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三井住友FGによる日興コーディアルの買収

2009-05-19 08:53:40 | Subprime Problem
買収により一挙に銀行系証券トップに
2009年4月20日締め切りの日興コーデイアル買収の2次入札で三井住友FGがもっとも高額を提示。4月24日に優先交渉権。4月28日に米シティとの間で基本合意。2009年5月1日合意が公表された。合意内容は、日興コーディアル証券(09年3月末の預り資産合計は23兆5000億円)などを5450億円で米シティグループから買収するというもの。この結果、三大証券(野村、日興、大和)の一角がメガバンクの傘下に入る。三井住友FGの証券ビジネスは銀行系証券で首位に立つことになった。

背景としての三菱UFJとみずほの動向
三井住友にはこの決断をしなければならない事情があった。
すでに三菱UFJ証券が2009年3月に米モルガンスタンレー日本法人との統合を決めている。
三菱UFJFGは08年秋に米モルガンスタンレーシ90億ドルを出資。両社は業務提携を深めつつあった。

普通株出資から優先株出資に変更されたモルガンへの出資
なおこの三菱UFJのモルガンへの出資は2008年9月22日の基本合意では普通株。しかしモルガン株の下落が続いたため、9月29日に3分の2を優先株に変更。ところがモルガン株の急落が続いたことから10月に入ってから急遽、全株優先株に条件変更されて10月13日に実行された。これは出資をやめればモルガンの信用不安が広がる。優先株が市場での価格下落の影響をうけにくい、今後増資があっても希薄化しにくいなどの判断による。

またもともと、みずほFGは、09年5月にみずほ証券と新光証券を合併を予定していた。三井住友FGとしても事業再編を進める必要があった。では他方でシティから日興コーデイアルを手放したのはなぜか。

シティは証券仲介業を非中核として売却へ
コーデイアル買収(シティによる売却宣言は1月16日)には、みずほ、三菱UFJも手を挙げた。
もともと日興Gは1998年に資本危機から米トラベラーズ(現シティ)と資本提携。その後06年の不正会計発覚後、07年に米シティの子会社(08年1月に完全子会社)になった。しかし親会社シティの経営が急速に悪化し資本が不足したことから、2009年に入り売却が決定された。
米シティは、事業を中核事業(預金 融資 投資銀行事業など)のシティコープと、非中核事業(証券仲介業など)のシティHとに分割。非中核部門の売却リストラを進めることになった。すでに2009年1月13日にはスミスバーニー証券のモルガンスタンレーへの売却を発表していた。
米シティは対日ビジネスについても、銀行やカードなど中核事業とされるシティバンク銀行(国際銀行業務のほか富裕層向けプライベートバンク事業など)、シティカードジャパン、投資銀行業の日興シティG証券以外をリストラの対象とする方針。
しかし米シティは、日本事業について今後、中核事業にもリストラ圧力をかけるとの観測が強い。というのは日本ビジネスで、収益を上げている事業は少ないと見られているからだ。シティが今後日本の金融界に留まれるかは疑問が多い。

今後は三菱住友と大和との調整か
なお今回の合意では、三井住友銀行が、日興コーディアル証券と、ホールセールの日興シティグループ証券の株式・債券引き受け業務(の人員)などの一部事業、関係会社などを取得する。
三井住友FGは大和証券と1999年から大和証券SMBCで法人業務を展開している(三井住友が4割 大和が6割を出資)。個人向けにはSMBCフレンド証券を傘下にしている。
これらの関係において、当然予測されるのは大和証券と三井住友銀行がどのような関係を今後再構築するか。その変化の方向によっては、証券界はさらなる再編を遂げるのではないか。関心が高まる由縁である。

Written by Hiroshi Fukumitsu. You may not copy, reproduce or post without obtaining the prior consent of the author.

