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韓国述坪島に対する北朝鮮軍による砲撃(2010年11月23日)

2010-11-27 10:04:37 | Area Studies
2010年11月23日、韓国の述坪島(ヨンピョンド)が北朝鮮から砲撃を受けた。この砲撃は11月22日から韓国軍が行っていた演習をけん制するためともとれる。北朝鮮側は韓国から最初の砲撃があったとも主張している(時間経過としても演習による韓国軍の発砲射撃のあと、砲撃が始まったという報道もあった)。疑問が残るのは、韓国軍が砲撃を受け、市民の住宅にまで被害を出しながら十分な反撃を加えなかった点である(反撃開始に13分を要したこと=射撃準備がでていなかったこと 北朝鮮の170発に対し約80発を返したのみで反撃を終えたこと:なおヨンピョンドに着弾した数は80発程度で見合っているようだ 敵に与えた被害が不明であること 空中戦や空爆など戦闘拡大を避けたこと 韓国軍の対応には反撃を最小限にする意図がむしろ見えるが疑問が多い 韓国はK-9自走砲という国産の武器で戦った ところが6両のうち3両が故障で動かなかったという信じがたい整備状況だった 北朝鮮が使用した武器はなお分析中だが、当初の話では海岸沿いの砲台から海岸砲を使ったということであった)。今回の砲撃で民間家屋が多数焼失し、兵士が2人また民間人2人も亡くなり多数の重軽傷者も出ているなどの被害を出した韓国は米国と協議。11月28日から12月1日までの米韓合同演習を予定通り行うことになった。この演習が、北朝鮮を刺激することを心配する意見もある。

 2010年3月26日、韓国巡洋艦「天安」(チョンアン)が爆発沈没した。乗員104名のうち46名が犠牲になったこの事件の原因については、陰謀説がしばらく消えなかった。とくに騒がれたのは米原潜コロンバスとの相討ち説。コロンバスは沈没したというもの(それを米軍が隠しているというもっともらしいお話)。しかし原潜の沈没という重大な事故を隠すというのは信じがたいことであり、報道をつなぎ合わせるとコロンバスは5月3日にハワイに無事戻った、つまりこの話は根拠なき誤報とみてよいようだ。
 改めて地図をみると「天安」(チョンアン)の爆発沈没事件が起きたのは、ヨンピョンドからさらに西北に黄海上を移動した位置にある白翎島(ペンニョンド)付近。ヨンピョンドもペンニョンドも、北朝鮮にすれば、45度腺を北に超えたところで、南北朝鮮軍が対峙するところ。両事件とも北朝鮮がワザと起こしたという解釈も確かに可能だ。

 しかし韓国軍の行動には疑問が残る。2010年3月の「天安チョンアン」については、韓国はこの危険がわかっている水域で、なぜみすみす攻撃を許したのか(警戒が不十分だったのではないか)という疑問がある。また今回2010年11月のヨンピョンドについては、攻撃されるだけで十分な反撃をなぜ行わなかったのかという疑問がある。そもそも反撃開始に13分もかかるというのは一体何なのだろうか。敵に十分な被害を与えたか確認もせず反撃を終了したのも理解できないところだ。局地的な戦闘が、全面的な戦争になることを恐れているのか、韓国軍が多数の犠牲を出しながら反撃を十分に行わなかった理由は今一つ理解できない。

 なおチョンアンの事件に対する米国の反応が北朝鮮を追い詰めたとする解釈もある。チョンアンについての国際調査団(米国 オーストラリア 英国 スウエ―デンの民間団体が参加)の報告が記者発表されたのが5月20日(なお9月13日に最終報告書が出ている)。この発表を受けて、米国政府は北朝鮮に対して、金融制裁に踏み切っている。
 まず8月30日に8団体4個人を指定。
   10月23日に1社を追加指定。
   11月18日に2社を追加指定。
 この米国の金融制裁が北朝鮮の現政権を追い詰めて、自暴自棄といえるヨンピョンド砲撃に至ったとする解釈がある。つまり2つの事件は、米国による北朝鮮政策の硬化を通じて結びつくする解釈である。

 2010年11月に入り、北朝鮮を訪問した米国の核物理学者に、北朝鮮が最新の核燃料の濃縮装置を示したのも、同様に追い詰められた北朝鮮が最後のカードを切ってきたという解釈がある。
 しかし私は、北朝鮮が追い詰められているにせよ、砲撃準備も燃料施設の整備も、かなり長い時間スパンで用意して一定の成果を上げつつあると感じている。冷静にその到達度を評価すべきだと思う。
 砲撃は北朝鮮が臨戦態勢にいまなおあり、常に銃口を本気で韓国に向けていることを示すもの。核燃料施設は、乏しい国家資源を考えると、国家の生き残りをかけて核燃料の濃縮に入る準備が整ったことを内外に宣言するもの。
 確かに一般国民が貧しい独裁国家だがそれを強調するあまり、その軍事力や核開発力を過小評価すると、私たちがケガをするのではないだろうか。



米FRBが追加的金融緩和政策を決定(2010年11月3日)

2010-11-26 08:29:25 | Economics
米国 2010年11月3日の米連邦公開市場委員会(FOMC Federal Open Market Committee)で追加的金融緩和政策が決定された。その狙いは米国経済が日本型デフレ(金融緩和が物価低迷を招きその連鎖から抜け出せなくなること。デフレに陥ったのは、日本銀行の緩和政策と日本政府の財政出動とがともにスピード、量ともに大胆さに欠けていたことが原因とされることがある)に入る事を阻止することにあった。しかしこの決定には国際的な非難も高まっている。それはアメリカの追加的金融緩和策が国際的な過剰流動性をさらに増やし、結果として、世界の金融システムを不安定にするという批判である。11月11日と12日にソウルで開かれたG20サミットでは、人民元の弾力化を主張しようとした米国の思惑とは逆に米国の追加金融緩和に対する新興国の批判が焦点になった。
今回の追加的金融緩和策は2008年秋、国債やMBS(住宅抵当証券)を購入することで凍りついた金融市場に流動性を供給し、バーナンキFRB議長の評価を高めた量的緩和政策QEに続く量的緩和策だとして第二次量的緩和策QE2とも呼ばれ始めている。現在この2008年の措置は経済恐慌の緩和に役だったは評価されている。では今回2010年の措置はどう評価されるのか。
2010年の量的緩和策QE2が発表される前の記事だが、以下のイギリスのエコノミストは、同誌としてはめずらしい論調だが、アメリカの経済政策について景気のためには財政政策が出番であることを主張している。"America's economy"in The Economist, October 30, 2010, p.14.
また発表されたQE2は米国内外で批判にさらされた。米国での金利低下により資金流入に見舞われたアジア諸国はインフレを抑制しようと金利を引き上げたが、それがさらなる資金流入をもたらす矛盾に直面した。金利の上昇は企業の借入コストにつながる矛盾もある。問題の資本規制capital controlに求める国も増えている。アジアの国々は経済政策をワシントンから自立させようとしているのだ。
Shamim Adam,"Asian Leaders at G-20 Brace for a Flood of Dollars"in Bloomberg Businessweee Nov.15, 2010, pp.15-16.
中国側の主張は中国の対米貿易黒字は両国の産業構造の違いによるもので、米国の金融政策はドル安や新興国への資金流入、インフレにつながる。これは米国が負うべきコストを他国に転嫁するものだという批判である。
「批判を強める中国の政府、学者」『エコノミスト』2010年11月30日, p.14.

  
   ・FRBが6000億ドルの長期国債を購入する量的緩和策
   月間750億ドルペース 2011年6月末までに追加的に6000憶ドルの米長期国債を購入する
 2011年半ばまで6000億ドルの長期国債を購入する量的緩和政策QE:quantitative easingである。しかしこれについてBernankeはcredit easingといい。FOMCは資産買い入れプログラムasset purchase programといい、量的緩和政策という表現を避けているとのこと。これを第2次量的緩和というのは報道の側の言い方であり、資産買い取りプログラムasset buying programがFRB側とのこと。Bernankeはquantitative easingというのはliability sideに現れるとみている。民間の銀行が中央銀行(連銀)に置く準備(連銀の負債)を増やすものとして(increasing reserves)。 すでに1兆ドルを民間の銀行は保有している。Bernankeはそれをslumpと闘う正しいやり方とは認めない。credit easingは満期まで2年から10年の国債を購入する。国債の利回りを低下させることで、投資家のマネーを社債、抵当担保証券など国債より高利回り証券に誘導するpositive effect生じるか。さらには金利上昇→資産価格減少といった副作用は生じるかといった論点があるとのこと。以下を参照。Peter Coy, "The Bernanke Code" in Bloomberg Businessweek, Nov.8, 2010, pp.12-14.    
2008年秋以来の1.5兆ドルの資金の増加につぐもの。
  ・2010年8月 保有するMBSの元本償還金の長期国債購入にあてる決定 この措置の継続も決定)
   ・政策金利FF金利の誘導目標0-0.25%の維持
   デフレ回避のために決断
   政策金利から資産購入規模に政策の尺度は変化 

   すでに2008年秋の金融危機のあと
   雇用(悪化懸念) 物価(日本型デフレ化=金融緩和がさらなる物価低迷を招く 懸念)
   (米国)失業率2010年9月9.6%(2009年平均9.3%) 物価CPI2010年9月前年同月比1.1%(2009年平均前年比マイナス0.4%)
   2010年9月 10年国債利回り2.51%(2009年平均3.84%) TB3ケ月0.16%(2009年平均0.06%)
失業率は高く、物価の上昇率は低いところにある。金融市場は2年前 2008年秋に比べると改善され、逆に流動性の追加で経済が浮揚する可能性は低い。むしろ資産価格の上昇、ドル安等の弊害(燃料価格、商品価格の上昇など国内物価の上昇要因)が懸念される。しかしドル安には輸出企業を支援する面はある。国内のインフレが懸念される以上にデフレが懸念された。ドル安による輸出拡大の景気浮揚効果は、家計の借入余力のなさや州や自治体政府の財政引き締めにより相殺されてしまう可能性がある。連邦議会も赤字の拡大に慎重である。

   (日本)失業率2010年9月5.0%(2009年度平均5.2%) 物価CPI2010年9月前年同月比マイナス1.0%(2009年度平均前年度比マイナス1.6%)
2010年9月末 10年国債利回り0.930%(2009年度平均1.395%) コールレート翌日物0.091%(2009年度平均0.102%)
 
   2008年11月 MBS 政府機関債の購入開始決定
   2008年12月 政策金利引き下げ 事実上のゼロ金利政策に
   2009年3月 長期国債の購入決定
   2009年10月 長期国債の購入終了 
   2009年秋以降 購入を順次終了 出口を模索
   2010年3月 MBSなどの購入終了 
   2010年8月 保有するMBSの元本償還金の長期国債購入にあてる決定
   (11月3日にこの措置の継続も決定)
   2010年9月21日 米FOMC 米国の景気雇用回復の遅れが物価低迷につながることに懸念表明
   2010年10月15日 バーナンキ議長 ボストンでの講演で追加的金融緩和政策を強く示唆 
   2010年11月 ゼロ金利政策の継続、追加的緩和政策(量的緩和政策への移行)

考えかた 大胆な量的緩和でデフレへの進行を阻止 個人企業の前向きな消費・投資拡大を期待
     ⇔日本の失敗は量的緩和のスピード、規模がゆっくりしていたことにあるという認識
     ⇔デフレは予防が大事
米経常収支の赤字は国内総生産比3%前後で推移
     海外からの資金流入が前提 ⇒ 維持できるか
     低金利の背景 海外からの資金⇒米国債

副作用 新興国・商品市場への資金流入 インフレ・バブル
    ⇒資源高 資源産出国の発言力拡大?
    利上げ 資本流入規制 ドル買い介入⇒通貨安競争?
    国債通貨体制 不安定化?
⇒   ドル相場に関連している ドル安政策とも
   2010年11月3日の決定に対して国際的批判起こる
低金利 銀行を助ける 
    年金保険は運用困難
    企業は延命

しかしもしも企業銀行が余剰資金を積み上げるだけなら経済の回復に結びつかない
海外野新興国、商品市場に向かい、資源高は企業収益を圧迫する

デフレ心理を解消するために
物価上昇率 あるいは物価水準を目標とする考えかた(price level target)もある
(目標とする物価水準への到達にこだわる 水準を目指して金融緩和を継続する)
こうした考え方はリフレ(インフレ喚起)政策と呼ばれる
⇔中央銀行は物価安定を目指すべきという考え方
⇔中央銀行の信認に影響する
⇔ドルの急落リスクがある
⇔インフレの抑止が困難になる

米国10年国債の利回りは11月3日以降 上昇を続け12月初めには3%(危険ゾーン)を超えた。これを放置すると銀行のバランスシートを圧迫する。景気回復なら長期金利上昇を受け入れるべき。しかし金融危機を再燃させるおそれのある金利上昇は望ましくない。 

参照 
"Bond Investors Detect a Whiff of Inflation "in Bloomberg Businessweek, Nov.22, 2010, pp.23-24.
"Fed under fire"in The Economist, Nov.27, 2010, pp.16, 19, 41-42.
"On the Dollars, Traders back Bernanke"in Bloomberg Businessweek, Nov.29, 2010, p.55.
Rich Miller, "The Partnership: Tim Geithner and Ben Bernanke"in Bloomberg Businessweek, Dec.6, pp.68-76
「危険水準に達する米国長期金利の上昇」『エコノミスト』2010年12月21日, pp.15-16 
"The rise in bond yields does not solve a long-running dilenma"in The Economist, Dec.18, 2010, p.136
吉川雅幸「米国発の過剰マネーは新興国に」『エコノミスト』2011年1月4日,pp.27-28
加藤出「QE2の副作用がにじみ出始めた」『エコノミスト』2011年1月4日, pp.32-34

originally appeared in Nov.18, 2010.
corrected and reposted in Nov.26, 2010.

