goo blog サービス終了のお知らせ 

Entrance for Studies in Finance

blog for business studies
http://blog.goo.ne.jp/fu12345

非伝統的金融政策とはなにか

2017-09-30 14:43:37 | Economics

中央銀行の非伝統的金融政策 the non-traditional monetary policy とはなにか

 民主党(対米関係 対中関係をともに悪化させた最悪の政治的混乱を生んだ)が政権を退陣し第二次安倍政権が発足した2012年12月から日本経済は回復を続けている。この安倍政権のもとで、日本銀行は量的質的金融緩和政策(QQE quantitative and qualitative monetary easing policy 2013年4月開始)を展開している。この政策は従来の伝統的な金融政策と違っているとされる。その非伝統的である所以は、この質的・量的という表現にまさに表れている。

 質的 中央銀行が非リスク資産だけでなくリスク資産(ETF REIT 株式など)を購入するようになった 中央銀行は従来 リスク資産の購入を避けてきた。それが、株式市場あるいは不動産市場への関心や関わりの強化を意味することは間違いないだろう。

    1995年1月17日未明 阪神淡路大震災 

    1999年2月 ゼロ金利政策 無担保コール翌日物がゼロ近くに

    2001年3月 量的緩和政策(2006年3月まで) 

    2001年9月11日 アメリカ同時多発テロ 

    2002年から銀行から株式購入

    2008年10月28日 日経平均バブル後最安値6994円記録 

    2009-2012 民主党政権による政治の歴史的な混乱(稚拙な運営で対米 対中関係 悪化)2009年8月衆院選で勝利するも国民の負託を裏切る

    2010年10月からETF購入

    2011年3月11日 東日本大震災

    なお 国債についても 短期国債(償還までの年限が短い期近国債)から 長期国債 に購入対象のシフトがみられる それだけ 国債についてもリスクは拡大。現在の政策からの脱却には時間がかかる見通しとなっている。 

 量的 金融政策の操作目標 金利 から マネタリーベース(資金供給量) へ → 金利先物市場・国債市場縮小の副作用 → 市場機能よりは脱デフレ というのが日銀の現在の首脳陣の考え方 しかしわずかな動きで金利が大きく動くことになっている。マネタリーベースに目標を置いたが、後述する2016年9月の政策変更を踏まえて、結果としてデフレ解消に失敗したという批判がある。

日銀の総資産の膨張 2017年5月末 500兆円突破(GDPの9割にあたる 2007年末には111兆円だった それが5倍に拡大) 物価上昇目標2%

 2013年4月 2%の物価安定目標を2年程度で

       量的質的金融緩和 quantitative and qualitative monetary easing QQE1 異次元緩和

 2013年末 異次元緩和で円安進む 輸入コスト上昇で消費者物価指数も上昇

  2014年4月 消費税の引き上げ 増税により家計消費縮小へ(値上げした企業から消費者離れる):2014年春のトラウマ

       消費税の引き上げで好循環絶たれる 政府の歴史的判断ミス

 2014年10月末  追加緩和 QQE2 マネタリーベース 年間増加目標を80兆円に拡大  (政策委員会評決5対4 異論を抑えて決定)

