原作名:オリジナル
作者:彩守るせろ
終更新日:2012年3月22日 2013年3月13日
評価:D
サイト:小説家になろう
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[あらすじ]
異世界の食堂で働く医大生の主人公。この世界の医療は、治癒の魔術か神の奇跡の祈道で果たされるため、魔力を持たない主人公に立ち入る隙はない。そのため、自分の居場所はどこかと、厨房を切り回ししながら絶賛モラトリアム中。
そんな折、何者かに召喚された魔物が街中に出現。たまたま居合わせた騎士達により、あっさり魔物は討伐されるも、それを境に付近住民の間に謎の疫病が発生する。
治癒魔術なら半々、祈道だと一時的な緩和しかできない病気に、職場の知人らが弱っていく。中途半端な医療知識しかないのを自覚しつつ、主人公は治療法を求め立ち上がる。
[文章]
三人称。読点「、」を振る位置がおかしく読み難い。表現も回りくどい。「~だが、しかし~」と逆説詞の二重使いを定型として多用。描写自体は悪くないはずなのに、これら三点のせいで、全体的な文章が台無しになっている印象。作者氏の持ち味と称する事もできるが、テンポの悪さは受け入れられなかった。
[総評]
異世界漂着物に、医療サスペンスっぽい要素を加えたもの。言語に問題がない以外、主人公にはありがちな異世界特典はなく、魔力すらない。あるのは元の世界から持ってきた知識のみ。
剣と魔法のファンタジー世界なのに、コンロや冷蔵庫・冷凍庫は普通に存在する。詳しい描写はされなかったが、現代日本のレベルのキッチン周りは揃っているらしい。魔具師、いわゆるマジックアイテムの製作が職として成り立っているので、そういう品なのだと思われる。それでいて、医療に関しては治癒魔術が祈道士頼みで、解剖学すら始まっていない状態。実にちぐはぐな世界感。それもそのはずで、実はこの世界は……という種明かしもある。
魔物の出現と疫病の相関関係を、主人公が突き止めるまでは、二種類の治癒魔法の設定の考察なども含めて楽しめたのだけど、締めが残念すぎた。再度の魔物の出現と、苦戦する騎士団、増える一方の病人。主人公ないし知り合った騎士らが、逆転の奇策を見つけるのかと思いきや、今まで名前しか出てこなかった人物が全てをかっさらってしまう。
一大決心をして事に当たった主人公や、それに協力した皆の努力が空回りで終わってしまったのは、作品としていかがなものか。
第一節が終わったばかりなので、以後の展開に期待したい作品。