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彷徨者のネット小説レビュー

ネット小説サイト「Arcadia」や「ハーメルン」をメインに、あちこちで見かけたネット小説をレビューするブログです。

ようこそ

 このブログの管理人、彷徨人です。名前の通り、あちこちのサイトをさ迷っています。ネット小説に限れば『Arcadia』と『小説家になろう』がメインになります。
 初めての人は、まずこちらを一読下さい。→はじめに
 これまでレビューした作品のリストです。→五十音順リスト

運命の使い魔と大人達

2011-10-26 18:00:00 | ゼロの使い魔

原作名:ゼロの使い魔
作者:らっちぇぶむ
最終更新日:完結済
評価:A
サイト:Arcadia
    http://www.mai-net.net/bbs/sst/sst.php?act=dump&cate=zero&all=2605&n

[あらすじ]
 フェイト・T・ハラオウンは疲れ切っていた。義母と義兄の出世のため、政敵の弱みを探し、無ければ作り出し、陥れる汚れ仕事に。管理局の正義のため、法では裁けない罪人を裁く仕事に。
 行きついた果てが、毎夜酒瓶を抱いて眠るアル中寸前の壊れかけた女。
 明るい将来などとうに忘れ果て、その日もソファで眠ろうとした矢先、目の前に現れた銀色の鏡。
 触れて引きずり込まれれば、辿り着いた先は管理局のない新天地、ハルケギニア。
 義理の家族と管理局のくびきから解き放たれた「猟犬」フェイトが、少しだけ明るい未来を掴み取る戦いの物語。

[文章]
 三人称。物語の中盤以降で、ギーシュが思い出を語る場面のみ一人称。
 文章の質は高い。科学技術や経済、戦史戦略についても、それなりの知識を持っているか、あらかじめ調べてから書いているのが伺える。
 ただし出だしは鬱な展開から始まり、物語全体を通しても、中盤以降はアルビオンでの戦争に入るので、明るい展開は期待しない方が良い。

[総評]
 StS編から10年後のフェイトが、ゼロ魔の世界に召喚。と言っても、このフェイトはほとんどオリ主で、原作の天然ぶりは微塵もない。10年も経てば色々と変わるから、と受け入れられるなら良し。そうでないなら、同姓同名の他人と見るのが良い。
 前半は、管理世界の先進技術を持ち込み、表に裏にハルケギニアに根を張る準備。
 中盤から後半は、ハルケギニアに対応した技術で、アルビオンでの戦争への関与と事後処理がメインとなっていく。
 ハルケギニアの便利魔法があっても、召喚から数カ月でこんなに技術力が上がってたまるかとか、こんな戦争物があってたまるか、とかの批判もあるかもしれない。元管理局員が質量兵器を使って何とする、とかも。が、素人目で読んだ感想で言えば、及第点以上の出来栄え。引きずり込まれた。
 何より、フェイトが魔法を振りかざし、敵を蹂躙していかないのが良い。そもそも魔法は使わない。代わりに使うのは、バルディッシュと名付けた狙撃銃。
 チートと無双で済ませてしまう薄っぺらな話でなく、血肉の通った人間の物語。


俺の名は高町なのは。職業、魔王。

2011-10-25 18:00:00 | 魔法少女リリカルなのは

原作名: 魔法少女リリカルなのは
作者:かんかんかん
最終更新日:完結済
評価:A
サイト:Arcadia
    http://www.mai-net.net/bbs/sst/sst.php?act=dump&cate=toraha&all=4464&n

[あらすじ]
 高町なのは、時空管理局武装隊二等空尉。過剰攻撃、命令違反の常習犯で、始末書・営倉上等の中隊長。二つ名は『魔王』。補記、13歳。
 次元間密輸組織を過剰攻撃で殲滅し、その始末書を書いているところへ、教導隊への異動命令が言い渡される。ようは体の良い厄介払い。
 しかしそこで、なのはは偶然にも意外な人物と運命的な出会いを果たす。
 レジアス・ゲイズ。現実に打ち砕かれ、何度となく理想を踏みにじられ、それでも諦めない不屈の意志を宿した男。
 レジアス相手に魔法万能説を否定し、質量兵器有用説の演説をかましたなのはに、またしても異動命令。長官直属の地上犯罪低減プロジェクトの一員として、レジアスから名指しで指名された次第。
 こうしてなのはとレジアスの、管理局改革がゆっくりとだが始まった。

