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マイナーな話題を扱うことが多いかもしれません。

上毛新聞の八ッ場ダムに関する連載記事に思ったこと(その19)

2009-12-29 20:24:56 | 八ッ場ダム騒動
いつまで続くんだと自分自身に問い詰めたくなる、上毛新聞で 2009年9月23日から22回に渡って掲載された『八ッ場の57年』という連載記事への突っ込み、という謎更新。
今回は、建設予定地の住民達に支払う用地買収価格などの補償基準決定後の用地買収などの交渉にまつわる話(2004年11月26日~2005年9月7日)。
・暫定水利権 国交相、継続を明言(2009年10月14日 raijin.com)

つーことで、2009年10月14日分上毛新聞『八ッ場の57年 苦悩の軌跡 19』を全文引用をしてみた。
ただし、一部表記を変更+強調を入れておく。

---- 以下引用 ----
暫定水利権
国交相、継続を明言

2009年10月14日 上毛新聞


「首都圏の水がめ」といわれる利根川上流のダム群。
水を蓄え、放流するダムは、水資源開発の要として戦後の高度経済成長を支え、急増する首都圏の水需要に応えてきた。

ダムに依存する受益者の下流都県にとって恩恵の"代償"は建設事業費の負担金。
八ッ場ダム場合、下流都県は完成を見越した暫定水利権を行使し、利根川から取水している。
受益地が水利権を得るために昨年度までに支払ってきた利水負担金は 1460億円に上る。

治水から利水へ重点が置かれるようになったダムだが、バブル崩壊後、景気低迷で税収が落ち込んだ自治体の財政は悪化。
人口の伸びも鈍り、企業が生産拠点を海外に移したことなどから水需要が減少しつつ会った2001年、全国的な公共事業見直しの機運も高まり、長野県の田中 康夫知事が「脱ダム宣言」を発表した。
利根川水系でもダム計画の再考や凍結が相次いだ。

首都圏に水を供給する目的で片品川に計画され、建設に着手した戸倉ダムの中止が決まったのは2003年12月。
大口利水者である東京都や埼玉県が事業からの撤退を表明し、建設費の財源確保が難しくなったためだ。

当時、埼玉県の上田 誠司知事は撤退の理由をこう語った。
「かつての水需要はバブル時代のもの。予想は難しかったと思う」。
将来的な水不足の懸念から参画したが、少子化などから水需要の予測を下方修正。
利水者となっている八ッ場ダムが完成すれば、戸倉ダムの利水分を賄えると判断した。

伸び悩む水需要。
財政を圧迫する負担金。
二つのダム事業に継続参加するか、片方のダム事業から撤退するか、受益者は二者択一を迫られたのだろう。

この時期、片品川流域に計画された栗原川ダムは2002年、平河ダムは2000年に下流都県の利水参加が見込めず中止になった。
県営では2003年12月に小寺 弘之知事が倉渕ダムの建設凍結を表明した。
「必要のないものは造らない」

一方、2003年11月に国土交通省は、八ッ場ダムの総事業費を4600億円に倍額する基本計画変更案を発表した。
これに伴って利水負担金も増額。
県や関係自治体の負担は重くなった。
それでも受益者にとって頼みの綱は「首都圏最後の水がめ」といわれる八ッ場ダムなのか。

新政権発足後、建設中止を撤回しない考えを表明した前原 誠司国土交通相に対し、埼玉県の上田知事と千葉県の森田 健作知事は猛反発した。
「(利水や治水の)代替案の開示がなく、負担した金を返せばいいというものではない」

有限の水をどう使うか。
水利権をめぐる議論が活発化する中、2009年9月23日に八ッ場ダム建設予定地を視察した前原国土交通相は暫定水利権について「今まで通り継続する方針だ」と話した。


利根大堰

首都圏の深刻な水不足に対応するため、利根道水路の建設事業の一環として利根川中流部(左岸・千代田町、右岸・埼玉県行田市)に建設。
1968年に完成した稼動堰。
上流のダムが開発した都市用水を武蔵水s路、荒川を経由して東京都と埼玉県に送水している。

