舗・生産拠点を世界中に配置して利益率もユニクロを上回る。H&Mはファッション性の高い商品企画力。世界的な生産体制に裏打ちされたスピード経営。年間数百万点の新商品を投入して流行に敏感な若者の支持をえる。    海外有力ブランドの店舗の増加 ザラZARAを展開するインディテックス(スペイン) ZARAは1998年8月に渋谷に日本の1号店。2009年11月26日の渋谷公園通り店で国内50店に。新商品の投入は毎週2回。注文後、欧州およびアジアの委託工場から48時間以内に届ける体制。 ZARA Girls Trip M1703 ZARA Case Study ヘネス・アンド・モーリッツ(H&M スウェーデン) 2008年9月に銀座店開店で日本上陸。その後、原宿店に続き、09年09月05月に横浜店開店。09年09月17日に新三郷店開店。さらに09年9月19日に渋谷店開店(国内5店目かつ旗艦店)。新宿にも大型店を2009年11月に開店予定。2010年春には大阪心斎橋店開店。アジアや欧州中心に約700の生産委託工場。 フォーエバー21(米国)forever21 2009年4月末に原宿店(直営1号店)開業で日本進出。 Our Responsibility by H&M short version  トップショップ(英)が2010年9月に新宿に旗艦店開業予定。 ファストファッションと従来の高額衣料との違い。発注枚数。1回数百枚ー1000枚程度⇒数百万枚。 ブラトップ  2011年 前年比11%増の1000万枚販売目指す  (2010年 ヒートテックは8000万枚売れた 2009年5000万枚) 

You may not copy, reproduce or post without obtaining the prior consent of the author. Originally appeared in Oct.7, 2008. Corrected and reposted in July 3, 2016. Private Brands and Family Restaurants 経営戦略事例研究


Research on FANUC and FA

2016-06-11 04:52:23 | Management

ファナック 市場重視に転換

 2015年に入ってアクティビストファンドとして知られるサードポイント(ダニエル・ローブ)は、ファナックに対して手元資金(約1兆円)の有効な活用として、自社株買いなどを求めたことを明らかにした(2015年2月9日)。両者のやり取りの詳細は明らかではないが、ファナックは2015年3月に株主還元の拡充方針を表明(3月13日付け日本経済新聞記事において稲葉社長が表明)。これを受けてファナックの株価は上昇を始めた。その後株主との対話窓口を設けて(3月24日発表 Shareholder Relation部の設置:4月1日業務開始)19の機関投資家の声を聴いたうえで、4月27日に利益の最大8割を株主に還元する方針を明らかにした。株価水準を踏まえて総還元性向80%の範囲で配当と自社株買いを組み合わせて機動的に実施する。2015年3月期から5年間、連結配当性向を従来の30%の2倍の60%に引き上げ、残りの2割の枠内で機動的に自社株買いを実施するとした(2015年5月追記)。

  産業ロボット以外にも注目(1996ホンダが人間型P2を公表 2000 ホンダが二足歩行型ASIMOを発表 2015 SoftbankがPepper発売 いち早く主として家庭向けに商品化 日本は人型が得意)。サービス業での生産性改善・人手不足対策(人工知能を活用した会話 自立走行 障害物を避ける機能 顧客の案内 店舗の在庫管理 病院内の薬剤の配送など)。介護の現場での介助。など様々な活用が始まっている。

 もちろん 工程の自動化という産業用ロボットのニーズも高まりを見せている。人工知能の活用で入力負担の軽減。表面を柔らかな素材でおおい、人と接触すると停止する協調型ロボットの登場で人とロボットとが同じ作業現場で仕事の分担が可能になった。工業だけでなく食品・物流などへも。

 人件費の上昇が続く東南アジアが次のターゲットとされる。人海戦術からロボット導入で効率化へ。

参考 デンマークのユニバーサルロボット社の製品について 人型でない協調型ロボット

   米アイロボット社のルンバ(2002発売開始) ロボットがヒット商品になったことが注目されている

ロボット脅威論

理屈としては 単純な繰り返しをロボットに頼んで自動化。データの抽出や置き換え、数値計算はロボットの得意分野。人間は創造性や付加価値の高い分野に集中させるというが、ロボットが人間の仕事を奪う=業務の自動化が進展する可能性も指摘されている。ex.コールセンターは自動応答化が進む。産業用ロボットは人間の雇用の場を奪い賃金押し下げ要因になるとも指摘されている。アメリカに比べて、日本はロボット導入が雇用を奪うという意識が働き導入に抵抗が働くとされる。日本はそれに比べてロボットへの抵抗感が低いという。

生産量が増えない中 人件費が急上昇している中国でもロボット導入が活発化している。

協同ロボット 対話型ロボット

工場の中で人間と一緒に働くものを「協同ロボット」といい、人工頭脳を使い対話する対話型ロボットもある。その中でソフトバンクはAIを使った感情を読み取るヒト型ロボット ペッパーを開発(IBMのワトソンの利用 仏アルデバラン 日本のAGI等を買収してロボット作成にいかしているとのこと)。2015年6月から実際に発売している(富士通が2017年10月にも対話型ロボット ユニボで発売で参入するが ペッパーが意外に案内業務などで普及していることが刺激になっているかもしれない)。その弱点は2足歩行できないこと。2017年6月 ソフトバンクはグーグルからロボットの制御技術に優れたボストンダイナミクスそしてSCHAFTの2社を買収した。イオンではSCでの床掃除に業務用のロボット清掃機の導入を決定した(2016年度実験中 2017年度運用手法決定 2018年度本格導入 全国に400台)。

AIの活用

金融機関から入出金データを取得し、入出金の状態、資金取引の状況から即日で融資を決定する(ジャパネット銀行 2016年10月)。銀行の入出金情報 携帯電話料金支払い状況から融資上限 貸出金利決める(みずほ銀行とソフトバンク 2016年11月共同出資会社設立 2017年前半個人向け融資事業開始)。ワトソンを利用したコールセンター応答システム(2017年度2月末まで実験中 順次全350店舗に広げる 問い合わせの初期段階で2割その後4割程度まで自動対応が目標)。銀行 財務分析を行い、大きな変化があれば銀行員に通知する。効率的に取引先に目配りするsystem。リアルタイムで経営支援(北国銀行 2017年4月開始)。口座開設などの自動音声回答化(SMBC日興証券 2017年5月開始)。投資先の選別サービス(決算データを分析して今後1毛月で株価上昇しそうな銘柄を選別予測 大和証券―大和総研 2017年5月開始)。投資先の銘柄の選別サービス(カブコム証券 米アルパカと共同開発 2017年5月サービス開始)。店舗内の商品の補充から配置までをロボットが担う(産業技術総合研究所 2020年実用化目指す)。

Factory Automation: FANUCファナック 三菱電機 安川電機

ファナックは自動改札機や現金自動支払機を世界に先駆けて開発した。しかし同社を有名にしたのは工業用ロボットの開発と製造。国内生産に特化するビジネスモデル。そして先端的な自動化工場ではないだろうか。なお同業には三菱電機 安川電機など(そのほかの関連企業名は末尾に掲げる)。

もともとは富士通の100%子会社富士通ファナックとして発足。2003年度 富士通の持ち分が下がり(30%超から20%未満へ)富士通の持ち分法適用会社でなくなる(2002年には35%強 富士通は売却代金を有利子負債返済にあてる)。その後2009年に富士通は事業面での協力関係がなくなったとて保有していたファナック保有株ほぼ全てを売却した。したがって富士通との関係は全くなくなっている。また同じ2009年には米国での1986年以来のGEとの合弁も解消した(ファナックブランドの浸透で業績への影響は少ないとみられる)。
  株式では持ち合い株をもたないので株式評価損益はないという財務構造。しかし他方で多額の現預金を保有。すぐ行動できる機動力に必要と主張。また配当性向の目標を30%とする(2007年度)など、財務について独自の見識を示している
ファナックは、おそらく世界で初めて組み立てロボットの実用化販売を2004年度に開始した。
これは熟練工並みマイクロメートル単位の精度を実現したというもので家電・自動車向け