 2014年11月 消費税再増税(2015年10月に予定)の先送り決定

 2015年4月 物価上昇目標 13年4月から2年程度(14年度内)を16年度前半頃に変更 変更は1回目

   2015年4月22日 日経平均15年ぶりに2万円台回復

 2015年10月 物価上昇目標 16年度前半頃を16年度後半頃に変更 変更は2回目

 2015年12月 ETFの新たな買い入れ枠設定など緩和の補完措置

 2016年1月 物価上昇目標 16年度後半頃を17年度前半頃に変更 変更は3回目

       マイナス金利政策導入決定(政策委員会評決5対4 委員に十分な時間を与えず) → 長短金利差縮小で金融機関経営に悪影響

 2016年4月 物価上昇目標 17年度前半頃 ⇒17年度中に変更 変更は4回目

 2016年7月 ETFの年間購入額の引き上げ 3.3兆円 6兆円へ 

   2016年9月 長短金利操作導入 軸足を量的緩和から金利操作に移行(短期金利をマイナス0.1%、長期金利をゼロ%程度に誘導する長短金利操作付き量的質的金融緩和政策…国債買い入れ続く 物価上昇率2%上昇が定着したと判断できるまで緩和を継続するオーバーシュート型コミットメント:緩和を長期戦に なお国債保有残高を年80兆円増やす目標数値は維持。IMFは2017年6月この80兆円の言及をやめるように言及。60兆円に鈍ったとされる) →金利野安定(官製相場) → 国債の売買急減 スレルステーパリング(こっそり資産購入額削減)ゼロ金利への誘導で金利は安定化 日本国債VIXも1ポイント台の低水準にある

  2016年10月 物価上昇目標 2017年度中から2018年度頃に変更 変更は5回目

 2017年春 有効求人倍率の上昇 失業率の低下 企業収益の改善など 生鮮食品除くCPI上昇率前年同月比0.3%(4月)

 2017年春 バイトパート時給は上昇 原材料価格も上昇 企業物価指数は上昇 しかし消費者物価指数CPIは微増にとどまる 川下デフレ

 2017年5月末 日銀資産500兆円超え GDPの9割強(FRBは23%)

 2017年6月末 日銀保有国債は430兆円 発行残高の4割を突破 日銀はとくに短期国債購入を控えている マイナス金利状態で満期までもてば評価損もでるため

 2017年7月 世界の中央銀行が大規模緩和政策を終えようとするなか(2017年6月 FRBは2017年に入って2度目の利上げ決定)長期金利 2017年4月に0.01%の底から上昇 4ケ月半ぶりに2017年7月0.1%まで上昇(2017年2月0.1%から4月0.01%まで急落 2年物は3月頭マイナス0.30%が底 6月末にはマイナス0.10%) → 7月に入ると先進各国で金利上昇 日銀は金融緩和政策維持(内外金利差拡大から円安見通し)80兆円の目標値、ETF保有額年6兆円ベースの増額にも言及(2017年6月22日 岩田副総裁記者会見)

 2017年7月―8月 エネルギー価格(原油価格の上昇 電力・ガス料金 光熱費上昇) 円安(輸入品価格の上昇から企業物価は上昇 原油価格については中長期の原油安を指摘する意見も根強い) 食料品価格(生鮮食品など)の上昇を受けて物価は上昇局面入り 日本のCPI上昇率は0.5%程度。米欧の1%台とは大きな差がある。

(物価上昇を抑える要因として品質問題がある。住居費の算出方法として品質低下を反映しない場合、実質的に家賃は上昇していても住居費には反映しない。富裕層による貸家投資が過熱⇒そもそも貸家が過剰で全国的には家賃が下落傾向のある。またデジタル革命による通信コストの変化も重要。情報探索コストが劇的にさがるなど効率の改善が起きているとも考えられる。)

 人手不足による省力化投資(労働生産性を改善し⇒自動化投資 ロボット化が雇用を奪うとの解釈もある 生産性の伸びが実質賃金の伸びを上回れば)は結局人件費を抑えると解釈されている 今一つは生産効率の改善 生産効率に名を借りた残業禁止 また営業時間の短縮 不採算店の閉鎖などの利益確保 などは人件費抑制の側面 賃金が伸びなければ輸入品価格が上昇しても消費者に転嫁しにくい 求人倍率上昇・失業率低下の背景に団塊世代引退の影響 女性や高齢者の労働参加は限界に近いとも・・・となると賃金上昇?

