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大震災による二重ローン対策について

2011-07-23 10:46:37 | Economics
政府は東日本大震災の被災者のいわゆる二重ローン対策について、

企業向け貸付については2011年7月8日までにまとめた。
被災企業の借金については、中小企業庁が各県につくる「産業復興機構」が買い取ることで
金融機関が新規融資に応じることを支援。
ただし産業復興機構のために国に用意できるのは中小企業基盤整備機構の
余剰資金2000億円だけ(8割出資)。あとは地元銀行の出資(2割)。
債権買い取り額は当面1500億円程度を想定。
債権の買い取りは再生可能などの条件を満たしたものに限定。
担保価値の減少により債権価値が下がっているが
債権の買い取り価格は 事業者の将来見通しや被災前の状況をもとに算定
債権の元利返済を5年程度凍結。

当初の民主党案は買い取りを企業向け債権に限定したものだったが 自民党・公明党との協議を経て
企業向けのほか 生業を営む小規模事業者 農林漁業者 医療機関向け債権含むことに変更された。

+なおこのほか再生可能な事業者に対する利子補給制度も創設することに

個人の債務者については、私的整理を促す方針で、「私的整理指針」が7月15日までにとりまとめられた。
すなわち個人については自己破産させず、第3者機関の承認を要件に債務免除。
国としては金融機関の債権放棄を無税償却を認めることで支援することになった。

なお

今回の支援対象になる債権額(当初想定の債権額)は総額で5500億円(2011年5月末)。
内訳は8割4500億円は企業向け
返済が一時停止しているもの6984件2512億円
金利減免などを受けたもの 3639件2007億円
2割が個人向け住宅ローンで1000億円
返済が一時停止しているもの6523件923億円
金利減免を受けたもの 863件122億円

このほかに農林業者向けで返済が滞っている債権は1000-1500億円という数値が示されている。

資料 日本経済新聞2011年7月9日
   金融財政事情2011/7/11, pp.10-26;2011/7/18, pp.8-9;2011/7/25, pp.8-9 
   「被災地の企業倒産」エコノミスト2011年7月26日, pp.13-14
福島第一原発 難航する循環注水
東京電力の信用力低下問題
福島第一原発炉心溶融事故(2011年3月)の経緯
水没ローンと戦略的債務不履行(戦略的デフォルト)

福島第一原発 難航する循環注水

2011-07-22 11:05:10 | Economics
循環注水冷却 1日1200トンを浄化(毎時50トン)という計画
 2011年3月の事故直後から構想 4月末までに設計完了 6月5日工事終了
 しかしその後 工事の不備 不良が繰り返し露呈 6月末段階で本格稼働に入れず。
 7月2日夜 本格稼働に入る
 高濃度汚染水の増加に歯止め 冷温停止目指す
 貯水槽満杯のため汚染水が海にあふれ出るのを避けるというもの。

    施設の概要:4つの主要部分からなる
    東芝製     油分離装置
    米キュリオン社 セシウム ヨウ素を吸着して取り除く装置
    仏アレバ社   セシウム ストロンチウムなどを薬剤で沈殿させる 除染装置
    日立など    淡水化装置 逆浸透膜使用 塩分をとりのぞくもの

 施設は稼働を開始してから
 一定の役割を果たしているものの事故やトラブルが続き稼働率は想定を下回っている。

福島第一原発 汚染水問題の経緯
 東京電力発表に依拠。そのため事実と合っているかどうかの検証はできない。
 東京電力が重要な事故・事実を隠している可能性、虚偽を発表している可能性は残る。
   
2011年3月11日の事故直後から4月 大量の高濃度汚染水で海洋を徹底的に汚染
3月27日 タービン建屋外トレンチの水の汚染確認される
4月2日 2号機取水口付近で高濃度汚染水(ヨウ素131は法定の750万倍、セシウム134は200万倍)の流出を確認(流出規模明確にされず)

4月上旬 人為的な海洋汚染を内外からの抗議を受けつつ強行
4月4日から10日 集中廃棄物処理施設にあった低濃度汚染水などを1万数千トンを海用処分。高濃度汚染水の貯水池を確保。内外から海水汚染に強い批判。
4月末頃? 循環注水装置の設計完了

5月以降 その後も海洋に高濃度汚染を繰り返している恐れが高い また地下水の汚染の疑い強まる
5月11日 3号機取水口近くのピットに高濃度汚染水漏出(セシウム134は国の基準の62万倍)を確認 同日夜までに止水
5月13日 1号機建屋で1時間あたり2000ミリシーベルトの高い放射線量を確認
5月17日午前8時 いわき市小名浜港に人口浮島メガフロート到着
5月17日 東芝は新たな工程表のなかで循環注水で冷却する構想を公表 ポンプや除染装置を
     5月末にも設置(背景 毎日500トン規模の注水で汚染水が増加している)
5月25日 集中廃棄物処理施設の受け入れ上限を1万4000トン(2号機から1万トン 3号機から4000トン)から1万9000トンに引き上げる(2号機について4000トン 3号機について1000トン上乗せ)
     1号機から6号機で約10万トンの汚染水 うち1-4号機の8万4700トンが高濃度汚染水
     1-3号機に毎日672トン注水 蒸発分を除き毎日530トンたまる
5月26日 3号機の汚染水を移した建屋で止水工事の不備から汚染水が通路に漏れだしたことを確認
      約2メートルの深さ 漏水量は70トンと推定    
5月31日 2号機に設置した代替冷却装置が稼働開始
6月4日 1号機建屋南東角で1時間あたり4000ミリシーベルトの高い放射線量を確認
6月5日 循環注水施設建設終わる(設計完了から5週間)
  6日 真水を入れて試験開始
  6日 3000トンの放射性汚染水海洋処分案が水産庁の反対で宙に浮いていることが判明