全量国内生産 高い海外売上高比率 という独特のビジネスモデル
  繰り返し大がかりな投資をしている。近年では2004年度に生産能力増強投資。2007年度にもNC装置の工場増強。そして2010年から2011年にかけて再び大がかりな生産能力増強投資を行いロボット生産能力倍増している。
  2012年中にもNC装置の生産能力の3割引き上げ(無人のライン 無人昼夜連続一貫生産)
茨城県印西市に新工場を建設(工場規模を倍増).なお山梨県忍野村の本社地区にある自動化工場もよく知られている。内外で分散生産するより低コストとのこと。国内生産は研究開発部門との連携でも有利。仕様変更要請にも即応できる。

  生産しているものは、小型機械に搭載する数値制御(NC)装置。世界の市場規模6割のところ ファナックは約6割生産の最大手 営業利益率6割。小型マニシングセンター(MC)などロボット部門 ロボ部門は欧米向けが約7割。電子部品の実装装置 など。
  中国などで自動化投資が進む 人件費の増加 工場の自動化需要⇒そこで一挙に生産能力倍増へ(2011年度)。
  2011年3月期決算連結純利益が1201憶円(前期の3.2倍)。過去の最高益2008年3月期に迫る。外国人株主比率高い(11年3月末で5割強)
  2013年3月期 連結純利益見通しは前期比7%減の2120億円。売上高は1%減の5310億円。実績は前期比13%減の1204億円(2013年4月26日発表)。
  利益率の高い工作装置向けNC(数値制御)装置(世界で圧倒的シェア 世界の市場規模は約6000億円前後 その世界シェア6割を握る 営業利益率6割ともされファナック高収益の源泉)が中国の景気減速の影響で不振。中国の工作機械メーカー減速の影響受ける(直前には増産報道もあったが)。NC装置を含むFA(factory automation)部の減速。中国などアジア各地で工作機械需要が2012年夏から落ちた。
  一方 iPhoneのアルミケースの加工などに使うロボドリル(金属の塊から外枠を削り出すという)は伸びたが急減。iPhoneの販売伸び悩み。設備投資の一巡が影響。新型iPhoneの販売の遅れ EMSの設備投資の復調の遅れ が販売伸び悩みにつながった。同社は工作機械 ロボットの分野は好調。この業績発表を受けてファナックの株価は一時下落。2013年4月30日 一時4月26日終値比1400円9%安の1万4470円 終値は1万4700円(870円6%安)

国内生産100%のモデル
 スマホ部品加工向けロボットは中国へ ロボリドルとよばれるスマホ向け工作機械(小型マシニングセンター) 自動車業向け多関節ロボットなどが好調 。売り上げは海外が8割(輸出は円建てで為替リスク回避)。中核部品の多くを内製して高い利益率確保。生産は国内生産比率100%。
山梨県忍野村の本社工場(無人工場として知られる 円高のもとでも国内生産でなお競争力を維持)に集中する独特の経営モデル。受注―生産ノリードタイムは平均3ケ月。

産業用ロボットについては日本ロボット工業会が統計。2012年7-9月の出荷額は1093億円で前年同期比18.7%減。内国内出荷額は3.8%増の348億円 ロボット:品質にばらつきがない 急場の仕事もこなせる。人件費の削減、生産性の向上、精密な作業も可能。産業用ロボットの世界シェア(2012年)ファナック27.3% ABB(スイス)23.4% 安川電機17.3% KUKAロボター(独)14.4% 川崎重工業7.5% その他10.1%(日経20140131)

ファナックは茨城県に産業ロボットの新工場を建設する(投資額500億円 2020年までに稼働)。(報道2016年7月)

2014年3月期決算 売上高4509億円(10%減) 純利益1109億円(8%減) 前期にIPhone5の生産に関してEMS向け受注が伸びた反動。ロボマシンの売上高は回復傾向にあるが通期では減少(2014年4月25日)。

2014年4-6月決算。純利益451億円(前年同期の2倍)、売上高1633億円(前年同期54%増)。スマホの金属ケース加工に使うロボドリルの需要の急増。内外の工作機械販売増で搭載されろNC装置の出荷も増えた。

その後2014年9月にIPhone6が発売された向けのロボドリル(スマホ用加工機械)需要やアジアのスマホ組立メーカー向きにロボドリル受注が拡大。世界シェア5割超とされる工作機械向けNC装置需要も好調(国内 中国 米国向け)。2015年3月期の売上高見通し 6882億円(53%増) 連結純利益は1851億円(67%増)の見通し(2014年9月25日)2014年4-9月決算 売上高3426億円(59%増) 純利益943億円(88%増)(2014年10月24日)。

2016年3月期においても ロボドリルの自動車向け販売の拡大 米欧向け需要が伸びたとする。他方で米中国向けのスマホメーカー向けが急減(アップルのアイフォンの金属ボデイを削るロボドリルが急減したとのこと)とのが逆の情報も交錯する。産業用ロボットは 自働車 食品 医薬品など幅広い分野で好調。

同業者としての 三菱電機 安川電機について

三菱電機
 三菱電機(実は主力はFA事業:産業メカトロニクス部門が大きい スマホやタブレット端末の生産工場向け新興国向け セル生産を自動化できるロボットの開発進めている ほかには家庭電器部門 電力向け設備含む重電システム部門 半導体事業で構造改革進める 2012年4-6月期の2012年4-9月期の連結純利益は前年同期比35%減の450億円之見通し。FA機器や電子デバイス事業が不振だった。13年3月期の連結純利益は前期比7%増の1200億円の見通し 経営不振のルネサスには約25%出資していた。12年9月末で手元現金4324億円と手元資金は豊富。
 なお2013年3月期実績は連結純利益が700億円程度。売上高が3兆5600億円。営業利益が1500億円。2014年3月期については国内・韓国・中国で需要が回復することと為替効果もあって 売上で7%増の3兆8100億円、純利益で58%増の1100億円 営業利益で35%増の2050億円を見込んでいる。
 しかし2012年12月に三菱電機は防衛省などに「過大請求」があったことが発覚。違約金延滞利息など773億円を支払うことになった。これは受注した時間に対して実際の業務時間が下回ったときに、他の業務時間を振り向ける手口を繰り返していたというもの。・・・・ということがもともとの業務時間の想定が過大だったことになる。背景には契約後に仕様変更などのニーズがあり、赤字を避けるため過大請求が慣行化していた模様。仕様変更による追加経費を認めない防衛省にも問題があるとされ、改善を検討中:2012年12月現在とのこと。
 2013年3月期業績の下方修正:営業利益見通しを前期比11%減2000億円から33%減1500億円に引き下げと防衛省への過大請求に伴う返納金問題の報道により三菱電機株は下落した。2012年12月25日は一時21日終値比44円安の700円。終値は30円4%安の714円。)

2013年12月末自己資本比率43.9% 1年前から10%強上昇(財務改善) FA機器の需要増 財務体質も改善進む。FA(中国では人件費が上昇している) 昇降機(中国で現地企業合弁が2社 2社合計で2012年に米オーチスを抜く 上海電気集団と合弁) パワー半導体が伸びる。

