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Entrance for Studies in Finance

blog for business studies
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Platz and Fitch, Business Banking 2nd ed., Barrons Educational:2001

2019-04-04 12:37:00 | Financial System

Teodore A.Platz and Thomas P.Fitch, Business Banking 2nd ed., Barrons Educational:2001

APY annualized percentage yield

ATM automated teller machine

deposit side

checking accounts/savings accounts

deferred funds

NOW negotiable order of withdrawal :deposit acounts with check writing privileges

sweep accounts

zero balance accounts

depositor insurance
Keogh accounts self employed individual to make tax deductible contribution to the plan(HR-10accounts)
SEP simplified employee pension account

capital ratio  since 1992 a capitai to asset ratio of 8% has been the standard measure of capital adequacy in banking

   risk based capital formula

clearing house

correpondent banks

letter of credit

bankers' acceptance

spreads 

repurchase agreements

loan side

rates float/stable

loan t0 deposit ratio 70% is regarded by many banks as optimal

loan guarantees

collateral

  loan to value ratio

compensating balances

consumer loans/mortgage loans/commercial loans

functional regulation

Community Reinvestment Act of 1977

Gramm-Leach-Bliley Act of 1999

average capital to astes ratio  4 or 5% to the 8% many small 7-10%

ROA over 2% or so 

ROE falls in tthe 10-to-15percentrange  all banks would like to be in the 15to 15 20percent range 

SWIFT society for world wide interbank financial telecommunication established in 1974, headquarters in Brussels,Belgiun

has extende associate menbership (non voting) to major corporations an securities firms 


金融政策の正常化圧力 長期金利変動幅拡大 ⇔ 長期にわたる大規模な金融緩和の副作用

2018-10-12 18:08:27 | Financial System

米国 失業率大きく低下するも 賃金伸び悩み(IT化が背景とされる)
FRB 2018年年3回の利上げ見込み 中国マネーの動向に神経とがらす 世界的カネ余り 主要国で唯一長期金利2%台維持 そこで世界のマネーが米国にむかっている 米国金利引き上げで景気を冷やす懸念+これ以上の米国へのマネー流入避けたい+潜在的成長率の低下 ⇒ 長期金利の上昇幅限られる

ECB 2017年6月 量的緩和の縮小を示唆 資産買入れの縮小を決定→ユーロ高招く

これまで日米欧は、金融緩和の縮小(=金融政策の正常化)を、景気悪化懸念からゆっくりと進めてきた。欧州や日本の場合は、ユーロ高、円高を避ける見地から、緩和縮小での米国の動き(金利の上昇)を見ながらになる。

日本 2017年7~9月 法人企業統計 設備投資前年同期比4.2%増 4四半期連続増

日本 2017年7~9月 GDP 実質で前期比0.6%増 年率換算2.5%増 プラス成長は7四半期連続

日本 2017年11月 有効求人倍率倍率1.56倍 1974年1月以来43年11ケ月ぶりの高水準 失業率2.7% 24年ぶりの低さ 人手不足 女性・高齢者 外国人の就労増加

   2017年11月 生鮮食品を除く消費者物価(前年同月比+0.9%  10月の+0.8%から上昇)

   2017年11月 鉱工業生産前月比0.6%増(10月は0.5%増) 機械受注前月比5.7%増 持ち直し

日銀 2013年4月 2年で2%の目標で異次元緩和 年60-70兆円 (1ドル92円台 消費者物価上昇率はマイナス圏)

日銀 2014年10月 追加緩和 年80兆円

2016年2月 マイナス金利政策(銀行が日銀にもつ当座預金の一部に対し)

日銀 2016年9月(総括的検証) 金融政策の目標を国債購入の量から金利に変更(長短金利操作 長期金利0%程度 短期金利-0.1%程度)+国債買い入れを事実上縮小(=ステルス・テーパリング あるいは形骸化年80兆円のはずが年50兆円・・・2018年1月)テーパリング:金融資産買入れ額の段階的縮小

2017年11月 バーゼル3で 保有国債をリスク資産とすることを求めるドイツの議論を退ける

2017年12月21日 金融政策決定会合 長短金利操作の現状維持 資産買入れ方針の現状維持決める 株価の過熱感(バブル)を否定

日銀 2018年1月 国債買い入れ額縮小(2018年1月9日) 長期金利2ケ月半ぶりの水準に上昇(金利差拡大はドル高・円安。そして日米金利差が縮小すると円高になる) → 円高/株安(1月10日に一時111円台後半 1ケ月半ぶりの円高 他方で日本企業の海外企業の合併・買収 あるいは外国証券投資に伴う円売り圧力がある) → 日銀により好循環の崩壊へ(崩壊をさけるために日銀は米金利の上昇局面でドル買い圧力の高い局面でなければ利上げに移れないと観測されている) 市場ではゼロ%程度とする長期金利の誘導目標の引き上げを予想する声増えている(2018年1月)

1月23日金融政策決定会合 長短金利操作の現状維持 資産買入れ方針現状維持 2%の物価安定目標維持 を決める

1月31日満期まで3年超5年以下で26日より300億円増やす

1月31日米国で長期金利が一時2.75%と3年10ケ月ぶりの水準

2月1日 新発10年債利回り 誘導目標上限の0.100%に再び接近

2月2日米国株式市場ではダウ工業株が665ドル下げ 9年ぶりの下げ幅

2月2日 指定した利回りで無制限に買い入れる指値オペ(7ケ月ぶり)実施+定例オペも実施 5年超10年以下買入れ額を4100億円から4500億円に引き上げ 指し値オペの実施→日銀による金利上昇を抑える明確な意思を市場は確認

米国では経済の復調から FRBは利上げ路線。これはドル高・円安要因。しかし円安は日本企業の輸出を拡大するのでドル需給の面では、円高・ドル安。つまり綱引き状態。あるいは円相場は停滞状態。
2月5日 日米で株価暴落 日経平均は一時600円下げ 投資家心理の悪化で債券需要高まる(株安によるリスク回避で債券需要→長期金利上昇抑える効果) → 米国 金利上昇から株式暴落 2018年2月
2月10日 4月8日に任期満了の黒田東彦総裁続投案報道(3月19日任期満了の副総裁岩田規久男氏は交代)
2月15日5年超10年以下の買入れ額4500億円維持
2月16日 政府 衆参議院運営委員会理事会で黒田総裁再任案提示 副総裁には日銀の雨宮正佳理事 若田部昌澄早大教授(マネタリベースの拡大+2019年10月の消費税増税延期を主張) 金融緩和が維持されるとみて円相場は一時円安に振れるも 米国の財政赤字拡大懸念 物価上昇率の高まり受けて ドル安(円高)に 一時1ドル105円台  黒田氏交代はアベノミクス(2012/12→2018/01  デフレは物価はマイナス0.2%→0.9%上昇まで回復 失業率は改善4.3%→2.3%  公債残高179%→189% 日経平均1万395円→2万1720円 日銀の国債保有割合12%→41%)失敗の印象を与える恐れがありできなかったとされる 今後2019年10月の消費税率引き上げ(→大不況に突入? 金融緩和の持続+積極的な財政出動は不可避? マイナス金利による金融機関経営悪化の弊害は深刻であるため金利でのこれ以上の深堀はできない)を乗り切れるか 東京五輪後の新たなテーマがないことによる景気後退 が懸念材料。中長期的には技術革新に伴う賃金格差の拡大、人口高齢化による労働力人口の減少