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事例研究:マイクロソフト、米ヤフー、グーグル

2009-05-17 07:26:21 | Economics
Hiroshi Fukumitsu

マイクロソフト(MS ビル・ゲイツ会長)によるヤフー(ジェリー・ヤンCEO)買収提案(2008年2月1日)
 マイクロソフト(MS)の経営環境が買収提案の背景にある。パソコン需要は先進国では頭打ち。低価格化が進行している。無料ネットサービスの普及によりMSの収益源であるOS(operating system)のありがたみは薄れている。現在のところは、OSの収益性は依然高くビスタ(07年1月末販売開始 前作XPは2001年11月)、オフィスは好調であるが。MSは将来に危機感をもっている。
 足元をみても、ゲーム機部門ではXboxに不具合が発見され無償修理に追い込まれた(2007年7月)。またポータルのMSNは伸びずネット部門は赤字。今後の成長持続のためにはネット分野で競争力を高める必要がある。
 対策もうってはいる。たとえば07年3月にはレノボと提携。レノボのパソコンにMSのネットサービスを標準搭載させている。あるいは携帯電話にもMSのOSの搭載を推進している。また07年5月にはインターネット広告会社アクアンティブを60億ドル(約7500億円)で買収することを決めている。
 買収よりは研究開発に力を入れてきたMSにとって、アクアンティブ買収は自前主義からの決別という大きな分水嶺になった可能性は高い。
 ネットサービスに弱いMSにとってヤフーとの提携は不可欠とみられる。MSは自前でもネットサービスの展開を図った(たとえばMSN)がうまくいかなかった。ヤフーに対する提携交渉は2006年から2007年にかけて断続的に続いていた。
 だが懸念もある。米ヤフーは凋落傾向にある。ネット支配力を高めるグ゛ーグルへの対抗策としてのヤフーとの提携であったが。時間の経過とともに米ヤフーの凋落は一段と進み、グーグルのネット検索での優位性は国際的には圧倒的になっている。
 今回の買収提案は1株31ドル(提案直前1/31の株価の6割62%増し)買収金額446億ドル(4兆7500億円)というもの。買収提案に含まれるコンセプトは、稼いだ資金を投資に振り向けて自前の事業を育成する自前主義からの決定的決別であり、事業強化にM&Aを駆使する<アメリカでは普通の経営スタイルへの移行>だとされている。この買収金額はさすがに巨額でMSとしても引き上げ余地は少ない水準とみられる。逆に言えばMSは、表面上の好業績にもかかわらず、ネットでの失敗によってグーグルにより追い詰められているということである。

業績が低迷する米ヤフー
他方、業績低迷から創業者がCEOについたという点でデルと比較されている米ヤフー。2007年6月創業者のジェリー・ヤン氏がCEOについた。ヤフーはヤン氏により1994年創業。ポータルサイトを初めて手がけ成功した。しかし検索連動型広告で出遅れ(ヤフーの同様のシステムの稼動はようやく2007年春)、グーグルとの差が国際的には大きくなる一方。広告枠の販売システム開発に手間取り、技術開発・販売管理費が増加し、利益が減少する悪循環に陥ったとされている。またネット広告収入全体の伸びにヤフーの業績の伸びは遅れているとされている。そこでネット広告、電子メールなどに経営資源を集中、企業買収による事業強化を急いでいる。
 07/1-3 net profit 142 million $;Sales 1,672 million $
07/4-6 net profit 161 million $;Sales 1,698 million $
07/7-9 net profit 151 million $;Sales 1,768 million $
 米コムスコアの調査によると(2007/10/10)、検索サービスでグーグルは世界で6割以上のシェアもち(60.7%)、2位のヤフーは14.0%、以下、中国の百度(5.3%)、マイクロソフト3.5%、韓国のNHN3.3%。グーグルの優位、ヤフーの凋落は国際的には動かない。
 ヤフーは2007年5月には先に2006年10月に2割の株を取得していたライトメディア社の残りの8割を6億8000万ドルで買収、100%子会社するとした。ライト社はネット広告主と広告掲載先のサイトを仲介する取引システムを運営している。さらに6月には、学生スポーツ情報サイトを運営するライバルズ・ドット・コムの買収を発表するなど買収による競争力の強化・組織再編を急いでいる。 

グーグルによる反撃(2008年2月3日)
 他方、今回のMSのヤフー買収の動きに対して、グーグルは、公開性や技術革新というネットの基本原則に反すると自社サイトでマイクロソフトによるヤフー買収を批判している。
 グーグルはこれまでネットを通じてソフトの無料提供というMSに対抗する戦略で、支持を集めている(2006年8月から企業向け無料サービス開始 2008年2月からは有料サービスも開始)。提供ソフトは、電子メール、ワープロ、表計算など様々。ソフトを高額で売るMSの事業モデルと正面からぶつかっている。グーグルは、ソフトだけでなく文書、写真などもウエッブサイトに置き、ネット接続機能と閲覧ソフトがあれば、よいというPCの利用形態(クラウド・コンピューティングcloud computing)を提案している。
 ネットを通じたソフト提供の仕組みはSaaS(サース)と呼ばれている。月額利用料を払って必要なときに必要なだけ利用することで有料としてもコストを抑制できる。このほかグーグルはユーチューブの買収によっても先見性を示しMSに比べ時代のトレンドに乗ってきた。
  