14年3月末 手元の現預金が有利子負債上回る 自己資本比率42.2%で電機大手では最高に

中国で高機能のスマホを生産するには精密な加工をするため。中国国内でも中小企業に自動化投資に意欲高まる。生産ラインを制御するシーケンサー(三菱のシェアは2割)。工作機械の加工精度を左右するサーボモータに三菱は強い。2014年4-9月期見通し 純利益800億円(2014年7月30日)

 2015年3月期見通し 連結純利益1900億円(24%増) 生産ラインを制御するシーケンサーや工作機械を動かして加工精度を左右するサーボモーターに強み(国内のほか中国 韓国 台湾などに普及)。産業メカトロニクス部門が営業利益の半分を稼いでいる。スマホ向け自動化投資が追い風(2014年10月30日)。中国ではスマホ関連メーカーで自動化投資進む。スマホ関連需要は一服感、人件費高騰を背景に工場の自動化投資は高水準(2015年4月)。スマホ向けは低迷するもFA事業底堅い(2016年2月)。企業の省力化投資根強い、工業の自動化機器販売を扱うFA事業伸びる(2016年9月)

海外生産 それも中国での生産を選択した安川電機

 安川電機(2013年3月期売上見通しは前期比2%減の3000億円。連結純利益は前期比17%減の70億円。2012年4-9月売り上げ見通しは1500億円。自動車部品メーカー向け産業用ロボット 半導体製造装置 スマホ向け制御装置 電子部品や半導体メーカー向けサーボモータオ制御装置 自動車向け産業用ロボットなど 売り上げの半分は制御機器などモーションコントロール 経営不振のルネサスエレクトロニクスから年間20億円 システムLSIやマイコンを購入 2012年10月現在ルネサスへの出資を検討中 中国に現地法人:安川機器人と工場 2012年7月現在 多関節ロボット組み立て工場を建設予定 安川は2011年11月海外生産に乗り出す決断を公表 大手では初めてと話題になった 新興国の成長 為替と自然災害というリスクをにらむ 中国のほかアジアへの輸出をここから進める予定 背景として中国での人件費上昇 中国政府の方針とも合致 しかしその後の中国の減速 日中関係の緊張は計算外か)

2014年3月決算 純利益169億円(2.5倍) 電子部品製造装置に使う制御装置サーボモータ 自動車工場向け産業用ロボット 太陽光発電施設向け機器パワーコンデショナー(電力変換装置)など。円安効果も。

2015年3月期見通し 連結純利益は225億円(33%増)。スマホ製造を受託する中国企業向けサーボモーター需要が伸びている(2014年10月20日)。

2016年3月期。中国で競争力を発揮した分、ファナック同様に中国減速の影響は免れず 中国向けの制御機器は販売減。しかし欧米向け自動車関連メーカー向けに溶接・塗装ロボットが伸びるほか 食品建材など 自働車以外の分野が期待できるとのこと。

なお産業用ロボットの世界4メーカーは、ファナック クーカ(ドイツ) ABB(スウェーデン)そしてこの安川電機(5位が川崎)である。2016年7月 中国の家電大手 美的集団が買収することがあきらかになった。背景には中国でも労賃の上昇から工場の自動化が進んでいる問題がある。安川は美的集団と2015年に産業用汎用ロボットの合弁会社を設立。さらに2016年春には介護リハビリ用ロボットの合弁会社設立に至っている。

そのほかの工業用機械メーカー
 横河電機(エネルギープラント向け制御システム 発電所や水処理プラントの制御システム)
 東芝機械(建設機械 産業機械向け工作機械 金属鋳造部品の製造、金属部品の成型に使う小型のダイカストマシン)
 川崎重工業 多関節ロボット 半導体製造に使うクリーンロボット(同分野で世界1 世界シェア5割)
 不二越 自動車用溶接ロボットなど
 オムロン 工場の流れを制御するFA機器
 キーエンス FA用センサー 工場設備の制御に使うセンサー 研究施設向けデジタル顕微鏡
 コールセル
 叙の目ミシン工業 卓上ロボット スマホ向け組み立てロボットを生産
 台湾のデルタ 
 ナブテスコ 産業ロボットの関節に使う精密減速機で世界シェア6
 スウェーデンのABB
 ドイツのKUKA 

This blog has written by Hiroshi FUKUMITSU. You may not copy, reproduce or post without obtaining the prior consent of the author. Original version appeared in May 12, 2013. It was corrected in June 11, 2017. 


Case Studies 


Case Study: Asahi Breweries アサヒビール

2016-04-15 08:26:49 | Management

アサヒビール(傘下にニッカウイスキー)のM&A戦略 主力品ドライに集中 高い利益率 一番手集中戦略:キリンはブランド数多い。

2015年4月 インドネシア(2011Suntory ;2012 アサヒ; 2013 伊藤園 ;2015年3月にサッポロが参入)食品最大手と合弁で自社茶系飲料工場立ち上げ

2016年4月 英ビール大手SABミラー傘下の欧州ビール4社(イタリアのペローニ オランダのグロルシュほか)を26億ユーロ(3200億円)で買収する契約結ぶ 他方米飲料大手トーキングレインの5000億円規模の買収は撤回 ← ビール最大手のアンハイザーブッシュインベブによるSABミラー買収に伴うもの

民主党の失政によりひっそり始まったアサヒと頂新の資本業務提携(2010年10月)
 アサヒビールと頂新集団(中国食品最大手)への出資が2010年9月28日に正式に発表された。画期的なことだったが、民主党政権の失政により中日関係がもっとも緊張したときの発表になったのは残念なことだった。2010年9月7日- 日本 日本の巡視船と中国漁船衝突で対日関係緊張へ 外交に未熟な民主党は対中関係を緊張させる政策を結果として選択。対中、対韓とも人的信頼関係を欠き、結果として、対中、対韓関係を前例のないまで悪化させていった。とくに対中関係を、国交回復後、最悪とされるところまで悪化させた。
 これは2010年10月末に頂新ホールデイング(台北市)の第三者引受増資を引き受け6.54%を取得。すでに20%を出資している伊藤忠と連携して、中国での調達から販売まで広範囲な協力関係を築くというもの。この頂新の傘下に著名な康師傳(中国への即席麺の製造販売で急成長し即席麺で中国首位。海外の進んだ製品や技術を、現地の嗜好や購買力に合う形で中国に持ち込む「時間差経営」。即席麺で1999年からサンヨー食品 2009年に即席麺より大きな規模になった飲料ではアサヒG カゴメと組み。2012年4月からはスナック菓子でカルビーと組む。アサヒ以下は伊藤忠商事が仲介。また2012年4月にペプシコの中国飲料事業の運営の委託を受けたことでも話題を集めた)がある。
顶新国际集团
 2012年4月 カルビー食品の中国への進出にあたっても、この頂新グループ、伊藤忠との提携が出ている。
 なおキリンは、中国のビール最大手、華潤集団と提携している。この企業集団も巨大である。
华润集团

アサヒは青島啤酒(青島ビール)にも出資
 なおアサヒは1994年に杭州ビールに出資。2009年4月には青島ビールに約20%出資(640億円)。ビール事業では大きく中国への舵をきっている。しかし2011年8月 杭州ビールの全持ち分55%を華潤雪花ビールに売却するとした。2010年11月に華潤創業(雪花はブランド名 華潤雪花とも呼ばれる 北京 中国最大手 キリンの提携相手でもある)が公開入札で杭州の45%を取得。共同経営の話し合いがまとまらなかったもの。 
 非ビール事業(清涼飲料事業)の強化をビール各社は目指している。背景には若者のビール離れがある。