[文章]
 なのは視点の一人称。登場しないシーンでは三人称。例外的に幕間では、スポットの当たった人物の一人称となっている。
 誤字脱字は修正済みのため無いに等しい。
 文章自体硬い感じだが、それが物語の雰囲気とマッチしていて良い。個人的には好みのタイプ。

[総評]
 シリアスに『なのはシリーズ』を再構成。
 かなり殺伐とした人生を送った陰陽師の男が、なのはに転生。歴史にある陰陽師ではなく、超能力や魔法の類を操るファンタジー系陰陽師。
 ジュエルシードの事件で管理局に目を付けられ、平穏な生活は送れないと早々に諦めたなのはは、事件後に管理局に入局。管理局の若年者育成のずさんさ、非魔法世界出身者への基礎教育の到らなさに憤慨しながら、自分の立ち位置を模索し続け奮闘する。
 その過程で、いくつかのデバイスの開発に協力し、専門家の伝手を手に入れ、かつデバイスの有効性を実感した局員からの評価も悪くはなく。フェイトやはやても微妙に変化が。
 原作時のなんちゃって教導ではなく、教導官しているなのはを見られるのは珍しい。
 独自設定と独自解釈が苦手な人には薦められないけれど、たまにはシリアス物を読みたい人には薦めたい作品。


オリ主憑依原作知識なし

2011-10-24 18:00:00 | 魔法少女リリカルなのは

原作名:魔法少女リリカルなのは
作者:鮟肝
最終更新日:完結済
評価:B
サイト:Arcadia
    http://www.mai-net.net/bbs/sst/sst.php?act=dump&cate=all&all=12642&n

[あらすじ]
 死神の部下に誤って命を刈り取られ、あえなく昇天。かと思いきや、お詫びにと人生やり直しの5択を与えられる。
 選んだのは、平和そうに見えて結構デンジャラスな世界で強武力。宇宙人が現れたり地球滅亡の危機が訪れたりするが、最悪の事態は回避されるらしい。
 そして転生。というよりは憑依。
 新しい肉体になって気が付いたのが、今の自分は家なき子。肉体の名前と年齢だけでは、家には帰れません。
 公園で野宿もやむなしと考えていたところで、車椅子で難儀している少女、八神はやてと接近遭遇。彼女を家まで送り、そのままヒモ生活に。
 地球規模の事件二つに掠る程度に巻き込まれつつ、はやてとイチャイチャしたり、ノリツッコミでまったりする物語。

[文章]
 主人公視点の一人称固定。
 主人公自身、精神的に落ち着いているため、バカげたテンションで暴走しないので、安心して読めた。
 基本はギャグなのだけど、ツッコミで相方を殴る行為や、テンションの高い真性が高笑いするシーンはない。ただ数話において、某巨大掲示板を模したシーンが登場する。その時にはネットスラングも出てくるので、そういう手合いが苦手な人は注意が必要。

[総評]
 タイトルだけで興味を持たれるか、敬遠されるかのどちらかが決まるだろう。
 読んだ一人からすれば、オリ主+憑依物に抵抗が少ないならお薦めしたい一作。なのは二次では魔導師ランクSオーバーがテンプレの中、Aランク陸戦のみと能力に縛りがあるのも、物語を破綻させずに完結できた理由の一つではないかと思う。
 ジュエルシードの時は、掠る程度になのは達とエンカウントする一般人。闇の書の時は、何も知らないうちに事件が解決。StS編でもほぼ常時単独行動をしているので、主役級とはメインの流れの中で重ならない。そのためにオリジナルの流れが多く、原作を知らなくても問題なく通読できる。
 日常生活や開発や訓練の中、戦闘と言うスパイスの入る日常系?
 どこの誰かは知らないけれど、どこの誰かは知っている『シャチさん』の物語。


原作破壊命令

2011-10-23 18:00:00 | ゼロの使い魔

原作名:ゼロの使い魔
作者:深海
最終更新日:完結済
評価:C
サイト:にじファン Over the Rainbow ~にじの彼方~
    http://ncode.syosetu.com/n0286l/
    http://nijikana.net/index.php/page/Shinkai_ZeroBR