 2017年7月 物価上昇目標 2018年度頃から2019年頃に目標変更 変更は6回目 追加緩和必要なし(7月20日) 人手不足で物価上昇はなくとも好景気? なぜ目標値の引き下げ とりやめができないか。⇒ 物価上昇目標値の引き下げ(高いお金の価値を望む)はデフレ心理を強め円高を強めるのでさげられない FRBやECBも事実上目標は2%なのでそれより低い目標は誤ったメッセージになる

 物価上昇期待(インフレ期待)を過度に織り込んだ(実際は消費者はデフレ心理にある)日銀モデル(期待先行モデル)が予測のはずれを生む。

17年度予算 97兆4547億円 過去最高を更新 債務残高のGCP比は2016年度GDPの160%

 国地方あわせて基礎的財政収支(社会保障や公共事業など政策経費と税収の比較) を税収で賄う(政策経費<税収)ことをプライマリ―バランスPBという。それを2020年度に達成するのが安倍政権の国際公約。しかしその実現は厳しい(2017年7月で2020年度は8.2兆円程度の赤字見込み 実質成長率2%程度の楽観想定でも 試算の前提としての2019年10月の消費増税実現するとしても)→2020年財政黒字化目標先送りか?

 財政健全化目標 2020年度までのPB黒字化+債務残高対GDP比の安定的な引き下げ目指す 後者の目標数字はGDPが増えると改善するので、債務残高そのものを減らすことにならないとの批判がある

 なお2014年4月の消費税税率引き上げ こちらは2014年の景気を冷やした反面 その後の税収増要因になったとされる。

 日本企業の海外子会社の稼ぎ・・・一定の条件で税金上優遇 といったことがあって 企業の海外の稼ぎが増えても 税収増そのままつながらない

超低金利政策の弊害

 長短金利操作付き・・・日銀が長期金利(10年物)もコントロール 市場では超長期物の金利が上昇

 取引でも20年物が増える

 懸念される 安全資産バブルの崩壊(国債のマイナス金利からの浮上 低リスク株からの資金流出)

 低金利+株高

 日本の潜在成長率の低下から日本の金利は今後も高くならないとの見方も多い。

 日本国債のCDSも上昇0.3%から0.4%へ 2017年9月下旬

 市場の短期化(投機化) 財政規律の低下 金融機関への影響

 日銀は動けない状態(出口がなく 現在の政策から脱却できない状況)にある。 

 債券投資が成り立たず市場が短期売買の場となっている。運用ニーズは超長期債 劣後債などに。

 金利上昇リスク スワップション


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

Originally appeared in September 30, 2017


 
財務管理論 
証券市場論 


2017年7-9月 米FRB資産縮小決定

2017-09-22 17:24:39 | Area Studies

2017年7~9月 テーパリングの決定(9月)

 物価上昇率の停滞 ハリケーン被害による雇用の下ぶれ(経済成長率は2017年2.1%見通し。日本は1.3%) 9月まで利上げ見送る。しかし10月からのFRB資産縮小(再投資をしない)は決定(9月19-20日のFOMC米連邦公開市場委員会)。テーパリング(金融資産買入れ額の縮小 市場への影響を考慮して満期を迎えても再投資しない規模を拡大 当面3ケ月は米国債を月60億ドル MBSなどを月40億ドルそれぞれ再投資額を縮小する。1年後には縮小幅をそれぞれ月300億ドル、200億ドルとし資産縮小の規模を最大年6000億ドルとする)。2015年12月からゼロ金利解除政策開始(16年12月 17年3月 6月に政策金利引き上げ)→2008年以降の金融危機対応の完全終結(2007年には4%台だった長期金利は2%強)。バランスシートは4.5兆ドル(2008年の危機前は9000億ドル)。今後10月にも再利上げが見込まれる。

   注目したいのは為替動向だが、金利が上昇すればその国の為替が高くなる。アメリカの金利引き上げはドル高(円安)となるはず。しかし影響するのは物価上昇率の差だとされる。米国では物価上昇率の低下がみられる。日米の金利が仮に同じなら物価上昇率が高い国の金利はそれだけ低下することになる。為替相場は金利が高い方の国が高くなる。米国の物価が上昇しないということなら、日米金利差は縮小、円高(ドル安)に振れることになる。

 この間のトランプ政権への期待はドル高(円安)に。またトランプ政権の政策実行能力への不安はドル安(円高)要因になった。政府日銀は円安による輸出促進効果は現地生産への移行によって低下したと公言を始めている。これはトランプ政権が日本が円安誘導政策(さらに円売り介入政策)をとっていると批判していることへの煙幕ではないかと指摘されている。しかしこの指摘を重ねると、円安→株高という循環を政府は自ら崩す結果になる。