米国ではその後 2018年3月と6月に利上げが行われた。2018年7月にはECBのドラギ総裁が金融緩和縮小を進める方針を示している。日本も含め金融政策を正常化させたい思いは米欧日の中央銀行に共通する。しかし日本は2016年9月に見直して以来(長期金利を0%程度に誘導 長短金利操作導入)、金融政策を枠組みを変えていなかった。日本は失業率は低いが、物価上昇率も低い(2018年4月―5月生鮮食品除く消費者物価上昇率は0.7%程度)。低賃金の労働者が増えた。新興国の安価な労働製品が物価を押し下げている。ネット通販の影響。こうした中で金融緩和が長引くことの副作用が繰り返し指摘されるようになっていた。2018年7月末 金融政策は役約2年ぶりに身直された。
2013年1月 日銀は物価上昇率2%(=インフレターゲット)を政府は持続的財政構造の確立を目指すとした政府・日銀共同声明(→日銀は金融政策について政府との連携を飲み込まされる。背景には日銀が金融政策を正しく実行できるとは限らないことに衆目が一致したことが大きい。1998年の改正日銀法は日銀の独立性を高め、日銀は自らの主張を通すことを中央銀行の独立性の証明とみるようになった。その結果生じた政府との溝は結果として日銀への国民の信頼を失わせることにつながった。)
2013年3月 国債保有量125兆円
2013年4月 異次元金融緩和=量的・質的金融緩和を開始(CPIの前年比上昇率2%を2年程度で達成としていた 国債年50兆円残高増やす) ETF年1兆円ベースの購入開始
2014年10月 追加緩和(年約80兆円残高増やすETF年3兆円ペースに増額
2016年1月 マイナス金利導入決定

2016年7月 ETF年6兆円に増額
2016年9月総括検証 オーバーシュート型コミットメント(イールドカーブコントロール)導入(安定的に2%を超えるまでマネタリーベースの拡大を約束 長短金利操作政策導入 量から金利操作主軸に 柔軟対応 年80兆円ベースの拡大に限界 政策の軸足を資金量から金利に転換 長期金利をゼロパーセントと程度に誘導 2%目標+金融緩和の継続をうたいつつ事実上正常化を開始?→2017年 こっそり国債購入量を減らし始める(→ステルス・テーパリング) 

2018年3月 国債保有量450兆円 日本国債の約4割 2017年度末の国と地方の長期債務残高1093兆円 日銀保有ETF残高は約24兆円 購入時簿価19兆円 含みが5兆円  日本株全体の4%弱を保有 株価形成をゆがめ 日銀の自己資本8兆円を痛める恐れもある
2018年4月 黒田体制再任 経済・物価情勢の展望から(4月) 2%の目標達成時期の見通し明記やめる:緩和の長期化のサイン

2018年6月15日 黒田総裁 日本に残るデフレマインド(デフレ心理)

(ところで労働力不足対策として、外国人労働者受け入れの声が高まっている。それはよいが、外国人労働者受け入れ拡大が結果として賃金全体の伸びを抑えている。外国人留学生や技能実習生の増加が賃金の伸びを抑えている。政府は同じ誤りは前にもした。多様な働き方を認めるといって、非正規労働を拡大。結局は、正規労働が減り非正規が増えて、失業率は減ったが賃金は伸びないことになった。安倍政権は政府の政策が賃金の伸びの抑制、デフレ維持深化、を繰り返している。物価を上げると称して、多年にわたり金融緩和を続けた。その結果として確かに資産家は資産が膨らんだ。一般の賃金は低いままなので、貧しい人は貧しいままの社会になっている。結果として大衆品の価格は上がらずデフレが続く面がある。なお政府はネットを通じた販売価格の競争が、価格を押し下げる効果を問題にしている(アマゾンエフェクト)。商業店舗の機能(流通在庫保管 商品選択)がネットで代替され、家電がメーカーから直送され、人々が自宅で家具を組み立てることで、物流コストや生産コストは大きく下がり、商品の価格や家具の価格が劇的に下がる効果が生じている。おそらくこれは消費や生産の在り方が、ネットを中心としてものに変化してゆくことがもたらした変化。賃上げを望むのであれば、外国人労働者にも日本人並みの賃金を制度的に保証するべきであり、非正規労働者と正規労働者の間の雇用条件上の差別を禁止する方向を目指すべきであろう。)

2018年7月23日 金融政策変更の観測から金利上昇 円高・株安 日銀は半年ぶりに指値オペ(指定した金利で無制限に国債を購入)実施 長期にわたる大規模な金融緩和政策の(日本国内の)副作用とは①銀行収益が圧迫され金融仲介機能が低下していること(銀行が投融資においてモラルをダウンさせていること)。②保険や年金が運用難に陥っていること。③国債市場の機能低下(取引低迷)が続いていること ④国債発行コスト低下による財政規律の低下 ⑤ETF(上場投信)を買い続けているため株価形成がゆがめられていること ⑥資産価格高騰などバブルを誘発している懸念があること ⑦日銀の資本毀損リスクが高まっていること などである。
なお「過剰債務」の形成が問題にされることもある。仮説だが、この債務は国によって現れ方が違うかもしれない。日本の場合は国債として表れているが、中国では企業債務(→ゾンビ企業)、米国では家計債務(→住宅バブル)が話題になるのではないか?
運用難からリスクの高い企業に対して低い金利での貸し出しをふやしているのではないか。運用難からリスクの高い債券投資に向かっているのではないか。
2018年7月30日ー7月31日の金融政策決定会合年間80兆円をめどとしつつ弾力的に運用(実際は40兆円程度に縮小している) ポイント:0%程度に誘導す±0.1%程度になるよう誘導。今後は変動幅0.2%程度まで容認する(=長期金利変動幅拡大を容認 金利が動く余地作る意味 長期金利については従来以上の上振れを容認)+金融緩和の長期化(長短金利を低い水準に維持する約束)を意味する 政策金利についての新しいフォワードガイダンス(将来の指針)の導入・公表(当分の間 極めて低い金利水準を当面維持することを約束:引き締め効果とならないように配慮 2020年まで現在の長短金利を動かさない方針の明確化 物価安定目標の実現に対するコミットメント=約束をつよめ 長短金利操作付き量的質的金融緩和の持続性を強化 変動幅大きくすることで市場の取引・機能の改善はかる TOPIXに連動するETFの買い入れ額拡大)金利が急速に上昇する場合は迅速かつ適切に国債買い入れを実施 ETF購入の柔軟化

物価見通し下げ 金融緩和も回避 副作用に対応した事実上の正常化策

4つの政策手段の関係不明 量と質 マイナス金利と長期金利

2倍程度の変動ありということで国債を買いやすくなった

金融緩和の副作用について議論したうえで対処するべきだった

マイナス金利解除は2019年10月の消費税増税以後か

長期金利の変動容認を金融緩和の出口に向かう地ならしと受け止められないように配慮 物価上昇が鈍い理由を分析しつつ2%の物価上昇目標も維持 → 当面強力な金融緩和を続ける方針を堅持したが、目標そのものについての議論(物価上昇目標の硬直性を批判する意見は多い)や緩和策の出口についてといった本質的議論を回避 反面 長期的にもインフレ目標達成は事実上困難というメッセージ。なお年6兆円買っているETFについてはTOPIX連動型を増やすことで、批判に対応。

なお忘れた感があるのは財政の健全化。社会保障費の急増により財政の急激な悪化が見込まれている。2018年度を目標年度としてPB赤字をGDP比1%程度とするとしてきたが、しかしこれは達成できなかった。2018年度の同数値2.9%。2025年度を目標年度とする財政健全化計画では、債務残高のGDP比率を180%台前半まで引き下げる。PB赤字をGDP比率1.5%程度にする。財政収支の赤字をGDP比3%以内にする。これらの数値はいずれも甘く達成できそう。今後の要因としては2019年10月の消費増税。2020年の東京五輪。2022年度以降の団塊世代の後期高齢者(75歳)入りによる社会保障費(2018年度の予算総額の3分の1)急増がある。そのため後期高齢者の医療機関での自己負担割合を現在の1割から2割に引き上げることが見込まれているほか歳出の効率化が求められている。