 グーグルの株価は07年10月9日には600ドルを突破。615.18ドル。時価総額が1920億ドルを超え、ウオルマート・ストアを抜いたとされる。
 ヤフー創業者のヤン氏は米スタンフォード大学出身。リンク集から始め95年会社設立。グーグルは同じスタンフォードの二人組み(セルゲイ・ブリンとラリー・ペイジ 07年の個人資産規模ともに185億ドル 全米5位 フォーブスによる)が98年に設立したもの。
 グーグルの検索技術は、ヤフーが重視しなかったもの。しかし検索技術を重視した結果、グーグルが伸び、それを軽視したヤフーは低迷する結果になった。ヤフーはバナー広告に固執し、検索連動型広告search-linked advertisingで出遅れたとよく指摘される。
 ただヤフーとグーグルはスタンフォード、シリコンバレーという同じ根源をもつともいえるのである。
 なお全米一の富豪とされるマイクロソフト創業のビル・ゲイツ(07年590億ドル)をみるとビル・ゲイツは1955年生まれ。ハーバード大学時代に起業して、ハーバードを中退している。ハーバードは米国東部のマサチューセッツ州ケンブリッジにある名門大学。
 スタンフォードは米国西部カリフォルニアのこれも名門だが東海岸と西海岸を考えると、MSとグーグルにはその発祥の地のカルチャーの差も感じられる。
もともとシリコンバレーに根強い反マイクロソフト感情(OS支配への批判 現在はOSで9割を超えるシェアがあり MSに対する批判は強い)は共通のもの。
 シリコンバレーといったとき、暗にそこに存在する企業群のカルチャーをさしている。その意味では、ヤフーもグーグルもむしろ共にその一群の中にある。これに対してマイクロソフトは、創業時には米国南部のニューメキシコーに本社を置き、その後1986年からは東海岸ではないが米国北西部ワシントン州シアトル市郊外レドモンドに本社を置く。心理的物理的距離感でみても、ヤフーはMSよりグーグルに親近感を抱いているとみるべきだろう。
 意味合いは異なるがMSがOSを独占していることもあり、反マイクロソフト感情は欧州でも根強い。2004年に欧州委員会がマイクロソフトの独占禁止法違反を認定。是正措置と制裁金支払いを命じた。これに対して、マイクロソフトは不服として提訴したが、欧州司法裁判所の第一審裁判所は07年9月にマイクロソフトに敗訴を言い渡した。
 2007年10月になってマイクロソフトは、ウインドウズ関連情報を競合会社にも提供すること、互換性のあるソフトを開発する場合の技術ライセンス料を大幅に引き下げること、上訴しないことなどを条件に、欧州委員会と和解した。欠陥の多いOSの支配にこだわり全世界で嫌われてきたマイクロソフトの姿勢の変化は、OSのウインドウズ支配が崩れる趨勢(独占の次代の終わり)をマイクロソフト自身も理解しているといえる。
2008年2月に実際に技術情報の無償公開が始まったが、公開されたAPI(application program interface)について、非商業的な目的での使用だけしか認めていないので、恭順のポーズに過ぎないとの批判もでている。

ヤフーとグーグルが組む可能性
 反マイクロソフト感情からすればヤフーがグーグルと組む方が自然ともいえる。
 米国ではMSNとヤフーが組むとネット検索シェアは30%。グーグルの検索シェアは65%以上(なお検索でのヤフー優位は日本だけの特殊な現象)。
 世界全体でもグーグル60.8%、ヤフー14.0%、百度(中国)5.3%、マイクロソフト3.6%など(2007/8時点 米コムスコア調べ)。国際的にはヤフーの競争力は急速に低下。それに伴い広告料収入も不振となっているのである。
 さて反マイクロソフト感情は理解共感できるとしても、ヤフーとグーグルの提携については、逆にグーグルのよるネット支配は構わないのかという疑問は残る。両社が組めば支配率は限りなく100%に近くなる。独占禁止法の制約を考えるとこの両社の提携は現実的ではないとの指摘がある。 