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円高と企業の対応

2010-11-24 10:25:03 | Economics

1990年代以降 日本メーカーは人件費などが低い海外への
生産移管を進めてきた。
 製造業の海外生産比率 1994年度18% その後急上昇
            2001年29%    
 生産拠点をどこにおくか 成長力の高い国 
事業コストの低い国(productivity)
 消費地に近いところに置くことの合理性
(proximity to consumers in fast-growing economoies)
 物流費 現地のニーズ 現地の規制 為替リスクなど
(tax rates) 日本の法人税実効税率はG20では最も高い
企業活動と税制
 FTA地域国に進出すればFTAの利点(関税がないことなど)を受けられる(韓国はFTA戦略で貿易を伸ばしている)
 限られた資金の重点投資
 中長期的には海外生産比率を上げる(短期的にはコストの削減と予想レートの変更⇒円高は営業減益要因 予想レートが業績予想の前提にある)。
 電子機器についての委託 受託製造サービスEMSの活用
  生産委託費用をドルで支払うと円高が進むと円換算の委託費用を減らせる
  円換算収支の改善
 海外企業の買収・工場の海外進出、外貨建てあるいは主要国通貨建て取引を増やす。
 ドル建ての原材料購入。円建て製品の販売拡大すすめる。
 為替影響度ゼロの経営(為替フリー経営)めざす

 円高に動いている(これからさらに円高に向かう)
 将来については為替予約を入れる。ドル売り円買い。手元のドルについては売りのタイミングを推し量っている。円高(revaluation)はこの両面でドル売り円買いを加速する。
 他方で円安(devaluation)に動いている(これから円安に向かう)。
 ドルの売りを遅らせる。
leads and lags

 長期雇用 熟練で労働コストはあがる 品質の差
 中国の工場は中国国内市場への生産拠点とみるべき

 インド 自動車のスズキ
     オートバイのホンダ
     記録型の光デスク 

円高 海外企業買収のチャンス

2000年以降 中小企業の海外進出
 国内は需要減
 かつては取引先の大手企業に追随
 中小企業は資本力 情報収集能力で劣る
 労務管理でのトラブル 現地企業に受注を奪われる
 新興国メーカーへの生産委託も増えている 人件費 円高の影響回避 新興国向け製品の開発・市場開拓にもつなげる

国内生産拠点
 既存製品の高付加価値化
 納期の短縮化に有効
 生産拠点を国内においても技術水準の高い中小企業は減少。
 部品供給で海外調達が増えることにもなる

参照記事
"Japanese manufacturers leaving home" in The Economist, Nov.20, 2010, pp.71-72.ほか
originally appeared in Nov.19, 2010.
corrected and reposted in Nov.24, 2010.

 


フォードによるマツダ株売却(2010年11月18日)

2010-11-22 09:41:21 | Economics
1979 フォード マツダに25%出資
1996 出資比率引き上げ 33.4% 経営権取得
1997 プラットホーム(車台)統合で合意
2008春 フォード ランドローバー ジャガーをインドタタ自動車に売却(この買収は23億ドルの現金を要したが、タタ自動車に対する米格付け機関による格下げにつながった。しかしその後、インド市場の回復とともにタタ自動車の評価は改善したとされる。中島敬二「タタ自動車が急回復」『エコノミスト』2010年11月23日, p.69)
2008 フォード 過半を売却 出資比率を13.8%に下げる
2009 マツダ 中国事業のひじゅう
2009末 フォード ボルボを中国の自動車会社(浙江吉利控股集団)に売却で合意
2010年1月 2009年通期決算で4年ぶりに黒字決算
2010年6月 フォード ブランド マーキュリーを年内に廃止 残るフォードとリンカーンに資金 人員を集中する
2010年7月23日 4-6月期決算黒字 5四半期連続黒字 2011年末までに実質無借金(手元資金>有利子負債)転換ヲ目標 法的整理を経ていないフォードは債務の圧縮ガ課題
2010 フォード マツダ株売却へ
2010年10月20日 マツダ 新型ガソリンエンジンの開発を発表

2010年11月18日 11%のうち7.5%を売却 三井住友銀行 住友商事 伊藤忠商事など9社
フォード11.0% チェース7.1% 日本トラスティ信託口4.0% 日本マスター信託口3.5% 三井住友2.9%

   チェース7.1% 日本トラスティ信託口4.0% 三井住友3.6% フォード3.5% 日本マスター信託口3.5%



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GMの再上場(2010年11月18日)

2010-11-21 21:09:38 | Economics
2009年
6月1日 法的整理申請(連邦破産法11条) 上場廃止 (米政府はGM救済に500億ドル投じたとされる。)
6月29日 トヨタとの合弁NUMMIからの撤退発表
7月10日 新会社発足 米政府が6割強の株主に
GMの再生は可能か(2009年7月10日 新生GMスタート)
8月6日 2011年後半にプラグインハイブリッド車の商用化を発表
8月13日 ミシガン州ブラウンズタウンの拠点を改修 リチウム電池の組立工場とする 投資額4300万ドル 政府からの1億600万ドルの助成金を受ける
9月   GMが返品可能 販売促進キャンペーン展開開始
10月27日 7月に閉鎖されたGMのウイルミントン工場(生産能力10万台以上の巨大工場)をフィスカーオートモーテイブが1800万ドルで買収、1億7500万ドルを投資、2012年後半からプラグインハイブリッド車の量産にのりだす。原資は米政府からの5億ドルの低利融資とされる
11月3日 独オペル売却計画撤回
GMがオペルのマグナへの売却撤回(2009年11月3日)
12月4日 上海汽車集団と連携してアジア振興市場開拓を進めると発表 折半出資で香港に投資会社 通用上海汽車香港投資(資本金1億ドル)を設立する  折半出資の上海通用汽車(上海GM)の株式1%を8450万ドルで上海汽車に売却 経営の主導権を渡す 
12月7日 電気自動車量産に向け ミシガン州のデトロイト、ハムトラック工場に3億3600万ドル投資(総投資額は7億ドル 2010年春に試作車 2010年後半に量産)

2010年
1月7日 ミシガン州でリチウム電池組み立て工場が稼働 自動車大手による米国初のリチウム電池工場 4300万ドル 米政府の助成金を活用
2月   オペルの再建計画発表(8300人の人員削減 ベルギー工場の年内売却あるいは閉鎖など 売却計画の二転三転で再建計画策定が遅れた)
4月21日 米国 カナダ政府からの融資の前倒し返済を発表
GMが公的融資前倒し返済(2010年4月22日)
5月17日 1-3月決算の黒字転換発表
5月21日 ドイツオペル 年2億6500万ユーロの人件費削減(昇給の一時停止 年2回のボーナスの半減 一時金の削減など)で労働者と合意
6月9日 ドイツ政府 独オペルが求めていた11億ユーロ(1200億円)の政府保証を拒否 州からの支援に期待 37億ユーロの再建費用のうち18億ユーロについて各国政府の支援を期待
6月29日 テスラモーターズ(米政府は4億6500万ドルの低利融資を実施)がナスダック上場(その後、閉鎖されていたNUMMIを取得へ)
7月3日 前半期(1月ー6月)、中国(昨年新車販売台数が1364万台で世界最大の市場)での新車販売台数121万台が同期間の米国での新車販売台数108万台を上回る 中国での総合シェアは13%(3位から首位に浮上)
7月14日 電気自動車のバッテリーに品質保証を付けることを発表 16万キロ 8年間 年内発売開始予定
8月   中国で上海汽車と小型車用エンジンの共同開発で合意
8月12日 4-6月決算 2期連続黒字決算発表
8月18日 新規株式公開をSECに申請
米政府は500億ドルをGM救済に投じたが、返済された融資分を除く400億ドル分がGM株の9億株の普通株61%に転換されている。政府の売却株数は当初3億株。米政府のGM救済への投入額は約500億ドル。すでに返済された融資分を除く約400億ドルがGM株の61%約3億株(総株数は9億株とも)に転換された。米政府等の保有株数は15億株。11月3日段階ではうち3億6500万株を売却予定。
10月7日 ミシガン州オリオン工場に設備投資(小型車生産のため設備更新 1億4500万ドル)
10月28日 ミシガン州ランシングの工場に設備投資(1億9000万ドル) 小型高級車の生産に乗り出す
11月3日 総額130億ドル超の資金調達目指す再上場計画(実質的な国有化からの脱却に狙い 政府の保有比率61%)を正式に発表
   普通株3億6500万株を26-29ドルで売却(約106億ドル) ほかに優先株6000万株1株50ドルで計30億ドル
   7-9月の純利益(暫定)が19億ドルー21億ドル(4-6月の約13億ドルから改善 1-3月期以来連続黒字)
11月10日 7-9月決算 19億5900万ドルの黒字 3期連続黒字決算発表
   2005年以降 生産能力廃棄進める 人件費減る一方 残った工場の稼働率上昇 値引き幅の縮小(単価の改善)に成功
   大規模な工場閉鎖 大幅な人員削減 生え抜き幹部の更迭
   かつては赤字だった北米部門の利益が全体の9割を占めるように変化 
11月15日報道 公募価格 当初計画の26-29ドルでなく33ドル程度に 資金調達額も当初計画の130億ドルから拡大 内外の投資家の引き合い多いため
11月17日 普通株の売り出し価格を1株33ドルに設定 優先株を含めた調達総額は201億ドルで米企業の上場時の資金調達としては過去最大(過去最大は2008年のビザの197億ドル)。
     米政府 労働組合などが158億ドル分の普通株を売却(米政府の出資比率は61%から36.9%に低下) このほか43億ドルの優先株を発行
     投資家の需要を見て231億ドルまでの調達を想定(上場時の資金調達として世界最大規模 過去最大は今年2010年の中国農業銀行の221億ドル) 
11月18日 NYSE、カナダトロントで取引開始 上場廃止以来1年5ケ月ぶり 政府は当初計画の3億株でなく4億株売却することもある 予定より3割多く最大で237億ドル(普通株の売却は4億7800万株に 追加の売り出し枠含めて5億5000万株で180億ドル これにGMが発行する優先株が40億ドル あわせて220億ドル規模)売り出し価格33ドルに対し初値35ドル。初日の終値34ドル19セント。
     GMの中国の合弁相手である上海汽車集団が0.97%の株式の取得を発表 取得金額は約5億ドル 
 ○財務内容の改善(長短借入金の削減459億$=2008末→544億$=200903末→82億$=201006末 現金及び同等物114億ドル=200903末→267億ドル=201006末)
 ○小型化・電気自動車(シボレーボルト2010年11月発売)への対応
 ○販売場所の新興国シフト(国内低下36%=2008 26%=2009前半 中国13%→29%など新興国)

参照 "A Good Day for Obama's Auto Bankers"in Bloomberg Businessweek, Nov.18, 2010, pp.34-35.
"A Stock Windfall for GM's Creditors"in Bloomberg Businessweek, Nov.18, 2010, p.54.     

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2010年のユーロ相場の変動をめぐって

2010-11-21 19:07:12 | Economics
2010年11月12日 英仏独など欧州主要5ケ国が共同声明 2013年半ばまでは金融支援を受ける国の国債保有者が負担を被らないことを強調したため、市場を覆っていた不安はやや後退した。国際通貨としてドルに次いで重要な位置にあるユーロは、2010年に入り相場は南欧諸国の財政問題から次第に低下している(ユーロ安)。
2007年のユーロ高は、2008年のリーマンショック後、一転して歴史的なユーロ安相場に陥っている(一部に逆張り投資がみられる)。2009年11月のギリシャ危機をこの傾向が顕著になった。ユーロ安により、ユーロ圏の輸出が伸びている面はあるが、ユーロ経済の先行きには不安も。(日本の投資マネーは急速ニユーロ離れしている 2010年前半)
 日本企業については、ユーロの下落が急であったためユーロ売りの為替予約がたまってしまう(差損を考えると実行できない)。これが売り圧力になる面がある。他方、ユーロ安はユーロ圏企業にとっては業績好転の追い風になっている。