8月2日 財務省による10年債の発行入札

8月6日 国債市場は乱高下。

8月13日 トルコショック 円高 日経平均株価大幅安 国債は買われて日本の長期金利は0.095%に低下 

2018年9月 2019年10月の消費税率上げに向けて経済対策を予想され 2014年4月の引き上げ時には5.5兆円の経済対策 国債増発が予想される 長期金利に上昇圧力
2018年9月20日 日銀総裁記者会見 長短金利操作付き量的質的金融緩和のもとで金融市場を調節するこれまでの方針の維持を賛成多数で決定した
2018年9月26日 米連邦準備制度理事会FRBはFOMC米連邦公開市場委員会で3ケ月ぶりの利上げを決定。FF金地の誘導目標を0.25%引き上げて年2.00~2.25%とする。2%超えるのは2008年以来ほぼ10年ぶり。今後の見通し。年内に1回。2019年に3回利上げの見通しも発表。2020年に1回。2021年はゼロ。国内景気動向に自信。利上げに踏み込めない日欧と対照的。
9月28日 日経平均終値 前日比324円高2万4120円 1月の年初来高値にあと4円 27年ぶりの高値圏(医薬品 小売など内需銘柄が牽引 非鉄 電機など半導体銘柄 FA関連銘柄 安い:米中貿易摩擦の影響)

2018年10月4日 3日の上昇のあと米株式市場反落 下げ幅3ケ月ぶりの大きさ 米経済の好調(賃上げ)→(利上げ圧力)米長期金利の急上昇 10月5日一時3.24% 7年5ケ月ぶりの高水準(同日朝の48年ぶりの低い失業率が背景)⇒ 国際的な暴落へ

 2018年10月11日(木) 米株式市場3日続落 7月23日以来の安値 アルゴリズム取引による機械的な売り 午後VIX指数が急上昇一時28超えた(株式売りを招く)
10月11日 トランプ大統領がFRB批判 株安の責任はFRBにあると。
10月12日 NY株 ダウ4ぶりに反発 アマゾン アルファベットなど大手IT銘柄はなお下落

2018年10月12日更新(2018年2月18日)
経済経営用語辞典 (異次元金融緩和の副作用 で採録)

Strategies  Case Studies   Area Studies


仮想通貨問題と金融庁の犯罪

2018-03-21 10:33:07 | Financial System

仮想通貨問題の本質:犯罪を誘発する金融庁の甘い姿勢

「モバイル決済」そして「仮想通貨」が金融イノベーションあるいはフィンテックとして注目される。モバイル決済のように便利なものは導入すればよいが、仮想通貨取引のようなものはなぜ必要なのだろうか?不思議なのは、金融庁が事件の多発にも拘わらず、業者任せの姿勢を続けていることだ。まるで金融イノベーションの守護者気取りである。仮想通貨は、通貨といいながら現実の取引の決済通貨となるのは一部であるため(通貨としてよりは取引対象となっているため)、その取引相場の変動幅は大きくなっている。

 まずモバイル決済(スマホ決済)の拡大で 現金決済を一気に縮小させようと議論がある。中国で発達した方法は、スマホによるQRコード読み取りというもの(QRコード決済)。店舗側に決済用の端末購入などの初期費用(初期投資は10万程度 数万~数十万 月々リース料)が不要であるため、導入しやすい。中国で発達したqrペイと同じ この方式が日本でも普及するかに注目が集まっている。

   Lineペイがローソンでqrペイに対応 2017年1月から

 楽天ペイがqrペイを導入 2017年10月から  手数料は3%程度(大手カードは4~6%)

 origami qrペイの導入 2017年10月から 手数料は決済額の3.25%

 中国ではウィチャットペイ微信支付(テンセント 利用者7億)そしてアリペイ支付宝(4億)。中国のスマホ決済額が前年比で3倍以上に急増している。インドではPaytm(2億3000万)とモビクイック。こうしたqrペイ方式のスマホ決済の導入の動きは、タイやフィリッピンのほか東南アジア各国でもきかれる。ポイントは導入コストが安い点である。

 中国におけるスマホ決済の普及 2017.05.07

 フェリカ型との比較で、ソニーは通信チップの搭載されると利用料に応じてライセンス料を取る。しかしアジア圏ではQR決済が広がる。一見してQR決済にメリットがありそうだが、決済用端末が低コスト化すれば、フェリカ型も決済スピードの面で優位なところがある。いずれにせよモバイル決済は普及させればいい。

 なお日本でカード化による現金の置き換えに進展はあったが限界もあった。現金決済をなくすれば、店員の現金管理の手間が簡略になる。レジ閉めの労力を軽減できる。またデータを優良顧客の選別にデータ使え、金融機関としては融資データに利用できる。また現金決済の維持は銀行にコストになっている。ATMの共有化は銀行の通帳の仕様がバラバラのためできない、しかし銀行にとってATMの維持には大きなコストがかかっている。全国のATMは金融機関のもの13万7000台(2016年9月末 価格が1台300万 維持費は月30万) コンビニ型5万5000台 ざっと20万台もある。現金決済をなくすことによる効率化が盛んに指摘されている。

 ここまでの議論はわかる。

 問題は仮想通貨。そしてその取引である。そして仮想通貨を使ったICOである。これをなぜ金融庁は放置しているのか?

 仮想通貨(=電子的に記録移転でき、法定通貨でないが第三者への支払いに使えるもの)取引(4月に改正資金決済法を改正し取引所に登録制 監査の義務付けた 2018年1月時点で登録は16社。ほかに改正法施行前から取引所を運営していた「みなし業者」が16社ある。)が日本では認められた。業者の存在を認知する法的な手当てがされたが、これは取引者保護の問題を置いたまま(どのような保護が必要かの議論を置いたまま)、世界に先駆けて規制を緩めた。ところが問題が次々に発覚してから、金融庁は登録制によって、業者の監督体制ができたかに主張している。

 仮想通貨導入は、銀行に代わるお金の保管 送金の仕組みが可能になる。しかし海外への不正な資金の移動など犯罪に絡む恐れが指摘されている。そこで世界全体でこの問題の対応が厳しくなている。
 現在指摘されている利用者保護の追加的な議論のなかでは、業者の倒産の影響が及ばないように、預かり資産を信託口に移すことは最初の一歩だろう。仮想通貨の議論についても、たしかに通貨以外のもの(たとえばポイント)での支払いがすでに現実には存在する。したがって仮想通貨を認めることは一方で必要かもしれない。仮想通貨の取引所を認めることは話が少し違う。

 現実の通貨の取引が実需との関係で相場の変動には制約があるのに、取引される仮想通貨は実需との関係が希薄で希少性が価値を支えている、そのため相場の上昇幅は現在のところ極端である。現状は、この上昇幅の大きさが投資家を市場に誘っている。こんなものが金融イノベーションなのかどうか?

 ビットコインの相場の変動の大きさをみてみよう。

 ビットコイン(最大の仮想通貨 時価総額は2800億ドル=32兆円にまで拡大:2017年12月) 仮想通貨にはこのほかイーサリアムなど 米国 中国 日本 韓国など 7月分裂騒動で一時2000ドル割れ 2017年8月2日ビットコインキャッシュBCCが誕生(ビットコイン保有者に新通貨が付与) 8月13日4000ドル超え 9月2日5000ドル台のせ 9月8日中国が仮想通貨取引所を当面閉鎖するとの報道で下がる 9月10日4000ドル割れ 10月20日6000ドル台のせ 11月1日6500ドル超え(背景 ビットコインゴールドの分裂準備進む 9月2日に5013ドルの高値。10月24日に香港企業が中心のビットコインゴールドBTGが分裂を始め11月24日ビットコインゴールドが誕生した。ビットコイン保有者は同数のBTGを得られたとのこと。) 11月28日ビットコイン初の1万ドル台 12月5日シカゴオプション取引所CBOEが先物取引開始 12月17日1万9800ドルの高値のあと下落 12月18日シカゴマーカンタイル取引所CMEで先物取引開始 同日CMEで相場下落でサーキットブレーカー作動 19日韓国の仮想通貨取引所ユービットが破たん(北朝鮮によるハッキングとされる 韓国の仮想通貨取引所はいずれもセキュリティが脆弱であることが判明 しかし日本もマウントゴックスやコインチェックの問題を見ていると褒められた情況ではない) 12月22日1日の下落率29%1万1000ドル割れ 相場の急変を抑える仕組み未整備 取引所によっては 一定幅以上動くと取引が停止するサーキットブレーカー 1日の上下値幅制限いずれもなし 証拠金の25倍の取引を許す取引所もある(→時価が購入価格の4%を下回ると追証なければ強制売却・・・売却の加速)