ヤフーによる買収提案拒否(2008年2月11日)
 ヤフーはこのマイクロソフトの提案に対し、買収価格が安すぎるとして11日に拒否を発表した。
 マイクロソフト側は企業買収発表後、巨額の資金流出を懸念する株主の間に広がり、MSの株価が下落したこともあり買収価格引き上げには慎重。また敵対的TOBといった強行手段も人材流出を招くとして取らない方針とされる。
 たとえば価格引き上げで1株40ドルなら120億ドル以上資金流出ガ膨らむ。
 その後、一部の株主は、高値での売却機会を失ったとして、ヤフーの取締役会を提訴。また別の株主はMSに価格引き上げを求めたもののヤフーの独立性維持を疑問視した。このような株主の反応からすると、ヤフー経営陣の選択肢も狭くなっているようだ。

ニューズ・コーポレーションの浮上(2008年2月13日)
2007年のダウジョーンズ買収で注目されたニューズ・コーポレーションは2005年にSNS(social netwoking service)最大手のマイスペース・ドット・コムを買収、ネット事業に進出している。そのニューズが米ヤフーと事業統合の交渉を始めていることが2月13日までに明らかになった。ニューズはこの提携で利用者を一挙に増やす戦略と見られる。実現すれば情報産業の構図を大きく塗り替える話だけに関係者は、色めきたった。
 ニューズのルパート・マードック会長は、傘下に収めたWSJ(Wall Street Journal)の電子版無料化を指示している。現在は年額99ドルの有料制で会員数100万人。無料化により購読者(閲覧者)を増やして広告単価を引き上げる戦略である。その広告料収入の方が、有料購読で得られる収入よりはるかに大きいということである。すでにNYT(New York Times)が2007年9月に検索機能の無料化に踏み切っているのも同じ考え方である(紙の購読者以外22万人あまりについて年額50ドルの有料制だった。しかし紙の購読者を含めて利用者は78万人)。
 個人的にはネット上の情報の無料化推進というマードックの考え方に賛成だ。なおマードックは3月10日の記者会見でヤフー買収を否定したものの、業務提携などほかの選択肢の可能性は否定しなかった。その後、4月に入るとニューズとMSが組んでヤフーを買収する可能性が報道されるようになった。
 またその後の報道ではヤフーはタイムワーナーとも提携交渉を行い、タイムワーナー傘下のAOLとの統合案が検討された(WSJ07/03/05)。ヤフー経営陣はMSとからの買収を逃れる方法を必死に探した。

強硬策に転じたMS(2008年4月5日)
しかし4月5日になるとMSはヤフーの取締役会に対して3週間後の4月26日までに買収を受け入れなかればプロクシーファイトを辞さないと警告し、強硬策に転じた。これに対してヤフーは4月9日、グーグルのネット広告サービス「アドセンス」を試験採用すると発表。さらに市場には、ヤフーとAOLが経営統合の上、タイムワーナーから出資を受ける案が流された。

MS ヤフー買収を断念(2008年5月3日)
 しかしMSは強硬策に出れば、ヤフーがグーグルと組む可能性が高いとみた。5月3日にヤフー買収断念を発表した。MSの断念によりヤフー株の急落は確実で、ヤフー経営者は企業価値の向上策を迫られることになった。 

事態を注視した日本のソフトバンク
 日本のソフトバンクは95年、ヤフー創設時に米ヤフーに出資(現在の比率は3.9%)。このほかソフトバンクは、日本のヤフー(41.09% 米ヤフーが33.42%)。ソフトバンクモバイル(100%)。中国のアリババグループ(中国最大のネット企業とされる ここに約3割 米ヤフーが約4割)に出資してグループを形成している。
ソフトバンクの孫正義CEOはグーグルへの対抗策として、MS-ヤフーとの提携に期待していたのではないか。
 ソフトバンクモバイルの攻勢が続くなかで、グーグルとNTTドコモの提携が正式に発表されている(2008年1月)。ソフトバンクモバイルにとって、グーグルと提携できないことが弱点になる可能性がある。
 それだけに今回の買収劇の結末をおそらく誰よりも注視しているに違いない。事態がどう展開するかで、ソフトバンクの今後の事業展開は大きく変化するからである。