ユーロ圏全体
 1999年のユーロ導入後 欧州の有力銀行は南欧や東欧への融資・債券投資を拡大した。
南欧や東欧では国の借金が大幅に増えた。
 2009年11月5日 欧州中央銀行定例理事会 資金の貸付期間の短縮を検討(出口戦略模索) ユーロ16ケ国への適用金利年1.0%を据え置き
 2010年3月10日 メルケルドイツ首相とフィヨンフランス首相が欧州通貨基金EMF創設で合意
        (欧州中央銀行やドイツ連邦銀行などは財政再建、インフレ抑制を重視する立場から反対している) 
2010年3月15日 ユーロ圏財務相会議 ギリシャ支援の方向打ち出す
 2010年3月19日 欧州委員会が銀行清算基金(共同設立の銀行破たん処理機関)の創設を検討していることが明らかになった
 2010年5月7日 ユーロ圏16ケ国の緊急首脳会議で緊急支援の基金創設などで合意 ギリシャに800億ユーロの拠出 財政赤字の削減 金融規制・監督の強化など
 2010年5月9日  IMF ギリシャに対する300億ユーロの金融支援決定 ユーロ圏の合意と合わせ1100億ユーロ  
 2010年5月10日 EU 緊急融資制度創設で合意 IMF(最大2500億ユーロ)と合わせて最大7500億ユーロ
 2010年5月10日 ECB 国債の買取措置決める 市場が沈静化して市場機能回復するまで 債券市場の安定のため市場介入 従来は国債担保融資を行っていた。  
 2010年5月   スイス国立銀行(中央銀行)は大量のユーロ買いでユーロを買い支えた(スイスフラン高防止が狙い 外貨準備高4月末1270億ドル→5月末2000億ドル)
 2010年6月   フランスのサルコジ大統領はEU加盟27ケ国のうちユーロ導入16ケ国だけが参加する首脳会議の定例化等を主張→ドイツなどの反対で実現しなかったもののEUに分断の危機
 2010年6月7日 1ユーロ1.18ドルの安値 4年ぶりの低水準
 2010年6月9日 スイスフラン対ユーロでユーロ導入後の最高値 
2010年6月17日 スイス国立銀行総裁が記者会見で為替介入続行を表明(輸出力を維持する デフレを防止する)
 2010年6月21日 6月末を控え また欧州不安の後退からユーロを買い戻す動き 1ユーロ1.24ドル
 2010年6月26日 トロントでのG20で欧州連合による7500億ユーロの緊急融資制度(欧州金融安定化基金)(うちIMFが最大2500億ユーロを負担)について、首脳間の協調が確認される(新興国の一部に慎重論)(3年間の時限なので恒久化が必要 それをもってEMF設立ともいえる) 
 2010年6月28日 1ユーロ110円程度
 2010年6月29日 1ユーロ一時 107円台(世界経済の不透明感)
 2010年7月7日  1ユーロ109円台
 2010年7月8日  欧州中央銀行ECB定例理事会 政策金利年1.0%据え置きを決定
南欧諸国(スペイン ギリシャ ポルトガル)やアイルランドの銀行が銀行間市場で資金を調達しにくい状態
 2010年7月中旬 一時 1ユーロ1.30ドル(緊縮財政が経済成長をダウンさせ1ユーロ1ドルという声もある)
 2010年7月22日 1ユーロ110円台(前週に一時113円台)
 2010年7月23日 欧州銀行監督委員会CEBS 欧州の銀行を対象にしたストレステストの結果公表(域内91行)
         銀行間金利上昇 スペイン ギリシャなど一部の銀行は欧州中央銀行の資金供給に依存(欧州中央銀行が無制限に資金を貸し出して支えている)
 2010年7月28日 一時1ユーロ114円台
 2010年8月13日 スイス国立銀行が2010年1-6月の為替介入で143億スイスフラン、1兆1700億円の損失発生を報告。
 2010年8月27日 ECBトリシェ総裁 金融引き締めに慎重姿勢(危機対策の資金供給と金利引き上げは連動しない)
 2010年9月2日 ECB定例理事会 政策金利を年1.0%で据え置く 2011年1月まで供給額に上限を設けずに短期資金を潤沢に金融市場に放出する措置の継続を決定 1ユーロ 1.3ドル近辺まで上昇(ユーロ安による成長押し上げ効果は限定的とも)
 2010年9月7日 1ユーロ107円近辺 
南欧諸国の財政赤字 財政プレミアム ソブリンリスク(政府債務の信認危機) PIGS(ポルトガル アイルランド イタリア ギリシャ スペイン)イタリアは国債は多いものの日本同様に国内投資家が多くの国債を保有している(また利払い負担が少ない)。ギリシャは国債を海外投資家が保有していることが問題を複雑にした(国外保有が高いほうが財政規律が働くという考え方もある)。
 STUPIDとも。スペイン、ポルトガル、イタリア、トルコ、英国、ドバイ首長国。
欧州には生産性が高く経常収支黒字のドイツと、慢性赤字体質の南欧という南北問題、構造問題がある。財政規律の回復、労働生産性の改善による域内不均衡の解消。

EU 構造改革基金 ギリシャを支援中
  金融安定基金
2010年9月27日 EU財務相会議 財政規律(GDP比3%以内)違反で厳罰主義(自動的に制裁発動)で基本合意→10月下旬の首脳会議での合意目指す
2010年9月29日 欧州委員会は財務規律違反ヲ頻繁に繰り返す国からGDP比0.2%の預託金を有利子の預託金として徴収 対GDP比60%超の国にも制裁を科すことができるようにして、3年間で5%以上の低下を求めるなど 経済ガバナンスを強化する法案をまとめた。→このような制裁強化論はEUにふさわしくないという議論もある。
2010年10月29日 EU首脳会議で欧州版IMFの創設が発表される
        欧州版IMF創設
        財政協定(安定成長協定)違反国への制裁強化
        経常収支等の域内不均衡是正策(制裁)
        加盟国の中期財政計画の事前評価制度導入  
2010年11月16日 EUの来年度予算案 加盟国政府と欧州議会の協議が決裂 暫定予算執行の見込み
2011年1月 銀行 証券 保険など業態別規制スタート

アイルランド 2010年10月6日 フィッチがアイルランド政府国債をAAマイナスからAプラスに格下げ。銀行への公的支援策が9月末に発表され、財政の悪化が懸念された。2010年の財政赤字はGDPの32%(約20%?).2014年までに3%に引き下げる再建計画を2010年11月内に発表予定。2011年度予算が期限の12月7日までに議会を通過するか。
    2010年10月26日 財政赤字を国内総生産比3%に引き下げるには150億ユーロ 1兆7000億円の歳出削減必要とする
                 歳出削減(従来見通しの2倍)で景気悪化懸念       
         2010年10月末 アイルランド国債利回り7%超え
         2010年11月4日   歳出を40億ユーロ削減した11年予算骨格発表
         2010年11月4日 欧州中央銀行理事会 ユーロ圏16ケ国に適用する政策金利を1%で据え置き決定         
         2010年11月上旬 7%台後半
         2010年11月10日 欧州の証券決済機関LCHクリアネットがアイルランド国債取引の証拠金を15%引き上げた
         2010年11月11日 9.2%まで急騰(前日比0.3%前後上昇)→9%続けば市場調達はできず、EU IMFに駆け込むはずとの観測広がる(アイルランド政府は2011年半ばまでの資金は手当て済みとの立場) 
         2010年11月12日 声明受け8.5%に低下 -0.7%
         2010年11月15日 8.1%前後に低下 
         2010年11月16日深夜 欧州ユーロ圏16ケ国財務相会議がアイルランド支援策の検討入りで合意(EUとIMFによる総額7500億ユーロの緊急融資制度を活用する是非などが議論されている) 欧州金融安定基金EFSF(ギリシャ危機後導入 4400億ユーロ規模 ユーロ圏全体の最後の貸し手)に融資支援を求めるかどうか アイルランド政府は支援要請、金融システムの強化策(不良債権を抱えた銀行部門の抜本的改革)を迫られている→銀行の取り付けに備えて、保護対象預金をほかの銀行に移すこと 負債処理を進める清算機構を設立すること      
ギリシャ  
         2009年11月 ギリシャ政府が財政赤字幅之大幅な拡大を発表
         2009年12月 EU首脳会議でギリシャの財政悪化が議題に
         2010年3月 ギリシャが財政再建策を公表    
2010年5月2日 EU IMF 3年で1100億ユーロ 12兆5000億円の協調融資で合意 経済規模でEUの2%のギリシャがなぜ全体に影響するのか
(2012年まで市場での資金調達、国債発行は回避できるがギリシャ政府は2011年にも国債発行再開を希望している)→逆に3年後に時限爆弾がやってくる 発行済国債の償還 新規財政赤字 EUとIMFに対する返済 総額700-800億ユーロが必要とされる 市場で借り換えできなければ債務リストラ必要→金融機関に損失発生
         2010年5月7日 ユーロ圏16ケ国の緊急首脳会議で緊急支援の基金創設などで合意 ギリシャに800億ユーロの拠出 財政赤字の削減 金融規制・監督の強化など
         2010年5月9日  IMF ギリシャに対する300億ユーロの金融支援決定 ユーロ圏の合意と合わせ1100億ユーロ  
2010年5月   暴動が発生
         2010年5月18日 ギリシャ政府(パパンドレウ政権) EU IMF 200億ユーロ融資で合意
         2010年9月   EUとIMFがギリシャの経済プログラム進展を評価 90億ユーロ追加融資供与
         2010年10月7日 2011緊縮予算案(公共事業3.3%削減 軍事費大幅削減 税制改革による税収増 財政赤字の対GDP比率を7%に引き下げる)への大規模スト実施
         2010年10月中旬 国債利回り9%未満 
         2010年11月上旬 10年物国債利回り11%前半
         2010年11月7日 地方選挙(政局不安定になる可能性)
         2010年11月11日 11.7%まで急騰
         2010年11月12日 11.5%に低下 -0.2%
         2010年11月15日 欧州連合統計局が2009年のギリシャの財政赤字の数値を対GDP比15.4%(前回公表値13.8%)に修正
                 債務残高の対GDP比率は126.8%(115.1%)に修正         
                 2010年の財政赤字(計画)は9.4%(8.1%)に修正 

ポルトガル 2010年10月16日 2011予算案(公務員給与5%カット 付加価値税税率引き上げ 銀行税導入 税制優遇措置の廃止 財政赤字の対GDP比率を7.3%から4.6%に引き下げる 2013年までに国防費を4割削減する) 国債利回り6%台半ば(過去最高) 
         2010年11月3日 2011年予算が成立(野党が協力)財政赤字2010年対GDP比7.3% 2011年に4.6%に圧縮ヲ目標
2010年11月11日 7.3%にまで急騰
         2010年11月12日 7.0%に低下 -0.3%         

ドイツ
対比 安全資産とされるドイツ国債    利回り10月末2.5%前後
                    11月上旬 2.4%前後
 域内経済をドイツ経済(ユーロ安をいかした自動車輸出が好調 中国・インドなど新興国へのドイツ製高級車輸出 BMW ポルシェ(ポルシェは2008年にVWに対する持ち株比率を上げて子会社化を狙う。しかし巨額の買収資金債務が経営を圧迫。2009年には一転してVWがポルシェを事実上統合することになった。ポルシェによるVW買収の失敗。2011にVWと経営統合) アウデイ(VW) そのほか小型車でVW ダイムラー 商用車では最大手ダイムラーもブラジル等に伸びる)がけん引する構図 周辺国はドイツへの輸出で潤う 2011年には輸出の鈍化が予想される
         ユーロ圏16ケ国 2010年実質経済成長率予測(2010年9月13日欧州委員会)1.7%
         ユーロ圏の失業率は10%で高止まり 手厚い社会保障制度で個人消費が失速しにくい
         ユーロ圏域内シェアの高いドイツとフランスは輸出依存体質
         GDPシェア ドイツ 27% フランス21% ちなみにギリシャはEUの2% 債務の3%
輸出のGDP比率 ドイツは約40% フランスは約25% 日本は2割弱
         →ドイツの輸出依存体質には米英から批判 内需拡大による安定した経済成長目指すべきとの。
          1990年の東西ドイツ統一直後の経済ブームの再来 失業者低水準→財政再建の貢献
          経済規模に占める政府支出の割合は5割前後 日本の4割前後より高いが財政規律回復を目指す
          現在の赤字は2010年でGDP比率5%の見込み 先進国では優等生
          東欧 中欧が生産コストの安さから活況(ドイツの生産拠点は旧東独 から東欧 アジア アフリカに移りつつある)         GDP実質成長率 
ドイツ 3.4%(11年は1.8%見込む)
フランス 1.6%
イタリア 1.1%
スペイン -0.3%
EU27ケ国 1.8%
英国   1.7%
ポーランド3.4%

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中台経済協力枠組み協定締結(2010年6月29日)

2010-11-19 17:42:31 | Area Studies
1988年   本省人(日本統治時代からの台湾住民とその子孫)である李登輝が総統に就任
        中華民国の台湾化・民主化進める
1996年   初の総統選挙で李登輝が総統に就任
1999年   二国論
2000年5月 陳水扁が総統に就任
2002年8月 一辺一国
2005年3月 中国が反国家分裂法制定
2005年4月 北京で国共トップ会談
2007年6月4日 馬英九氏 台湾紙に中国の民主化求める寄稿
2007年9月15日 台湾で台湾名義で国連加盟訴えた大規模デモ
2008年3月 総統選 国連加盟をめぐる住民投票は(民進党提案 国民党提案ともに)投票率低く成立せず
2008年5月 馬英九が総統に就任
2008年7月 中台直行チャーター便の定期化実現(週4日運航)
2008年7月 中国人観光客の台湾観光を解禁
2008年7月4日 中台直行チャーター便運航始まる
2008年9月 一種の特別な関係
2009年1月 オバマ政権発足
2009年6月30日 台湾経済部 中国企業による直接投資受入れを解禁発表(7月1日から)
        計100分野(全業種が400分野)が対象 中国企業の直接投資解禁は1949年の中台分断以来初めて。
        投資審議委員会(経済部 国防部 大陸委員会等の担当者で構成)の許可制    
2009年8月8日 88水害 700人超える死者行方不明者 馬政権対応で支持率低迷へ
 台風 土石流 災害対応のまずさ 馬政権 危機管理能力の低さを露呈
2009年8月10日 中国の銀聯カード(中国で18億枚発行)台湾の観光地で使用可能が始まる(これまでは持ち込み上限2万元=約28万円)
2009年10月 米国政府と米国産牛肉輸入再開で合意
 馬政権 立法院を無視 世論の厳しい批判受ける
2009年11月 台湾金融監督管理委員会と中国の金融当局が双方の金融機関が相互に支店を開設することを認める覚書に調印(発効は60日以内 相手先申請可能)これまで中国に進出した台湾企業は台湾の銀行と取引できず 米ドルを介して香港経由で人民元 台湾ドルによる送金決済を行い手数料等の負担が大きかった。
2010年1月5日 台湾立法院が米国産牛肉の輸入禁止法案を可決 馬政権窮地に陥る
2010年1月29日 米国防省 台湾に総額64億ドルの武器売却(新型のF16を含めず中国に配慮 潜水艦については今回は含めず引き続き検討)を決定 議会に通告
2010年1月30日 中国外務省外務次官 米国の駐中国大使に「強烈な憤慨」伝える 
2010年2月22日 台湾行政主計処発表 2009年10-12月がGDP 前年比18.02% 3四半期連続で2ケタ成長
2010年2月27日 立法院補欠選挙で4選挙区中3選挙区で野党の民進党が議席獲得(81対27から75対33に)
2010年1月31日 中国政府 米政府による台湾への武器売却を非難する外相談話発表
2010年5月20日 台湾行政主計処発表 2010年1-3月がGDP 前年比11.28% 4四半期連続で2ケタ成長
2010年6月26日 台湾台北でECTA で住民投票求める大規模デモ
2010年6月29日 中国重慶 経済協力枠組み協定(ECFA)*締結 発効は2011年前半か 関税下げを優先的に先行実施する対象は双方合計で800項目以上(中国側539項目 台湾側267項目。3段階で下げて3年目には全品目でゼロ関税 あえて自由貿易の実施時期 範囲を明示しないことで不安を和らげる配慮)。貿易額は160億ドル以上。→中国で台湾企業と競合する日韓企業に影響が見込まれる
  Economic Cooperation Framework Agreement 国家間の取り決めの印象のあるFTAを避けている
  関税の原則撤廃に加え、金融などサービス分野の相互開放を含んでいる。