6月 循環注水施設は事故が続き稼働が安定せず本格稼働に入れない
6月10日 試運転前に米装置で水漏れ発生(10数か所)
  11日 水がにじみ出ていた配管絶続部分48ケ所に樹脂塗布 
  15日午後 当初の本格稼働予定日(低濃度の汚染水を8時間流す予定)
  16日午前 東芝は放射性物質のセシウムの濃度を1万分の1に減らせる能力を確認したと発表
  16日夜午後7時20分 放射線量が米装置周辺で高い 警報が鳴り自動停止 水が漏れ出ていた
17日午後8時に本格稼働開始 高濃度汚染水処理始める
  18日午前1時前 装置の稼働停止 稼働後5時間で米装置で放射線量高まったため未明に手動停止 
  21日午前 アレバ社の装置が一時停止
  21日午後 試験運転開始 汚染水を毎時50立方メートル流して性能を確認 
  27日 循環注水冷却開始 午後4時20分開始 処理水を原子炉にそそぐホース之接続金具が外れて水漏れ。午後5時55分作業中断 仏装置のポンプが自動中断
  28日 移送部分の出口部分にある継ぎ手部分から漏水した 継ぎ目は約100ケ所 タンクから原子炉までホースの全長は約1500m 毎時16トン 1・2号機に毎時約3.5トンずつ 3号機に同9トン
  29日 浄化した水を原子炉へおくる途中で2ケ所微小な穴がみつかる 29日夜再稼働
      6月17日から28日の間の施設の稼働率が約55%と発表された。
  30日 アレバ社の装置が不具合 運転停止 吸着部品の交換あよび淡水化タンクの増設のため浄化処理は中断 結局午後6時50分に再び起動 5号機 6号機にたまっていた低濃度汚染水のメガフロートへの移送

7月 循環注水施設は本格稼働に移行。稼働率は想定(目標80% 毎時)を次第に低下(配管の総延長は約4キロメートル。繰り返し液漏れ事故起こす。)。吸着材交換のための頻繁な停止。メルトダウンした1-3号機では、地下水の汚染が進行しており、遮水壁がすぐにも必要との指摘がある。
  2日午前 6月17日に開始された高濃度汚染水の総量(タンクに蓄えられた量)は1万850トンに達した(1万トンを超えた)。塩分を除けば冷却水として再利用できる(今後は押さえていた冷却水を増やす方針)。
  2日夜  循環注水への移行を発表(汚染水増加のおそれ減らせるか)。施設の稼働率の当面の目標は80%とされた。
  3日   5号機ホース(海水を送るホース)が水漏れ(直径20cmのホース 長さ30cm 幅最大7センチの亀裂) ホース交換のため3時間半 冷却用ポンプ2台停止 冷却作業中止
  4日午前 3号機の注水に不都合発見(3日午後午前9時毎秒3.7トンの想定 4日午前8時過ぎ毎秒3トンに低下 低下の原因不明)
  6日   過去1週間(6月29日から7月5日)の施設の稼働率は76%で目標の80%に届かなかったとされた。
      処理量が毎時43トンと計画の50トンに及ばなかったこと。
      装置の洗浄のため施設を停止する必要があること。
  9日   屋外仮設タンクからメガフロートに低濃度汚染水の移送実施 
 10日   アレバの装置から汚染水(放射性物質含む薬剤)漏れ50Lほど。部品交換などのため施設の運転停止。
 12日   10日の水漏れ個所と同じところが腐食、水漏れ10Lほど。部品交換のため再度運転停止。
13日   液漏れ見つかり停止。14日昼までに器具を交換。14日午後6時半運転再開。6-12日の稼働率73%。7月の稼働率の目標を80%から
70%に下方修正。
 17日   工程表の第一段階終了を発表。原子炉を安定的に冷やす目標をおおむね達成とした。ただし汚染水処理システムの不安定を認めた。 19日   新たな工程表。来年1月までに遮水壁着工とする。 
 20日   東京電力 汚水処理施設の稼働率低下を発表(13日-19日 53%)。原因不明の流量低下(配管の一部に空気たまる。あるいは配管に泥状の物質付着)。 ⇒ 高濃度汚染水の総量は増加へ。しかし8月の東芝製除染装置のバックアップ運転開始が救済になるかも。外部冷却装置がある2-3号機の水温は31-35度まで低下。注水だけでしのいでいる1-4号機に外部冷却装置設置工事急ぎ、近く稼働。

その後
6月10日から8月13日まで高濃度汚染水処理装置で計32回の不具合発生
6月17日から8月9日までの高濃度汚染水処理装置の累積稼働率66%
8月16日 放射性セシウム吸着装置サリー(東芝などが作成 ポンプの数が少なく維持管理しやすい)の試運転開始
8月17日 サリー本格運転に移行
   
0riginally appeared in July 4, 2011
corrected and reposted in July 22, 2011
東京電力の信用力低下問題
福島第一原発炉心溶融事故(2011年3月)の経緯

外為どっとコムが1ケ月業務停止処分(2010年9月17日)