 つまりビットコインは2017年年初来でみると20倍を超える高騰。売買は実需とは無関係で投機的というのが現状。なぜこのようなクズを決済手段に混ぜる必要があるのだろうか。

 2018年に入って中国、韓国の規制に動きが伝えられると、ビットコイン(2017年12月現在 1300種類ある仮想通貨の中で時価総額2800億ドル 仮想通貨全体の6割占める)は1月7日に1万7100ドルの年初来高値のあと、17日には1万1000ドル近くまで急落した(一時1万ドル割れも 日本円で110万割れ)。2月7日には株安に加えて中国政府が仮想通貨取引規制を強化すると伝わり、1ビットコインは一時6000㌦割れを喫した。

 警視庁と仮想通貨取引所が連携

 なお取引所は国内だけで20社ほど 最大手がビットフライヤー(東京都・港区)。色色な企業の参入が伝えられる。

 名前を拾うと GMOインターナショナル(2017年9月マイニングをてがけることを表明) リミックス(子会社が仮想通貨取引所ビットポイントジャパンを運営) フィスコ マネパG SBI(中国の取引所Houbiと資本提携で合意)

 そして18年1月26日になって コインチェック(東京都・渋谷区  2012年設立 2017年7月現在 従業員数71名)で仮想通貨NEMが約580億円流出した問題が表面化した(2014年のマウントゴックスでのビットコイン消失額480億円を上回る。コインチェックはみなし業者。登録業者になれないのは、コインの送り手・受け手が匿名の匿名コインをあつかっていることが指摘されている。マネーロンダーリングに加担するリスクを軽視する会社だったのだ。コインチェックの経営陣をみるとトップは東工大理学部。COOは早稲田大学院卒で専攻は理論物理だ。この二人を文系の顧問やアドバイザーが補佐する形。しかしこのトップやCOOはともに金融機関での業務経験もなければ, 金融業務を学んだ気配もない。この二人が主導する会社は、顧客の資産を扱う重大性をどこまで理解していたのだろうか。)。金融庁はようやく体制強化の改善命令を出した(2018年1月29日)が、この対応は遅すぎた。なぜ問題がこのように問題が深刻になるまで金融庁は業者を放置し続けたのだろうか? 金融庁では2月2日に立ち入り検査を始めた。問題が起きて動くというこの動きはどうなのか?
 
 金融庁におけるフィンテックに対する取組み 金融庁 2016-11  金融庁はこの問題で旗振りをしたかったようだ それは行政の正しい在り方だろうか?  マネロンと分別管理の問題は指摘されている。しかし最大の問題である仮想通貨についての過大な投機については言及されていない。
 フィンテックに関する現状と金融庁による取組み 金融庁 2017-02 環境整備に積極的に取り組むと明言。米英に比して規制がゆるいことを肯定的に記述。ここでも問題は分別管理とマネロンの問題だけ。この金融庁の放任主義が、あやしげな業者の跋扈を招いたと考えられる。
 資金決済法 金融庁 仮想通貨取引で信託銀行の信託制度を使うことを認めたが、おどろくべきことに業界の自主的な対応を待つとのこと。つまり義務化はしていない。
 
 金融庁 業者を批判 ロイター 2018-01-29 金融庁は仮想通貨の旗振りをした自身の責任を認めず業者に責任を転嫁した
 
 取引所といいながら マーケットメイク方式 つまり顧客に対して取引所自身が自己勘定で売りあるいは買いを入れる方式(取引所が仲介者に徹するものをオークション方式という マーケットメイク方式は債券や外国為替証拠金FX取引でもとられており、違法とはいえない。しかし取引所で提示される相場には取引所の利益が含まれており、透明性に問題がある。業者は大きくリスクを取れば利益を大きくとれる)。価格は取引所の利ザヤ込みで透明性に欠ける。また常時ネットに接続するホットウオレットであったために流出につながった。

 このコインチェックの事態を受けて、一部の企業は仮想通貨を使った決済への参入を見直す方針を打ち出した。企業経営者は詐欺に加担することをすぐに辞めるべきだ。

  最後にICO(initial coin offering) 資金調達したい側がホワイトペーパーを購入したうえで トークンを発行 事業に賛同して人が購入 発行した仮想通貨は取引所で価格が変動 2017年9月4日 中国がICOによる資金調達を全面禁止(なお韓国も全面禁止。9月29日金融委員会は全面禁止の方針を示した。) 企業の側は手軽にトークンという形で資金を集める。投資家はビットコイン イーサリアムなど流動性の高い仮想通貨でトークンを購入 トークンで実現するサービス製品を購入できる。企業の側にはIPOにおけるようなさまざまな情報開示義務はなく、トークンに配当を支払う仕組みや議決権にあたるものはない。投資家はトークンを仮想通貨取引所などで換金できる。事業実態と無関係にトークンの価格上昇を信じた投資家が資金を投入しているもので完全に詐欺だが、金融庁がこれは投資で自己責任だとしている。金融庁は金融イノベーションの芽を摘まないことを、規制に乗り出さない理由に挙げる。しかし、金融庁は自らの監督責任を放棄したのではないか? 

 金融庁という役所はそもそも不要ではないか

 2018-03-21更新(2018-01-30)


アメリカの郵便貯金 Postal Savings in the United States

2017-07-25 06:51:20 | Financial System

アメリカの郵便貯金は1911年に開始され、1966年に廃止されている。いわゆる先進国の中で米国の郵便貯金は、遅れて始まり、先に廃止されることになった。ところが近年になって米国で繰り返し、復活させようとする議論が出ている。これは、米国では貧しい人たちが、金融サービスを享受できない問題が深刻であるためと、考えられる。

アメリカ大統領選に見る貧困の一端 2016/03/22 サンダース候補が郵便貯金制度復活を唱えたことを指摘している。

David Dayen, "The Post Office should just become a bank?", New Republic, January 24, 2014
Office of Inspector of General(USPS) White Paper, Providing Non-Bank Financial Services for the Underserved, January 27, 2014

lifeline account(investopedia)

通説的な解説では、米国の郵便貯金の廃止の背景は、預金保険制度の整備とされている。しかし、制度の仕組みを調べると、2%という固定利子制度であったことが、当初はこの制度を民間銀行制度を脅かさない設計であったこと、第二次大戦後は、制度の衰退につながったことがわかる。なお私がこの制度を調べて報告したのは1994年。その時分かったのは、まず制度の目的には、国債消化資金を作る点もあったが、両大戦間期に、この貯蓄国債が民間銀行の協力で大量に販売されたことである。米国の郵便貯金は証書式であり、似た形式の貯蓄国債は郵便貯金より利回りも高く、郵便局でも購入できた。預金保険以上に、貯蓄国債との競合のなかで郵便貯金は、その存在意義を低下させ(伸びる機会を逸した)というのが実態ではないか。というのが私の主張であった。
「学会報告要旨 アメリカの郵便貯金について」『金融経済研究』9号, 1995年7月, 128-129 
「アメリカの郵便貯金について」『証券経済』189号, 1994年9月, 79-103 
講演録 アメリカの郵便貯金 四国郵政局貯金部 1994年8月 1-18   

Jeeman Jung, A Study on Postal Savings in Korea (原文は韓国語), The Social Science Research Institute, Sanmyung University, Dec.2000, 1-20, esp.18(「アメリカの郵便貯金について」(1994))