 青島ビールについてはサントリーが合弁の構想を明らかにしている(2012年6月5日)。サントリーが事業展開する上海と江蘇省で、青海と組んで合弁会社を設立。共同生産・販売するとのこと。サントリー、青島は、華潤雪花と、この2つの地域で激しい販売競争を繰りひろげているが、独力で市場開拓の限界から現地大手と組む選択をしたもの(中国のビールは華潤雪花21.6%:シェアは2011年の数値、青島14.3%、燕京11.5%(とくに北京ではよく飲まれる)、それにハルビンを2004年に買収した世界最大手アンハイザーブッシュインベブ11.8%までが4強。日本メーカーはサントリーが上海と江蘇省でtopシェアをもつが、全国シェアはそれでも1.6%)。

国内では清涼飲料事業を強化
 アサヒは国内では2010年5月 ハウス食品から「六甲のおいしい水」事業を買収。さらに2010年12月にはカゴメから「六条麦茶」の
製造販売権の譲渡を受けることになったと報告された(譲渡金額公表されず)。アサヒは2011年4月から六条麦茶を発売している(なお
アサヒのブランドとしては十六茶があり、麦茶がなかったわけではない)。清涼飲料事業(三ツ矢サイダー バヤリースなど)は委託生産で事業を拡大できる半面、市場が過当競争で利幅が薄いことが問題。採算の管理、利益率の改善が課題とのこと。
 その後 アサヒは味の素からのカルピス買収を発表している(2012年5月8日合意発表 買収額は1000億円程度 2012年10月1日買収完了)。アサヒとしてはカルピスブランドは魅力。かつカルピス(2.5% 2011年実績)を加えることで伊藤園(11.2%)を抜いて清涼飲料業界(国内市場規模は横ばい)の販売順位で3位(12.4%)につける(1位コカコーラ28.4% 2位サントリー21.9%)ことは大きな意味がある(すでに2007年に自動販売機事業を共同化 今後は営業を一本化して販売力強化 販路拡大による増収 共通化によるコスト削減などを期待)。
 味の素としても相乗効果の薄いカルピス(1917年創業の老舗 2007年に味の素の100%子会社になり上場廃止 同年アサヒ飲料と自販機事業を統合)は売却対象。
 2012年4月 黒ビールのドライブラック発売
 2012年9月 フィリッピンでスーパードライを本格発売
 氷点下ビール(2013年海外展開始まる)
 キリンが一番搾りフローズン
 アサヒがスーパードライエクストラコールド
 ビール各社は販促費を1ブランドに集中。サントリーガプレモル伸ばす(2013年1-9月国内販売量順位 スーパードライ 一番搾り プレモル 黒ラベル ラガー エビス)。サッポロはエビスにサントリーはプレモルに集中(高級ビール市場の6割のシェアを占める)。結果として順位落とす。
 既存資産の有効活用 ローリスクローリターン経営 ⇔ 特定ブランドへの依存度の高まり 商品開発の柔軟性奪う問題
 2013年3月 クリアアサヒの派生商品としてプライムリッチ

  2016年1月1日付けでアサヒ飲料とカルピスを経営統合する。さらに食品事業はアサヒグループ食品にまとめる方針(2015年6月報道)

プレミアムビール(高級ビール 市場全体の7%程度)の販売で一矢
2013年6月 ギフト用ドライプレミアム発売開始 販売好調
 2013年12月 マレーシアでワンダの現地向け発売開始 提携先現地飲料大手ペルマニス(2011年買収済み)
 2013年12月期決算 連結経常利益4期連続過去最高を達成
2014年1月31日 アサヒHDの時価総額(1兆3603億円)が1949年の上場来 はじめてキリンHD(1兆3567億円)を上回った。
 2014年2月 ギフト用ドライプレミアム(アルコール分6%)を通年販売 高級ビールに参戦(先行はサントリーのザプレミアムモルツ:プレモル:2003年に発売開始火付け役になる。2012年3月中身を刷新 サッポロのエビスは1971年発売の古参 その限定品で琥珀エビス キリンがコンビニ限定でグランキリン2012年6月から)
 キリンは2014年1月に中元用商品として「一番搾りプレミアム」を6月から投入するとしたが、明らかに後多い。キリンは国際市場で頭が抜きでた分、国内では株価でも戦略でもアサヒに抜かれた印象だ。国内での競争に負けても国際市場でシェアを伸ばせるものか注目したい。
 なお 2012年にアサヒが買収したカルピスのタイでの事業。これは1997年に開始されたものだが2011年の水害で事実上停止していた。これをアサヒは復活させることにした。2013年にはまず委託生産開始。2013年内には自社工場の建設をはじめ2014年にも自社工場稼働の予定。

注目されるコンビニPB高級化とビールとの関係
 品質を重視した高級PB戦略をコンビニは取り始めたセブン&アイHDのPBセブンゴールド。現在20品目を2015年度には300品目に。
 2013年4月に売り出した「金の食パン」
 ビールの販路の1割ほど。
キリンーセブン&アイ 2012年6月 グランドキリン
 サッポローセブン&アイ 2012年11月 セブンプレミアム100%MALT
 サントリー(2009年からセブン&アイにPBザブリューを供給) 2013年6月 ザゴ-ルドクラス 
 アサヒーセブン&アイ  ザエクストラ
 アサヒーローソン 通常 クリーミープレミアム
 グランドキリンからゴールドクラスまで。コンビニ側が買い取ることで、いわゆるプレミアムビールより低い販売価格を実現している。

持ち株会社化で加速するM&A戦略
 アサヒは2011年7月から持ち株会社に移行(すでにサッポロは2003年 キリンは2007年 サントリーは2009年に持ち株会社化)。持ち株会社化はグループの経営戦略を素早く決定実行するのに有効とされる。2011年から2012年までの2年間で最大4000億円(この規模は2009/2010年のM&A資金の2倍にあたる 2015年まででは8000億円という)を投じて海外事業を強化する(海外売上高比率が30%近いキリンに比べて2009年9月段階では5%強と出遅れ)。2010年に約7%だった海外売上高比率を2015年までに20%以上に高める計画。
 既述のようにアサヒグループHDの2012年12月期の売上高は1兆5800億円 営業利益は1080億円 純利益は650億円の見通し(2012/12)。