2010年7月8日 立法院で審議入り 少数派(議席の3割)の民進党が抵抗
        中国の人口は台湾の60倍弱 GDPもすでに10倍超
        中国はASEANと枠組み協定ヲ2002年に締結済み(10年以内に自由貿易地域を確立する)
        中国はASEANと2010年1月FTAを発効。
2010年8月5日 台湾とシンガポールが経済協力協定の締結に向けた協議を年内に始めると発表
2010年8月9日 台湾財務部発表 7月の貿易統計輸出額239億ドル 前年同月比38.5%増 昨年12月以来8ケ月連続で前年同月比30%超え

中台経済協定は8月に立法院により承認され、9月12日に正式発効した。関税引き下げは2011年1月に始まり2013年1月まで3段階に分けて行われるとのこと。志村宏忠氏は日本の企業がまず台湾の企業と協業して、そこから中国に進出すれば、台湾と中国と友好関係が緩衝材にもなるとメリットを主張している。志村宏忠「『親日』台湾がもたらすビジネス好機」『エコノミスト』2010年11月30日, pp.72-74, esp.74.
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先進国の金融緩和政策と過剰流動性

2010-11-16 20:59:23 | Financial Management
途上国・資源国とくにアジアの中国、インドなど経済成長の高い国・地域に投資マネーが集まっている
 例 中国では2009の海外からの民間資本流入額は1200億ドル超(2008年下期の流出1300億ドル超をほぼ取り戻した)
 中国元 韓国ウオン インドルピー インドネシアルピア
 経済成長の高さ(アジア圏2011年の予想7%台 米国1%台 欧州2%台をはるかに上回る)
 通貨の切り上げ観測 為替差益を目指す海外マネーの流入 為替高(為替レートの急上昇)を生む
 利上げ観測(引き締め観測がさらに投資マネーを呼び込む構造) 
中国 2010年10月2年10ケ月ぶりの利上げ決定。
オストラリア 2010年10月下旬(物価上昇)利上げ観測(11月2日RBAが政策金利0.25%引き上げ決定 10月27日のCPIの伸びは市場予想を下回ったため利上げに意外感)から資金流入
引き締めには経済成長を抑えてしまう危険性もある(⇒株価の急落を招くなど)
弊害
 自国通貨上昇気配(為替介入 外貨準備⇒米国債⇒米国の低金利 新興国の外貨準備総額は2009年末で約5兆1100億ドル)
 景気過熱
 物価上昇(中国やブラジルは3-5%の上昇率)
 新興国の株価は2009年に軒並み8割以上上昇しリーマンショック以前の水準を回復
 不動産市場など資産バブルを過熱させ金融システムを不安定にする危険あり
他方先進国は
 高い失業率
 低いインフレ率(米国は1%未満 日本はデフレでマイナス)
 利上げは遠い(米国は実質ゼロ金利 2010年10月に追加的量的緩和政策 米国債の購入拡大などの量的緩和政策)
  日米欧主要国の国債発行規模は総額10兆ドルとされる
  世界で流通するワールドダラー4兆3000億ドルほど(2010年春の推計)
 欧州はギリシア危機を契機にソブリンリスク(国家の信用不安)浮上、財政不安
  2011年6月までにFRBは6000億ドルの国債を買い上げる
  2010年10月末のワールドダラーは約4兆5000億ドル(米国内の資金供給残高が2兆ドル。海外保有の米国債残高が2兆5000億ドル)。
  (こんほか新興国のドル買い介入操作)
  欧米のファンドがキャリー取引(carry trade)をしている
  一時は世界的な株安(株価変動リスク 景気回復への不安を反映)へ
  ⇒ユーロ、原油、資源国通貨売られる
  ⇒金、米国債(ドルを調達してドル資産で運用 日本国債よりは高金利 米金利の低下傾向)
  ⇒ 債券 やがて株式へ
 金融機関などの不良債権問題
先進国に対しても通貨安政策をとっているとの批判。
金融緩和政策は間接的な為替操作に等しい

 新興国の中には為替介入で対抗する例もある
  ⇒ 自国の通貨切り上げ(競争力の低下につながる)を容認しないということ 
  ⇒ 自国の株式市場の株価上昇が資金流入の一因になる例(韓国など)もある
 国際機関が短期の資本流入規制を容認するように姿勢を変化させている
   IMFなど2010年春のGFSRなどで転換
   為替介入には反対だが過度な為替の変動は金融安定化に逆行し望ましくない・・・など
 為替先物取引への規制(韓国)
 資本規制の議論(投機的資金に課税 金額に制限をかけるなど)
  1998年9月 マレーシア 外国人が保有するマレーシアリンギ建て資産の外貨への転換を制限 
  2009年10月 ブラジル 株式・債券への投資に2%の課税
  2009年12月 ロシア 投資家が金融取引で得た利益への課税や外貨の借入制限を検討中。
  2010年5月2日 ギリシャ 支援で国際合意
  2010年6月19日 中国北京 中国人民銀行による人民元弾力化強化
  2010年10月5日 日本銀行が包括緩和策を決定 
  2010年10月 ブラジル 外国人投資家による確定利付債投資への金融取引税率を2%から6%へ引き上げ
外国人投資家の先物取引証拠金にかかる税率0.38%から0.6%に引き上げ
Brazil raised taxes on FOREIGN INFLOWS OF CAPITAL for the second time
this month. An influx of dollars has helped the real to appreciate by
nearly 40% since the start of 2009. With currency tensions rising, Tim
Geithner, America's treasury secretary, told an audience in California
that no country could "devalue its way to prosperity". from Economist, Oct.22,2010

  2010年10月 タイ 外国人投資家のタイ国債投資に関する利回り益と値上がり益に15%の源泉徴収課税を決定 
        韓国 外国人投資家の債券投資への非課税特権廃止を検討
  2010年10月19日 中国北京 中国人民銀行利上げ決定 2年10ケ月ぶりの利上げ決定
CHINA jolted markets when it unexpectedly increased interest rates for
the first time since December 2007. The People's Bank of China upped
its one-year deposit rate from 2.25% to 2.50% and its lending rate from
5.31% to 5.56%. Recent data, such as September's 9.1% rise in property
prices, have heightened concerns among Chinese officials about
inflation. China's economic growth rate, meanwhile, slowed in the third
quarter, to 9.6% from a year earlier. from Economist, Oct.22, 2010

  2010年11月3日 米FRBが追加緩和策を決定 
  2010年11月9日 中国北京 違法な投機資金の監視強化発表
  2010年11月10日 中国北京 預金準備率引き上げ発表(インフレ対抗姿勢)
 通貨の競争的切り下げ回避で合意(G20 2010年11月12日まで韓国で開催 中国は人民元過小評価批判を警戒 人民元の上昇を容認? アジア通貨つれ高)⇒為替介入はしにくいため資本規制しか道がない
 EUは為替介入に反対。銀行への特別課税、負担金の導入もとめる

以上は先進国と新興国・資源国との対比で資金の流れは
 先進国(金融緩和 低金利 通貨安)⇒新興国・資源国(金融緩和 相対的高金利 高い成長率 通貨高)というもの
                  ⇒為替介入・通貨安競争 
                  ⇒弊害 景気過熱 物価上昇 金利引き上げ 景気後退      
日本は先進国のなかだが同様に投資マネーの影響を受けている
 欧米(金融緩和 信用不安)    ⇒日本(円高)
                  ⇒弊害 企業減益 輸出環境悪化(生産拠点の海外移転加速) 雇用悪化       
 欧米(金融緩和後退 信用不安後退)←日本(円高一服)


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portfolio management and derivatives

2010-11-09 23:21:28 | Securities Markets
portfolio rebalancing

年金や投資信託など機関投資家は、投資資産についてさまざまな資産への配分(アセット・アロケーション)を決めている。この場合、分散投資によって、リスクを小さくして、リターンを大きくする効果が期待されている。資産配分の組み合わせがもたらすリターンの上限、そして各機関投資家自身のリスク許容度、これらからベストの資産配分目標値が導かれる。
まずはその目標値を実現したとする。しかし実際のポートフォリオの中の資産配分比率は、資産価格の変動などさまざまな要因によって、目標値からずれてゆく。たとえば債券と株式を50%ずつという構成が目標であったとき、株価が値下がりすると、株式の比率が下がる。このとき株式の比率を高めて、目標の50%ずつという数値を保つように調整することをリバランス(portfolio rebalancing)という。
ところでリバランスは機械的に行うわけではない。値下がりした株式を購入する前提は、株式が割安になっているということである。あるいは目標とする配分比率が、投資家の許容するリスクに依然として見合っているという言い方もある。
このようなリバランスによって、値下がりした株式に対して、年金などが買い出動することが知られる。これは制度の中に組み込まれている株価安定化の仕組みといえる。
しかし実際にはつぎのような問題が起こる。株価が値下がりしたが、割安とはいえないという問題である。たとえば企業の業績予想が悪化して予想利益率が低下しているとする。すると予想利益でみたEPS(一株あたり利益)が低下し、株価収益率(=株価のEPSに対する倍率)は大きな値になる。つまり株価はEPSに比べて割高になる。あるいは投資家のリスク許容度が低下したらどうだろうか。いずれの場合もリバランスは合理的投資行動とはいえなくなる。
そうした状況では資産構成比率の見直しが必要である。そこで仮に株式の比率を下げる決定がなされれば、リバランスが行われないことも生じうるのである。
 (長期為替予約 ゼロコストオプションについても言及すること 為替リスク対策で企業が破綻する理由

派生商品を使ったリスクヘッジ
 ここではrisk hedgingの手段として先物契約、スワップ、オプションを見て行きます。ベースとした資料は以下の3冊です。
 このような派生商品取引derivativesについては、一時は盛んに議論されましたが、近年はそれほど関心を集めていないように思います。本当に必要な知識は残るという楽観的な観点からすれば、派生商品取引に関する社会の関心の低下は、過度に専門的な知識が消えてゆくプロセスだったのかもしれません。さらにこのようなhedgeの手法を、保有資産の保険のようなものだということでportfolio insuranceと呼ぶことも一時はやりましたが、この言葉は最近はあまり見なくなりました。このような関心の移動や、言葉の盛衰が何を意味するのか、私自身つかみかねています。ただはっきりしていることは①有価証券資産だけでなく、実物的資産も含めてリスク管理を考える、また②derivativesの有効性と限界を踏まえる(リスク管理をもう少し多面的に考える)、というのが、現在のトレンドではないかと思います。
Patrick Cusatis and Martin Thomas, Hedging Instruments and Risk Hedging, McGrawHill, 2005.
Nicholas G.Apostolou and Barbara Apostolou, Keys to Investing in Options and Futures, 4th ed., Barrons, 2005.
Marc Levinson, Guide to Financial Markets, 4th ed., Bloomberg, 2006.