戸原つね子「金融ビッグバン下の公的金融の動向ー過渡期の変動と改革の展望」『農林金融』July 1999, 21-34, esp.33-34(「アメリカの郵便貯金について」(1994))

EWKemmerer, "The United State Postal Savings Bank", Political Science Quarterly, Vol.26 No.3, Sep.1911, 462-499 

David Hu, "The influence of the U.S.Postal Savings System on Bank Runs", Yale Journal of Economics, Fall 2013, Vol.2 No.1

Postal Savings System (Smithsonan National Postal Museum)

US postal Saving system(Postal Services)
Postal Savings System(Historian United Postal Services, July 2008)

ゆうちょ財団「リテール金融分野に係る各国諸制度の調査内容の現行化」2017年4月20日更新 

 

2017-07-25(2014-04-29)

 


バーゼル規制(バーゼル3)について

2015-03-15 09:44:36 | Financial System

Basel 3

 2010年9月12日 バーゼル銀行監督委員会首脳会議で新たな自己資本規制(バーゼルⅢ 国際的に業務を行う銀行に対する自己資本規制)の枠組みが発表された(日銀の白川方明総裁 金融庁三国谷勝範長官が首脳会議に出席)。バーゼル委員会には27の国・地域が参加している。この枠組みは2010年11月のソウルサミット(G20)で報告され了承された。2010年12月16日、バーゼル銀行監督委員会は新たな規制の詳細を示すバーゼルⅢテキストを公表した。
 日本では3メガ含む14行(ほかには「りそな」「住友信託」「中央三井」など)が、バーゼル3への適応が求められる。なお3メガと野村はSIFI(systemically important financial institutions) として、さらに重い規制が加えられる可能性が高いが、SIFIに加えられる規制の議論はこれからである。
 バーゼル2からバーゼル3での変化では、資本の質についての議論とカウンターシクリカルの議論、そしてレバレッジ規制が重要である
 資本の質の議論では、自己資本のもつバッファー機能(業績の変動を吸収する機能)が注目された。バッファー機能で疑問が付けられたものが、中核的自己資本から除外された。そして中核的自己資本についての比率規制が導入された。なお最終案では幾つかの妥協が図られた。
 カウンターシクリカルの議論は、自己資本比率規制が、景気の振幅を大きくしているのではないか。という批判(後述するプロシクリカリティへの批判)に対応するものである。その逆に景気振幅を小さくするように、規制の在り方を、弾力的に景気の振幅を小さくするように可変的に変更するという考え方である。
 最後のレバレッジ規制は、有る意味では現在のリスクアセットレシオ規制を根底から覆す側面をもっている。リスクアセットの考え方では、たとえば国債のようにリスクゼロと評価されたもので資産を膨らませる、つまりレバレッジを拡大することが可能になってしまう。そこでレバレッジ自体を規制しようとする議論が導入されている。
 (追記 なお池尾さんがテールリスク、つまり統計確率的には少ないはずのリスクが顕在化した場合に自己資本比率規制では役に立たないことを挙げ、結局、バーゼル規制は政治的思惑の産物だったとされている。また2012年3月末で期限の切れる弾力化措置の打ち切りがむつかしいことに言及されている。この弾力化措置は、2008年12月期決算から2012年3月期決算までの時限措置。評価損について自己資本にの反映させない扱いを、国内基準行には、国債等と株式・社債等について認め、国際基準行には、国債等について認めていること。この弾力化はそれぞれの評価益を反映しない取扱いと対応している。国際基準行についての株式・社債等の扱いは、評価益の45%をTier1に算入 評価損の約60%をTier1控除のまま、弾力化後も変更されていない。池尾和人「金融危機の本来的な経験・教訓を生かせなかったバーゼルⅢ」『金融財政事情』2011年10月24日, 24-28。)
なおテールリスクについてはVaRへの信頼喪失と金融機関のリスクマネジメント
国際基準行への自己資本比率規制(2009年2月)

バーゼル規制の推移
 1988年 バーゼルⅠ 公表
 1996 市場リスク規制導入
 1998 バーゼルⅠ 見直し作業開始
 2004 バーゼルⅡ 公表(オペレーショナルリスク規制 リスク評価精緻化など)
 2007 バーゼルⅡ 適用開始(日本は2007年3月期から)
 2008 バーゼルⅡ 見直し作業開始
 2008年9月 リーマンショック
 2009年4月 ロンドンのG20首脳会議 景気回復が確かになれば銀行の自己資本の質強化 最低基準引き上げ 資本の定義の調和を図る方針を確認
 2009年9月 G20 米ピッツバーグでサミット 2010年末までに新たな自己資本規制策定で合意

 2010年7月 米金融改革法(contingent capital案)
2010年9月 中央銀行総裁銀行監督当局長官グループ会合が新たな自己資本規制の枠組みに合意 7%
 2010年11月 G20 ソウルサミットで枠組みが報告、了承される
 2010年12月 バーゼルⅢテキストの公表

 2011年11月 上乗せ規制を受ける世界28機関判明 アジアではメガ3行とバンクオブチャイナ 2012年2月7日 金融庁が国際的に活動する銀行を対象バーゼル規制の適用を発表 15年3月期までに4.5%(現在は2%) 19年3月期までに7%に引き上げる 巨大金融機関は2016年3月期から1-2.5%の引き上げ 三菱UFJは上乗せが1.5% 他の3行は1.0%

 2013年6月 金融庁は預金保険法でベイルイン債の考え方を盛り込む(6月11日参院財政金融委員会で可決)

 2013年7月 FRB 新自己資本規制を2014年1月から適用へ(4%から7%)。 2014年1月から段階的適用 2019年1月に完全適用。

大手銀行に対して認めた自身の管理モデル(独自モデル)の利用(リスク資産を減らし自己資本のかさ上げに利用)がリスクテイクにつながった可能性。これらのモデルを監督当局が正確に評価できない問題。

2014年9月 巨大銀行に対して新資本本規制(基本は8%規制+金融システム上重要な銀行への上乗せ規制1-2.5%+国際展開する金融機関への上乗せ規合わせて16-20% ベイルイン条項付劣後債など)あわせて16%-20% 2014/09/20-21のG20で中間報告 2014/11オーストラリアでのサミットで合意へ ベイルイン条項:実質破たん認定により元本を強制削減など 三井住友FG16.18% 三菱FG15.53% みずほFG14.86%...2014年6月末 このようにベイルインで問題になったことは contingent capital証券で問題になったこととよく似ている。つまりCCは自己資本が一定比率を割り込んだとき負債から資本に転換する証券のこと。ただベイルイン債には抵抗感が残る。

CoCo債 Contingent Convertible Bonds 条件付き転換社債 資本不足などを要件(トリガー条項)に資本に転換あるいは元本削減 2014年欧州の金融機関中心に発行広がる

金利商品保有(国債や住宅ローンなど)で自己資本の積み増しを求める。

一般に指摘されるバーゼル2の問題
 バーゼル2
 プロシクリカリティ(自己資本比率維持のための銀行の貸し渋り、信用収縮が景気変動の振幅を増幅させること→不況を深刻化させる なお自己資本充実のための株式発行も株価低迷の原因になる 規制が結果として景気の振幅を大きくしている。)
 証券化をリスク逃れの手段として用いる余地 があった。など

 現行規制
       Tier 1 非累積的永久優先株 無形固定資産(企業結合または子会社株式追加取得に伴う再評価による計上分のみ) 優先出資証券 繰延税金資産含む
       Tier 2 有価証券株式含み益の45% 無担保劣後債務 期限付き劣後債務(契約時償還まで5年以下) 期限付優先株 
       Tier 3 無担保短期劣後債務(契約時に償還まで2年以下)  
 Tier 1を中核的自己資本ともいう。 
 分子:Tier 1+Tier 2+Tier 3-控除項目
 分母:信用リスクアセット×scaling factor + 12.5×マーケットリスク相当額 
       + 12.5×オペレーショナルリスク相当額
 この計算式で国際的に展開している銀行は8%以上、国内でのみ活動する銀行は4%以上の確保が求められる
 (菅野正泰『入門 金融リスク資本と統合リスク管理』金融財政事情研究会, 2010年より抜粋 pp.18-20, 40ほか) 
「現行の規制では、銀行の最低所要自己資本比率を...8%とし、そのうち4%は普通株や優先株などで構成されるTier 1で充たすことになっている」金融財政事情2011.1.31, p.10
           ↓