---- 引用以上 ----

で、問題の基本計画変更案に関しては以下を参照。
・平成16 年度予算に向けた河川局関係事業における事業評価について(2003年12月 mlit.go.jp;.pdfファイル)

以下、この時の八ッ場ダム事業に関する再評価の結果を引用する。
ただし、一部表記を変更した。

---- 以下引用 ----
総事業費:4,600億円

*便益(B)
総便益:9,114(億円)

*便益の主な根拠
想定氾濫区域内
総面積:約1,850km2
資産額:約50兆円
人口:約450万人
(この時点で使った)費用(C):2,470億円
B/C:3.7

*その他の指標による評価
・利根川の基準地点(八斗島)における基本高水のピーク流量22,000m3/s のうち、6,000立方メートルm3/s を上流ダム群により調節する。
 八ッ場ダムは、上流ダム群のひとつとして下流の洪水被害を軽減する。
・利根川では、H8年に取水制限率が最大 30%に及ぶ41日間の取水制限を実施したのをはじめ、過去10年間に5回の取水制限を実施している。
・名勝吾妻峡の過去10ヶ年平均流況(1992~2001年:欠測年は除く)で、83日間/年、景観保全に必要となる水量不足日が発生。

局対応方針:継続

*(評価の)経緯
H15.11.20 関東地方整備局第4回事業評価監視委員会
H15.12.10 対応方針(案)提出

*決定理由
事業の必要性、事業進捗の見込み等の観点から、事業継続が妥当。

---- 引用以上 ----

便益費用、か。
この便益費用の算出については以下を参照。
・八ッ場ダム問題に関する質問主意書(2008年5月27日 衆議院)
・衆議院議員石関貴史君提出八ッ場ダム問題に関する質問に対する答弁書(2008年6月6日 衆議院)

---- 以下引用 ----
(中略)
五 八ッ場ダム事業の便益計算について
 1 洪水調節の便益
  八ッ場ダムの洪水調節の便益は一九四七年のカスリーン台風洪水が再来した場合に利根川の氾濫で失われる資産を計算した結果から求められていると聞く。
しかし、一方で、カスリーン台風再来時における利根川での八ッ場ダムの治水効果の計算結果はゼロに近いと聞く。
カスリーン台風再来時の八ッ場ダムの治水効果を前提にした場合は、八ッ場ダムの洪水調節の便益がいくらになるのか。
その計算結果を示されたい。
また、八ッ場ダムがある場合とない場合の、八ッ場ダム下流域の洪水想定氾濫区域図とその計算根拠を示されたい。

2 河川の水量確保に係る便益
  八ッ場ダムの建設により、吾妻渓谷の自然は大きなダメージを受けるにもかかわらず、八ッ場ダムによって逆に「吾妻渓谷に必要な水量を確保することによる景観改善の便益」が生まれるとされている。
この便益の計算方法とその計算に用いた観光客数及びその観光客数の算出根拠を明らかにされたい。
(以下略)
---- 引用以上 ----

で、以下は、2008年6月6日に出された答弁書の一部。

---- 以下引用 ----
(中略)
五の1について

 お尋ねの「カスリーン台風再来時の八ッ場ダムの治水効果を前提にした場合」における八ッ場ダムの洪水調節に係る便益については算出していないため、お答えすることは困難である。
なお、利根川上流域は過去の降雨の特性が多様であることから、過去に生起した三十一の洪水時における降雨パターンを用いて、年超過確率二百分の一の洪水が生起した場合における洪水調節効果を計算すること等により、八ッ場ダムの洪水調節に係る便益を八千二百七十六億円と算出しているところである。
 また、お尋ねの「洪水想定氾濫区域図」が何を指すのか必ずしも明らかではないが、利根川水系においては平成三年に「直轄河川防御対象氾濫区域図」を作成し、公表しているところであり、これは計画高水位より低い沿川の地域等が浸水すると仮定して洪水時に浸水する可能性がある区域を図示したものであり、「八ッ場ダムがある場合とない場合」について、計算に基づき作成したものではない。