 Cusatis and Thomasは、hedgingを金融商品を使って価格の変化つまりキャッシュフローのシステムに関わるリスクを中立化するリスク管理へのアプローチ(an approach to risk management that uses financial instruments to neutralize the systematic risk of price changes or cash flows)だとしています。ヘッジの有効性については、そもそもヘッジする側hedgerは、市場の先行きについて一定の見解があり、また部分的なヘッジでリスクは受容可能なレベルにまで下がるので直面しているリスクのごく一部をヘッジするにとどまるかもしれないと指摘します。またヘッジのコストには取引コストtransaction costsと、持ち越しコストcarrying costsとがあるとしています(C&T, op.cit., pp.1-5)。

 Apostolousは最初に取引所でオプションが取引されたのは1973年にシカゴオプション取引所(CBOE)でのことだとします。そして今日の取引ブームの主役は個人で、その背景には電子取引の拡大があるとします。電子取引により手数料が劇的に下落し、また取引はより透明になったとしています。 先物についても個人がやはりブームの主役になっているとします。アメリカの最大の先物市場はシカゴ商品取引所(CME Chicago Mercantile Exchange)であり、シカゴのユーロ先物が世界でもっとも活発に取引されている先物だとしています(A., op.cit., p.v-vi)。
 Aposotolousは1848年に創設されたシカゴの交易取引所CBOTで先物取引が始まったのは1865年以降のことだとします。金融先物の登場は1970年代以降のことで、1976年にCME子会社であるIMMが財務省証券の先物取引を始めたのが最初。画期は1982年にカンザス市交易取引所KCBTが、株価指数先物取引を始めたことにあるとしています。(A., pp.85-86)
 現物保有をした上で派生商品を使ってヘッジをするのは、単純に現物保有をする投資家よりは保守的conservativeと見なされます。

futures contracts
 Cusatis and Thomasは先物契約を取引所との間の将来の特定時点でのある資産についての特定価格での売買の合意だとしています。契約期間は通常は3ケ月から1年。契約日にはお金は必要ではないが、最後には契約の実行が必要ですが、日々時価による値洗い(marking to market)が行われます。買い手はlong position。売り手はshort positionと呼ばれる。契約が執行される日まで持ち越されることはほとんどなく、多くは反対売買により契約内容は相殺されています。(C&T, op.cit., p.97)

 Fo=initial futures price at settlement
Sn=spot asset price at maturity

Long Position Payoff=Sn-Fo
Short Position Payoff=Fo-Sn
Long Position+Short Position=0 (C&T, op.cit., p.98)
 
 この場合、たとえば原材料価格の値上がりリスクを避けたいメーカーは、原材料商品の先物を買うというヘッジ(買いヘッジ)をします(long hedge)。また原材料を生産する側の企業は、原材料の値下がりリスクを避けるために先物を売るというヘッジ(売りヘッジ)をします(short hedge)。(C&T, op.cit., pp.101-102)

 時価による値洗い(marking to market)とは、その日の終値(時価)の変動を証拠金残高に反映させることを意味します。このような先物取引で取引所側は取引の相手方が売買を執行できないリスクを警戒して証拠金(margin calls)を要求します。証拠金は初期(initial or original)証拠金と維持証拠金に別れています。(C&T, op.cit., pp.103-104)
 Apostolousはこの証拠金の大きさは、背景となる取引の5-15%であり、先物取引が高度にレバレッジを効かした取引(highly leveraged)となることを意味しているとします。(A., op.cit.,pp.93-94)
 つぎに持ち越し費用carrying costsですが、これは現物の商品の場合は、倉庫や保険の費用を意味していたと考えられます(昔はこれをcontangoと呼んでいたとおもいます。Bradley D.Nash, Investment Banking in England, McGrawhill, 1924, p.36.なお先物価格は現物価格より高いのが普通です。そこでこれを純ザヤということがあります。なお逆に現物価格が先物価格より高い状態を逆ザヤbacwardationということがあります。ロイターフィナンシャルトレーニングシリーズ 小島秀雄・小川真路訳『デリバティブ入門』経済法令研究会, 1999, pp.75-76)。また金融商品の場合は、当該商品の買い入れ資金を借入れる金融費用(利子)などから当該商品を保有することで得られる収益(利子や配当など)を意味しています。持ち越し費用をGとしますと
Fo=So+G
 なお先物取引におけるスプレッド取引spreadsとは、先物の買いあるいは売りのポジションから生ずるリスクを軽減するために、買いに対しては売り。売りに対しては買いのポジションを組み合わせる取引で(つまり買いと売りを同時に行う取引で)、その目的は想定外のリスクを緩和する点にあります。これに対してstraddlesは、決済月の違いを利用して、値上がりが予想されるときは近物で買い遠物で売る(bull spread)。値下がりは予想されるときは近物で売り遠物で買う(bear spread)といったように決済時の値段の違いを利用する取引を意味しています。
 先物ではbasis tradingもよく言います。これは現物と先物とを使います。値上がり予想されるとき(先物価格が先物理論価格より高いとき)は現物を買って先物を売ります(long the basis)。値下がりが予想されるとき(先物相場が先物理論価格より低いとき)は現物を売って先物を買います(short the basis)。現物の値動きに合わせて先物の持ちだかを不断に調整するような取引はdynamic hedgingといいます。See, Marc Levinson, op.cit., pp.196-197.

swaps(以下はC&T, pp.133-139より抜書き)
 swapsのもっとも古典的な形態は3ケ月物変動金利と固定金利の交換です(変動金利を支払う側がswapの持ち手です。)。一般にスワップの金利表とされるものがこれで、swapの価格表(価値)は変動金利と交換される固定金利の大きさで表示されています(5年スワップというのは5年間 交換される)。当然bidよりaskの方が大きな数字になります。bid-ask spreadはスワップ仲介業者の取り分の大きさを示しています。
 固定金利を支払う企業が、金利の低下を予測したとします。このような企業は固定金利を受け取り変動金利を支払うスワップを組みます(hedgeをしている側はsellerでshort hedge 相手方はbuyerで変動金利を払います)。
 変動金利を支払いが金利の上昇を予測した場合は、変動金利受取 固定金利支払いになります。 
スワップもやはりスワップ契約swap contractが正しいようです。スワップは取引所が相手にはなりませんのでcounterparty riskが大きいといいます。

options(以下はC&P, op.cit.,pp.167-175, A., op.cit.,pp.1-58. Marc Levinson, op.cit.,pp.199-230, esp., 212-215から抜書き)
 optionの特徴は権利rightであって義務obligationではなく、権利行使には期間があり期間終了後は消滅してしまうことです。optionの売り手はwriterと、買い手はbuyer or holderと、さらにoptionの代金はpremiumと呼ばれます。premiumの中身はintrinsic valueとtime valueとに別れます。

 買う権利がcall option。売る権利がput optionです。
 call optionの場合は権利行使価格strike or exercise priceを市場価格が上回るとin the moneyといいます。そこから上の市場価格ではcall optionの権利を使うと利益が出ます。premiumも上昇するはずです。2つの価格が一致するところがat the money。市場価格が下回るとout of the moneyです。損失が出ますので、権利は使われません。callの買い手(long call option)は資産価格の上昇に備えているはずです。他方callの売り手の損益は買い手の全く逆になります。
 put optionの場合は権利行使価格を市場価格が下回るとin the mnoney、上回るとout of the moneyになります。putの買い手(long put option)は資産価格の下落に備えていています。putの売り手の損益が買い手とは真逆となるのはcallの場合と同じです。
 optionの理論的価値評価valuationをします。それはat the moneyのところでゼロ。in the moneyのところで市場価格にそって上下します。これを本質価値intrinsic valueといいます。これはoptionを行使することで得られる利益と一致します。他方でoptionには、権利行使期間があるのですがその長さに応じて時間価値time valueがあります。実際のoptionの価格は市場で決まります。 
 以上から、optionを使った価格の下落に備えたもっとも基本的な2つの戦略を説明できます。まずはcovered callです。これは現物保有の価格下落リスクに対して、callの売りを同時に行うものです。式の形ではlong asset+short callです。short callはcall writingと言ってもいいですね。次にprotective put(or sysnthetic put)があります。これは現物保有の価格下落リスクに対してputの買いを行うもの。すなわち式の形ではlong aseet + long putになります。
 やや逆説的ですがoptionsの利用方法としては、価格が下落すると判断すればcall optionを売る側になってpremiumを稼ぐこともできます。すなわちlong asset + long call
収益を追加する方法として、また現物保有の価格下落リスク対策として有効なこの方法は、covered call writingといいます。つまりoption戦略には、optionの売り手になりpremiumuを稼ぐ方法もあるわけです。現物を持たずに単純に売り手になってもいいわけです。これをuncovered or naked call writingといいます。
つまりoptionでは従来のderivativesの戦略にあったhedging, speculation, arbitrageに加えて、incomeを稼ぐ手段という使い方もできます。

 ヘッジは価格下落をイメージしますから、価格上昇で売り手が失うリスク対策はreverse hedgeと呼ばれます。synthetic put(or reverse hedge)というのは現物の売却時に値上がりをしたときの損失をカバーするもので、現物の売りにcallの買いを組み合わせるものです。short asset+long callです。
 以上のほかputとcallの売りと買いを組み合わせることで、さまざまな損益線の形(戦略)が可能です。よく指摘されるのはstraddles(straddling)です。これはputとcallとを同時に買う戦略です。straddleでは価格変動が大きいほど利益が大きくなりますので大きく価格変動する見通しのときに有効です。
逆に両方を売る戦略がreverse straddleあるいはstraddle writingです。こちらは価格が膠着して動かないときに有効な戦略になります。
 なおspreads(spreading)は同じoptionの売りと買いを同時に行う取引を指しますが、spreadsの基本的な狙いは単純な買い(long)あるいは売り(short)のリスクを低めること(risk hedge)にあるとされています。
 しかしどちらかがバランスを失して大きいと取引は投機的(speculative)になります。通貨オプション取引で、コール(ドル買い権利)を購入する一方でプット(ドル売り権利)をコール以上に売る行為は、円安に振れているときは、プレミアムの収入がおいしい取引です。しかしこれは円安に賭けた投機的取引です。この取引は、行った直後はプットのプレミアムが沢山入ってくるのでおいしく見えます。ところが相場が円高に振れると、プットが行使されてきますので、時価評価損を抱えることになります。
 このようにオプションをつけてプレミアムを上乗せする取引は、リスクと隣り合わせの取引として、批判されるようになりました。しかし方法としてはcallと別の値段のcallを組み合わせる、あるいはputと別の値段のputを組み合わせる方法turbo chargingもあります。予想された方向での値動きが起こると極端に高い利益率を可能にします。
現物価格の値動きに応じてオプションの量を絶えず調整する戦略はdynamic hedgingといいます。これはportfolio insuranceとも呼ばれた戦略で1980年代に一時話題になりました。その詳細は別稿portfolio insurance and dynamic hedgingで述べることにします。

Written by Hiroshi Fukumitsu. You may not copy, reproduce or post without obtaining the prior consent of the author.
Originally appeared in Aug.22, 2009.
Corrected and reposted in Sept.12, 2009.
Reposted in Nov.11, 2010

portfolio insurance and dynamic hedging
以下を参照してこのテーマを述べます。
Marc Levinson, Guide to Financial Markets, 4th ed., Bloomberg, 2006, pp.197, 212-215.
ブックステーバーの『市場リスク 暴落は必然か』日経BP社, 2008, 第2章。
 まずportfolio insuranceとは投資戦略の名称で、1987年の株価暴落のとき議論した記憶があります。ポートフォリオの価値が下落するとき、逆に利益が出る金融派生商品(たとえばプットオプションを購入する、あるいは指数先物を売るなど)を組み合わせることで下落リスクをヘッジ(回避)するといった投資戦略をportfolio insuranceと呼びます。おそらく金融派生商品を購入することを、価値下落リスクに保険をかける行為になぞらえているのでしょう。
 portfolio insuranceのなかで、原資産の変化などに応じて先物やオプションのヘッジ量を変動させる戦略はdynamic hedgingと呼ばれます。
 ブックステーバーによると、原資産に対してヘッジするべき量の割合はデルタと呼びます。この戦略は、まず原証券のボラテリティ(価格変動性)を正確に算定できるかにかかっています。そしてさらにその前提には、市場の流動性が確保されていることがあります。しかし現在では、多くの市場参加者が同様にportfolio insurance戦略をとった場合、価格の下落がさらなる価格の下落を生むということが明らかになっています。
 この戦略はコンピュターのプログラムに織り込まれますがプログラム(program trading)に従うと、機械的で加速的な売りをもたらすことになります。そしてあまりにも急激な下落は、買い手を躊躇させます(流動性は突然失われます)。買い手(流動性)の減少は、相場のさらなる下落をもたらす。つまり最も肝心な場面で、市場の流動性が失われる(蒸発する)現象が生じます。この混乱の理由についてブックステーバー(Bookstaber)は先物市場と現物市場との間で取引を可能にしている時間軸が異なっていることを指摘しています(現物市場の投資家はしばしば長期の投資判断を行うがそのためには意思決定の会議が必要になるなど)。
 同じ問題についてレヴインソン(Levinson)はオプションについて以下のように語っている。原資産の価格1%の変化に対してオプションの価格が何%動くかその比率示す数字がデルタ(δ)とします。これに対して原資産の価格の変化に対してδが動く割合がガンマ(γ)である。オプションを使ったダイナミックヘッジングの代表的な戦略はデルタヘッジング(delta hedging)でこれはデルタをゼロにするように、オプションと原資産の売買をするというものだそうです。デルタをゼロに保つために、投資家は、価格が下がっているときに原資産を売り、あるいは価格が上がっているときに原資産を買うことを求められるのだそうです。これは結局、原資産価格の振れ方は鋭くすることになります。
 原資産価格の変動に連れて新たなオプションが恒に購入可能であるとの仮定が誤りであることがわかるまでの1980年代の極めて間、portfolio insurance、別名dynamic hedgingは株価下落から株式ポートフォリオを守る戦略として人気を得たことがあります。

Written by Hiroshi Fukumitsu. You may not copy, reproduce or post without obtaining the prior consent of the author.
Originally appeared in Feb.24, 2009.
Corrected and reposted in Sept.13, 2010.
証券市場論講義

債券取引-債券レポ取引・現先取引 ver.2

2010-11-07 18:11:56 | Securities Markets
bond trading
債券取引は、取引所ではなく店頭取引が中心。債券市場では、債券の種類が大変多様である(同じ種類の債券でも満期までの期間が違えば異なる商品となる)ため、その取引は相対取引(OTC market)が中心。
 しかし店頭取引となるより本質的な理由は、債券取引の担い手が金融機関を中心とする機関投資家だからだ。個人の比率は極めて小さい。債券取引の中心にある国債取引は、これら機関投資家の資金の一時的な滞留場所、運用の場所となっている、なにより取引単位が巨額化している。つまり業者間売買中心という意味でも、店頭取引になじむ。