2011-07-13 10:46:16 | Economics
外国為替証拠金取引について
 外国為替証拠金取引(FX取引)は個人による外国為替手段として成長。現在では外国為替取引全体の3分の1を占めるとされるまで取引規模が拡大している(外国為替取引の主要プレーヤーに成長 BIS調査2010年4月で世界の為替市場での円の対外貨取引は1日28兆円。他方FX業者の顧客との2010年8-12月の取引額は推計で5.2兆円、約19% 2007年4月時点の推計約7%の2倍以上)。その中心は取引所取引ではなく、業者との相対取引(店頭型)だとされる。
 ドル ユーロ 高い流動性
 ポンド 変動率大きい 
 ドル・円 > ユーロ・円 > ポンド・円 > ユーロ・ドル > 豪ドル・円
 (2010年金融先物取引業協会)
 ユーロ相場の下落 反発期待
 1998年の改正外為法で解禁されたこの取引は、相対取引からスタートした。証拠金取引の投機性に加えて、相対取引で提示される価格の透明性に顧客保護上問題があるのは明らかであったが、市場規制が回避されたのは不思議である。ようやく2005年に改正金融先物取引法が施行され、2005年から東京金融取引所で取引所取引(くりっく365)が始まった(2009年に大阪証券取引所・大証FXも参入した)。
 取引手数料は店頭では無料化が進んでいる。取引所では手数料がかかる。その結果 短期売買では店頭が有利とされる。
 税制面で取引所取引は雑所得・申告分離課税、店頭取引は雑所得・総合課税のため、取引所取引は税制面で現在は優遇されていると指摘される(2011年6月22日に成立した法改正で、2012年1月から雑所得・申告分離課税に統一されることになった。また差金決済取引も同様。)。取引所取引と店頭取引では、顧客層が違い、取引所取引は富裕な資産家が中長期の運用を行う一方、店頭取引は短期取引の場になっているとも見られている。
 証拠金取引については(一時数百倍といった証拠金倍率も見られたが)2010年8月、ようやく(過度な投機を抑制する見地から)50倍までという規制が入った(2011年8月には25倍)。FXは個人は外貨買い(円売り)で入るので、結果として円高を抑える効果があるとされる。2010年8月1日からの規制は、外貨の購入を抑え、おりからの円高の進行を進めてしまう面があるかもしれない。
 FX取引をする主婦層を「ミセスワタナベ」、男性サラリーマンを「外為太郎」と呼ぶことがある。
 外貨買いで入ることが多いために、一方向に円高に進まないことにかけた「逆張り」が多いとされる(売りではいるのは中級者)。つまり円高の進行するもとで、逆に円売りではいるので、このような外国為替証拠金取引の存在は相場に対して安定作用があるとされる。そのためか円高が進行すると損失を出す人がふえるとされ、2010年暮れに外為どっとこむが行った調査によれば、過去1年の取引で儲けが出た人は20%.損失がでている人は40%。また大震災後の3月17日に円高でミセスワタナベが損失をこうむったとされる。
 一般に円安が進むとこまめに利益確定の売りがでる(外貨買い 円安 外貨売り)。
相場の動きが小さくなると、小さな値動きを捕らえて利益を確保する瞬発力が必要になるが、システムトレードが人気を集める一因になっている。
 中長期的観点から金利差をねらった豪州ドルなど高金利通貨買い(スワップポイントという一種の金利収入が日単位で得られる)。

2010年8月の倍率規制後のFX取引
 まず「過度の投機的取引」を防ぐ観点から証拠金倍率に50倍の上限が置かれた。この上限は2011年8月に25倍にさらに下がる。市場を統制するためには、倍率規制を柔軟に使用できることが望ましい。
 この規制については、円高を防止するという点からは逆効果との指摘がある。個人は基本的には外貨買いで投資に入るからだ。これは個人投資家は市場の動向の反転をねらって、円高局面では円安に戻す動きにかけて、外貨を買う「逆張り取引」を膨らませるからだとされる。日本経済は低成長であるから円高は円安に戻すはずと考える個人投資家は多いようだ(なおいつも円売りの担い手ではない。円先高観から2010年1月などは外貨の売り持ちが増えた。)。
 
 規制導入後の2010年8月19日(1週間ぶりに1ドル84円台 11日の84円72銭に迫る)に東京金融取引所の外国為替証拠金取引で、外貨に対する円の売り越し額は過去最大の52万3000枚(約4500億円 米ドルや豪ドルでは1枚が1万通貨単位 8月18日の47万枚弱よりふくらむ)に達した(その後一時83円台を記録した8月24日には54万9818枚と55万枚、約4700億円に迫り、過去最高を更新した。)。なお岡三オンライン証券によると、小口の個人投資家の売買は激減した。また東京金融取引所は8月の「くりっく365」の取引が前月比13%減少したとした。影響はでたが2-3割減少との一部の予測ほどではなかった。

インチキが正常か顧客にはわからない価格システム
 これまで指摘されてきたのは約定率。指値で注文しても約定率が低いと、相場は動いてしまうので、買値(あるいは売値)が変化して、損益がかわってしまう。スプレッドが低くても約定率の低い業者は顧客の利益にならず(実際の売買値でみたスプレッドは大きくなるため)、スプレッドが少し高くても、約定率の高い業者の方が顧客の利益になるとされる。なかにはわざと約定を拒む悪質な業者もいるとされる。
 さらにあらかじめ顧客との合意で一定の変動幅(スリップページ)で取引価格の変動を顧客が容認している場合は、その変動幅の範囲で売買が成立することも生じる。この場合、顧客にとり不利な方向へのスリップページが多発しても、全く正当な取引になる。
 ストップロスというのは、投資家側がストップロス機能を設定したことを悪用するもの。一定の安値になると損失拡大を防ぐため自動的に売るといった設定があると、提示価格を瞬間的に安くして、この顧客側の機能を作動させて顧客から安値で購入できる。