米金利引き上げ 高まる米景気後退論(2017年5月~6月)

 FRBは2017年3月に3ケ月ぶりに利上げに踏み切った。そして6月にも利上げした(0.25%政策金利の誘導目標を引き上げ FF金利を年0.75-1.00%から1.00-1.25%に引き上げ)。ただそれでドル高・円安になるかは疑問視される。それは利上げが、米国の長期金利の上昇を必ずしも意味しないからだ。米国の金利上昇のにぶりから、景気回復基調の新興国(トルコ ポーランド インド 韓国 インドネシア 南アフリカ ブラジル アルゼンチン メキシコなど)に資金が流入している。

 2017年4月下旬から景気指標が市場予想を下回るものが増え米経済がピーク超えしたとの情報(2017年4月後半からエコノミックサプライズ指数はマイナス化)から、米国経済はピークを超えて後退局面に入ったとの観測がひろがっている。こうした米景気減速感から、為替相場はむしろ円高に振れている。米経済は2009年8月から長期上昇局面にあった。そろそろ転換ではないかという指摘がある。であれば、この6月の利上げのあとは利下げが予測される。加えてトランプ政権の不安定さも一つの要因になる。トランプの政策は実現するとしても規模が縮小(トランプ政権への期待の剥落)、金利引き上げ要因となる大きなインフレは起きないと市場は予測する。むしろ逆に金利下げからドル安・円高とも。

貿易収支・外債投資で多くの懸念材料

 他面で日本の貿易収支をみると、2017年4月の発表では実に6年ぶりに2016年度の貿易収支が黒字化、経常収支の黒字の大きさはリーマンショック前の2007年度の水準を回復した(原油価格下落 天然ガスの輸入額が減少する一方 アジア向け 米国欧州向け輸出が好調)。トランプ政権登場後(大統領選に勝利2016年11月) トランプは強力にドル高是正発言を続けている(現在は14年ぶりのドル高水準 ドルが強くなりすぎているのはアメリカの本音といってよい)。急激な円安は2017年に入ると収まり円高に市場は動いた背景には、国際収支の動向があるが、それが米国の意向にも沿っていることは明らかだ。逆に為替が輸出入に与える影響は現地生産(部品供給網は海外化)の進行で低下。

 国際収支の今後を考えると、資源価格の上昇により貿易黒字は減りそうだ。しかし旅行収支の黒字幅は外国人観光客の増加で拡大しそうだ。それ以上に増えそうなのが知的財産にたいする収入。ノウハウや商標、特許権料などの収入。これらのサービス収支が、貿易収支の黒字幅の減少を補いそうだ。となると円高基調はなお続くとみるべきではないか。足元の景気の良さ(日銀の政策の継続を望む意見から円高に行かない+米国経済の先行き不安からドルを買い進まない トランプ政権登場で政策期待から金利上昇 国内運用機関は外債運用で損失 外債運用減らす その後再び外債へ+通常為替ヘッジ つまり円売りと円買いを同時に行うので為替中立的 生保はヘッジをかけないオープン外債は少ない ヘッジ比率は5割から8割 ヘッジをかけないものとしてGPIFがある GPIFは外国ものが運用上限の4割に近く動けない 米国債先物売り・・・その後の買戻し=金利下げ圧力につながる)を反映した、ぬるま湯相場(ゴルディロックス)から一層の円高を警戒する意見が強い。

 円高リスクは生保の外債投資を鈍らせる。投資コスト下げるにはヘッジ比率下げる。それには円高リスク大きい。

 いわゆる地政学リスクに伴う安全通貨円買いも 円高要因。史上最高値の株高にある米国株の腰折れ懸念。

原油価格は上昇に転換(2016年後半)

OPECの減産合意(2016年9月および11月末)を受けて、原油安から原油価格上昇へ(北海ブレンドは2016年42ドルから52ドルを波動 ドバイ原油は22-23ドルから50ドルへ倍以上に上昇した)。貿易収支の黒字幅は縮小へ。 