五の2について

 八ッ場ダムの河川の水量確保に係る便益は、八ッ場ダムにより吾妻川に維持流量を確保することによる景観改善等の効果を算定したものであり、観光客数及び沿川居住世帯数に、近隣のダムで実施したアンケート調査結果に基づいて設定した支払意思額(河川の水量を確保するための取組に対して個人や世帯が支払ってもよいと考える金額をいう。)を乗じること等により算出したものである。
 便益の計算に使用した観光客数は、約七百三十九万人であり、平成十三年度における吾妻町(当時)、長野原町、草津町、嬬恋村及び六合村の年間の観光客数を合計したものである。
(以下略)
---- 引用以上 ----

2009年9月24日分上田知事の発言は以下を参照。
・八ツ場ダム「代替案なく無責任」と埼玉県知事(2009年9月24日 MSN産経ニュース)

で、この結果が事業費の増加につながってるわけで・・・。
・群馬 八ツ場ダム:利水でも治水でも目的は破たん:2110億円→4600億円 倍増:総事業費 日本一に(2004年2月22日 jcp.or.jp)

不思議なのは、日本の「借金」増大を訴える人達が八ッ場ダム建設に反対しない事だ。
ナニガドウナッテイルノヤラ。


おまけ:
第1回目~第18回目については以下を参照(手抜き)。
・上毛新聞の八ッ場ダムに関する連載記事に思ったこと(その18)(2009年12月28日 flagburner's blog(仮))
・上毛新聞の八ッ場ダムに関する連載記事に思ったこと(その17)(2009年12月27日 flagburner's blog(仮))
・上毛新聞の八ッ場ダムに関する連載記事に思ったこと(その16)(2009年12月26日 flagburner's blog(仮))
・上毛新聞の八ッ場ダムに関する連載記事に思ったこと(その15)(2009年12月24日 flagburner's blog(仮))
・上毛新聞の八ッ場ダムに関する連載記事に思ったこと(その14)(2009年12月19日 flagburner's blog(仮))
・上毛新聞の八ッ場ダムに関する連載記事に思ったこと(その13)(2009年12月17日 flagburner's blog(仮))
・上毛新聞の八ッ場ダムに関する連載記事に思ったこと(その12)(2009年12月12日 flagburner's blog(仮))
・上毛新聞の八ッ場ダムに関する連載記事に思ったこと(その11)(2009年12月7日 flagburner's blog(仮))
・上毛新聞の八ッ場ダムに関する連載記事に思ったこと(その10)(2009年11月29日 flagburner's blog(仮))
・上毛新聞の八ッ場ダムに関する連載記事に思ったこと(その9)(2009年11月27日 flagburner's blog(仮))
・上毛新聞の八ッ場ダムに関する連載記事に思ったこと(その8)(2009年11月25日 flagburner's blog(仮))
・上毛新聞の八ッ場ダムに関する連載記事に思ったこと(その7)(2009年11月20日 flagburner's blog(仮))
・上毛新聞の八ッ場ダムに関する連載記事に思ったこと(その6)(2009年11月18日 flagburner's blog(仮))
・上毛新聞の八ッ場ダムに関する連載記事に思ったこと(その5)(2009年11月15日 flagburner's blog(仮))
・上毛新聞の八ッ場ダムに関する連載記事に思ったこと(その4)(2009年11月11日 flagburner's blog(仮))
・上毛新聞の八ッ場ダムに関する連載記事に思ったこと(その3)(2009年11月10日 flagburner's blog(仮))
・上毛新聞の八ッ場ダムに関する連載記事に思ったこと(その2)(2009年11月7日 flagburner's blog(仮))
・上毛新聞の八ッ場ダムに関する連載記事に思ったこと(その1)(2009年11月5日 flagburner's blog(仮))


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