[あらすじ]
 魂の流れの管理から零れ落ちた一つの魂。システムのどこかでバグが発生したため、このままでは同様の事故が起きかねない。その解決として、本来その世界が辿るべき運命に干渉し、他にもバグを発生させて緩和しよう。
 と言う訳で、零れ落ちた栄えある魂一号は特殊能力を得、異世界に転生する事に。
 転生先はトリステイン王国とクルデンホルフ大公国の国境近くの貧乏男爵家。そしてどこかのパーティーで、大公国のベアトリス姫と出会い、気に入られてしまったのが運の尽き。大公国のマネーパワーで押し切られ、なし崩し的に婿入り決定。
 現代人の知識+神様特典のチート能力+マネーパワーによるハルケギニア統一は、こうして始まった。

[文章]
 一人称。主人公視点固定でなく、複数のキャラ視点からの語り。ただし前触れなしにキャラ視点が移動するため、読みにくいところがある。
 誤字脱字は少なく、視点移動の点がなければ、文章としては読み易い。

[総評]
 神様チートとマネーパワーがあろうと、たかが数年でガリアが目を剥く国力に育つはずなかろう、と言うゼロ魔チート転生内政物に対するお決まりのツッコミは置いておく。
 残念なのは2点。全体的な水準が高いだけに、どうしても鼻についてしまった。
 一つは、物語後半の戦争と戦後処理に関する部分。軍略や国家代表同士のやり取りが、なんちゃって政治家のレベル。戦史物に詳しい訳ではないけど、主人公が一軍を率いる優秀な将の設定なら、もっとやりようがあったと感じる。
 二つ目は、ハーレム女性陣の順位争いをギャグで逃げてしまった点。個人的にかなり点数を落としてしまったのが残念。他がシリアスっぽいものだっただけに、変なギャグでこの部分だけ浮いてしまった感じがする。
 神様転生+チート能力+内政チート+軍力無双+原作アンチ+ハーレムと言う、良い意味でも悪い意味でも『にじファン』テンプレ設定を贅沢に使った作品。始まりと終わりが魂の管理システムで繋がる事、しっかり完結まで書き切っている事と、実はかなりの良作。
 しかしタイトルが弱く、そのまま埋没してしまったのが惜しい作品。


魔法少女リリカルなのは A's ~ちょっとだけ、やさぐれフェイトさん~

2011-10-22 18:00:00 | 魔法少女リリカルなのは

原作名:魔法少女リリカルなのはA’s
作者:熊雑草
最終更新日:完結済
評価:B
サイト:Arcadia
    http://www.mai-net.net/bbs/sst/sst.php?act=dump&cate=tiraura&all=26407&n

[あらすじ]
 ジュエルシードの事件から約半年後。
 母プレシアと妹アリシアの三人で海鳴市へ引っ越し、新生活を満喫していたフェイトに、新たな敵が現れた。赤と桃の二人の魔導師。
 なのはと共に強力な結界の中に囚われ、襲撃者相手に善戦するも追い詰められてしまう。
 そして遂に、赤い魔導師の鉄槌型のデバイスに頭を打ち砕かれ、血にまみれ倒れ伏すフェイト。
 「……よくもやってくれたな。ただで帰れると思うなよ」
 呆然自失の三人の前に、半年ぶりにやさぐれが復活する。
 やさぐれた運命(フェイト)に翻弄される守護騎士達の明日はどっちだ。

[文章]
 前話と同様、改行と空改行の多さ、風景描写の乏しさ、会話の多さが気になった。勢いで読ませる話なので、説明文を挟むとテンポが悪くなるのもあるのだろう。
 けれどもう少し文章は入れてほしかった。

[総評]
 『魔法少女リリカルなのは ~ちょっとだけ、やさぐれフェイトさん~』の続編。前話と同様ギャグで全てを引っ掻き回してくれる。
 今回の犠牲者は、言わずと知れた守護騎士の面々。ヴィータはスルースキルを身に付け、シグナムは理性をがりがり削って替わりにツッコミ属性を手に入れ、シャマルは弄られキャラに。はやてと一匹と他一名は、まあ、ぼちぼち。
 原作での『闇の書』事件は、二次小説で色々と円満な解決を見ている。この話も例外ではなく、リインフォースの救済が成っている。
 が、その手段は、読んで吹き出したと同時に、「この手があったか!」と意表を衝かれたのも事実。
 ギャグの中にしんみりがあり、それをまたギャグでぶち壊す。
 前作が気に入った人なら、これも楽しめるだろう一作。