中国のほかオーストラリアに照準
 アサヒは、海外では中国のほかでは、オ-ストラリア。その豪飲料のシュウェップス・オーストラリア(2009年に770億円を投じて買収 豪州2位)が好調。そこで2010年8月には豪州3位のP&Nを2010年11月に買収すると発表した(豪でのシェアは合わせて30% 首位はコカコーラグループ)。買収金額272億円。ところがこの計画に豪独占禁止当局(ACCC)が炭酸飲料と濃縮飲料の寡占化を問題にして反対を表明した(2011年3月9日)。そこでP&Nのミネラルウオーターと果汁飲料事業(つまりP&Nの事業の一部)を買収する合意が2011年7月に改めて交わされた(2011年7月4日)。買収金額は170億円とされている。
 2011年8月 アサヒはニュージランドの酒類大手インデイペンデントリカーの買収を発表した(10年度の売上高は日本円換算で243億円 営業利益53% 2011年度の売上高営業利益率は見込みで27%とのこと)。買収金額は976億円(約1000億円)で全株取得とのこと。投資ファンドなどから全株を取得とのこと。また9月中にニュージランドの飲料メーカー、チャーリーズ・グループを買収する。
 このほか2011年7月にはマレーシアの清涼飲料2位のペルマニス(本社クアラルンプール ペプシコの商品のマレーシアでの独占販売権をもつほか独自商品を販売)の買収も決めている(11月をめどに全株式取得 取得金額216億円)。こうした動向に合わせて2011年秋に、オーストラリアに事業統括会社を設立するとのこと(この段落は2011年7月記載)。
 2012年にはペルマニスのクアランプール郊外の工場の設備を増強、需要増に備えた。またインドネシアでは、大手財閥サリムグループの中核企業のインドフードと2012年9月に設立した合弁会社を通じて、まずは委託生産で清涼飲料水の生産販売を早ければ2013年夏に開始。その後、販売量が確保できた段階で自社工場を建設、2015年までに稼働という青写真を描く。
 カルピスと合わせて国内の飲料売上高を2015年に5000億円以上(2012年現在は4500億円)。2015年に海外売上高を4000億円(2012年現在は1000億円)にするとしている(日経2012年10月5日ほか)。
 13年12月期には海外売上高比率はなお11%(約3割のキリンとは明らかに劣る)。その81%をオセアニア事業が占める。現地通貨ベースで売上高が伸びていない背景には、大手との競争があるが生産物流への投資で収益化を急ぐとしている。アサヒは国内ビールは好調。国内最大手となった(スーパードライは国内販売量最多)。時価総額でもキリンを抜いた(2014年1月末)。高級ビールにも参戦(2014年2月ドライプレミアムを本格的に売出)。その利益を将来をにらんで国際事業に投資しているが、そこでの採算がわるい。
 インドネシアでは2014年内に清涼飲料の工場を新設。タイでは地元のオンサファと合弁でカルピス(1997年に進出していたが2011年の洪水で事業停止 2011年アサヒが買収)ブランドの商品を2013年夏から販売しているが、2014年6月から新工場稼働で増産へ。ベトナムではマレーシアのエチカデイリーズの拠点を買収(2014年6月買収完了)。拠点として活用方針。ミヤンマーへの合弁での進出も決定済み(相手はロイヘイン 発表は2014年3月)。など加速させ生き残りを図っている。
 コカコーラやネスレと戦えるグローバル企業が目標。連結売上高1兆7000億円。コカコーラはその3倍。ネスレは6倍。 
食品業界の他の企業の動き 味の素 伊藤園 カルビー サッポロビール
食品業界の大企業:味の素 
 飼料用アミノ酸リジン 加工用うまみ成分がかつては利益源 だが今は中国メーカーの安値合戦で08年か10年にかけ利益急減 食品で世界大手ノネスレに比べ大型商品持たない弱み 低カロリー甘味料 今後は機能性食品(健康増進効果のある特定保健用食品)か
 国内 女性の社会進出 高齢化 短時間で調理にもニーズ ネスレを意識してROEを重視した経営進める 目標14年3月期ROE8%(13年3月期7% ネスレのROEはおおよそ倍)総資産回転率向上(保有株式の処分も進めて総資産圧縮 保有の必要性検証)
 非中核事業の切り離し
 2006年12月 メルシャンウイスキーをキリンに売却
 2007年5月 カルピスをアサヒに売却(ダノンに譲渡する話もあったが)
 中核事業への経営資源集中
 2003年4月1/3出資33.4% 2006年5月子会社化 ギャバン(香辛料)
 2006年完全子会社化 香港アモイフードグループ(調味料 冷色)
 2007年3月1/3出資33.4% ヤマキ(削り節 めんつゆ)
 1999年 半導体基板用樹脂 ABFと呼ばれる樹脂で世界順位1位 特に絶縁フィルムABF。世界シェア9割 アミノ酸由来のものでは味の素に比較優位で利益率高い。
 
 味の素 冷凍食品 自宅で食事をとる内食傾向(合わせ調味料 自然解凍で食べられる冷凍食品好調) 主力工場建て替え(2014年9月までに) 冷凍デザート 少子高齢化に対応した新商品の生産を予定
国内で目立つのは単身世帯用需要(シニア 単身世帯 単身世帯は全体の3割超える コンビニの利用客の2割がシニア) 一人前ニーズ(包装かさみ 単価を上げても利益率低いことが問題)
味の素 新興国市場 小容量 現地の卸業者任せにせず営業マンが足で売る 低価格販売で需要堀り起こし。
 ブラジルでは日清食品と組んで即席めん事業(同国首位)。2013年12月 味の素と東洋水産はインド(日本の8割に相当する年44億食を消費。過去3年の平均成長率は22%)とナイジェリアで即席めん事業に共同で取り組むと発表。
 米国で冷凍食品事業強化のためウオルマートと組んだこと(2011年9月)をほうふつさせる。
  ウオルマートのルートの活用例。キッコーマン。米国の家庭用しょうゆの6割を占める一因。
  東洋水産。日清食品と米国進出で後れをとったがウオルマートと組むことで、米国で6割メキシコで8割。花王は中国都市部への進出は300のウオルマート店舗を活用した(2011年9月)。
  タイで1993年からカンコーヒー生産。2011年度シェアは7割。
  ペルーでは即席めん。2012年の同国シェアは9割。ブラジルでも即席めん(日清食品との合同事業)で6割のシェア。
 

 穀物高(大豆 小麦粉 2010年から2011年夏 11年夏以降は下落局面)円安(2013年後半から)は原料費(アルカリ 酸 食料油 輸入冷凍食品 カツオ 天然ガス)押し上げの逆風。コスト高を技術改良 効率化で補う。海外事業の収益。海外法人では外国人取締役比率を引き上げ(2012年1月の35%を2013年度までに50%に引き上げる)。営業、製造だけでなく経営企画、財務、マーケテイング、研究開発など中枢にも。他国派遣、本社への起用などを通じ帰属意識高める。(トヨタ 海外法人の幹部ポストの半分は外国人。パンソニックの海外法人の2割のトップは外国人)
 2014年4月からはエジプトに包装工場稼働。ブラジルで製造した調味料を運んで小分け包装。訪問営業開始とのこと。

食品では高い注目浴びる カルビー(2013年12月) 野心的なスナック菓子首位メーカー
従来は儲けに無頓着なオーナー経営とされてきたが、外部から松本晃氏を2009年に招いて以来(会長兼CEO)、評価が変わってきた。
 松本氏はつぎつぎと改革を実行した。材料調達一本化(本社に購買部門)。設備投資の基準(①顧客の安全安心②新商品などで売り上げ増③コスト削減④労働環境の改善 のいずれかを満たすこと)鮮度調査隊廃止し営業要員に(2011年)。不採算ライン廃止。経費削減以上の販売促進費積み上げ 値下げでシェアアップを達成(ポテトチップスで65%程度 2011-12年)。工場稼働率引き上げで値下げへ。さらにシェア上昇。
 国内スナック菓子で国内シェア3分の2以上が目標。さらに海外売上高(12年3月4%)を2021年3月までに3割に高める目標掲げる。
 2011年3月 東証一部上場(海外展開に必要な資金確保 経営と所有の分離 女性と障害者雇用 従業員の多様化 全社員が夢の共有 日本のネスレを目指す)
 工場というのは稼働率があがるとコストが劇的に下がるもの。コストが下がった分はまずお客さんにお返ししようと値下げしました。
 2009年海外事業強化のためペプシコから2割出資受ける。北米で共同事業展開へ(卸値の3-4割をペプシコがとる。しかし安いジャガイモ調達ルートの確保 生産の自動化で営業利益率10%狙えるまでに)。
 中国では康師傳Gと組んで事業展開。ベトナムやインドネシアでも販売力のある現地企業と組む計画。
食品の中では高い株価(PER27倍 平均は16倍 2012年12月)
 2013年4月から中国で「ジャガビー」などを製造販売。
2013年6月30日 株式を1株を4株に株式分割。
 2014年3月からインドネシアでスナック菓子を製造販売。