2016年9月7日 一次101円20銭2週間ぶりの高値 

2016年9月時点 スイスとドイツで10年物国債の8割 日本国債では7割がマイナス金利。景気を刺激も引き締めもしない中立金利が先進国でずるずる下がり「長期停滞」に陥っている。銀行も利ざやがとれず融資を控えるようになっている。強めの需要政策が必要という「高圧経済論」が強まる。➡すなわちこれまでの金融緩和に頼った政策の限界が指摘されている。これまでは政府の財政出動が、歯止めのない大きな政府につながることを批判する意見が強く、構造改革の推進が正しいとされていた。しかし、世界全体が低成長から抜き出れない状況。一種の悪循環に陥っているという反省が強まっている。極端な低金利の長期化が金融機関の経営や年金財政に与えるマイナスの側面にも関心が高まっている。

10月28日 米商務省発表 7-9月期実質GDP速報値 前期比年率換算2.9%増 2年ぶりの高い伸び 市場予想の2.5%程度を上回る 4-6月期の1.4%から改善

さらにドナルド・トランプの大統領選出(2016年11月8日)を受けて、インフラ投資、規制緩和が進むことが期待されて、米景気の改善が見込まれ、米金利は上昇へ。原油高もあり、円安へ。

9月28日に行われたOPECの臨時総会で日量3200-3300万バレルへの減産(8月時点で3324万バレル)が合意された。日量120万バレル程度の減産。 減産合意は8年ぶりで画期的。背景にはサウジの譲歩。米国のシェールに対抗する必要性から増産に踏み込んだ2014年から2015年にかけてのシェア確保優先方針を転換。原油安に危機感(原油価格がサウジの財政を圧迫 脱石油に向かう投資にも暗雲)。

米国では11月8日に投開票が行われた米大統領選挙で共和党のドナルド・トランプが次期大統領に選出された。

トランプ次期大統領の政策(大幅減税 インフラ投資 エネルギーや金融で規制緩和 米国内への資本参入を促進)で米景気が上向くとの観測から、利上げ観測・ドル高(米金利急上昇➡12月の利上げ確実。 米国の株価金利が急上昇。高金利のドルが買われ円安)。新興国からは資金流出が進む。新興国はマネー流出で株価下がる

ドナルド・トランプの登場でFRBの金融政策にも不透明感が高まる。もともとFRBの金融政策には批判が少なくない。12月の利上げに、イエレンは踏み込めなくなったとも、大統領就任前に利上げに踏み込むともされた。11月の失業率は4.6%と約9年ぶりの低い水準(前月比0.3ポイントダウン)。トランプ次期政権が掲げる大型の景気刺激策もあって、市場は利上げを予想。低金利、低インフレの時期は転換期を迎えたとの観測がもっぱらとなった(後述するようにFRBは12月14日のFOMCで2015年12月以来1年ぶりの利上げを決めた。2015年12月の利上げは9年半ぶりで2008年以来のゼロ金利政策の解除をいみした。)。

11月21日 インフラなど公共投資期待。財政支出拡大 インフレ懸念 円は一時111円台 株価は1万8000円台確保

11月24日一時112円台後半に下落。午後1時 1万8450円。

11月30日のOPEC定期総会(ウイーン本部)で、8年ぶりに減産合意(下限の3250万バレルで合意 減産120万のうち50万をサウジが負担。政情不安のナイジェリア リビアは減産免除 イランも増産余地確保)が確認された(非加盟国ロシアは増産維持したいが石油価格回復には賛成 米国での生産増加も引き下げ要因)。減産合意、原油高から米国では物価上昇予測。12月1日 NYのWTIは1毛月半ぶりに1バレル51ドルの高値をつけた。

その後12月10日 OPECとロシアなど非加盟主要産油国はウイーンのOPEC本部で閣僚会議を開いて協調減産で合意した。非加盟国の減産幅は日量56万バレル弱(うち半分はロシア メキシコが10万など)。両者が合わせて世界生産(2015年で9167万バレル)の2%弱を減産することになった。不安要因はOPECの生産の増勢がとまるかどうか。減産の適用を免れたリビア、ナイジェリアの生産の回復。生産コストを下げたシェールが価格があがることで増産に転じることなど。シリアのアサド政権をめぐってはこれを支持するロシア、イランと、反体制派を支持するサウジが組んだ形。