最大手の外為どっとコムで誤表示(2010年7月13日および9月6日)システム障害(9月15日)などトラブルが連続
 誤表示のため円・ユーロ相場のところで誤表示が生じ顧客に損失が発生したとされる。
 最大手業者の店頭FX取引のところでの問題発生であり、この問題はFX取引全体の信頼性に関わる。というのはFX取引は、相対取引が中心。相対取引では業者の価格表示への信頼が取引の基礎。
 外為どっとコムではまず7月13日にユーロ円取引で問題が発生。取引の中心の一つであるユーロ・円相場で1ユーロ111円程度のものが反値の55円台後半の表示がでた。同社は発生した関連取引を無効とする措置をとった。(異常値を排除するシステムが機能しなかったとし、影響を受けた取引数量も公開されなかったが、このように数値を公開しない姿勢は疑問が多い。また後述するように公開されているHP上には、こうした事故があったことの説明、開示が残されていない)。
 9月6日に起きた誤表示は事件の再発を防げなかったことを意味する。金融庁では9月10日に業務改善改善命令を出したが、9月15日に外為どっとコムでシステム障害が発生した。ここでようやく関東財務局は9月17日に外為どっとコムに対して10月の1ケ月間の業務停止命令を出した。 なぜかくも処分がゆるやかなのか。よく理解できないところだ。
さらに分からないのは外為どっとコムのHPに入っても、今回の事件や関東財務局による行政処分の痕跡がないことだ(2010年9月20日現在)。このようなケースで通常出される「お知らせ」も「おわび」も見当たらない。最大手業者としてこのように開示姿勢に欠けるのは問題が多いのではないか。なお9月22日になってようやく、業務停止命令を受けたことの「お知らせ」が掲示された。
2010年9月6日の事件をつたえる9月7日付けのブログ記事
9月6日に誤表示があったことを報道する9月10日の記事
関東財務局 外為どっとコムに対する行政処分 2010年9月10日
関東財務局の行政処分伝える2010年9月17日付けロイター電
関東財務局 外為どっとコムに対する行政処分 2010年9月17日

先例 コメルツ銀行による誤表示問題(2009年10月末)
 同様の問題は散発している。たとえば2009年10月末日ドイツコメルツ銀行で発生。このときは東京金融取引所の外国為替証拠金取引「くりっく365」の南アフリカランドの取引に絡んでのもの(マーケットメーカーの1社であるコメルツが極端に安い買値を表示、これが取引所の提示値となり、500人に近くが損失を受けたと報道された)だった。コメルツは2010年1月3日まで取引停止処分を受けただけでマーケットメーカーから排除されなかった。当初の報道ではコメルツは「リスク回避」として提示値を取引所に説明したが、その後の金融庁の行政処分の文書によれば、コメルツ銀東京支店内でシステムの改善を図るなかで生じた「事故」が真相で、コメルツに悪意はなかったとされた。異常値を取引所側のシステムが排除できなかった。取引所ではこの「事故」を受けて、短期間で3-5%を超えるレート等を異常値として自動的に排除するようにシステムを修正したとされる。
 「くりっく365で30秒間急落」『日本経済新聞』2009年11月13日夕刊2面
 金融庁 コメルツ銀東京支店に対する行政処分について 2010年1月8日
 東京金融取引所 コメルツ銀に対して過怠金300万円の処分 2009年12月21日

それではFX取引とはそもそもどのようなものか
FXの基礎知識(ひまわり証券)
 FXとは(大証)

 個人投資家の外国為替証拠金取引のうち、取引所取引である東京金融取引所「くりっく365」の取引(2005年7月開始)が急拡大している(このほか大阪証券取引所が「大証FX」を2009年7月に開始)。個人投資家の短期的な動きを反映していると見られている。海外では普通の主婦が取引に参加しているとしてMrs Watanebesともてはやされる。
 個人のFX取引は東京外国為替市場の3割程度を占めるとされる。また取引所取引はFX取引全体の1割程度とされ(店頭取引が大半)、全体像を把握しにくい市場になっている。
東京金融取引所 クリック365
大証FXの特徴について

 1998年の外為法改正をきっかけにした外国為替証拠金(FX)取引は、外貨預金より安いコストで個人に外貨取引を可能にした(証拠金倍率を1倍にすると手数料は銀行の外貨預金の場合の約20分の1)、プロとはことなる個人の参加で市場変動をなだらかにしたプラス面がしられる。この自由化は疑問の多いものだった。
 その取引には、相対取引とこのような取引所を経由した取引とがある。現在は相対取引が主流だとされる(取引所取引はFX取引全体の1割強と推計されている)。なおFX業者は金融商品取引法による登録制。
 2005年7月改正金融先物取引法施行で金融庁への登録義務化(電話勧誘禁止、自己資本規制比率120%以上) 400社ほどあった業者が100社強に減少 商品先物会社や専門会社から取引業者のすそ野が拡大。大和証券が2006年2月に、また東海東京証券が2006年5月に参入するなど。
 第一種金融商品取引業登録案内
 外為どっとコム(最大手)商品概要
 ひまわり証券商品概要
 セントラル短資FX商品概要

 金融庁は従来、規制に消極的だったとされるが、この消極姿勢はまったく理解できない。FX取り扱い業者の業界団体である金融先物取引業協会では店頭FX(相対取引)の数値をまとめている。2005年度第4四半期に50兆7305億円だったものが、2008年度第4四半期には587兆237億円と4年間に10倍以上急成長している。
 金融先物取引業協会統計

 2007年8月のサブプライムローン問題をきっかけとした登録業者の破たんを受けて、金融庁がFX業者の緊急実態調査をした結果、顧客資産と自己資産を分別管理していない業者が4割を占めるなどの問題が明らかになった。それにも関らず、金融庁の姿勢はその後もゆるやかで急がないものだった。こうした事態はもともと規制を緩和したときに予想されたこと、それを取引規模が拡大して破たんが生ずるまで放置してから、分別管理の強制へと進むのは行政機関の態度として疑問が残り金融庁のこのような行政姿勢には強い疑問がある。
 問題が起こることが予測されているのにそれを放置して、問題を確認して規制するというこのステップには、納得がゆかない。