2013年から段階的に導入される「バーゼル3では{2015年には、}Tier 1を6%に高め、そのうち、4.5%は普通株と内部留保に限定した普通株等Tier 1という新たな資本区分で満たすこととなった。...その他のTier 1とTier 2も、破綻時の損失吸収力を備えていることなど、参入要件が大幅に強化された」金融財政事情2011.1.31, p.10
 バーゼル3ではコア自己資本の考え方が、破綻時の損失吸収力の観点から厳格化された
 カウンターシクリカル  プロシクリカリティを抑制するための規制 → 普通株等Tier 1を2019年までに2.5%上積みする資本保全バッファー 景気過熱時に各国当局の判断で0-2.5%の範囲で上積みする可変的自己資本比率規制
 資本比率を満たしていない場合は配当や役員報酬など社外流出制限して数値基準のクリアを求める
  その運用には課題も多い。想定では、
  景気過熱感有る地域→上乗せ規制
   総与信対GNP比率の長期トレンドからのかい離
  景気後退期 バッファーの取り崩し認める
資本の積み増し取り崩し期間の判断をどうするか

2009年12月 バーゼル委員会 市中協議文書(当初案)の公表
 1.資本の質による中核的自己資本core capitalの振り分け
 資本の質の向上 普通株と内部留保の重視、繰り延べ税金資産などいくつかの項目の資本からの控除、金融機関同士の資本の持ち合い(ダブルギアリング)の制限の強化が提案された。資本の質を高めることで、資本の損失吸収力高めることに狙いがあるとされた。
 資本の質 リスクバッファー機能の有無が問題にされた
 普通株:業績悪化時無配にできる→ 機能あり
 内部留保:配当支払いなし→ 機能あり
この2つで普通株等Tier 1(=コア自己資本)という区分をつくる
資本の質に問題ありとされたものの内容と最終調整(2010年9月)
 株式含み益:相場に左右され安定しない → (猶予期間の適用)
 繰延税金資産:払い戻されない可能性あり → (2010年7月の首脳会議で調整 普通株等Tier 1の10%まで算入可)
 優先株:業績に関係なく割高な配当の支払い義務→ (コアTier 1から除外して その他Tier 1)
 一部の優先出資証券、劣後債、劣後ローンなど:ステップアップ金利は認められない、償還への誘因を伴うものも不可 → (コアTier 1から除外して その他Tier 1 あるいはTier 2 ステップアップなしの優先出資証券をその他Tier 1 初回コールまで5年以上ある劣後債・劣後ローンをTier 2)
(なおバーゼル銀行監督委員会が2011年1月13日に公表した文書によれば、バーゼルⅢのもとでは、優先株や劣後債などの資本商品が、その他Tier 1やTier 2に算入されるためには、元本削減または公的資金の注入もしくは同等の支援がなければ銀行の存続が不可能と当局が決定する=トリガー事由が発生した場合に資本削減または普通株転換の実施を義務付ける契約条項を発行条件に盛り込む必要があるとのこと また日本ではトリガー事由に対応する預金保険法102条発動時に資本金を減少できる規定がすでにあるとのこと 『金融財政事情』2011年1月24日, p.8)

 2.カウンターシクリカルな規制の導入 
 2-1 資本保全バッファーの導入
   過剰融資の抑制のため 景気拡大局面で引き上げられる 最低基準を上回るバッファーの積み増し ストレス時の取り崩し可能
         数値基準にGDPに対する与信総額の比率 過去の平均との比較
   ターゲット水準より自己資本比率低い時 配当や報酬など社外流出が制限される
 なおバッファーの考えかたはバーゼル2で規制資本8%にX%のバッファーの和を最適自己資本比率としていたところにすでにみられると田幡直樹さんは指摘している(同「金融監督の課題 グローバルな連携が必要」『日本経済新聞』2009年9月16日)。その効果は成長の早い国に影響するとみられるので→1988年のバーゼル1が邦銀をけん制するものだった*のと同様に、2010年の規制は新興国、とくに中国の銀行をけん制するものとの見方がある。
 *当時、日本の銀行のover presence問題が大きな問題になった。英米の金融当局はその原因として日本の銀行のレバレッジが大きすぎることを挙げた。過少資本で流動性のリスクを負って海外業務を拡大していることは、日本の金融当局からみても問題があった。(参照 平澤貞昭「専門金融機関制度の見直し論議に終止符」『金融財政事情 創刊60周年記念号』2010年7月22日, pp.46-56, esp.54)
 2-2 カウンターシクリカルな資本バッファーの導入
  過度の信用拡大を防止するため、資本の積み増しを求めるもの(各国の状況に応じて実施)
  その他の損失吸収力のある資本の導入 一定のトリガーにより普通株への転換等が起きるコンティンジェントキャピタル  

 3.レバレッジ規制の導入
 リスクアセットレシオ → リスクが適切に捕捉されないと過剰レバレッジを抑制できない 過剰なレバレッジを防止する 直接的レバレッジ規制を検討するとされた。
 補完的指標としてのレバレッジ比率規制(オフバランス項目を含むすべての資産に対する中核的自己資本の割合+証券化目的導管体向け信用補完、流動性補完など)の提案。
 トレーデイング勘定(流動性高いとして自己資本低く計算)が乱用された。リスクの高い資産をトレーデイング勘定に計上。ここでレバレッジをかけていた。ここで損失の大半が発生した。
 合わせて流動性規制の提案 換金性の高い資産を一定以上保有することを求める規制(30日間の激しいストレスに対応できる流動性t資産の保有を求める流動性カバレッジ規制と、運用資産の流動性リスク度合いに応じて調達側の安定度を求める安定調達比率とからなる)

2010年4月14日 全銀協の要望
   コア自己資本について
   銀行システム(ソフトウエア 無形固定資産)は収益の源泉であり除くべきでない
   繰延税金資産 一定水準までの算入求める
   他の金融機関への出資 控除対象は国内金融機関への出資分にとどめる など
 
2010年7月26日 バーゼル委員会首脳会議
 中核的自己資本への算入項目を増やす形で当初案を緩和
   繰延税金資産 普通株の10%相当額まで算入可能
   他の金融機関への普通株出資(ダブルギアリング) 同上
   合計で普通株の15%分を上限として算入を認める など
 このほか
 ソフトウエア等の無形固定資産は、各国の会計基準と国際会計基準との間に差異がある場合には、国際会計基準に基づく取扱を適用することを許容するとされた。
 レバレッジ比率規制について、より具体的提案。2017年を移行期間として2017年前半に2018年1月からの導入を決定すること。3%という割合でのテストすること、2015年から銀行にレバレッジ比率の開示を求めること。などの提案
日本は国債をレバレッジ規制から外すように主張)
 このほか市場からの資本調達が困難な状況で中核的自己資本の増強を可能にする(バッファーとして役に立つ)条件付き資本導入の提案。条件付き資本、コンティンジェント・キャピタルとは、あらかじめ定められたトリガー自由が発生したときに、普通株などに転換される劣後債などの資本性商品。
(青崎稔・北野淳史「バーゼル委「包括的な規制改革案」に関する見直しの内容」『金融財政事情』2010年8月23日号, pp.10-15より抜粋)
(大槻さんは、緩和の背景として、2009年秋のドバイショックと、2010年春先の欧州ソブリンリスクの高まりを指摘している。大槻奈那「利益の積み上げと資本増強で邦銀も最低基準の達成に一応のメド」前掲誌, pp.16-20.)

