今回は久しぶりの八ッ場ダムネタ(汗)
今年の1月になって、八ッ場あしたの会が移転予定地となっている打越代替地の安全性計算に関する質問状を国土交通省に出していた。
・打越代替地の安全性について公開質問(2011年1月21日 八ッ場あしたの会)
・代替地の安全性について追加の公開質問(2011年1月25日 八ッ場あしたの会)
これに対して、国交相から同会に先月25日に回答が届いたのだが・・・。
・代替地の安全性に関する公開質問への国交省の回答(2011年3月2日 八ッ場あしたの会)
上の声明によると、会側が設定した回答期限(2011年2月4日)を過ぎても全然返答が無いので、督促状送付や電話による督促も行っていたという。
ついでに、宮崎 岳志衆議院議員事務所からも国交省に回答の督促なんてのが行われていたらしい。
宮崎氏が回答の督促をしてなかったら、今日の時点で回答が行われなかった可能性が否定できないのが悲しい・・・。
話を戻す。
散々待たされた回答の内容は、待たされた側にしてみたら相当不満の残る代物だったっぺぇ。
さしあたっては、2011年3月2日分八ッ場あしたの会『代替地の安全性に関する公開質問への国交省の回答』(長い)から、回答の序文を(略
---- 以下引用 ----
(中略)
平成22年8月30日付けで八ッ場ダム工事事務所長から群馬県県土整備部建築住宅課長へ報告した文書は、八ッ場ダム建設事業に伴う代替地の区域が「造成宅地防災区域」の指定にあたっての基準に該当するかの確認を判断権者である群馬県が行うために、群馬県からの要請に基づき、八ッ場ダム工事事務所において技術的情報の整理を行い群馬県へ報告したものです。
その際、宅地造成等規制法施行令第19条第一項第一号イ及びロに規定されている要件[おまけ参照]にあてはまらない代替地については、同号の安定計算を実施しないこと等、安定計算に当たっての様々な条件設定については、群馬県に確認し、安定計算を行っております。
なお、八ッ場ダムの川原湯地区打越代替地を含め、代替地の設計にあたっては、河川砂防技術基準等の設計基準を適正に満たしているものですが、今後、八ッ場ダムの検証の中で、ダムが湛水した場合の代替地の安定計算を行うこととしています。
いずれにしても、国土交通省として、地元の方々に対して法令上適正な代替地を提供していく考えに変わりありません。
(以下略)
---- 引用以上 ----
去年8月の報告文書、か。
実は、この報告文書での計算結果にはミスがあったらしいのよね。
・八ツ場移転代替地、大地震で崩落の恐れ 耐震計算ミス(2010年11月2日 asahi.com)
・群馬県に報告した八ッ場ダム代替地の
安定計算の結果の一部に誤りがありました(2010年11月2日 国土交通省関東地方整備局;.pdfファイル)
一応、計算ミスがあった地区は1か所だけなのだが・・・。
で、元の質問状では、川原湯地区打越代替地の安全計算に関していくつか疑問点を呈していた。
といっても、全部をネタにするのもダルいので(待て)、今回は安全計算に用いた勾配の算定に関する部分をネタにする。
まずは、2011年1月21日分八ッ場あしたの会『打越代替地の~』から、『1-2 第三期分譲地の勾配の選定理由』を(略
---- 以下引用 ----
(中略)
8月提出の報告書を見ると、第三期分譲地は盛土をする前の地盤面の勾配が20度を下回っていて、且つ、盛土内に地下水が存在していないという二つの理由により、宅地造成等規制法施行令の第十九条の外形基準に該当せず、安定計算は不要との判断がされています。
しかし、第三期分譲地の横断図をみると、盛土をする前の地盤面は二つの山があって、谷側の山をとると、勾配(一点鎖線)が20度を超え、外形基準に該当することになります。
一方、国交省は山側の山をとった勾配(破線)を使って、15.4度とし、外形基準に該当しないとしています。
谷側の山をとった勾配をなぜ使わなかったのか、その理由を明らかにしてください。
(以下略)
---- 引用以上 ----
確かに、質問状に掲載された図からは、山が2つあることが確認できる。
実は、国交省が使ったのは、盛り土を始める場所から一番遠い所にある山だったりする。
この辺について、国交所は巧妙な解釈を行っていた模様。
以下、2011年3月1日分八ッ場あしたの会『代替地の安全性に関する~』から、『1-2 第三期分譲地(国交省的には川原湯地区3(囲み数字))の勾配の選定理由』を(略
---- 以下引用 ----
(中略)
「大規模盛土造成地の変動予測調査ガイドラインの解説」によれば、原地盤面の勾配(Θ)(p.26)は、「盛土の最下流端の原地盤面の標高と盛土の最上流端の原地盤面の標高差(Δh)を、それぞれ計測した二地点間も水平距離(d)で商を求め、その商を逆正接した値とする。」と記載されています。