 2007年10月17日 エフエックス札幌(札幌市) 取引の強制終了宣言
2007年10月22日 エフエックス札幌 札幌地裁に自己破産申請
         北海道財務局 業務停止命令 業務改善命令 など出す
         債権者588人 負債総額23億3000万円 資産1億4000万円
 2007年11月5日  アルファエックス(東京都港区) 電話不通 HPダウン
 2007年11月6日  アルファエックス 東京地裁に自己破産申請
         9月末現在565口座 預かり証拠金約21億円
 2007年11月9日  金融庁 アルファエックスに業務停止命令など出す
 2007年12月3日  金融庁 日本ファースト証券(東京都中央区)に対し業務停止命令・業務改善命令(2006年12月27日に続き再度 分別管理の不備 自己資本比率の不足など)
顧客約850人。
 2007年12月17日  金融庁 日本ファースト証券に対して登録取り消し
          東京地裁に破産手続き開始・保全命令 申立
 2008年4月4日   金融庁 ニッツウトレード(東京都千代田区)について東京地裁に          破産手続き開始申立。業務停止命令、業務改善命令。
         顧客数約500人 預かり保証金約10億円

 2009年8月。金融庁は本当にようやく一連の規制実施を決めた(規制強化を遅らせた理由は不明)。まず2010年2月からロスカットルール(損失がある水準に膨らんだところで強制的に取引を終えること)の適用、証拠金の金銭信託として信託銀行に預けることを義務化。そして2010年8月に証拠金倍率を50倍までに制限することである。証拠金倍率については2011年8月には25倍まで引き下げる方針。これは相対取引を強力に取引所取引に誘導するものとされる。
 これを受けてFX業者は商品メニューに取引所取引を加え始めている。
 クリック365 大和証券2009年11月参入 外為ドットコム2010年5月参入予定
 大証FX 岩井証券2009年11月参入 松井証券2010年1月参入 マネックス証券2010年5月参入予定

なお金融商品取引法による登録をしていない海外の業者が、顧客を勧誘する恐れが指摘されている(このような業者の営業は禁止行為。このような業者と取引して資金の持ち逃げなどの問題が生じても保護されない)
 金融庁 外国為替証拠金取引について

取引の現状
取引が多いのは高金利の豪ドル・円取引。米ドルと円取引だったが、ユーロ円取引が急拡大した。高金利通貨の代表格は豪ドル。逆に低金利通貨の代表格は米ドル、ユーロである。
流動性の面では米ドル、ユーロが高い。米ドル、ユーロは輸出入に伴う実需も多い。

2010年5月 ギリシア財政危機でユーロ・ドル急落。個人投資家は損失確定売りを迫られる。豪ドルには南アフリカランドとともに資源国通貨の顔もある。南欧諸国の財政不安とともに、金利と為替収益をともに稼げる資源国通貨に投資マネーが集まっている。日米欧が低金利を続けると思われるなか、新興国とともに資源国が利上げに踏み切るとみられることも材料になっている(2010年4月豪中銀が政策金利引き上げ)。

5月中旬に入り豪州ドルが対円で急落。個人投資家は損失確定売りに走った。そしてヘッジファンドが豪ドルを手じまう中で、個人投資家が逆張りで豪ドルの買いに入っている。個人投資家には短期的な逆張り好きな特性がある(プロの投資家が行なうキャリー取引が相場変動を拡大するのに、このような個人投資家はリスクをとりやすく市場の変動をならす効果がある)。しかしこの手法は、市場の流れが一貫して強いと損失を膨らませる結果に終わる。

FX取引が個人の短期的動きを示すのにやや中長期的動きを反映するのは、外貨建て投信をめぐる動き。新規購入により該当外貨の買い・円売りが生じる。また解約により外貨売り・円買いが生じる。つまり買い越しになれば円売り、売り越しになれば円買いとなる。
豪ドル、ブラジルレアル、インドルピー、南アフリカランド、トルコリラなど資源国・新興国通貨建ての投信が人気だ。

Written by Hiroshi Fukumitsu. You may not copy, reproduce or post without obtaining the prior consent of the author. originally appeared in June 20, 2010
corrected and reposted in Sept.19, 2010
Corrected and reposted in July13, 2011

キャリー取引 FX取引 外国為替相場
為替介入の再開(2010年9月15日)
ドバイショックについて(2009年11月25日)
ギリシャへの資金支援で合意(2010年5月2日)
アイルランドへの金融支援決定(2010年11月28日)
ポルトガル EUに金融支援要請(2011年4月6日)
綱渡りのユーロの信認(2011年7月11日)
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スマートフォン市場の拡大とそのインパクト

2011-07-11 16:37:26 | Economics
スマートフォンや多機能端末(タブレット)が伸びてインターネット接続機器の主役をPCから奪いつつある
 PCの販売に影響に影響している。台湾のエイサー(宏碁:ノートPC世界2位 首位はHP 一時はネットブックで主流になる)やアスース(華碩電子)など軒並み減収 人気ダウン(ネットブックで成長するもiPad人気に押される 2010年第四半期以降 2011年4月からアンドロイド携帯で巻き返しはかっている)。
 なおノートパソコンEMS首位の広達電脳(クワンタ)は中華電信と組んでクラウドを強化中 ノート2位は仁宝電脳