伊藤園
伊藤園は困っているようにも見えるが、主力の日本茶(おーいお茶)が強いほか(売り上げの半分以上は日本茶)、野菜飲料(野菜汁や果汁原料は海外から)、2011年5月買収のチチヤスと共同開発の「朝のYoo」が好調。子会社タリーズ(2006年買収)も増益基調。2009年にはタリーズブランドのコーヒー飲料の発売を開始した。これがブランド効果を上げてその後も好調だった。
 円安による原材料費や包装費の高騰に対して軽量ボトルへの移行進めている(軽量ペットはコスト軽減 輸送コスト軽減に幅広いメリットがある)。伊藤園ではこれを委託生産しているが、飲料メーカーによっては内製を進めている(事例 サントリー食品が天然水のペットボトル内製化)。内製するとコストがコストが半減するという。
 日本茶ではおーいお茶(伊藤園)、十六茶(アサヒ飲料)、伊右衛門(サントリー食品インター)、生茶(キリンビバレッジ)、綾鷹(コカコーラ)。高齢化で市場の縮小に向かうのか。健康志向でなお成長するかは微妙。限られた市場で顧客を奪い合う構図。

 こうした清涼飲料強化の動きは他社も同様でサントリーは2009年9月にニチレイからアセロラ事業買収。
 なおアサヒグループHDの2012年12月期の売上高は1兆5800億円 営業利益は1080億円 純利益は650億円の見通し(2012/12)。(酒類事業に区分されるが、ノンアルコールビールも好調 キリンフリーの発売開始は2009年4月。アサヒのドライゼロの発売開始は2012年2月)

サッポロ
 サッポロは2010年11月に乳業大手の協同乳業と業務資本提携(2011年に乳製品事業に参入予定)。続いて2011年2月にポッカ(2005年12月MBOにより上場廃止。2008年1月明治製菓の出資受入。2009年9月にサッポロと資本業務提携 サッポロの3倍の自動販売機網を持つ)を買収子会社化した(320億円)。2010年12月に長年 サッポロを苦しめてきたスティールパートナーズがサッポロの投資から撤退(アクティビストファンドの撤退は日本株の魅力が薄れた証拠という言い方は米証券会社のもの 日本の側からみれば本来の経営にようやく注力できる )。ようやくサッポロも動き始めたといえる。
 サッポロの注目される次の動きは2012年春(3月1日)、グループで運営するエビスガーデンプレイスの不動産について、2008年にモルガンスタンレーに売却した共同持分を405億円かけて買い戻したこと。また2012年秋、セブンイレブンと組んで業界初のPBビール(最後の聖域とされていた)「セブンプレミアム」の製造を始めたことだ。メーカーにとってPBを製造する利点は、工場の稼働率の上昇(製造コストの低下)、買い取り制のため広告宣伝費不要で安定収益となる(売上が増加する)ことなど、少なくない。小売り側は、他店との差別化に役立つことであろうか。今後は安売りしないで済む付加価値の高いPBが課題という指摘もある(こうした聖域を破る戦略がサッポロのような下位メーカーからでてきたのは示唆的である)。
 なお実は、この問題に先行したのはイオンのPBビール、バーリアルの発売(2010年6月)。1缶88円と100円以下。内容は韓国OBビール。確かにこの輸入ビールの衝撃の方が大きかったかもしれない。
現在350ml缶ビールのコンビニでの価格は215円(ネット価格は195円など)。セブンプレミアム100%MALT350mlの価格は198円。

 2006年にカナダのビール大手スリーマンを買収

 2011 ポッカコーポレーション(1977にシンガポール進出)買収

 2012年1月末 米飲料メーカー シルバースプリングシトラスの株式51%を豊田通商から2400万ドルで取得

 2012年4月 ポッカCとサッポロ飲料の統合にむけて新会社設立→統合 2013年1月 ポッカサッポロフードビバレッジ

 2014年に米飲料メーカー 北米の果汁飲料メーカー カントリーピュアフーズオハイオ州CPF)を1億ドルで買収 2016年にはCPFを通じて北米の氷菓メーカーリッジフィールズ買収 

 2014年8月 ポッカサッポロフードビバレッジ 2015年にもミャンマーで自社ブランド商品をヲライセンス生産へ

originally appeared in July 26, 2011
corrected in April 15, 2016

キリンビールのM&A戦略
ビジネスモデル 企業戦略論


Case Study: Softbank ソフトバンク

2015-08-26 14:46:01 | Management

ソフトバンクによるスプリント買収提案(2012年10月)
 2012年10月 ソフトバンク(孫正義社長)が米スプリントネクステル(米国携帯3位)買収に動いた。さらにスプリントの高速通信子会社クリアワイアの完全子会社化を発表した。しかし2013年に入って、米衛星放送会社ディッシュがクリアワイア争奪に参戦。2013年4月にはスプリント買収についても対抗してきた。ここに至って、ソフトバンクの買収の成否は、スプリントの株主の判断にかかる事態になり、混沌としてきた。
 米国携帯1位はベイライゾン・ワイヤレス6月末10520万件 2位がAT&A同9420万件)。3位のスプリントネクステルは6月末契約数5600万件。首位ベライゾンは高速データ通信サービスの展開(2010年12月に開始)で優位にたっている(人口カバー率は89%)。AT&Tは2011年9月開始。カバー率は大きく見劣りする。スプリントは2012年7月に開始したばかり。
 このスプリント(10月12日の時価総額172億ドル 1899年創業 2005年にネクステルを買収。)が新たに発行する80億ドル分の新株予約権付社債を引き受けることを2012年10月15日の取締役会で決定して同日発表した。米国に設立する新会社がスプリントと合併。さらに市場から120億ドル分(70%)の株式を買い取る。スプリントの7割の株式取得へという内容(1株あたり7.3ドル・・・用意された現金は121億ドル。これを現金の希望が上回った場合は現金と新スプリントの株1株になる。・・・この買収については、受取方法が確定しないこと。新スプリント株の価値が見通せないなどの問題あると指摘がある)。
 ソフトバンクはさらにスプリントを通じて2012年12月13日米クリアワイヤの買収を発表。12月17日には、金融機関から1兆6500億円のつなぎ融資を発表した(買収規模で日本企業として過去最大の北米投資)。12月18日契約。総額1兆6500億円のつなぎ融資(返済は1年以内 中長期資金に借り換えを予定)。みずほコーポレート銀行、三井住友銀行、三菱東京UFJ銀行、ドイツ銀行東京支店。うち2500億円については21日に実行。スプリントの転換社債購入で減少した手元現金を補う。残りの1兆4000億円でスプリント買収の経費を賄う。借入契約手数料は約170億円で2013年3月期連結決算に計上。
 モバイル分野の世界一を目指す(スプリント買収で当面は世界3位 契約数でNTTドコモの1.6倍の規模)。
 12月17日 スプリントとクリアワイアとの間で完全子会社化で合意。未保有の49%の株式すべてを22億ドルで買収というもの。これが実現すると、高速通信に利用可能な周波数が一気に増加反転攻勢の可能性が生まれる。