日本の場合
日本相互証券(Japan Bond Trading)というbroker's borkerが実質的に債券取引所の機能を果たしてきた。ただし完全に業者間市場inter dealer marketであり、国債取引市場である。そのJBTが提供している電子取引システムがBB Super Trade。
BB super trade
東京証券取引所では、国債をはじめとする債券市場が形式的に開設されたが、現在その機能はほとんど停止している。なお活発に機能してものに長期国債先物市場がある。この間、いろいろな試み(中期・超長期先物、長期国債先物オプションなど)が行われた。なお東証では株式に絡んだ債券である、転換社債(新株予約権付き社債転換社債型)の取引にが存在感がある。

なお日本のMDPとして登場は以下。日興、大和、野村が手を組んでスタート。取引は国債に絞っている。意識的にmulti dealer marketを構築した。エンサイドットコム証券 富士通Symfowareの導入事例としてのエンサイドットコムの紹介

このように国債について活発な業者間市場が存在する一方、それ以外の債券については、業者との相対取引となるのが実情である。その結果、債券価格について、投資家からすれば不透明さが残っている。最大手の野村は日本経済新聞、金融工学研究所、野村総合研究所と組んでJSPrice(債券標準価格)の算定と公開を2002年3月26日から日々行っている。
JS Priceは、日本証券業協会が行なっている公社債店頭売買参考統計値(現在は指定21社の報告による毎日、前日の集計が出されている)とともに、債券時価評価の基準となっている。JS Priceは出だしで1万4000銘柄とされ逐次対象を拡大するとしていた。参考値の方の対象はこのおよそ半分以下である。ただしこちらは実際の取引価格の集計としての意味合いがある(post trading system)。
JS Priceについて
このJS Priceはさきほどのsingle dealerの問題とともに、大きな影響を市場に与えている。それはやはり野村が最大手であることと無関係ではない。なお野村は2007年2月にInstinetを買収している。しかしその使い方は、株についてのcrossing networkのそれであって、JapanCrossingやCBX Asiaといった市場の提供にとどまっている。

singleの意味の変質
singleの意味(single dealer)とも係るが、さまざまな商品ごとにバラバラに分散した市場を統合したこと(さまざまなmulti asset市場の統合という意味にmultiあるいはsingleの意味付けがdealerからassetに変化している)、取引のSTP化を実現したことなどが最近は強調されるようになっている。dealerが1社か複数かという市場の本質にかかわる問題が少し見えにくくなっている。
what single dealer platform isn't
single dealer platform white paper

欧州で本格化する電子債券取引(2000夏)
欧米で定着する債券電子取引(200704)
欧州における債券電子取引の現状(200705)
single dealer platform wikipedia
corporate bond trading system directory
Fidessa
Sybase RAP The Trading Edition intraday risk management

国債取引
 債券取引の中心は国債取引。取引種類には、現物取引のほかに債券レポ取引、債券貸借取引。さらに様々な派生商品取引(先物取引 オプション取引など)がある。
日本証券業協会 公社債の売買取引について 2007年10月3日
日本国債清算機関における債券レポ取引の現状について 2007年5月9日
 国債は比較的長期の資金運用の場所としても、一時的な資金の運用場所としても使われる。国債の高い信用力、高い流動性が、国債投資・取引をさらに促す関係にある。国債保有は、そのリスク管理のための市場の発展も促す。 国債が大量に発行され、金融機関などの運用手段、余剰資金の滞留場所となっている。そこからリスク管理や、裁定、投機など様々な取引のニーズが広がっている。金融機関からみると、国債投資の目的は資金運用と資金調整とが混在 国債投資は資金繰りに用いることができ、バランスシートの調整にも役に立ち、トレーディングツールにもなるなど都合がいいとされる。週刊エコノミスト2010.6.29, p.28参照。
 国債の発行市場をまず検討しよう。

国債の入札
新規国債の入札のところ、国債の発行市場では、中長期的な資金運用先としての国債のニーズが議論される。
 超長期物:生命保険会社、年金基金など(長期保有による金利確保に狙い 高値になると利回り下がるため需要減少)
 新発10年物:長期金利の指標 米国の金利と比較(金利差があるとドル高・円安 金利差小さくなると円高い・ドル安) 国際的な金融不安⇒流動性の高い米国債に資金集まる⇒米国金利下がり日米金利差縮小 金利差が小さくなると日本国内にマネー滞留しやすい
 新発5年物:銀行(預金期間に合わせて中期債運用を重視 その主たる運用先)、証券(銀行などに売るため応札)。TIBOR(東京銀行間取引金利3ケ月物)との比較でTIBORを下回ると高値警戒。銀行の余剰資金:買い圧力。
 新発2年物:証券会社など(余剰資金抱える金融機関のニーズ)見込み応札
 国庫短期証券:証券会社など(余剰資金抱える金融機関のニーズ)見込み応札

 銀行の預貸率は75%程度と過去最低。一時的に大量の資金を運用する先としては国債は便利だが金利変動リスクがある(国債残高682.7兆円のうち、銀行などの保有が293.9兆円43.1% 生損保などが136.7兆円20.0%  公的年金が79.1兆円11.6%。しばしば問題になる日銀は50.2兆円7.4% 海外は35.6兆円5.2% 家計は35.0兆円5.1%である。資金循環統計 2009年末速報値 週刊エコノミスト2010.6.29, p.22より)。銀行は預貸ギャップを埋めるため、国債投資を拡大している(金融財政事情2010.10.18,p.10)。
 なお生保資産の76.7%が有価証券 内訳は国債40.2%、外国証券13.5%、社債8.3%、株式5.9%、地方債3.4%。貸付は14.7%であった(2010年3月末現在 週刊エコノミスト2010.6.29, p.27より)。ALMの浸透により超長期の負債に対応するために。なかでも超長期の投資を増加させている(金融財政事情2010.10.18, pp.10,23)。
 GPIF年金積立金管理運用機構

 平均落札価格と最低落札価格の差(テール):小さい=落札は好調
                      拡大⇒需要縮小、弱い
                      縮小⇒需要拡大、強い、堅調
 TIBOR(銀行の資金調達コスト)の動き:TIBORが企業貸出金利の目安 TIBORさがると貸出収入が減り銀行は国債投資をふやす。
 日銀は金融緩和で企業向け貸出を増やそうとするが、銀行は貸出収入が減ると国債投資に向かってしまう。
日銀は共通担保資金供給オペ(公開市場操作)を行っている。落札額が予定額下回ることは札割れと呼び、資金ニーズの低さを示す。新型オペ(2009年12月導入 供給枠10兆円)が導入されたが、これは国債などを担保に期間3ケ月の資金を固定金利で貸し付けるもの(相手は銀行が中心)。2010年3月供給枠20兆円に倍増。日銀がオペを活発にするとコール(銀行間市場での資金調達)は減る。
公開市場操作の仕組み(日銀)
オペレーションの概要(日銀) 
長期金利の決まり方(日銀)
オペ明細(東京短資)
国債関係資料(財務省)
証券業協会 公社債売買参考値(日次)
証券業協会 公社債売買参考値制度について 2010年5月6日
10年国債利回り(終値 直近1ケ月) 日本相互証券
10年国債流通利回り(6ケ月) traders web
主要国国債利回りの比較 日本 米国 オーストラリアなど、72日 1年 2年 3年(三井住友銀行)

 国債市場で成立する金利は、長期金利の基準基準になる。その変化は、企業の長期資金調達コストに影響して企業行動に影響するだけでなく、住宅投資など個人の消費行動にも影響を与える。
 国債発行では、景気悪化に伴う税収減少のもとでの景気対策のための支出拡大が考えられる。景気が悪化すると貸出需要が減るので、金融機関の国債運用ニーズが高まる。また企業の信用力の低下、企業の資金調達ニーズの低下は、企業の借入や債券発行のニーズを抑制する。金融機関は貸出需要の減少を受けて資金の滞留先を必要とする。それゆえ国債発行が一時的に増加してまた景気回復とともに縮小するなら、国債発行は、景気の振幅を和らげる効果が期待できる。実際には国債発行は景気回復期に十分抑制されず発行残高が累積しがちである。

国債の保有リスク 
 投資にリスクはつきものである。債券投資のもっとも基本のリスクは償還リスク(債務不履行リスク 信用リスク)だと考えられる。これは債券発行者に原因があるリスクである。国債については、信用リスクはもっとも低いという大前提がある。もうひとつのタイプのリスクは、経済環境が変化することによる金利変動リスクである。金利変動は、債券の価格を大きく逆の方向に変動させる。そのリスクの大きさの測定にはdurationのほかbpv, VaRなどがある。

債券の金利変動リスクの大きさを示すduration
  金利変動で債券価格がどの程度変化するかの大きさがdurationである。
duration 残存年数が短いと小さい 年数表示
       5年 1%の金利変動で5%動く
      10年 10%の金利変動で10%動く
durationの解説(PIMCO)
immunization
起こりうる損失額の大きさを算定する方法にはVaR(value at risk)やbpv(basis point value)もある。
 VaRの解説(野村証券)
 bpvについて
 問題は各金融機関が同じようなリスク測定方法と行動基準にしたがっていると、連鎖的に国債売却+国債購入見合わせ⇒国債急落⇒金利急上昇⇒各金融機関のリスク許容度低下⇒国債売却+国債購入見合わせ の連鎖を招くことだ(例 2003年6月のVaRショック)。

注目されるアウトライヤー基準outlier criteria
このように銀行による国債保有が高まることで、銀行が保有する金利変動リスクも高まっている。そこで管理指標として近年注目されているのがアウトライヤー基準outlier criteriaである。これは金利変動が金融機関の財務に与えるダメージの大きさを示す。20%が基準でこれを超えると金融庁が指導する。
 アウトライヤー基準について(ニッキン)
 新BIS規制の解説(三菱UFJ信託銀行 2007年9月)
これは、ストレスシナリオのもとで利回りが2%上下したときに、銀行が受ける損失がtier 1およびtier 2の20%を超えてはならないというもの。これが日本の銀行の国債保有を最終的に制約する("That bloated feeling"in The Economist, July 17, 2010, p.69)。

国債の流通市場
 国債取引は、特定銘柄に売買が集中している。資金調整的な売買も投機的な売買もある。長期保有(長期投資)による期間収益の確保する投資家もいる。一般に売買の目的としては、裁定(アービトラージュ)、投機(スペキュレーション)、ヘッジ[リスク管理]が指摘されるが、資金の調整(流動性の確保手段)、資金の運用(期間収益の確保)、といった側面にも注意する必要がある。
 裁定は同一商品についての、同一時点での市場間の価格差を利用して確実に利益を得ようとする取引だ。裁定を、将来時点との間で使うと、裁定と投機の違いは曖昧になる。可児さんは社債から国債に資金が移る質への逃避(信用リスクの低いものに資金が移ること)、その過程で国債の価格があがり、社債の価格は下がるのだが、それを予想して国債買い上がってから売る、社債を売り下がってから買い戻す、行為をクレジットスプレッド取引と呼ばれる裁定取引だとする。可児滋『金融リスクのすべてがわかる本』日本評論社, 2006年, pp.33-35.しかし確定しない予想の問題を裁定取引にいれると、投機との言葉の使い分けが崩れてしまう。

債券レポ取引bond repurchase agreements or transactions
債券貸借取引bond lending and borrowing transactions
現先取引gensaki agreements

 債券レポ取引と日本の現先取引の違いもよく指摘される。いずれも資金取引(短期資金の調達運用)である。別名、現金担保債券貸借取引ともいう。厳密には債券貸借取引(bond borrowing and lending transactions)のうち、とくに現金を担保に入れるものを債券レポ取引という。資金調達側は資金を必要とする証券会社とされる。
 しかし債券レポ取引には、どの債券を借りるかは問題でなくて現金(資金)を入手することに目的があるケース(cash driven transactions)のほかに、特定の債券を借りるための取引、たとえば空売りする特定の債券を入手するためのケース(securities driven transactions)がある。後者では債券の貸借料が、前者では資金の金利が問題にされる。金融機関の間では資金取引として活発に利用されている。
 債券を用いた資金取引としては、もともと債券担保現金取引がある。これは言葉通り債券を担保に現金を調達するつまり資金を調達する方法で別名現先取引(gensaki agreements)である。証券会社はたとえば国債代金の手当てにこの市場を活用してきた。
 日本では以上のように何が担保であるかを重視するが、英米の市場では、売買取引として理解されており、買戻し条件付きの売り付け(repo=repuchase agreements)とされる。ポイントは売りと買いが一組の取引として実行されることである。また包括契約master agreementが存在する点にある。なおsell buybacksという取引は売り買いを同一時点で同じ相手に行うが、売り買いは独立した取引で、master agreementは存在しない。
 日本社会の理解では、売り付けをする側は債券を担保に資金を借りている。反対の売り戻し条件付きの買い付け(reverse repo)をする側は、債券を担保にとって資金を貸している。利息は、債券売買の価格差として現れる。このような取引によって債券を保有している側は資金を調達して、売買価格差という形で利息を支払うことになる。資金を貸す金融機関間においても、国債のように信用度の高いものを実質的に担保に取るとはリスクの軽減になる。
 現先取引は、資金調達の形態であるので、価格差にはそのときの金利水準が反映する。日本の現先市場と海外のレポ取引(repurchase agreements)とは実質的には同じものだ。Japanese repo marketがJapanese gensaki marketである。*
*現先市場がレポ取引と実質同じなら(1989年5月に)債券貸借市場を作る必要がなかったはずだといわれればそのとおりである。しかし債券貸借市場をつくったのは有価証券取引税を回避するため。つまり有価証券取引税の有無の違いがあった。また現先市場には、債券ディーラーに買い現先を禁止する規制もあった(1995年12月に規則不存在の確認)。また債券貸借で現金担保を入れるときの付利に上限規制があった。この規制が1996年1月に撤廃され、1996年3月に債券貸借取引に関する基本契約書(参考例)がまとめられて、債券レポ市場は確立する。つまり実質は近いのだが、売買か貸借かという法形式の問題、背景にある法的な裏付けの問題に違いがある。相沢幸悦「わが国の債券レポ取引」西尾夏雄ほか編著『世界経済危機と日本経済』時潮社, 2010年, pp.217-233.
レポ取引によって証券会社に可能になったのは短期資金取引である。短期借り長期貸しのポジションは、預金を資金源とする銀行の基本的な問題として知られる。レポ取引により、短期資金が証券会社やヘッジファンドなどに利用可能になり、これらの金融組織が、銀行と同様のリスクを抱えるに至ったとの考え方がある。そのリスクを拡大したメカニズムとされるのが、担保として預かっている債券や株券を再担保に出せる再担保契約rehypothecationである。以下にBearSternsの倒産により、信頼によって成り立っていたレポ市場崩壊の描写がある。Scott, McCleskey, When Free Markets Fail, Wiley, 2010, pp.13-14.