  2010年10-12月期    
  米IDC調べ スマートフォンの世界出荷台数 1億90万台 前年同期比87%増加
        比較するとPCは             9207万台 3%増
  逆転は4半期ベースで初めて生じた。

 2011年 スマホの出荷台数がパソコンの出荷台数を上回る見込み
 2010年 PC 約3億4900万台 スマホ 約2億9300万台
 2011年 PC 約3億8500万台 スマホ 約4億2100万台 (予測)

 スマホの人気は2007年6月のiPhoneの発売が火をつけたもの 同様にタブレットは2010年4月のiPadの発売を起点にしている。
 アップル:基幹部品は共通 発注量多い
   2007年6月 iPhone発売
   2008年7月 iPhone 3G発売
   2010年4月 iPad発売
   2011年1月 ステーブジョブズCEO 病気療養へ
   2011年3月 iPad2発表発売
   2011年6月 iCloudサービス発表

スマホ向け電子部品市場の概要
 静電容量方式パネル(薄型化 機能向上を求められ価格がさがりにくい)
 高精細液晶パネル(解像度高く 値下がりしにくい)
  液晶パネル:シャープ 東芝 日立 新たな工場建設へ
 中小型液晶事業 シャープ そして 東芝・ソニー・日立連合 2011年11月
  液晶製造装置:ニコン、アルパック、デイスコ
  部材:TDK 村田製作所 太陽誘電
 インダクター(電気の流れを整える 既存の携帯電話の2倍必要)
 スマホ向けNANDフラッシュメモリー 7月に入り下げ止まり 東芝は四日市工場の能力増強投資中
 半導体事業 エルピーダと東芝, ソニーの明暗 2011年11月
 セラミックコンデンサー 村田製作所 工場の生産能力拡充へ
 スマホ向け電池 高周波部品 
 端末メーカーは複数機能が一体化シタモジュールを求める → M&A加速へ
 アップルはプロセッサーの生産をサムソンに依存 サムソン依存を下げるためにも日本メーカーを活用
 サムソン電子はグーグルのアンドロイドを組み込んだギャラクシーSを生産
 ソニーエリクソンはやはりアンドロイド搭載のエクスペリアを生産

携帯電話市場
 世界ではノキア(シンビアン)、RIM(ブラックベリー)が大きい存在。
 グーグル(アンドロイド)、アップル(iOS)の対決に目が行きがちだが。
 アップル、サムソン(ギャラクシー) モトローラなどが伸びている アップルの急伸の前に
 カナダのブラックベリやフィンランドのノキア(MSと組む)が苦戦しているとの見方もある。
 台湾の宏達国際電子(HTC:スマートフォン大手 アンドロイド携帯)の人気 
HTCはEMSが多い台湾のメーカーのなかでは異色。携帯電話のEMSでスタートするも2007年6月に自社ブランド発売、
2009年第一四半期にはついに受託生産から撤退。
 EMSの変調
 EMSの代表格である鴻海精密工業では人件費上昇 受注競争激化もあり、収益力が落ちている
 人件費上昇 受託競争による安値受注で採算悪化 中国内陸部への拠点移転 顧客との費用転嫁交渉
 ⇒ 世界的なデジタル製品の値下がりにはどめかかるかは注目されている
(売上高営業利益率は2001年以降 傾向的には下落。売上高は2010年までは上昇。とくに2009年から2010年は
 急上昇。その後伸びが鈍化。)


 日本の国内携帯電話市場4000万台 高機能端末(スマホ)はそのうち半分超え 2011年度は2000万台超える?
 うちアイフォンが3割以上 2008年 アイフォンのヒットで市場拡大
 投入が遅れたNTTドコモ KDDI減収(2011年3月期)

 新興国向け携帯電話・大型テレビ・パソコン向けの部品は値下がりしやすい

スマートフォンの拡大で直接影響を受けている企業名一覧
 中小型液晶パネル           シャープ 
 中小型液晶パネル           韓国サムソン電子 有機ELでは独走体制
 中小型液晶パネル           台湾奇美電子(CMI)HDPの生産を受託 2010年3月 ホンハイの傘下
 中小型液晶パネル           東芝モバイルデイスプレー(TMD) 中国で合弁事業展開
 中小型液晶パネル           日立ディスプレイズ(HDP)高精細パネル
 中小型液晶パネル           ソニーモバイルイスプレー(SMD)
 中小型液晶パネル           韓国LG電子(LGデイスプレー)
 高精度タッチパネル          アルプス電気 
 タッチパネル             日本写真印刷
 タッチパネル             台湾 宸鴻(TPK)
 タッチパネル保護フィルム       東洋紡 
 反射防止フィルム           大日本印刷
 反射防止フィルム           パナ電工+凸版 (2011年8月事業統合)
 タッチパネル用フィルム        JSR
 偏光板保護フィルム          富士フィルムHD
 ポリエステル製フィルム        東レ (拡散フィルム 反射フィルムなど)韓国 中国にも工場
 液晶用光学フィルム          日東電工
 異方性導電膜             ソニーケミカル&インフォメーションデバイス
 異方性導電膜             日立化成
 偏光板向け樹脂素材          クラレ 光学用フィルム ポバール 世界シェア8割で強い
 多層プリント基板           パナソニック 
 タッチパネル用ガラス         旭硝子(ガラス基板は米コーニング 旭硝子 日本電気硝子の順)
 液晶パネルの着色材料         三菱化学
 有機ELパネルの基盤パネル基板材料  宇部興産(韓国サムソンとも連携) 
 半導体パッケージの基板材料      住友ベークライト
 セラミックパッケージ         京セラ
 HDD用磁気ヘッド           TDK
 表面弾性波フィルター         TDK
 HDD用精密モータ 振動モータ     日本電産
 積層セラミックコンデンサー      村田製作所
 表面弾性波フィルター         村田製作所
 小型インダクターコイル(電気整流)  TDK
 電子コンパス             旭化成 
 LSI                  ローム 
 半導体フラッシュメモリー        東芝  
 モバイルDRAM            エルピーダメモリ
 半導体製造装置             リンテック 
 世界最大のEMS(iPad, iPhoneの生産をほぼ引き受け ソニー 任天堂のゲーム機も生産):台湾鴻海精密工業(EMS最大手 ブラジルに巨額投資交渉中)
 コネクター               台湾恩得利工業
 スマートフォン大手           台湾宏達国際電子(HTC) グーグルと携帯「ネクサスワン」を共同開発。英米でネット販売。  

