彷徨者のネット小説レビュー

ネット小説サイト「Arcadia」や「ハーメルン」をメインに、あちこちで見かけたネット小説をレビューするブログです。

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 このブログの管理人、彷徨人です。名前の通り、あちこちのサイトをさ迷っています。ネット小説に限れば『Arcadia』と『小説家になろう』がメインになります。
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Last Innocence

2012-03-05 18:00:00 | オリジナル作品

原作名:オリジナル
作者:碧海ユズ吉
終更新日:完結済
評価:C
サイト:小説家になろう
    http://ncode.syosetu.com/n8472y/

[あらすじ]
 戦乱による環境汚染により、人類が地下都市に住まうようになり幾星霜。
 地下都市の一つに住む主人公の少年達は、ひょんな事から住民の大多数に伏せられた事実――地球滅亡――を知る。外宇宙の『銀河連邦』にも、滅亡を防ぐ術はない。残された時間は24時間。
 本物の空を見たことのない主人公達は、最後の冒険として空を求め、封鎖されて久しい地上を目指す。

[文章]
 三人称。宗田理に新井素子のお茶の間SFを足したような印象。
 構成はこなれていて、行き当たりばったり感はない。ただし1シーンだけ、主人公達の行動とは無関係の人物に話が移り、この時は面食らった。
 誤字脱字の類は、全編通して数える程度。普段見かけない単語を使っている気がするのは、日頃の読書量が足りないせいか、偏っているせいか。オノマトペという単語、初めて見た。

[総評]
 ジャンルはSFとなっているが、内容はジュブナイル系。
 新井素子の『ひとめあなたに…』と、タイトルは忘れたけれど地下シェルターの行政に反体制組織を結成する1グループの話、を足したような設定。ストーリーは全くの別物。
 14、5歳の少年少女の『冒険』としては妥当かな、と思える難易度。意外な落とし穴あり。その先で見つけた物に一喜一憂し、落ち込んだり悩んだり、慰め合ったり。上げて落として、また上げる作者氏の感性の良さに感心。
 読み始めた当初、『銀河連邦』は不要な設定の感じを抱いた。しかし後に、舞台装置として良い働きをしているのが判明。他にも過剰装飾な印象を持った設定が、後で伏線と分かり密かに唸らされた。あちこちで小出しにされた設定が、後で伏線として生きてくるのは、読んでいて面白い。
 こういうストーリーなら、大前提の地球滅亡を出さなくても良かったのでは、とも思ったのだけれど、地球滅亡がなければ、主人公達が地上を目指す動機を作るのが難しい訳で……。
 明日がない世界と知った少年少女達の、前向きな最後の煌めきをつづった作品。


日間短評 2

2012-03-03 18:00:00 | オリジナル作品
前回の短評は色々コメントされたけれど、気にせず『小説家になろう』の日間上位の短評をば。3月2日20時頃のランキング順で。

作品名:後宮じゃなくて迷宮に入りたいんですよ! 精霊地界物語
    http://ncode.syosetu.com/n1490bc/
作者:山梨ネコ
最終更新日:2012年3月1日 2013年2月25日
評価:D
[短評]
 通り魔に刺殺された女子高生が異世界に転生。容姿は普通の斜陽貴族次女。
 ファンタジーで産業革命以前の文明度なのに特許の概念があり、その申請シーンのギャグは笑えた。テンプレなランク制度採用の冒険者ギルド完備。ギルド登録も特許申請も、契約の精霊が行ってくれるので不正はない模様。
 15歳の誕生日に、放蕩王子に腰を落ち着かせるための餌候補として後宮に入れられ。……未だに迷宮の「め」の字も出てこない。
 三人称で文章は安定している方。「しづらい」を「しずらい」と書く等の誤字がたまにある。
 しかし何ぶん、主人公が特許で得た収入の額に吐血する程へたれなので、読むのが辛い。その点を克服できれば、シリアスっぽい主人公が一人で滑りまくるギャグ小説として読めるかも。

[2013年7月31日追記]
 書籍化されました。おめでとうございます。

   


作品名:幸薄姫って呼ばれてます。
    http://ncode.syosetu.com/n2011ba/
作者:天羽 月奈
最終更新日:2012年2月28日 2012年3月7日
評価:F
[短評]
 18歳までの記憶を持って転生。転生先は貴族令嬢。両親健在、5人兄弟の3番目の次女。主人公ハイテンション系。
 8話かけても物語をどの方向へ進めようとしているのか不明。両親のイチャイチャぶりに、子供達が振り回される話か? それならそれで方向性の一つだけれど、どうもそうでもなさそう。父親の仕事の関係から政治物か、後宮が出てきたから後宮愛憎物か。主人公がひたすら愚痴を吐くだけの作品……ではないと期待したい。
 一人称。「あ」「まぁ」「だだ」「だが」と、文頭に不要な文字が多用されているのが鼻に付く。8話で一部会話に台本形式を使用。8話1万4千字と、1話辺り2千字未満と短いのも、読んでいて苦痛。