取引の動機
 長期保有
 益出し
 リスクヘッジportfolio insurance
 入れ替え商い

証券会社への影響effects of the development of bond trading on securities companies
 なお、証券会社が投資銀行的な業務を拡大すること(プライマリーからセカンダリーへ)は、このような国債取引を通じた資金供給によっても促進されたと考えられている。
 1980年代 自己資金で短期売買で収益の大半を稼ぐ
 1990年代 セカンダリ-での顧客のヘッジファンド化→セカンダリーでの収益性低下→ヘッジファンドに与信を与える
 2000年代 →自らヘッジファンド同様のビジネスを展開
(今井光「米投資銀行モデルの蹉跌」『金融財政事情』08/10/13, 15)

Written by Hiroshi Fukumitsu. You may not copy, reproduce or post without obtaining the prior consent of the author.
originally appeared in Mar.29, 2008
corrected and reposted in August 30, 2010 and November 7, 2010.

電子取引システムの拡大と本邦市場へのインプリケーション 2001-j-1
証券市場論講義
債券とは何か
国債の消化問題
債券取引 債券レポ取引 債券現先取引 ver.1

REIT(不動産投資信託)について 現状

2010-11-04 07:19:23 | Economics
REIT(real estate investment trust)の現状
 発足時 銀行の不良債権処理の受け皿 2001年3月 東証が専用の市場を創設 法人税が事実上課税されないなどの税制優遇がある。
 現在の投資家 個人少ない(個人の比率は1割強程度) 2010年5月下旬 みずほ証券調べでは 投信含む金融機関46.7% 外国人26.4% 個人13.9% 事業法人13.0% 個人の長期資産運用の場になっていない。
 REITを購入するべきか。利回りの高さが注目されている。長期国債利回り1%台、株式配当利回り2%程度の対して4-5%程度。
 国債に比べて高い利回りは安心感につながるはずだが。
 個別のREIT 一口10万円程度から
 非上場型REIT(野村不動産HDが2010年11月に運用開始)
REITで運用する投資信託(追加型株式投信の中に分類 複数のREITで運用) 毎月分配型には運用効率低下するとの批判あるものの人気高い 信託報酬1%程度とコスト高い 数千円から一万円台で購入できる もっとも資産残高多いのはフィデリティUSリートファンドB(為替ヘッジなし)
 東証REIT指数に連動する上場投資信託(ETF) 信託報酬0.3%程度と割安 機動的に売買できる
 REITはレバレッジ(外部負債)をかけている。そのリスクを販売員が説明していない 理解していないケースが少なくないこと
 資金調達は公募増資 投資法人債の発行

 不動産会社(三菱地所 三井不動産 住友不動産 など)
 不動産ファンド会社(大手4社ケネディクス ダヴインチ リサ セキュアードのほかパシフィック)
 賃貸不動産を抱える電鉄会社(JR東日本 東急 近鉄 など)
 

 2007年改正建築基準法施行 マンション価格指数の低下
2007年5月末 REIT時価総額約6.8兆円(peak)
 東京都心5区のビルの平均募集賃料 2007年12月ピークに低下  
 運用利回り 2009年7-9月期の5.23%ピーク 投資妙味は薄れつつある
 東証REIT指数は2007年5月2612.98の最高値 2008年10月704.46の底値
 2008年10月 ニューシティレジデンス投資法人がREITで初めて破たん 内部留保が乏しく借入に頼るリートのもろさが表面化
2008年10月末 REIT時価総額2.1兆円(bottom) 平均配当利回りは10%近くにまで上昇
 2009年3月 REITのスポンサーが初めて破たん
 2009年春 REIT市場に落ち着き戻る
 2009年6月 銀行等保有株式取得機構 REITを買い取り対象に加える法改正成立
 2009年9月 官民ファンドの設立 不動産市場安定化ファンドの設立
(背景 収益国内不動産市場資産規模68兆円の12%を占めるまでREITは成長。REITが不動産の売り手に転じることを阻止する必要)
REITの資金調達方法の多様化 現在は普通株と融資などに限定
市場参加者の厚みの拡大などに課題
親会社であるデベロッパーとの利益相反に懸念 親会社(スポンサー)の物件の購入 スポンサーの利害を優先してREITの株主の利益を軽視していないか 取引に透明性はあるか 透明性を説明しているか(説明できるか)
 2009年秋以降の世界不況 マンション価格指数のさらなる低下
 2009年2-3月 主要国のREIT指数低迷
 2009年8月 アドバンスレジデンス投資法人が日本レジデンシャルの吸収合併を発表(合併は2010年3月)
2009年11月 REIT 公募増資再開 1年4カ月ぶり(前回は2008年7月)
 2010年1月 REITの投資法人債発行の再開(2010年年初) 1年8ケ月ぶり
 東京都心のオフィス空室率 2010年8月末(9.17% 三鬼商事)2007年秋以降(1%の後半)悪化を続けていたが ピークに下落(企業の設備投資手控えの影響)
 東京都心のオフィスビル賃料も 2007年ピークに2010年まで下落
 2010年3月末 国土交通省による「不動産証券化の実態調査」
  証券化された不動産資産額1兆7360億円 前年度比37%減少 2年連続の減少
  内訳 REIT 約 4400億円
     REIT以外で一度証券化された物件の転売・リファイナンス 約9400億円
     不動産の用途別ではオフィス33.8% 商業施設17.6% 住宅14.3% など
 2010年6月1日 不動産投資ファンド ダヴィンチHDが大証ヘラクレス上場廃止
  1998年 金子修氏が創業 社長に。
  2007年12月期末には運用残高1兆2000億円にまで拡大
  2008年秋リーマンショック バブル崩壊 市況低迷 保有不動産は含み損抱える ローン借り換え困難
  2009年12月期 約110億円の債務超過に転落  
 2010年6月 私募の不動産ファンドの運用残高が拡大(6月末で約15兆円 昨年12月末にくらべ8%増加) 住友基礎研究所 69社から回答
 2010年3月 信託銀行が不動産投資向けファンドを相次いで設定している 
 2010年前半 首都圏投資用マンションの供給戸数 前年を上回るが2007年水準の半分程度(2501戸 上位5社の比率64.1% 昨年より5.8ポイント増加 寡占化進む)
 2010年7月 国土交通省基準地価(1日時点)全用途平均 前年比3.7%下落 3大都市圏では3.2%マイナス(下げ幅は2009年の6.1%から半減)
 2010年10月 日銀が包括的な金融緩和策の一環としてREIT買い入れ(500億円を限度 投資法人債の格つけがダブルA格以上 年200日以上売買が成立していること)を発表 → 東証REIT指数の上昇につながる
 2010年11月15日現在上場REITは36銘柄 主な買い手は銀行と投信
 2011年1月1日時点 地価動向(国土交通省) 全国主要150地区のうち16地区で地価上昇 42の住宅地のうち11地区が上昇 108の商業地のうち73地区で下落 商業地の土地取引はなお低迷 → 住宅系REIT(ほかには商業施設系 複合型系)の方がオフィス系より収益環境がいい
 相場の上昇 イルドスプレッド(=分配金利回りー長期金利)の縮小へ 投資妙味縮小
 長期金利の低下 スプレッドの上昇 投資魅力高まる
         借入コストの低下 収益が改善する
       国内の地銀など 様子見に転じる
       すでにスプレッドガゼロになっている海外投資家が熱心

 投資家が注目しているのはREITのイールドスプレッドの高さ。その計算式は
 REITの平均利回りー長期金利=4.5%前後 とされている(2010年10月末現在) 欧米が3%台に対して大きい。
 不動産の投資利回りー長期金利も同様の傾向
 REITの利回りの絶対水準も高い。2010年10月末に5%台をなお維持(株式は2%前後なので割安感あり) 2010年5-6月頃は5.5%前後からやや減少。これを受けてスプレッドは5-6月に長期金利に対して4.5%前後 そこからやや減少するも4.5%弱。地銀などの機関投資家の買い意欲を刺激するには十分な水準。
 この利回り状況は日本の不動産への利回り状況ともほぼ重なる。国際的にも日本の不動産投資は割安で買いとの声もある。
しかし現在このスプレッド水準が高いのはアメリカ(5%弱)。低いのほ香港(1%台)。英国ドイツは3%台。ということからすれば、利回りだけで投資家が行動しないことも見て取れる。東証REIT指数は2010年6月末頃を底にして回復基調。
REITが発行する投資法人債は流動性が低いこともあり、購入する投資家が限定され、利回りが高くなる傾向がある。
 円高は国内企業のオフィス需要を減退させるだけでなく、海外投資家の不動産投資にもブレーキになっている(他方で供給を生み出す面もある)。
 利回りの高さは、株式を上回るREIT相場の不安定さと対応しているとみることができる(東証REIT指数の動き 2007年5月2612.98がピーク。2008年10月704.46がボトム。2010年4月30日 999.13(年初来高値) 2010年6月3日925.93 2010年7月26日922.51 2010年10月5日966.02 2010年11月1日 989.57)。2010年4月末の日本REIT市場時価総額は3兆円強()世界5番目 アメリカの9分の1 市場が小さいため海外資金入りにくい
 その後 東日本大震災で日本には多くの犠牲がしょうじた。 

 またオフィスビルは新築大型の人気高まるが、都区内の空室率平均では2007年ころから2%程度から上昇して7%前後で高止まり(2010年秋 シ―ビ―リチャードエリスによる数値 このほか三鬼商事の数値ほかがある)しており、今後についても不安定さがある。円高の影響も懸念されている。
 東京都心部2012年ころまでオフィスビルの大量供給続くとされる。都心6区(千代田 中央 港 新宿 品川 渋谷)オフィス床供給面積 2010:40 2011:80 2012:120万平方メートル と再開発の進展が予想されている
 新築ビル 大型物件 入居率高まる(2009年末7%をピークに東京都心部の大型物件の空室率は減少に転じ5%前後 この数字が不動産投資再開の合図になっている)
  たしかに拠点集約のニーズもあり 大型物件・新しい物件は人気
  都心部では超高層マンションとセットに職住近接の新たな都市作り進む(都市のコンパクト化 都市近郊は衰退へ)
  ⇒ 新築ビルは省エネ対応が魅力
  ⇒ そこで建て替えが競争力維持には必要なるが建て替えは増床伴い・・・というように悪循環が起きている
  背景:新築物件の賃料が抑制されている そのため新築が人気とはなるが。
 中小ビル 空室率高い
  ⇒ 既存ビルは賃料値下げで対抗。 
  ⇒ 企業は強いコスト削減姿勢。オフィス拡充に慎重。
 オフィス物件は空室率上がると減収。
 23区のオフィスビル平均では空室率は2010年秋には7%前後(2007年頃は2%前後から上昇続く 2010年秋、最近は新規は募集減少で高止まり つまり上昇率は上がりも下がりもしない状態で高止まりしている)
 2011年8月、空室率(都心5区)は2011年5月から5ケ月連続で低下8.65%(2008年頭の2%台から2009年末の8%まで急上昇。その後は2010年9%近くにまで上昇 2011年7月8.76% 5月8.88%)。しかし賃料の下落はおさまらず3年半(36ケ月)にわたる下落が続いている(8月平均で3.3平方メートルあたり17,136円 5月へ金で174,00円)。2011年半ば過ぎてなお賃料回復の遅れ。これは世界のほかの大都市が2010年に入ると回復傾向を示したのと大きな違いとされる。

今後は住宅需要が減退する可能性がある
 低金利と住宅関連の減税措置でマンション販売は2010年秋時点では好調(引き渡し時に収益は計上)。住宅購入促進策が終わると需要減退が心配される。⇒住宅需要腰折れかは所得環境次第。
 住宅資金向け贈与の非課税枠拡大(通常は500万 2010年は1500万に拡大 2011年1000万に縮小 その後は500万?)
 住宅ローン控除制度(縮小中 借入金の1%を10年間所得から差し引く制度 2013年で終了予定 2010 50万 2011 40万 2012 30万 2013 20万)