 液晶パネルはテレビ向けは テレビ需要低迷 価格下落 各社業績伸び悩み(2011年前半) テレビ向け需要に偏った企業は苦しい
 中国パネルメーカーの増産
  京東方科技集団(BOE) TCL集団 新工場稼働 8.5世代
 韓国 サムソン電子 LG電子は中国に進出
 今後 3D ネット対応 節電機能など

見えてきた次のインパクト
 無線データ通信量増える(従来の携帯の10倍 アイフォンは30倍)
 ⇒通信インフラ整備必要(高性能アンテナ 多重化)
スマホの増加 データ通信量の増加 回線容量の急拡大必要 ソフトバンクは2012年3月期 13年3月期に合わせて1兆円の設備投資を計画。NTTドコモは2011-1012年度にLTE(次世代通信サービス)に2700億円、KDDIも2015年3月期までに3000億円投資予定。
 アプリ市場の拡大
  ⇒アプリの開発 世界市場を開拓するチャンス
  ⇒アプリケーションに不正ソフトが組み込まれている可能性が問題になっている
 ウエッブページのスマートフォン向け作成支援

 SNS(ゲーム アイテムの発売)の利用拡大 → ゲームソフト販売というモデルは終焉へ → 任天堂危うし
スマートフォン向けにソフトやコンテンツを開発する企業が注目されてる。
 グリー スマホ向けゲーム配信
 DeNA  携帯交流サイトモバゲーの運営 
 エイチアイ 携帯電話向けソフト開発
 スクエニHD SNSゲーム開発
 コーエーテクモHD 同上  

 コンテンツ市場
 電子書籍
 通販
  ヤフー(専用画面)
  楽天(専用アプリ)
 2011年度ネット販売高8兆2815億円(野村総研推定)
      内携帯経由 1兆5298億円 

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武田薬品のスイス・メイコメッド買収発表(2011年5月19日)

2011-07-11 14:54:05 | Economics
2011年5月19日 武田薬品がスイスの製薬大手ナイコメッド買収を発表した。買収費用は1兆1100億円程度=96億ユーロとのこと。メイコメッド買収で武田の売上高規模は世界10位に上昇する。
 
 武田薬品(2011年3月の売り上げは1兆4193億円。世界順位15位。2月に700億円を投じて湘南研究所を完成。今回の買収には3月末の手元資金8700億円を活用 6000-7000億円を借り入れ残りは手元資金で 一時的に財務体質悪化は不可避)がスイスの製薬大手ナイコメッド(創業1874年 非上場 新薬のほか後発薬もてがける 2010年12月の売上が3700億円=32億ユーロ)買収を発表(買収費用は1兆1100億円程度=96億ユーロ) 大筋合意報道(5月12日)
海外へ営業網・後発薬を一気に獲得
主力薬 アクトスの特許期限切れ(米国で2012年8月)切れ迫る中で即効性求める
なお武田は2008年に米ミレニアムファーマシューテイカルズ(抗がん剤の開発を進めている)を約9000億円で買収(収益貢献には時間が必要 当面は無形固定資産の償却負担)

 医薬品メーカーの在り方はメガファームを目指すのが一つの方向。武田薬品 メイコメッド買収で世界の10位に上昇したが、この方向を目指していると思われる。しかし世界の上位メーカーとの開きは大きい。
 2008年にランバクシーラボラトリース(インドの後発薬大手)買収の第一三共は世界19位。第一三共は2011年3月 米プレキシコン:抗がん剤開発を進めているーを8億500万ドル660億円で買収と発表。

 なお武田の買収発表の直前の5月17日 世界後発薬最大手のテバファーマスーテイカルインダストリーズによる国内後発薬3位の大洋薬品工業買収の発表があった。こちらの買収費用は最終的には1000億円程度とされる。
 テバ(イスラエル 米国でP&Gと提携 北米以外で大衆薬事業を統合 P&Gは風邪薬ヴィックス等を保有 医療医薬品の成分を転用するスイッチOTCとよぶ大衆薬の開発でも協力)による大洋薬品工業買収(国内後発薬3位 10年11月期の売上643億円 国内後発薬メーカーはいずれも規模が小さい) まず創業家などから57%を370億円で。金融機関などから全株買収で1000億円。テバは2010年の世界の売上高1兆3000億円。5月2日に米国の新薬メーカー(バイオ医薬品)、セファロンを5500億円で買収すると発表したばかり。
テバは昨年(2010年)もドイツのラチオファーマを4350億円で買収

製薬会社大手 米ファイザー 仏サノフィアベンティスなどは新薬+後発薬子会社の両面作戦をとっている。
サノフィは国内後発薬最大手日医工に出資で日本之後発薬に参入(日医工に出資 また合弁会社を立ち上げ)