米グーグルとソフトバンク
2008年1月NTTドコモが米グーグルとの提携を発表した。これはNTTdocomoの垂直統合型事業モデル(自前主義)からの転換と指摘された。
 ドコモは1999年に世界初の携帯ネットサービスiモードを開始。コンテンツ利用に対して課金して高収益を一時実現した。しかしこのコンテンツの有料課金の事業モデルは、コンテンツ無料化の流れに反しており時代遅れだといえよう。そのほか日本通信によるNTTドコモへの携帯電話回線の利用での交渉でも、NTTドコモは実質的に交渉に応ぜず、総務省の裁定で開放命令を受けた。このようなNTTドコモの保守的企業姿勢は褒められたことではない。
 ただ2006年10月に始まった番号継続制度の中で顧客流出がとまらないのは、このようなビジネスへの保守的な経営姿勢が料金プランの高さとなり顧客に嫌われているからだ。
 その保守的なNTTdocomoが、ネットの世界の革新者であるグーグルと組んだ。KDDIもグーグルと提携済みであるがグーグルとNTTdocomoはより進んだ提携、共同開発などを目指しているとされる。
 他方、携帯電話の世界の革新者であるソフトバンクモバイルは、どちらかといえば保守的なヤフーと提携している。
 米国でのグーグルとヤフーの争いは、日本の携帯電話の世界では、NTTドコモとソフトバンクの争いとして再現されている。なお日本のヤフーは、アメリカのヤフーとは違って日本国内でのシェアはもっている。しかし米ヤフーの凋落のスピード(検索シェアの低下)は極めて早い。その影響が日本に及ぶ可能性は低くはない。 米ヤフーの企業価値は急速に低下している。それでもMSがヤフーにこだわるのは、OS支配というMSのビジネスモデルが国際的な批判の中で崩れつつあり、ネットの世界でのグーグルの強まる優位を逆転する方策がほかにないためである。MSはグーグルに実際には追い詰められている。

ヤフー=グーグルの提携発表(6月12日)
 MSによる買収断念でヤフーの株は急落した。MSは5月18日にヤフーと提携交渉再開を発表した。6月12日、ヤフーはネット広告事業でのグーグルとの提携を発表した。MSは当然独占禁止法の問題を持ち出して抵抗した(2008年4月の米ネット検索シェアはグーグルが62.0% グーグルが17.5%。2007年の米ネット広告のシェアはグーグルが28.0%、ヤフーが15.7%)。公告主企業の間で、競争が減ることへの懸念が広がった。
 ここでMS側はヤフーの検索事業を10億ドルで買収する提案を行う(6月)。しかしヤフー側が拒否。投資家のアイカーンは、MSへの身売りを提案。MS側もこの提案に関心を示した。
 ヤフーはTW(タイムワーナー)との提携をなお模索しているとも。これはTW傘下のAOLとの事業統合とされるが、AOLはITバブル崩壊以降、売上が急減しており、魅力的な統合にはならない。
 
株主総会でヤン体制の継続決まる(8月1日)
ヤフーは、マイクロソフトの買収に賛成していた投資家のアイカーンを取締役に迎えることで収拾をはかった。取締役の員数を9人から11人に増やし、うち8人をヤフー側。残り3人をアイカーンを含むアイカーン側とする妥協案を出して事態の収拾にこぎつけた。しかしマイクロソフト以上にヤフーの立場が悪いことも事実である。

グーグルとの提携断念(11月5日)とヤンの辞任
 ヤフーでは10月21日、7-9月決算で純利益が前年同期に比べ64%減少したことを明らかにしたが、あわせて人員削減などのリストラ策を公表した。
 しかし米司法省が独禁法違反で提訴の構えをみせた結果(08年11月上旬)、グーグルは提携を断念。ヤフーも断念に追い込まれた(11月5日)。ヤフーは、ヤンが後継者がみつかり次第辞任すると発表した(11月17日)。
 その後2009年1月13日 ヤフーは、設計ソフト会社オートデスクでCEO経験のあるキャロル・バーツをCEOに迎えたと発表している。
 2009年1月27日に公表された08年10-12月期決算はリストラ費用が膨らみ最終損益で3億300万ドルの赤字。2002年1-3月期決算以来7年ぶりの赤字となった。

 参考
日米のヤフーの違い
SNS, video hosting, virtual worlds

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