作品名:魔導師は平凡を望む
    http://ncode.syosetu.com/n9734bb/
作者:広瀬煉
最終更新日:2012年3月1日 2013年2月27日
評価:F
[短評]
 異世界漂着物。二十代後半の女が主人公。気が付いたら見知らぬ森の中。空を見上げれば太陽が二つ。地球じゃありません。な流れて異世界に来てしまったと実感。
 お約束として言語理解能力と魔力。それと地球の知識を利用して、「平穏に生きて地球に帰る方法を探すんだ~」な関わりたくないけど巻き込まれる系。
 魔法を習い始めて数日で実践可能なレベルまで上達。襲われていた騎士を助けるために襲撃者を撃退、王宮へお話に、という流れ。騎士では勝てなかった相手を魔法で蹂躙とか、土下座させて『お話』とか、他キャラ視点の「あの人凄え」語りとか、色々とギブアップ。
 一人称。3話で魔法の設定語りに萎える。音符(♪)で感情表現、矢印(↓)で行動の流れの説明、騎士の複数形を騎士sとするなど手抜きあり。
 主人公の性別を入れ替えれば、未完で放り出されてきた凡百ななろうテンプレ小説。チートと無双と『お話』を楽しめる向きには楽しめるだろう。


作品名:神無の世界
    http://ncode.syosetu.com/n1993bc/
作者:トナ 赤雪トナ
最終更新日:2012年3月1日 完結済
評価:D
[短評]
 天候の不順と度重なる家族の不運で、口減らしのために人買いに売られた主人公。人買い達は魔物に襲われて全滅、主人公は運良く生き延びたものの、気絶していれば野犬に襲われ、人買いの仲間に寝込みを襲われ、散々な目に遭いながら迷宮のある都市に流れ着く。
 迷宮に潜り、一攫千金と成り上がりを目指す物語。……らしい。
 三人称。硬めの文章。
 昔懐かしいガチなファンタジー……と期待したら、第2話で折られた。レベル制、ステータス表示、『冒険者』ではなく『挑戦者』としているが、要はありがちな冒険者登録。血を垂らして登録完了。腕輪が身分証。第2話は延々ステータス説明。第3話から読む気力をなくしてしまった。
 なんでレベル制? ステータス表示? 期待していただけに、思わず嘆いてしまった作品。


作品名:腕白関白・改訂版
    http://ncode.syosetu.com/n2046bc/
作者:そる
最終更新日:2012年2月28日 2013年2月13日
評価:保留
[短評]
 Arcadiaで完結した『腕白関白』の改訂版。まだ2話しか掲載されていないので、評価は保留。

  



Muv-Luv×VF-X2 SHOOT&SHOUT

2012-03-02 18:00:00 | マブラブ

原作名:マブラブオルタネイティブ
作者:type.w
終更新日:2012年2月27日 2013年1月8日
評価:B
サイト:Arcadia
    http://www.mai-net.net/bbs/sst/sst.php?act=dump&cate=muv-luv&all=24222&n

[あらすじ]
 あ号標的を破壊し、純夏の消滅により因果導体としての役目を終えた白銀武。
 目が覚めれば、BETAのことなど忘れ、それ以前の平和な学生生活に戻るはず。……だったのが、目が覚めれば自宅の自室。カーテンを開ければ、動かなくなった激震の残骸。
 もう一度戦いを、そして今度こそ仲間を失わずに済む戦いを。
 そう決意して家を出た武の前に現れる戦術機。
 否、鳥のような脚を生やした戦闘機。衛士ならぬパイロットは、金髪の偉丈夫。
 横浜基地へ向かう前に新統合軍に勧誘され、バルキリー乗りを目指す武の3度目の戦いの物語。

[文章]
 三人称。会話文と開発史語りが長め。人物描写が薄い気がするが、少ない文章と会話の中に、そのキャラの人となりが伺えるよう肉付けされているのは上手いと感じた。目立つ誤字脱字はない。

[総評]
 『MACROSS VF-X2』とのクロス。武はループ3周目。国連軍衛士ではなく、新統合軍少尉のパイロット候補。
 武が経験した過去2回の世界とは歴史が微妙に異なり、武自身、その変化に戸惑う場合も。冥夜は年に数度会う幼馴染で、純夏とは武を巡るライバル関係にあるなど。他にもどういう変化が出てくるのか期待大。
 ヒロインは今のところ冥夜一択。美琴参戦の可能性あり? ただし最近は開発話にシフトし、武と207Bの登場は少ない。
 他のロボット作品とのクロスになると、戦術機との模擬戦が必ず序盤に登場するが、この物語も例外に漏れず模擬戦あり。そして戦術機がボコボコにされ、クロス作品の技術を用いた新型機の開発計画が発足、行先はアラスカ……のお約束な流れ。
 別にこの流れを否定するつもりはないし、嗜好的に開発物は読んでいて楽しい。
 しかし出来上がるのが、戦術機の枠を超えた反則の類になってしまうのが心配。多くのMuv-Luv二次はそこから無双物の駄作化の一途を辿るか、作者の処理能力を超えてエタるかのいずれかの印象。
 人間模様なのか、開発物なのか、はたまた戦争物なのか。今一つ方向性の見えないのも心配。うまく処理して最後まで書き上げてほしい。