ディッシュの参戦はソフトバンク完全勝利で決着 しかし市場は慎重
 その後 後述するように衛星放送会社ディッシュの参戦で、一時事態は混とんとしたが2013年6月18日にまず、ディッシュはまずスプリント買収からの撤収を表明。さらに6月26日には ディッシュがクリヤワイヤ買収取りやめを発表(スプリントの臨時株主総会で了承も得られ)、ソフトバンクの勝利が確定した。事態の転換に決定的だったのはいずれもそれぞれの買収額の引き上げだった。
 まず6月11日 ソフトバンクはスプリントの買収金額を15億ドル積み増した(1株あたり対価を7.30ドルから7.65ドルに引き上げ 10日の終値は7.18ドル これでディッシュはスプリント買収を断念6/18)。さらに6月20日にはスプリントがクリアワイア買収額を引き上げた(買収額を1株3.40ドルから5.00ドルに引き上げた。買収額は5割高の39億ドル。ディッシュのTOB価格4.40ドルを上回る。クリアワイア取締役会は全会一致でスプリントの新提案支持を表明 臨時株主総会を7月8日に行うこととした)。こうしてデイッシュはクリアワイア買収を断念した(6/26)。
 ディッシュはさかのぼると2013年1月に対抗買収を提案。5月にスプリントが買収額を引きあげるとその1週間後にさらに上回る買収額を提示して、TOBを実際に開始したとされる(裏の交渉は分からないが、この一連の買収合戦によりスプリント、クリアワイアが当初の想定よりいずれもが想定より高い買い物になった可能性はある 後述するように当初の計画でスプリントは2.97ドル)。つまり半年に及んだ攻防は2013年6月末に決着を迎えたことになる。これを受けて、2013年7月5日、米連邦通信委員会は、ソフトバンクによるスプリント買収計画、そしてスプリントによる、クリアワイヤの完全子会社計画の双方を承認した。13年7月11日買収完了を発表(クリアワイアの完全子会社化含む 買収総額216億ドル 13-14年設備投資に160億ドル投資してベライゾンワイヤレス、AT&Tを追う)。
 これによりソフトバンクは顧客ベースが日米で1億人を超える巨大会社(NTTドコモを抜いて世界4位の携帯電話会社)となった。しかしスプリントは12年12月期まで6期連続の最終赤字会社。高速データ通信サービスの遅れなどから、顧客ベースは減少が続いており、経営の立て直しがうまくゆくか懸念されている。また今回の買収(円換算買収額は1兆8000億円)で巨額の負債が増える中、スプリントの再建には巨額の設備投資がさらに必要。どこまで成長を伸ばすことができるか、市場は冷ややかな声があることも事実だ。

TモバイルUSの買収
スプリントを約1兆8000億円で買収で世界4位につけたソフトバンクだが、米国内ではベイライゾンワイヤレスやAT&Tの半分程度の契約数で劣勢。そこでドイツテレコム傘下(67%)のTモバイルUSの買収がソフトバンクの次の方針とされた(2013年12月)。買収予定金額は2兆円規模。
 しかしプリントの買収資金に加え、スプリントの負債335億ドル(3兆3500億円)も加わって、ソフトバンクの2013年9月末の有利子負債は8兆8400億円 3月末の2.4倍に膨らんだ。2015年3月期の支払利息は約3000億円となる。しかしソフトバンクの14年3月期連結営業利益見通しは1兆円以上(NTTドコモをここでも抜き)あり、これを十分カバーできると主張された。

スプリント3位によるTモバイル4位の買収を米FCCが認めず断念(2014年8月上旬)

 しかしTモバイル5024万件(2014年6月末の携帯電話契約件数 値下げ路線で顧客増やすドイツテレコム傘下 Tモバイルの競争姿勢は ソフトバンクの戦略にはマイナスに働いたとされる 2011年にAT&TによるTモバイルUSの前身会社との合併をFCCなどが反対してとん挫させた経緯がある)買収について米FCCウイーラー委員長はスプリント5426万(1-6月期1社だけ契約件数純減 人員削減で増益目指す ソフトバンクからの資金でLTE整備)による買収を認めない(合併についてはTモバイルとの合意 親会社ノドイツテレコムとの合意などは行われたとのこと 認められれベライゾンワイヤレス12352万件(全米でLTEに対応 高価格路線) AT&A11,663万件と並ぶ1億件以上の契約電話件数になる)判断を2014年8月に入り明示。なおFCCが認めても司法省の関門もあった(実はFCCなどは構想が明らかになってから一貫して反対姿勢を示していた。反対姿勢が覆らなかったということだ)

 これを受けてソフトバンクは2014年8月上旬までに買収による規模拡大を断念することになった。スプリント買収(1兆8000円億円)でソフトバンクの有利子負債は9兆円超え。年間利払いは3000億円超え(2015年3月期)「。Tモバイル買収には1兆7000億円以上が必要だった。買収実現の承認にも1-2年かかり重複投資の手控え:設備投資手控えによる競争力低下が懸念されていた。買収によるこうしたマイナス懸念を買収断念は取り除く効果もある。

 ソフトバンクのEBITDA有利子負債倍率はスプリント買収前の1.4倍が約3倍になる(S&Pがスプリントが負債依存度の高いクリアワイアを買収する結果、連結財務を通じてソフトバンクの負担が増すことを指摘 ソフトバンクを投機的格付けに落としている20130708 これも注目してよい論点だろう)。ただし2006年のボーダフォン買収では買収直後のこの数値は5.6倍だったとのこと。ソフトバンクの経営を支えているのは、高い営業利益水準だ。
 懸念されるのはスプリントの業績(600億円強マイナス)だが、急速に回復するとの見立てがある。2013年春に連結対象としたガンホーの株式の再評価益(1500億円)とウイルコムの株式再評価益(1000億円)が利益に加えられ、スプリントの赤字を吸収した。37%出資するアリババG(中国の電子商取引最大手)が2014年中に香港上場の観測(企業価値は1500億ドル15兆円と試算される)も、ソフトバンクに有利に働いている。

 アリババは2014年3月に米国での上場準備を明らかにした。ソフトバンクはアリババグループ(馬雲会長)に対して36.7%出資。上場すれば時価総額は10兆円以上(2012年のノフェイスブック以来の大型上場になる)。ソフトバンクの持ち株(簿価317億円)の含み益は3兆円以上になる見込み。
 この株式再評価益で黒字を出す手法は、スプリントにも移植され、2013年10月末のスプリントの決算は、クリアワイヤの株式再評価益を利用して13年7-9月期について、6年ぶりに黒字転換を示すものとなった。
 ソフトバンクについては、11月22日 ソニー株を保有してソニーに経営上の注文を付けたことで注目されているサードポイントが、ソフトバンク株を取得したこと(10億ドル以上 発行済株式の1%程度を取得)が明らかになり、注目された(サードポイントはソニーに対してエンタメ事業の分離上場を求めたが、ソフトバンクに対しては海外買収戦略を評価し、経営改革を要求せず純投資と位置つけているとのこと)。なお22日の日中、ソフトバンク株は一時時価総額が10兆円を超えた。11月25日には終値での時価総額10兆円超えが報道された。これを上回るのはトヨタ自動車だけ(22兆円)という世界だ。

安値攻勢とリストラ

Tモバイル買収交渉を中止したあと、スプリントは新価格戦略で巻き返しを図った。米国市場大手4社でで一人負け(赤字)が続くスプリントを抱え込んだソフトバンクは かなり苦しい戦いを進めている。

LTEのインフラ投資に1兆6000億円投資。有利子負債の急増でソフトバンクの支払い利息も増えている。買収先の早期黒字化が課題。国内携帯事業は伸びが鈍化。アリババb集団のNY上場による保有株の含み益5631億円を計上(15年3月期)。前期にもガンホーオンラインエンターテインメントの子会社化の利益2500億円を計上している。しかしこのマジックはそれぞれ1回限り。2016年3月期については、契約は純増は勢いは落ちたが続いた。スプリントの合理化(リストラ)、円安による売上高増効果、アリババの持ち分法投資利益も寄与14年7月スプリントを子会社化(負債335億ドルがソフトバンク本体に入る)。8月18日の発表では20ギガバイトのデータ通信と最大10回線を100ドルで利用できる家族向け新料金プラン(新規契約者向け)だったが、21日にはより割安感がわかりやすい、定額制月額60ドルで音声通話とデータ通信が使い放題になる定額プランを投入とした。これは業界主流が従量制の料金体系に2011年以降転じたのに反旗をひるがえすもの。2014年12月の年末商戦では乗り換え客に半額にするキャンペーンを始めた(12月2日)。