今回の報告では、「大規模盛土造成地の変動予測調査ガイドラインの解説」に基づき、開発前の谷筋に沿った盛土の最下流端の原地盤の標高と盛土の最上流端の標高より勾配を求めています。
これについては、造成宅地防災区域の指定の判断権者である群馬県により確認されております。
(以下略)
---- 引用以上 ----
2008年2月時点での『大規模盛土造成地の変動予測調査ガイドラインの解説』は以下参照。
・大規模盛土造成地の変動予測調査ガイドラインの解説(2008年2月?日 国土交通省;.pdfファイル)
ここで使われてる計算式は以下のようになる。
θ= tan-1(二地点間の標高差(Δh) / 二地点間の水平距離(d)
↓『(中略)ガイドラインの解説』P.26 の下に掲載されてる図の画面メモ(ややこしい)
上の図は、山(最上流端)が1つしかない状況をイメージしてるので、今回の質問状のケース(山が2つあると解釈できる)と異なっている。
おそらく、国交省側は、馬鹿正直に(あるいは巧妙に)最上流端を「一番高い場所」に設定して安全計算を行った思われる。
ただ、今回の質問状のケースでは、山の間が少し低くなってるんだよな。
しかも、質問状に掲載された横断図では低い方の山で盛り土は一度切れているし。
確かに、ガイドラインの解説に従えば、国交省の回答でも問題ないってことになるんだろうが・・・。
俺としては、この安全計算を行った場所の地形図が見たい所だっぺよ。
じゃないと、国交省の主張が正しいかどうか検証できないっての。
(すでに地形図が公開されてたら申し訳)
そして、国交省が出した回答では度々以下の文言が登場していた。
造成宅地防災区域の指定の判断権者である群馬県により確認されております。
要は、代替地の安全性に関する再計算は行わないってことだ。
しかし、「~により確認されております」って結構使えるテンプレかもしれんな(苦笑)
何のテンプレになるか知らんけど・・・。
それはそうと。
この回答では、ダムに水を貯めた状態における代替地の安全計算を行う、とも述べていた。
・代替地「安全基準満たす」 質問書に回答(2011年3月3日 mytown.asahi.com)
・国交省による代替地の安全性についての公開質問回答(関連記事)(2011年3月2日 八ッ場あしたの会)
この回答を国交省が行ったのは、計算結果が安全性を満たすという自信を持ってるのかそうでないのか・・・。
おまけ:宅地造成等規制法施行令の第19条第一項第一号イ及びロの条文を引用しとく。
・宅地造成等規制法施行令(昭和三十七年一月三十日政令第十六号)(2007年3月16日改正版 law.e-gov.go.jp 最終アクセス日:2011年3月3日)
---- 以下引用 ----
(中略)
第十九条 (宅地造成等規制法)法第二十条第一項 の政令で定める基準は、次の各号のいずれかに該当する一団の造成宅地(これに附帯する道路その他の土地を含み、宅地造成工事規制区域内の土地を除く。以下この条において同じ。)の区域であることとする。
一 次のいずれかに該当する一団の造成宅地の区域(盛土をした土地の区域に限る。次項第三号において同じ。)であつて、安定計算によつて、地震力及びその盛土の自重による当該盛土の滑り出す力がその滑り面に対する最大摩擦抵抗力その他の抵抗力を上回ることが確かめられたもの
イ 盛土をした土地の面積が三千平方メートル以上であり、かつ、盛土をしたことにより、当該盛土をした土地の地下水位が盛土をする前の地盤面の高さを超え、盛土の内部に浸入しているもの
ロ 盛土をする前の地盤面が水平面に対し二十度以上の角度をなし、かつ、盛土の高さが五メートル以上であるもの
(以下略)
---- 引用以上 ----
今年の1月になって、八ッ場あしたの会が移転予定地となっている打越代替地の安全性計算に関する質問状を国土交通省に出していた。
・打越代替地の安全性について公開質問(2011年1月21日 八ッ場あしたの会)
・代替地の安全性について追加の公開質問(2011年1月25日 八ッ場あしたの会)
これに対して、国交相から同会に先月25日に回答が届いたのだが・・・。
・代替地の安全性に関する公開質問への国交省の回答(2011年3月2日 八ッ場あしたの会)
上の声明によると、会側が設定した回答期限(2011年2月4日)を過ぎても全然返答が無いので、督促状送付や電話による督促も行っていたという。
ついでに、宮崎 岳志衆議院議員事務所からも国交省に回答の督促なんてのが行われていたらしい。
宮崎氏が回答の督促をしてなかったら、今日の時点で回答が行われなかった可能性が否定できないのが悲しい・・・。