トランプ円安()トランプ勝利 生保が大胆な円売り 保有外債の為替リスク:背景 多額の外債買い越し 原油減産合意で原油相場上昇 貿易収支黒字幅縮小へ。11月:101円台から113円台へ円安展開。

減産合意 原油高 円安 ➡ 経常収支見通し困難 日本の株価は円安による業績好転期待から上昇。しかし新興国が安定するかどうか 原油価格上昇が国内経済に及ぼす影響はなどを考慮すると株価の上昇がどこまで続くかは疑問。日本では自動社株のほか、トランプの進めるインフラ投資関連株、金融規制緩和と金利上昇で利ざや拡大とから金融株に人気が集まった。

円安は外貨建ての輸入業者には重荷。外貨が必要(外貨での投資)+外貨建て債務で為替変動をヘッジ。銀行の場合は新興国での外貨需要。

トランプの大統領選出後、米国でインフレが進むという観測から金利が上昇。日米金利の拡大が生じて急激に円安が進行した(長期金利差は2.4%台で6年7ケ月ぶりの水準 米長期金利は年2.5%台)。103円台のところから116円台まで(12月12日)。

12月13日 トランプ次期大統領は次期国務長官に米石油メジャーCEOのレックス・テイラーソンCEOの起用を発表した。また前日の12日には国家経済会議の議長にゴールドマンサックスのCOOゲーリー・コーンを指名している。11月30日に財務長官に指名されたステーブン・ムニューチン(エール大学卒)もゴールドマンサックス出身で近年はヘッジファンドを運営。大統領選では陣営の金庫番をつとめたとのこと。日本としては商務長官に知日派のウイルバー・ロス(ハーバード大学院修了 ロスチャイルドに勤めた経験)の起用が決まったことが心強いとされる。

12月14日 米連邦公開市場委員会FOMCは失業率の一段の低下(11月の失業率は前月を0.3ポイント下がって4.6% 実質GDP伸び率7-9月の確定値は3.5%)と物価上昇率が目標の2%に近付いたことを受けて(9年半ぶりだった)2015年12月以来1年ぶりの利上げを決めた(2015年12月の利上げに際して年4回の利上げペースを見通したが3月には2回とし、結局12月まで利上げできなかった。その間に2016年1月に日銀のマイナス金利決定、2月にECBの追加緩和決定があった。政策金利であるFF金利の誘導目標を0.25-0.50%から0.50-0.75%へ。利上げ幅は0.25%.失業率の低下と物価上昇率の低さ(1.7%でなお2%超えない)。なおトランプの大統領就任で今一つ問題にされるのは、イエレンの任期だ。イエレンの任期は2018年2月まで。トランプはイエレンがオバマを支援するために政策金利を据え置いてきたと批判していた。そこで注目されているのがスタンフォード大学のジョン・テイラー。テイラーはインフレ率と成長率をもとに適正金利をはじくテイラー・ルールの考案者だが、FRBのお低金利政策は、適正金利を下回っていると批判してきた。また同じ連銀内部でも(2016年10月)イエレンが金融危機からの脱却には、高圧経済を容認する姿勢を示して、低金利の長期化による景気刺激を容認気味であるのに、フィッシャー副議長は物価上昇率の高まりから金利引き上げの条件が整ってきたことを主張していた(2016年10月から11月)。