14年度大型の社債発行。

スプリントは3位から4位に転落(15年6月末)。スプリントは2016年にキャッシュ不足になるとの観測が流れている。


 
2013年に入ってからのソフトバンクの資金調達
 ソフトバンクは2013年3月に事業会社としては過去最大の個人投資家向け社債3700億円を発行したほかドル建てユーロ建てと米ドル建てあわせて総額20億ドルの発行(約1940億円で7年物)をきめている(2013年4月8日発表 現時点の格付けはJCRがシングルA S&PとムーディズがトリプルB 2%強から3%強ていどの利回りと予測される)。これらはつなぎ融資を長期化するねらい。ソフトバンクは4月19日、予定していた外貨建て債の規模を約1300億円引き上げ、米ドル建て24億8500万ドル、ユーロ建ては6億2500万ドルにすると発表した。
 断念となっても。為替予約で巨額の為替差益。違約金(6億ドル)を受け取れるが、今回の買収は、ソフトバンクにとって海外展開の好機。

 ソフトバンクは2004年日本テレコム買収で固定通信事業参入。2006年には英ボーダフォン日本法人を1兆5000億円で買収して携帯電話事業に参入。2010年には経営破たんしたPHS最大手ウイルコムを傘下に。
 同社はボーダフォン買収時には、1兆3000億円を4%台の金利で借り入れた その後 資金を証券化で確保したことは資金使途の制約:財務上の制約という問題を派生させた。純利子負債は2012年3月に5500億円まで縮小。買収攻勢に転じることに。

2012年のイークアセス買収 2013年ウイルコムの完全子会社化 注目される戦略構想力
 ソフトバンクの2012年8月末国内契約数3014万件 10月1日に携帯国内4位のイーアクセス同6月末413万件を買収を発表 その買収金額は1800億円超の見込み(買収目的は携帯電話利用周波数の拡大とインフラ投資拡大)。KDDIに対抗するため時価の3倍を提示したとも(KDDIはイーアクセスを買収する交渉で先行していたにも関わらず、買収の好機を生かせなかった)。新しい周波数帯(イーアクセスは1.7ギガヘルツ帯の周波数を保有)・顧客基盤の獲得、ネットワーク共用などを評価したとし、イーアクセス買収は有利子負債を増やさないため株式交換方式によるとのこと。2013年2月までの完全子会社化をめざしている。
 2013年1月には株式交換方式(2200億円相当の自社株)で全株取得後、各国の通信機器メーカー(サムソン電子など)やリース会社(オリックスなど)にその一部を売却(最終的な出資比率は3割)。得られた資金で日米で通信網を整備するとの戦略をしめした。保有株比率を意図的に下げるもの(67%を売却 33%3分の1未満に引き下げ)。
 2013年7月には2010年12月に傘下に加えたPHS会社のウイルコムを連結子会社にする。
 つまり国内では本体のソフトバンク、ウイルコム、イーアクセス、海外にスプリントを配する体制を2013年7月に構築する。2013年3月現在の加入者数はそれぞれ、3247万 535万 431万 5521万。総計で9734万という規模である。市場の冷ややかな声は声として、この企業グループを成立させる緻密な計算、戦略の力はやはり注目されてよい。

 米携帯3位のスプリント・ネクステルは、スプリントが2005年にネクステルを買収したものだが、ネクステルの顧客の他社への流出続いている。またLTEのサービス提供で上位社に出遅れている。ベライゾン2010/12- そして AT&T2011/9-に対し、スプリントは2012/7-。スプリントはネクステルのサービスとの重複がコスト負担にもなっているが、これは2013年中に終了。
 ソフトバンクはスプリント(10月12日の時価総額172億ドル)が新たに発行する80億ドル分の新株を引き受けることを10月15日の取締役会で決定 同日発表した。米国に設立する新会社がスプリントと合併。さらに市場から120億ドル分の株式を買い取る。スプリントの7割の株式取得する。
 資金はみずほコーポ銀など大手3行とドイツ銀行から総額1兆5000億円規模の融資(低金利と円高が買収資金の環境を整備 現在の長期金利は0.7%台 1%強の金利の見込み)。手元資金と借り入れで201億ドルを投資(増資をしない戦略で株価は反発へ)。スプリント(競争激化で株価は下落していてお買い得になっていた)の70%の株式を取得するとのこと。この買収については、日米で周波数帯が違い 相乗効果はすぐに生まれないという指摘がある。
 またスプリントを通じてメトロPCSコミュニケーションズ同930万件買収を検討。
 スプリントはアップルを採用。ソフトバンクは買収により、規模拡大を実現 アップルとの交渉力を改善することができるとも。 
 ソフトバンクの経営は、投資をcash flowの範囲内で行い手元資金を厚くする、近年流行の経営手法とは真逆。リスクを取る経営は日本経済を活性化するとして賞賛する声は多いが。
 
 AT&Aは業界4位のTモバイルUSA同3320万件買収に動くがFCCが競争を阻害するとして阻止。Tモバイルの親会社ドイツテレコムはTモバイルを5位のメトロPCSコミュニケーションズとの合併を2012年10月3日に発表したばかりだった。スプリントはソフトバンクの後押しを受けてこのメトロPCSコミュニケーションズ之買収を進めている。10月18日 スプリントは出資する高速無線通信会社クリアワイヤ(米国で高速無線通信網WiMaxを展開)の経営権取得を発表 出資比率を48.1%から50.4%へ。2つの案件が実現すればソフトバンクは携帯大手2社と高速無線通信の計3社を米国で取得することになる。

 なお国内でアップル端末発売でソフトバンクと競合するKDDIは、住友商事との間でJCOM(ジャスダック上場)とJCNの統合をまとめた(2012年10月24日の取締役会で正式決定:相互販売力の強化、コンテンツ調達この相乗効果には疑問の声もあるが、相互販売力の強化、コンテンツ調達力強化などに使うとのこと)。2013年秋に統合させるとのこと。まず両者でジャスダック上場のJCOMを2200億円で完全買収して非上場会社化、その後JCNを100億円で買収するとのこと。
 これにより国内最大のCATV網、自前の光回線網で、NTTに対抗する体制を整え、また海外にシフトするソフトバンクに対しては、光回線(固定通信)と一体化したサービスでセットで割り引く囲い込む国内重視戦略で対抗をさらに強める構え(2011年にアイフォン販売を発売できるようになったことが大きい セット契約でスマホのータ通信料を割り引くサービスが好評)。
 興味深いのは投資家の反応。2012年10月24日の決算発表会での社長会見を受けてKDDI株は25日大きく上昇し年初来高値となった。これに対して、スプリントの買収発表後、ソフトバンク株は財務体質の悪化に不安を持つ投資家による売りが目立つ展開になった。 
 アイフォンのタブレットの発売開始(2012年11月)とあわせると、CATV スマホ タブレットなど端末を選ばずコンテンツ配信を可能とする体制を整えた形(11月28日にKDDIは子会社JCNと共同で、既存のテレビで多チャンネルと高速インターネットを組み合わせた「スマートテレビ」サービス提供を12月初旬から始めるとした)。これは、有利かもしれない。

Originally appeared in Nov.1, 2012
Corrected in August 26, 2015

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