話を戻す。
散々待たされた回答の内容は、待たされた側にしてみたら相当不満の残る代物だったっぺぇ。
さしあたっては、2011年3月2日分八ッ場あしたの会『代替地の安全性に関する公開質問への国交省の回答』(長い)から、回答の序文を(略
---- 以下引用 ----
(中略)
平成22年8月30日付けで八ッ場ダム工事事務所長から群馬県県土整備部建築住宅課長へ報告した文書は、八ッ場ダム建設事業に伴う代替地の区域が「造成宅地防災区域」の指定にあたっての基準に該当するかの確認を判断権者である群馬県が行うために、群馬県からの要請に基づき、八ッ場ダム工事事務所において技術的情報の整理を行い群馬県へ報告したものです。
その際、宅地造成等規制法施行令第19条第一項第一号イ及びロに規定されている要件[おまけ参照]にあてはまらない代替地については、同号の安定計算を実施しないこと等、安定計算に当たっての様々な条件設定については、群馬県に確認し、安定計算を行っております。
なお、八ッ場ダムの川原湯地区打越代替地を含め、代替地の設計にあたっては、河川砂防技術基準等の設計基準を適正に満たしているものですが、今後、八ッ場ダムの検証の中で、ダムが湛水した場合の代替地の安定計算を行うこととしています。
いずれにしても、国土交通省として、地元の方々に対して法令上適正な代替地を提供していく考えに変わりありません。
(以下略)
---- 引用以上 ----
去年8月の報告文書、か。
実は、この報告文書での計算結果にはミスがあったらしいのよね。
・八ツ場移転代替地、大地震で崩落の恐れ 耐震計算ミス(2010年11月2日 asahi.com)
・群馬県に報告した八ッ場ダム代替地の
安定計算の結果の一部に誤りがありました(2010年11月2日 国土交通省関東地方整備局;.pdfファイル)
一応、計算ミスがあった地区は1か所だけなのだが・・・。
で、元の質問状では、川原湯地区打越代替地の安全計算に関していくつか疑問点を呈していた。
といっても、全部をネタにするのもダルいので(待て)、今回は安全計算に用いた勾配の算定に関する部分をネタにする。
まずは、2011年1月21日分八ッ場あしたの会『打越代替地の~』から、『1-2 第三期分譲地の勾配の選定理由』を(略
---- 以下引用 ----
(中略)
8月提出の報告書を見ると、第三期分譲地は盛土をする前の地盤面の勾配が20度を下回っていて、且つ、盛土内に地下水が存在していないという二つの理由により、宅地造成等規制法施行令の第十九条の外形基準に該当せず、安定計算は不要との判断がされています。
しかし、第三期分譲地の横断図をみると、盛土をする前の地盤面は二つの山があって、谷側の山をとると、勾配(一点鎖線)が20度を超え、外形基準に該当することになります。
一方、国交省は山側の山をとった勾配(破線)を使って、15.4度とし、外形基準に該当しないとしています。
谷側の山をとった勾配をなぜ使わなかったのか、その理由を明らかにしてください。
(以下略)
---- 引用以上 ----
確かに、質問状に掲載された図からは、山が2つあることが確認できる。
実は、国交省が使ったのは、盛り土を始める場所から一番遠い所にある山だったりする。
この辺について、国交所は巧妙な解釈を行っていた模様。
以下、2011年3月1日分八ッ場あしたの会『代替地の安全性に関する~』から、『1-2 第三期分譲地(国交省的には川原湯地区3(囲み数字))の勾配の選定理由』を(略
---- 以下引用 ----
(中略)
「大規模盛土造成地の変動予測調査ガイドラインの解説」によれば、原地盤面の勾配(Θ)(p.26)は、「盛土の最下流端の原地盤面の標高と盛土の最上流端の原地盤面の標高差(Δh)を、それぞれ計測した二地点間も水平距離(d)で商を求め、その商を逆正接した値とする。」と記載されています。
今回の報告では、「大規模盛土造成地の変動予測調査ガイドラインの解説」に基づき、開発前の谷筋に沿った盛土の最下流端の原地盤の標高と盛土の最上流端の標高より勾配を求めています。
これについては、造成宅地防災区域の指定の判断権者である群馬県により確認されております。
(以下略)
---- 引用以上 ----
2008年2月時点での『大規模盛土造成地の変動予測調査ガイドラインの解説』は以下参照。
・大規模盛土造成地の変動予測調査ガイドラインの解説(2008年2月?日 国土交通省;.pdfファイル)
ここで使われてる計算式は以下のようになる。
θ= tan-1(二地点間の標高差(Δh) / 二地点間の水平距離(d)
↓『(中略)ガイドラインの解説』P.26 の下に掲載されてる図の画面メモ(ややこしい)