 9月の首脳会議で自己資本比率の水準や経過措置を最終決定  

2010年9月12日 バーゼル委員会首脳会議 バーゼルⅢ 公表
 規制導入を段階的に進める形でさらに当初案を緩和。2010年11月 ソウルのG20首脳会議での最終合意目指す。

 2-1 資本保全バッファーについて2.5%(段階的実施 2016年開始 2019年完全実施)
 2-1 カウンターシクリカルな資本バッファーについて0-2.5%のレンジで設定 
 
最終案(段階的規制案 2010年9月で提示 2010年12月テキストで詳細確定)の内容
 調整が続いていたコア自己資本の数値、規制の導入から完成までの段階的な進め方が明示された(2010年9月に明示 2010年12月テキストで詳細確定)。
 狭義の中核的自己資本(普通株等Tier 1+資本保全バッファー)の仕上がりは7%とされた。2013年1月から段階的に適用を始め2019年1月に新規制に全面移行する。
 普通株等Tier 1の最低水準の仕上がりは4.5%。これに固定的上乗せ(資本保全バッファー)2.5%がある。
 普通株等Tier 1最低水準規制の開始は2013年1月からで2015年には完成(4.5%)。上乗せ(資本保全バッファー)規制は2016年から開始。徐徐に引き上げ2019年1月には2.5%。両者を合せた水準は2019年には7%となる。
このほか景気動向に応じて0-2.5%:国内総生産に比べ貸出の伸びが高い場合 景気過熱時に各国当局で最大2.5%をさらに上乗せられるものとする。
 優先株等も含めた場合の広義の中核的自己資本(普通株等Tier 1 + その他Tier 1 =Tier 1)6% 上乗せ(資本保全バッファー)2.5%と合わせて2019年の仕上がりは8.5%とされた。
劣後債などのTier 2も含む時(総資本最低水準)は8%。上乗せ2.5%と合わせた2019年の仕上がりは10.5%とされた。
 繰延税金資産、金融機関への出資など普通株等Tier 1からの新たな控除は2014年以降毎年20%ずつ控除額を拡大2018年から100%完全実施とする。
 優先出資証券は中核的自己資本から取り除くが、すでに発行済のものについては13年から10年間既存の扱いを容認する(なおこのように既得権を一定期間認める条項をgrandfather clauseといい、そうした扱いをすることをgrandfathering猶予期間という)。ただし2013年1月時点の名目残高をベースに毎年10%ずつ減少するものとする(2013年から10年間)。
 資料:池田賢志「バーゼル委 より高い国際的な最低自己資本基準 に関する発表内容について」『金融財政事情』2010年10月11日, pp.10-14.
    池田賢志「バーゼル委員会によるバーゼルⅢテキストの公表について」『金融財政事情』2011年2月7日, pp.10-16    
 
 以下の背景がある。
アメリカ、中国 中核的自己資本比率高い
 欧州、日本  中核的自己資本比率低い

信用リスクにかかわる標準的手法の見直し(2014年12月12日) ⇒ 2015年末最終化目標

事例 事業法人向け債権リスクウェイト

売上高100万€:1.4億ほど  5oo万€以下 500万ー5000万€以下 5000万ー10億€以下  10億€より大きい

レバレッジ:1倍から3倍     100%        90%                         80%                       60%

レバレッジ:3倍から5倍          110%       100%                        90%                       70%

レバレッジ:5倍以上              130%       120%                        110%                      90%

債務超過先は一律300%  上場株式は300%   非上場株式は400%  劣後債250%  PFなふぉは120%  地域開発Pなどの融資は150%

証券化商品の資本賦課枠組に見直し(2014年12月11日)

例 外部格付け準拠方式(長期 抜粋 シニアトランシェ)

外部格付け       1年    5年

AAA               15%      20%

AA                 25%      40%

BBB              90%     105%

BB                160%     180%

CCC        460%    505%

2008年以降の日本の金融機関の対応
2008年末以降 3メガは普通株増資を実施の改善を急いできたが、現在の中核的自己資本比率は(シティグループ証券の野崎浩成氏の試算 日経2010年9月8日による)
  三菱UFJFG 8.6%
三井住友FG 7.9%
みずほFG 6.1%
であり、みずほはバーゼル3規制を達成できていない。実はSIFI(システミックに重要な金融機関)に3メガは認定されており、バーゼル3よりさらに厳しい規制が予想される。みずほは極めて厳しい局面に立たされている。
(日経2010年9月4日は11年3月末で7.4%、6.3%、 4.7%と報道した。また銀行システムなど無形固定資産や他の金融機関への出資分を控除したもっとも厳しい基準では、6.5%程度、三井住友が5%程度、みずほは2%程度とされた。日経2010年5月21日。は2010年7月の増資後も、中核的自己資本が不足しており、自己資本を積み上げるか業務を縮小する必要がある。)

2012年にも予想される段階的規制強化に備える
2008年初め  みずほコーポ銀が米メリルリンチに1300億円出資
2008年7月   三井住友が英バークレイズに1000億円出資  
2008年9月   三菱UFKFG 米モルガンスンタレーに90億ドル(9000億円)の資本支援打ち出す  
2008年9月   リーマン破たん後、株安で含み益縮小 実体経済悪化 企業倒産急増へ
2008年10月末 三菱UFJFG 優先株で3900億円(優先株は国内の生保数社に割り当てる方針) 普通株で6000億円の資本増強計画
2008年11月13日 みずほFGが優先出資証券を最大3000億円発行方針表明
2008年11月18日 三菱UFJFG 年内実施 普通株公募増資 親密保険会社への優先株
        三井住友は希薄化につながらない優先出資証券を国内機関投資家向けに4000億円規模2008年内発行を検討
2008年11月   三菱UFJFG 優先株 3,900億円 実施 配当率年4.6% 普通株への転換権ない社債型(希薄化生じないとの触れ込み)第3者割当方式 11月17日発行 日本生命 明治安田生命 T&DHDなど親密大手生損保が引き受け
2008年12月   三菱UFJFG 普通株式     2,799億円 実施
(12月8日時点では発行価格を417円 調達額は約4000億円。新株発行と自己株式処分とを合わせ約10億株売り出す。国内・海外半分ずつ。11月分と合わせて約1兆円調達の予定が7900億円にとどまったと報道された)
2009年3月期    三井住友FG 最終損益3734億円の赤字(2008年3月期の4615億円の黒字から転落) 減配
         みずほFGは5800億円程度の赤字(2008年3月期の3112億円の黒字から転落 赤字は2003年3月期以来6年ぶり 株価下落のための減損処理支出拡大 貸し倒れに備えた引当金積み増しなどが影響)
2009年6月    三井住友  8610億円の普通株増資を実施 名目 日興コ―ディアル証券買収資金 大型公募増資 
2009年7月    みずほFG 5,292億円 普通株式 実施
2009年11月13日 三菱UFJFG 年内に1兆円規模の普通株公募増資実施で最終調整 最大で25億株程度(資本規制に対応 コア積み増しが目的)
2009年11月18日 三菱UFJFG 1兆円規模の普通株増資を表明
2009年12月   三菱UFJFG  10,313億円 普通株式 実施(国内企業で過去最大級の普通株公募増資 最大25億株発行 国内・海外半分ずつ) 
2010年1月    三井住友FG 9,730億円  普通株式 実施 大型公募増資
2010年4月28日  三井住友FG 10年3月期配当2期ぶりに増配 従来予想90円を100円に 金融危機以降 3メガで増配決定は三井住友だけ 連結純利益予想2200億円が2800億円程度ンに改善(5月18日発表では2715億円) 2度の大型増資で1株当たり利益は7割程度に希薄化、上振れ利益の一部100数十億円を株主に還元    
2010年5月中旬  みずほFG(国際的に中核的自己資本比率で見劣り) 内外で8000億円目標の普通株増資実施を発表
2010年6月25日  みずほFG 7月中に60億株をめど8000億円規模の普通株公募増資を実施する
2010年7月    みずほFG 内外で7516億円 普通株式 実施
大槻奈那「利益の積み上げと資本増強で邦銀も最低基準の達成に一応のメド」前掲誌, p.17.