トランプとイエレンとの対立はこのほか、ドッドフランク法(2010年7月成立 巨大銀行の監督を強化し銀行のリスク取引行為を制限 高リスクデリバ取引の禁止 FRB主導金融機関監督協議会の設置 金融機関の秩序だった破綻制度 など➡トランプは同法が中小銀行に重い規制順守負担を貸して中小企業の資金調達に悪影響を与えていると批判している ただ銀行の自己勘定取引やファンド投資を制限する同法を壊すことは ウオール街の利益でもある トランプのウオール街批判とは一致しない ただトランプがゴールドマンサックス出身者を重用していることとは関係しそうだ 11月30日 次期財務長官のステーブン・ムニューチン氏はイエレンの仕事ぶりは評価する一方 ドッドフランク法を念頭に金融規制を緩和して融資を促すことを主張している)の評価(危機防止に役立つか 経済成長を鈍化させるか)、財政拡張昨の評価(大規模な需要喚起は不要か:完全雇用を守る 雇用拡大に必要か)、中央銀行の独立性(議会がFRBの金融政策を監視するFRB監査法案についての賛否)などでも目立っていた。したがってトランプの大統領就任により、イエレンは孤立化したとみていいだろう。

このような「過剰な規制からの回避」はヨーロッパでも、過剰な規制が市場機能を却って阻害する問題として知られ、2016年にすでにイギリス、EUの双方でルール緩和の動きがみられるとされる。その意味では、トランプが始めていることは、金融危機後の規制の行き過ぎの反動としてみることもできる。

トランプによる大型減税や10年で1兆ドルというインフラ投資構想は、インフレ圧力を強め利上げを加速する(財政を悪化させるとの意見もある)との見方がある。

低金利政策は通貨高を避ける方策ではあるが、仮に金利が上昇を始めるとドル相場(ドル高)が上昇するとともに、新興国は債務負担が増え(先進国も財政は悪化)、金利上昇は世界全体の重しになる可能性もある。完全雇用に近いもとで財政拡大なら金利上昇という指摘の一方で、ドル高を嫌うなら、利上げスピードはダウンするはずという議論もある。

12月16日 15日に約10ケ月ぶりに118円台の円安。16日も118円台。日経平均は1万9395円(16日午後1時)

12月23日 NY原油先物は1バレル53ドル台終了。年初に比べ4割以上上昇。

1月17日発表のウォールストリートジャーナル紙でのインタビューでトランプは我々の通貨ドルは強すぎるとして通貨安誘導の可能性を示唆した。これはクリントン政権でルービン財務長官が始めたとされる強いドル政策とは矛盾する。また2015年12月の利上げによりドル高に進み始めた市場の動きとも矛盾する。しかし米国製造業からみると輸出競争力を削ぐ一因ではある。他方で次期財務長官に指名されたムニューチン氏は、1月19日、議会公聴会で長期的に強いドルが重要だとして、米国政府のドル高支持という政策は不変だとした。この二人の発言から、トランプ政権の為替政策はまだ固まっていないとの観測が広がった。

2017年1月20日 トランプ政権が発足した。そして公約通り、環太平洋経済連携協定TPP(trans pacific patnership 2015年10月大筋合意 参加12ケ国 8億人 工業品ほとんどや農業品の大部分で関税の撤廃をめざしたもの 12ケ国の国内手続修了で60日で発効 署名から2年経過後は加盟国のGDPの85%を占める6ケ国が通知すると発効)からの離脱を表明した。また中国やメキシコの製品に、高い関税をかける姿勢をしめしている。トランプは英国の金融離脱を賢い選択として評価する姿勢を示している。NAFTA(北米自由貿易協定)も再交渉を明言した。

減産合意に関わらず原油が軟調であるのは 加盟国だが減産の枠外とされたリビアナイジェリアの増産 米シェールオイルの増産(価格あがるとシェールが増えて上値おさえる) メキシコ湾での原油生産の増加 米国内需要の弱さのためガソリン在庫が減らないなど。これに対し、サウジが状況によって自ら輸出量を減らして価格下支えする強硬な態度であること。

2017年5月頃から、ようやく在庫の減少、シェールの生産効率の低下 フラッキングにかかわる技術者の不足が伝えられるようになった。他方で中長期で温暖化対策 自働車・発電の燃費の改善から燃料転換(EVの登場 再生可能エネルギーの急速な値段の低下)で石油消費量減るとの議論がある。これに対して石油生産コストの大きな低下を予測する意見もある。

2017-09-22更新