上の図は、山(最上流端)が1つしかない状況をイメージしてるので、今回の質問状のケース(山が2つあると解釈できる)と異なっている。
おそらく、国交省側は、馬鹿正直に(あるいは巧妙に)最上流端を「一番高い場所」に設定して安全計算を行った思われる。
ただ、今回の質問状のケースでは、山の間が少し低くなってるんだよな。
しかも、質問状に掲載された横断図では低い方の山で盛り土は一度切れているし。
確かに、ガイドラインの解説に従えば、国交省の回答でも問題ないってことになるんだろうが・・・。
俺としては、この安全計算を行った場所の地形図が見たい所だっぺよ。
じゃないと、国交省の主張が正しいかどうか検証できないっての。
(すでに地形図が公開されてたら申し訳)
そして、国交省が出した回答では度々以下の文言が登場していた。
造成宅地防災区域の指定の判断権者である群馬県により確認されております。
要は、代替地の安全性に関する再計算は行わないってことだ。
しかし、「~により確認されております」って結構使えるテンプレかもしれんな(苦笑)
何のテンプレになるか知らんけど・・・。
それはそうと。
この回答では、ダムに水を貯めた状態における代替地の安全計算を行う、とも述べていた。
・代替地「安全基準満たす」 質問書に回答(2011年3月3日 mytown.asahi.com)
・国交省による代替地の安全性についての公開質問回答(関連記事)(2011年3月2日 八ッ場あしたの会)
この回答を国交省が行ったのは、計算結果が安全性を満たすという自信を持ってるのかそうでないのか・・・。
おまけ:宅地造成等規制法施行令の第19条第一項第一号イ及びロの条文を引用しとく。
・宅地造成等規制法施行令(昭和三十七年一月三十日政令第十六号)(2007年3月16日改正版 law.e-gov.go.jp 最終アクセス日:2011年3月3日)
---- 以下引用 ----
(中略)
第十九条 (宅地造成等規制法)法第二十条第一項 の政令で定める基準は、次の各号のいずれかに該当する一団の造成宅地(これに附帯する道路その他の土地を含み、宅地造成工事規制区域内の土地を除く。以下この条において同じ。)の区域であることとする。
一 次のいずれかに該当する一団の造成宅地の区域(盛土をした土地の区域に限る。次項第三号において同じ。)であつて、安定計算によつて、地震力及びその盛土の自重による当該盛土の滑り出す力がその滑り面に対する最大摩擦抵抗力その他の抵抗力を上回ることが確かめられたもの
イ 盛土をした土地の面積が三千平方メートル以上であり、かつ、盛土をしたことにより、当該盛土をした土地の地下水位が盛土をする前の地盤面の高さを超え、盛土の内部に浸入しているもの
ロ 盛土をする前の地盤面が水平面に対し二十度以上の角度をなし、かつ、盛土の高さが五メートル以上であるもの
(以下略)
---- 引用以上 ----
政治家を使ったり、「投書するぞ」と言うと、急に回答することもありますが、都合の悪い質問には答えないのが、官僚の通常の行動原理だからです。
時間がかかったのは、「カラスは白い」と言いくるめる官僚的論理展開を考えるのに手間取ったことと、群馬県に責任転嫁できるかどうかの確認をしていたのだろうと推測されます。
議員立法でない法律は、元々官僚が作ったものですし、法律の解釈は省令や通達で官僚の解釈を押しつけることが可能なので、今回も「カラスは白い作戦」を継続することでしょう。
>内容はともかくも回答が示されたことが評価されるかもしれません
確かに、「回答なし」より何らかの回答がある方が、質問する側にとって(国交省の見解を知る上で)意味が大きいですからね。
流石に、今回の「~群馬県により確認されております」には度肝を抜かれましたが。
>~群馬県に責任転嫁できるかどうかの確認をしていたのだろうと推測されます。
うわ~。
仮にこれが事実だとしても、群馬県は絶対にこのことを言わないしょうね・・・。
>議員立法でない法律は~
官僚は法律や通達の解釈に長けてますからね・・・。
その意味では、「カラスは白い作戦」で逃げ切れると踏んでるのかもしれません。
ただ、議員立法も法案骨子そのものを法制局が作ることがあるらしいんですよね・・・。
議員立法は構成要件の書き方が甘くなり勝ち(2009年4月8日 早川忠孝の一念発起・日々新たなり)
http://ameblo.jp/gusya-h/entry-10238183734.html
アジャイルな制度設計の可能性とか(2009年4月8日 雑種路線でいこう)
http://d.hatena.ne.jp/mkusunok/20090408
法制局の助けを借りて法案を作成するのはともかく、国会議員自身が法案の意味がわからないまま議員立法を提出、という事態は避けて欲しいものです。