新薬:特許に守られる 生産コストの高いバイオ医薬品に中心移る
後発薬:規模のビジネス 5年後に後発薬もバイオ医薬品にシフト 投資競争の激化が予想される
後発薬メーカーに テバ 独サンド 米マイライン インドランバクシーなど。
エーザイは主力薬アリセプトの特許切れを受けて、段階的にインドでの生産に切り替える方針。
出荷開始は2010年7月。

製薬会社の戦略としてはニッチ戦略も語られる たとえば
アステラスのニッチ戦略 得意分野で小回りのきくニッチトップを目指しているとも
 なお2010年に米OSIファーマシューテイカルズを買収したが 無形固定資産償却で減益がまず作用して収益貢献はこれから。
 2010年5月17日合意 約40億ドル(3700億円)

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国際会計基準の導入の延期(2011年6月)

2011-07-04 08:49:59 | Economics
 2015年3月期にも見込まれていた上場会社への国際会計基準の強制適用について
2011年6月21日 自見庄三郎金融相が2015年3月期からの強制適用はないと明言した     
同時に適用開始に向けた準備期間を3年から5-7年に延長するとも発言した。
(これまでも3年準備期間想定していたので実質的に2-4年の延期)
企業会計審議会入り前の発言は、政治主導を印象付けるが、これまでも繰り返されてきた
延期・見直し要請に政治がようやく答えた形になった。 

そもそも国際会計基準導入に積極的な議論をしていたのはファンドマネージャーなどである。
彼らは、欧州市場などで日本企業が円滑に資金調達する上での必要性 株式市場にしても売買の
大半が外国人投資家である現実などを指摘していた。
(公認会計士の方たちの賛成論は商売のネタを増やすためかと疑ってしまうのだが)

しかし製造業を中心に延期・批判の意見が強いのに、このような産業界の意見を無視して
国際化を題目にただ礼賛して導入に向かってきたのは、理解しがたい動向であった。
一種のイデオロギーに支配された一部の政治家、官僚、学者が、そして思考力のない
新聞雑誌記者が掻き立てた記事が、世論を作り事態を進行させてきたといえる。 

しかし東日本大震災を踏まえ、製造業などを中心に国際会計基準の強制による
年金等の会計処理の変更 大きな設備投資 事務負担 経費の増大は復興の足かせになるとの主張が
ようやく認められた。実際は役所の側も対応する余力がなくなったということでもあろう。
 システム投資など移行コストは膨大で、国内の法制 税制との調整もなおこれから。そのため
適用範囲をしぼり、上場企業すべてではなくグローバルに活動する企業に限定する議論がある。
 
導入を前提とした議論には、企業 研究者を中心に反対意見が強かったが、これらの反対論が軽視されてきた。
 そもそも国際会計基準は見直されるもの 
・負債の評価益
・包括利益の有用性 
 への疑問など指摘されてきた項目は多い
 国際会計基準には、M&Aには便利だが事業の採算管理には使いにくい
⇒短期投資家の発想であり企業の将来損益を基準にした投資判断ではない などの批判がたえない。
 このほか、長期投資家である生命保険会社は安定した配当を実行できなくなる⇒もちあい株式の
時価変動や為替相場など、経営努力と直接関係しない市場動向に業績が左右される。
 あるいは⇒景気振幅を増大させるといった批判もある。

 さらに米国発の金融危機は資本市場のルール、規制の見直しに発展している

 米国SEC(2002年に国際会計基準審議会が会計基準の共通化で合意)は2008年に
2011年に全上場企業に適用するか判断するとしてきたが2011年に入り先送りを示唆。
取り込みに5-7年かけるともして態度を変更させた。
(SECは5月下旬に公表した作業計画で導入時期を明示せず
6月には委員長が先送りを示唆 判断を事実上先送りした)

 日本では2009年の企業会計審議会報告が
 日本の上場企業にIFRSを適用するかは2012年をめどに判断するとしていたが、こうした
米国の態度の変化もあり、今回、強制適用の延期を決断できた。 
 なお米国では2010年3月期からIFRSに沿った決算書作成を認めている。
 (2015-2016年にも上場企業の連結決算に強制適用で調整していた)

 しかし他方では、すでに欧州連合は2005年に域内の上場企業に適用義務付けている。また日本企業のなかでも
グローバル企業を中心にすでに導入準備に入っている企業、導入してしまった企業もあり、完全な中止は
おそらく現実的ではない。
 準備期間が伸びた間に、国際会計基準そのものに日本の主張を反映させてゆくことで
ソフトランデイングさせることが望ましいのではないか。

 調整を求められる論点としては以下などがある
・純利益に株式や含み損益を加え他包括利益については 
 日本の会計基準が期中にいくらもうけたかを重視するのに、IFRSは
 期末にどの程度の資産価値があるか(期末にどれだけの資産があるか)に重点をおいている
 ⇒すなわち包括利益
 ところが日本の企業は株式の保有額が大きいので景気変動により包括利益が大きく変動する。
 この問題については税制との調整も必要とされる。 
・年金会計 IFRSは積み立て不足を貸借対照表に反映させるために自己資本比率急落の恐れがある
・開発費 日本基準ではすべて経費だがIFRSでは一定の要件を満たすと資産となり費用として認めない

 導入する場合の適用範囲については以下のような議論がある

 国内企業除外してグローバル企業に対象を限定する議論
 ベンチャー企業除外の議論
 単独決算は基準の選択を認める議論 などがある
  単独決算は税法・会社法に密接に関係
  税法と会社法通調整はむつかしいとして日本基準を残すべしとの議論
 原価計算を重視する製造業中心の議論とは異質との指摘 他方 
  効率化のため連単ともにIFRSに一本化したいとする議論も
  商社など非製造業中心にして存在するので 調整が必要である。