REITについて
 REIT(real estate invstment trust)は 株式に相当する投資口を証券取引所に上場し、]投資家は株式同様に売買できるというもの。
 日本では投資信託法改正のあと、2001年に東証が市場創設してスタート。創設当初は、個人資金にも高度な不動産投資、すなわち、専門業者なみのリスク分散投資を可能にするとその意義は説明された。しかし実際には、機関投資家の資金を吸収して成長してきた。機関投資家資金の流出は、市場の収縮をもたらした。理屈としては非上場型が可能で2010年2月には野村不動産HDが非上場型不動産投資信託を設定している。主に年金。資産規模最大1500億円。これは考え方として私募の不動産ファンドに近い。
 私募の不動産ファンドとは年金など機関投資家から出資金を集め、金融機関からの借入金で組成して不動産に投資するというもの。借入金の比率を高めること(レバレッジを高めること)で、リターン率を上げる仕組みになっている。2006年頃までは借入金比率は7割以上とされたが、その後、リスクの高さを出資する側と金融機関の双方が敬遠。2009年に入ると借入金比率は6割以下でないと成立しなくなった。
 このようなローンはノンリコースローンであるとともに、多くの財務上の特約で守られている。一旦債務不履行(デフォルト)が発生すると、ローンの延長は困難である。
 仕組みとしてはFOF(fund of funds)方式もある。このようなREITを運用対象とするFOFは2003年4月に解禁されたもの。世界各国の上場不動産投資信託に分散投資する投資信託というのはこのFOFである。
 2008年6月の規制緩和ではETFについて日本REITを投資対象とすることを認めた。その結果2008年9月から日本REITを投資対象とするETFが登場している。
 
価格の変動(収益率の変動)の大きくなったため、リーマンショック以降、機関投資家、保険年金投信などが離れてしまった。
 そもそもREITはスタート時に個人向けの役割が強調されたが、実際には利回りに注目した地方銀行 投資信託 年金基金 外国人など法人が購入 価格が上昇した。その後、金融市場の混乱のなかこれら法人資金の流出があった。
相場の動きを示すREIT指数は2002年末の1000前後が2007年5月には2600台に高騰した。ところが2007年6月以降 資金流出 相場も急落 2008年10月には一時700を切る。このような激しい変動は、いわゆる機関投資家がREIT市場を離れる理由となった。配当利回りは上昇、平均で7%台に(2009年3月末)なるものの、リスクの高い市場との烙印が消えなくなっている。
 REITは投資法人段階での法人税課税をさけるため 利益の9割超を投資家に分配している。また他社から50%超の出資を受けないなどの規制もある。これらの仕組みは投資家保護の面もある。しかしいわゆる利益留保型の成長ができない欠点にもなっている(成長するには増資か借入しかない)。なおREITの購入者を投資主といい、REITは投資主総会で統治を受ける。
 成長のための新規借入は現在はむつかしいとされる。借換は可能でも現在は新規資金はむつかしい状況。資金構成では借入(銀行借入+債券発行)が4-5割である。他方で公募増資もむつかしく2008年7月を最後に1年以上とだえることを経験した。
 2009年9月に官民共同出資でREITむけ融資を行う「不動産市場安定化ファンド」が設立された。財務内容は優良なREIに限定して市中金利より高い金利などの問題もあるが、これを受けて2009年11月には公募増資が1年4毛月ぶりに再開された。
 しかし増資(この場合は不動産投資信託受益証券をさらに発行すること)すると、希薄化して分配金の受け取り額が減る構造になるのは、企業のエクイティファイナンスと同じである。
 なおREITについては、不動産業者が、自社開発物件の受入先として自社系REITを安易に活用しているという批判が絶えない。
 この問題に対しては、REITの独立性を確保するというのが一つの処方箋だが、逆にいえば不動産業者が自社系REITの利回りに責任をもつのも一つの自己規制のありかたかもしれない(結果として不適切な案件をREITに押し付けない、あるいは購入価格を適切にする)。

REIT(主要スポンサー)分配金利回り例 2009年4月27日現在
日本ビルファンド(三井不動産) 5.07%/b
ジャパンリアルエステイト(三菱地所) 5.28%
野村不動産オフィスファンド(野村不動産) 6.90%
日本リテールファンド(三菱商事、UBS) 7.64%
森トラスト総合リート(森トラスト) 6.54%
日本プライムリアルティ(東京建物 明治安田生命保険) 4.04%
2009年4月27日現在の時価総額順(1000億円以上のもの)

 2008年秋以降は、相場は以前より落ちついている。その後、2009年9月には償還資金対策の官民ファンドが発足。投資家が戻ることを市場は期待している。しかし不動産市況はなお回復していない。
REIT index historical graph, TSE
 この状況は2010年春も大きな変化はない。
 2011年8月末において相場水準は950から1050。分配金利回りは5%超。大変不思議だがこのような高利回り商品が、放置されているのである。確かにオフィスビルの高い空室率、賃料の下落傾向が止まらないことなどからすれば、どのREITでも好成績を挙げられるほど甘い環境ではない。
 ではなぜ個人によるREIT投資が活発化しないのか。賃料の下落傾向のなかで分配金の減額が意識されているとされる。さらに公募増資への懸念があるとされる(価格が回復したところで増資が行われている)。このような懸念の表れが、NAV倍率(株式のPBR倍率にあたる時価純資産倍率)が1を割る状況である。


 2010年4月末の都心5区のオフィス空室率8.82%となお上昇を続けるなか(三鬼商事 1989年の調査開始以来の最高水準を3け月続ける 六本木ヒルズ以来2003年8月以来 平均募集賃料は3.3平方メートルあtり1.8154万円)、3月のマンションの契約率は3月は80%台を回復(不動産経済研究所 70%以上が目安)。在庫調整進展、着工水準が落ちていることが背景。

NCR破たん以降の投資法人に関する動向
2008年10月9日 ニューシティレジデンス(NCR)投資法人(賃貸は好調 大型物件の資金調達できず)が民事再生法の適用を申請(同投資法人債デフォルトへ⇒投資法人債への機関投資家の購入意欲減退 スプレッド拡大 投資法人債発行困難に) その後 ローンスターをスポンサーに内定(2009年4月) しかしローンスターをスポンサーとする再建計画が債権者集会で否決(これは提示された買い取り額はわずかであったため。買い取り提示額は2009年初の野価格の10分の1以下。投資としてのREITへの信頼を根底から崩された)。 2009年7月 さらに2009年9月9日に再度否決 あおぞら銀行,中央三井信託銀行、三井住友銀行、オリックスなどの金融機関、投資法人債投資家などが反対) 大和ハウス工業をスポンサーに変更 2009年10月13日 民事再生法を再度申請して受理される REITの不倒神話が崩壊 金融機関が借換を渋る事態になる
2008年12月 ビ・ライフ投資法人 スポンサーがモリモトから大和ハウス工業に変更
2009年3月  日本レジデンシャル、日本コマーシャル各投資法人のスポンサーのパシフィックHDが経営破たん
2009年4月以降 金融機関の対応柔軟化 とくに2009年7月以降 しかし新規資金の借り入れ依然厳しい
2009年6月  DAオフィス投資法人(大手ダヴィンチHD系を運用会社とも大和証券が買収) 大和証券傘下に入ると発表
2009年7月3日 銀行等株式取得機構による買い取り対象拡大 対象にREIT加える(格付け トリプルBマイナス以上 銀行が6ケ月以上継続保有していること) このほか優先株(転換権付きの場合 2017年3月末までに転換権を行使できるもの) 優先出資株も対象に加える など具体的買い取り条件を金融庁が決める(7月6日から適用)
2009年9月 不動産市場安定化ファンド設立(4500億円規模 借入3600億円80% 日本政策投資銀行が劣後ローン約600億円13% 野村が企業からの出資募る40社から300億円7% 三井不動産30 三菱地所30 東急不動産20 東京建物20 野村不動産HD20 3メガが各10など 出資者は投資委員会を構成 有識者による運営会 ファンドは住友信託銀行に信託 運営はDBJ野村インベストメントが行なう 運用期間最長5年半 財務内容健全な優良REITに限定 融資には不動産担保とる 金利は市中金利より高い 投資法人債の償還 再編資金供給 新規資金供給でないところに不満残る 政府出資の日本政策投資銀行の公的資金を出すことに投機の失敗を税金で救済との批判あり 資金不安を鎮静化させたことを評価する声もある 新規融資期間は2012年3月末まででそれまでに償還期日がくる債券3270億円の償還への不安解消が狙い)
2009年9月18日 大和ハウス工業傘下のビライフ投資法人は、2010年4月1日付けでのニューシティレジデンス投資法人との合併を発表(吸収合併方式)
2009年9月25日 アドバンスレジデンス投資法人(伊藤忠商事系)が日本レジデンシャル投資法人(設立母体は2009年3月破たんのパシフィックHD 09年8月に新たなスポンサーに伊藤忠商事を選定)との合併を発表(新設合併方式 新リートを3月1日に立ち上げる)国内初の合併で業界再編期待高まる
2009年10月6日 平和不動産がクレシェンド投資法人の第三者割当増資引き受けを表明 クレッシェンドを救済へ
2009年11月4日 1年4ケ月ぶりに公募増資(日本アコモデーションファンド 201億円 発表は10月16日 212億円)続いてケネデイクス不動産(発表10月29日 85億円 実行が11月16日 82億円)
2009年10月29日 日本リテールファンドとラサールジャパンが2010年3月めどに合併を発表
2010年1月(要確認) 08年5月以来1年8ケ月ぶりに投資法人債の発行(日本ビルファンド投資法人 5年債 100億円)(要確認)その後2010年3月にもジャパンエクセレント投資法人(母体は興和不動産など)とエクセレント投資法人がそれぞれ起債
2010年2月26日 日本賃貸住宅投資法人とプロスペクトリート投資法人が2010年7月1日合併を発表 ともに米ファンド系 住宅系中堅
2010年3月中旬 不動産市場安定化ファンドがプロスペクトリート投資法人に100億円規模融資
2010年4月22日 ユナイテッドアーバン投資法人(丸紅系)が2010年12月をめどに日本コマーシャル投資法人(旧母体は2009年3月破たんのパシフィックHD 2009年11月から丸紅をスポンサー候補に絞り交渉)を吸収合併することを発表(合併後資産規模は約5000億円で大手に食い込む)
2010年4月30日 大証 不動産ファンドのダヴィンチHD株(09年12月期110億円の債務超過)の上場廃止を発表(6月1日付けで廃止へ)

代表的なファンド運営会社
ダヴィンチ
ケネデイクス
セキュアード
リサ
大手の一角のパシフィックはすでに会社更生法適用申請2009/03 負債総額1636億円。

大手不動産5社
三井不動産
三菱地所
住友不動産 オフィスビル賃貸事業 マンション分譲事業 住宅リフォーム 不動産仲介事業
東急不動産
野村不動産HD
不動産株は実質PBR(時価ベース)で1倍割れ(2010年5月26日現在 三菱地所0.81 三井不動産0.84 住友不動産 0.91等 名目PBRはそれぞれ、1.65, 1.21, 1.53。2010年3月期から含み損益開示 この含み益を加算した純資産で計算したのが実質PBR 背景にはビル賃料収入の減少懸念 含み益の実現可能性への懸念など)
アウトレットモール(三井不動産 三菱地所)
海外展開(積水ハウス:オーストラリア 大和ハウス:中国 三井不動産:上海郊外)

不動産株のREITとの違い 日本経済新聞2009年10月19日による
不動産の利回り 低い 2%に対してREITは4%-6% 
不動産の自己資本比率 低い よくて20%に対して50%前後
事業内容 賃貸より開発・分譲中心
信用力 単純には言えないがREITの方が高いものが多いとされている
⇒価格変動率については2007年に入ってから2009年にかけてREITの下振れの大きさはしばしば不動産株と等しいか上回るものとなった。これは収益率の変動の大きさにも反映して機関投資家資金がREITから離れたとされている。
⇒利回りについては一般にREITが高いが、その大きさhREITにより違いがある。REITの配当性向は90%以上という規制があるため。ただしこの規制は、資金調達のためには増資せざるを得ないという弱点を示すものでもある。

マンション供給業者(2008年)
大京
三井不動産レジデンシャル
穴吹工務店
藤和不動産
大和ハウス工業
野村不動産
住友不動産
コスモスイニシア(2005年にMBOでリクルートから独立 ユニゾンキャピタル)
供給戸数2000戸以上のランキング
マンション業者(デベロッパー)の破たん例
2008年6月24日 東証2部スルガコーポレーション(神奈川県横浜市) 民亊再生法適用申請 負債620億円
2008年8月13日 東証1部アーバンコーポレーション(広島県広島市) 民亊再生法適用申請 負債2558億円
2008年10月31日 ダイナシティ(東京都港区) 民事再生法適用申請 負債520億円
2008年11月28日 東証2部モリモト(東京都渋谷区) 民亊再生法適用申請 負債1615憶円
2009年2月5日 東証1部日本総合地所(東京都港区) 会社更生法申請 負債1975億円
2009年5月29日 東証1部ジョイントコーポレーション(東京都目黒区) 民亊再生法申請 負債子会社とも1680億円
2009年11月24日 穴吹工務店(香川県高松市) 会社更生法申請 負債1403億円 
2010年5月14日 プロパスト(J)(東京都渋谷区) 民事再生法申請 負債554億円 例外規定使い上場維持


ゼネコン
大成建設 清水建設 大林組 鹿島
ゼネコンの破たん例
2008年7月5日 真柄建設(石川県金沢市)民亊再生法適用申請 負債348億円
2008年8月28日 りんかい日産建設(東京都港区) 会社更生法の適用申請 負債629億円
2008年10月8日 東証1部中堅の新井組(兵庫県西宮市) 民事再生法適用申請 子会社と合わせた負債総額449億円
2008年10月16日 東証2部井上工業(群馬県高崎市)と子会社 破産手続き開始 負債125億円
2009年1月30日 大証2部平和奥田株式会社(滋賀県東近江市) 民事再生法適用申請 負債76億円

資料
不動産経済研究所
不動産投資信託(REIT)
上場後初のREITの破たん
REITの破綻と再建への動き
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