参考 大手証券の普通株増資
2009年3月 野村 2800億円
2009年7月 大和 2000億円
2009年10月 野村 4300億円

増資の背景
国内 2008年―2009年
 大企業 債券CPから借入・借入枠設定へ
 中小企業融資減る結果に 2008年の資本調達には積極的側面もあった
 2009年4月以降 再び先行き不安か
ら企業の資金調達は低調になる
 したがって国内的に考えると資本規制対応だけが目的にみえる。しかし
国際業務への再展開が進んでいる
 国内が低調な中 メガは海外融資を伸ばしている
 3メガは海外の協調融資案件から声がかかる状態
 海外融資残高 邦銀海外支店貸出残高
 オフショア勘定(外銀+国内市場)→海外投融資 
 国内に比べ利ざや確保しやすい

なぜ普通株でなく優先株、優先出資証券に頼ったかについては、自己資本比率規制の扱いで自己資本に算入できた 円建てで高利回り証券で投資家がいた 法的な規制上都合がよかった 株式市場への直接の影響避けたなどの解釈がある。
 しかし優先株などについては、メガ銀行の配当負担に耐える利益を得ているかという批判がある。普通株での自己資本強化については、海外の銀行資本から出資を受け入れることも考えるべき、という議論も出ている。

Written by Hiroshi Fukumitsu. You may not copy, reproduce or post without obtaining the prior consent of the author.
originally appeared in Sept.15, 2010
corrected and reposted in Feb.7, 2011 and Mar.15, 2011

財務管理論講義
証券市場論講義


影の銀行shadow banking

2014-05-04 15:07:24 | Financial System
Shadow Banking 影の銀行

Hiroshi Fukumitsu

 伝統的な銀行traditional banking(あるいは公式の銀行official banking、現実の銀行real banking)と同様に、短期の流動性を債務として受け入れ、より長期で非流動的な案件に投資を行っているものの、銀行同様には規制されていない、隠れたhidden金融システムのことをshadow banking sytemと呼んでいる。またshadow banks(or shadowbanking system)は、これまでは銀行のように取り付けを防止するための、預金保険の保護や中央銀行による最後の貸し手機能による保護を受けていなかった。
 では保護はどうか?2007年から2008年にかけてサブプライム問題が全世界的に問題になるなか、金融システムの崩壊を防ぐために、shadow bankingに公的支援が与えられるケースがでてきた。伝統的銀行が規制と引き換えに与えられているシェルター(待避壕)をshadow bankingにまで拡張するのなら、銀行同様に規制するべきとRoubiniはフィナンシャルタイムズへの記事で議論した(2008年9月21日)。Nouriel Roubini,"The shadow banking system is unravelling", FT.com, Sept 21, 2008.  from roubini.com
 では規制すべきなのか。
Paddy Hirsh shadow banking system(marketplacevideo) posted in April 13, 2009.このYoutube上の説明(by Paddy Hirsch)はclear cutである。shadow banking の例として住宅ローンの証券化を挙げている。銀行システムに比べて規制されておらずno regulation、安全網safety netがない。その代わり伸縮性flexibilityがあって、市場のニーズの多くを満たしている。だからそこを規制することは間違いだとしている。
 近着のFRBNY論文はshadow bankingは民間ベースで安全性と流動性を供給していたが、トリプルAの格付けや担保に裏付けられたレポ取引といったものが、金融恐慌のなかで機能しなくなったことを指摘している。
 Krugman(プリンストン大学の国際経済学教授)は、ニューヨークタイムズに掲載したコラムで、伝統的な銀行のように受けていない資産担保証券などshadow banking sysytemが、伝統的な銀行に比べてより有利な条件を示すことで伸びてきたとした。Paul Krugman, "Partying like it's 1929" in NYT Opnion, May 21, 2008.
 Gillan Tett and Paul J Davies, Out of the shadows:How banking secret system broke down, FT.com, Dec.16, 2007.
Bill Gross "Beware our shadow banking system"CNN Forutne, November 28, 2007

 金融規制というと銀行規制を思い浮かべがち。しかしベアスターンズ、リーマンブラザースなど、2007年以降の今回の金融危機の引きがねを引いたのは、投資銀行だった。ベアは多数多額のレポ取引の中心にいた。その破綻は市場全体に波及する恐れがあった。あるいはAIGは何をしていたのか。CDS契約を大量に引き受けていたが、その引受が伝統的な金融システムを支えていた。伝統的な預金を扱う銀行の背後で、さまざまな金融機関が、shadow banking systemを構成していた。
 日本語文献として河村健吉さんの『影の銀行』中公新書, 2010年8月はそのものずばりだ。ここで河村さんはアメリカの資産運用会社PIMCOのPaul McCulleyが2007年に作った造語だというMcCulley自身の主張を引用している。影の銀行は、銀行のセーフティ・ネット[中央銀行や預金保険などのことか]にアクセスできないかわりに、銀行に対する規制を受けないもので、現実の銀行から短期の資金を調達している。また格付け機関から格付けを受けて投資家から[CP、リバースレポ、ABCPなどの方法で]獲得した。従来型の銀行は、影の銀行を最大限の利益をあげるために利用した(pp.167-169)。
 なおマカリーのいう銀行に対する規制とは、レバレッジ比率、破たんした場合に必要な支払い準備、貸出や投資の種類などである(p.169)。
 どういうものが影の銀行なのだろうか、河村さんが引用するマカリーはノンバンク、投資銀行、コンデュイット、SIV(投資ビークル)、ヘッジファンドなどを挙げている(p.168)。それからページを改めたところで河村さんは、ガイトナー(Timothy F.Geithner)財務長官(2009/1-)が、NY連銀総裁(2003/11-2009/1)のとき、parallel systemと呼んだものと同じであるとして、商業銀行系列のノンバンクと投資銀行系列のヘッジファンドがそれにあたるとしている(p.170)。
 規制を受けている銀行と「影の銀行」とは対立しているというよりは補完的。互いに相手を利用する関係にあった。
 SIVと預金金融機関との関係については、倉橋透さん小林正宏さん共著(2008年4月刊)につぎのような適切で詳しい説明がある。「SIVはそもそも、投資銀行・商業銀行などの金融機関が設立したもので、金融機関は自分で民間MBSやCDOに投資すればよさそうなものだが、預金金融機関の場合は、投資資産を増やせばそれに見合った自己資本を積み増ししなければならず、このため、オフバランスのSIVを設立し、これらのSIVがいわば別動部隊として、民間MBSやCDOに投資し、金融機関はそれらのSIVのエクイティに投資する、あるいはSIVの資金繰りが詰まった時に融資する融資枠を敷いておく、といったかたちでSIVに関与して収益をあげてきた。」倉橋透・小林正宏『サブプライム問題の正しい考え方』中公新書, 2008年4月, p.103.
 そして2007年に表面化したアメリカのサブプライム問題では、サブプライムローンの拡大がローンの証券化を通じて拡大した。その証券化でリスクの高い部分に投資することでアンカーとして支えたのがヘッジファンドであった。銀行は再証券商品であるCDOに投資したり、SIVやコンディイットを通じた間接保有、そしてこれらの簿外投資主体への流動性補完契約で証券化を支えていたというのは松田岳さんの指摘である。松田岳「住宅バブルをもたらした金融メカニズム」山口義行編『バブルリレー』岩波書店, 2009年2月, pp.65-95, esp.76-77.つまりサブプライム問題の背景には、影の銀行の問題があったということである。

Written by Hiroshi Fukumitsu. You may not copy, reproduce or post without obtaining the prior consent of the author.
originally appeared in May 27, 2010
corrected and reposted in May 4, 2014